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Act. 8Act. 9Act.10Act.11
Act.12Act.13Act.14Ending



Act.12 事件はいよいよ本格的に宇宙的様相を呈してくる



密室、すなわち、内側から鍵がかかっていた。
生きている者が誰もいない空間で、かつ、出入りの経路が不明。
まあ、こんな定義でしょうか……。

― 瀬在丸紅子

(森博嗣 『月は幽咽のデバイス』)



「梯子ですが、等間隔で横の壁に明かりが取りつけられているので、明るいです」

山形「下ります」

「誰が先頭?」

山形「脚が悪いから最後がいいか」

琴音「先に下りておくというのも」

西谷「サーベルをタイガージェット・シンのように銜えて(一同笑)下りていく」

「絶対に刃は使わず柄で殴る(笑)」

西谷「そうそう、優しい人」

相原「ショットガンはどうする?」

西谷「投げ下ろしてもらいます」

「ちなみにショットガンは、12ゲージのポンプアクションです。ルールブックで確認しておいてください。銃本体には、まだ弾が入っていない状態ですね」

山形「みんなが下りてく間に装填する」

西谷「山形さん、銃抱えたままひとりで下りれる?」

山形「下りれないよ。脚悪いから」

入手した武器の一覧
名称命中率ダメージ射程装弾数所有者
フェンシング・フォイル [2本]20%(貫通可)1D6+1+dbタッチ-西谷
小さい棍棒25%1D6+dbタッチ-相原
12ゲージ・ショットガン(ポンプ)30%4D6/2D6/1D610/20/50m5発山形

「縦穴ですけど、もの凄く深いです」

西谷「深い」

「この館でのワンフロア分あると思ってください。相当深いです。天井高いですから」

西谷「ああ、なるほど。――誰が持って下りてくりゃいいんだ?」

美崎「誰か適当な人――」

西谷「それって、ストラップついてます?」

「えーと、ついています、はい」

西谷「御都合主義で申しわけないんですけど、サーベル(※フェンシング・フォイルのこと)を銜えて、ショットガンのストラップを身体にかけて、西谷が先頭で下りていった」(下りたあとでショットガンは山形に返します)

「はい」

相原「サーベル、片っぽ置いていって」

西谷「二本とも銜えて先に下りていっちゃった。全部俺のもの」

相原「(笑)」

「フェンシング・フォイルの本物って、重いんだろうなぁ。まあいいか(笑)」

西谷「今の西谷のアドレナリンで(笑)」

相原「棍棒持って下ります。続いて」

「はい。それじゃあ、やがて全員下りますね?」

<一同>「はい」

「全員下り立ちました。地下は上と比べると薄暗いですけど、まあ、照明は点いております。
 ――みなさんが下りたところから南へ向かって真っ直ぐ廊下が伸びています」

山形「何でお前らもいるんだ? って学生たちに(笑)」

美崎「やだもう、とか言ってますね」

山形「ここは危険だ! と言う」

「あ、忘れてた。さっき、上の部屋で<目星>ロールに成功された方」

琴音「弾を探すとき?」

「ええ。もう一個見つけたのがあったんですよ。棚の上にですね、例の五芒星の刻まれたメダルが」

西谷「ああ、メダル!」

「はい。それを見つけました」

相原「そういえば、メダル探してたの忘れてる」

「飾ってあった。これ見よがしに(笑)。――それはお持ちになりますね?」

西谷「はい」

「さて、では全員、通路が真っ直ぐ伸びてるだけだなーと思っていると、そうだねぇ、頭の上のほうから――つまり縦穴の上のほうからですね、何か、ずるっ、ずるっ、にゅるるっ、という音が」

西谷「んんん?」

山形「罠にはまった感じがする」

相原「南にダッシュですかね、これは」

「なんだろうと思って移動を始めた途端――しんがりの人が縦穴の下から移動した途端、何かがボトボトボトって落ちてきた!」

山形西谷「見るしかないでしょう!(笑)」

相原「見ないでダッシュで行きたいんですが(笑)」

西谷「よぉーく、煌々と照らして見ますね」

美崎「何っ!? って」

「見ないでダッシュですか……。何番目にいるのかな」

相原「二番目ですよ」

「じゃあ、ひとり飛び出しても構いません」

西谷「俺は馬鹿だから振り向いちゃった」

琴音「私も懐中電灯を向ける」

山形「一番最後なんだから、背中でボトボトいわれたら見るでしょ」

「通路の広さはですね、ふたり並んでもまだ余裕がある」

琴音「高さも、立ってられるんですよね?」

「もちろん。結構高い」

西谷「振り向きざまに、銜えていたレイピアの一本を相原に咄嗟(とっさ)に渡したという展開にしていいですか?」

「いいですよ。それじゃあ、振り向くと、ボトボトと縦穴の上からですね、長さにして一メートルから、ものによっては二メートル以上のですね、蛇のように細長い、不健康な茶褐色をした、両方の端がすぼまっている、妙な生き物。粘液にまみれていますね。それが――7匹落ちてきた」

琴音「まだでもちっちゃい」

山形「それは――」

「蠢(うごめ)いてるね」

山形「うーわ」

「ばたばたばたばた……のたうってる」

淀川「とりあえず逃げる必要が」

「というわけで、見た人全員<正気度>ロール」

琴音「はーい」

(コロコロ……)

西谷「成功成功」

<他四名>「失敗」

山形「正気度いくつ減りますか?」

「失敗した人は1D3。成功は減らなくていいです」

(コロコロ……)

琴音「ああ、凄い減った」

山形「痛い痛い痛い」

「一時間以内に1/5以上減ったら狂うということは、お忘れなく」

山形「撃つ!」

「有無を言わさず(笑)」

山形「うわああああっ! ――SAN減ったから」

「DEXは3なんですよね?」

山形「そうです」

淀川「逃げる! わぁぁー(笑)」

美崎「厭だっ! って言って逃げる」

「既に発射準備整ってますから、撃っていいです」

山形「30%以下だよね? 出るかなぁ。(コロコロ……)失敗」

「バス〜ン! そうだね、床に当てるつもりが、やや上のところを掠めていった」

山形「発狂してるし(笑)」

「発狂はしてない(笑)。自ら発狂しないでもいいです」

西谷「西谷はいかがいたしましょう。何かできるんですかね」

「今の射撃で1ラウンド終わったことにしましょう。で、次のラウンド。DEX順に動けます」


(全員のDEXは―― 相原:15、西谷:14、琴音:13、美崎:12、淀川:9、山形:3)


「ちなみにこちらのDEXは、一律10です」

淀川「あ、やべっ。やつらより遅え」

山形「死ぬぅ(笑)。<回避>しちゃったら、そのラウンドは射撃できないし……。食らって攻撃するか」

相原「逃げた」

「はい」

西谷「レイピア持ってって(※フェンシング・フォイルのこと)、大根切りをかます」

「まあ、突くんですな、これだと」

西谷「あ、でも、使い方解っていないから、たぶん滅茶苦茶に」

美崎「武器になるんですかね、それ。何もしないのと同じになっちゃう」

西谷「身体が勝手に反応してくれることにしよう(笑)」

「命中率20%で、04%以下が出たら貫通ということでダメージが2倍となります」

西谷「(コロコロ……)失敗」

「当たんなかったです。当てづらいですねぇ、大変。――はい次の方は」

琴音「叫びながら後ずさっていきます」

「後ずさっていった」

美崎「奥に向かって走ります。叫びながら」

「はい。お次は――こっちですね」

琴音「7匹だよ」

美崎「ズルズルが」

「(コロコロ……ダイスで行動を決定中)――7匹とも、勝手にのたうちまわっている」

琴音「ああ、よかった」

「みんなから遠ざかるものもいれば、足元に近づいてくるのもいれば。その場でノタノタやってるのもいれば」

山形「つまりこれは、どういうこと?」

相原「ふふーん、コントロールが効かない?」

美崎「みんな元気。活きのいい怪生物」

淀川「うわーって逃げていきますよ。<正気度>ロール失敗しましたし」

「山形さんは? 何かしますか?」

山形「撃つ」

「はい。撃ってください。――近づいて"ゼロ距離射撃"って手もありますけど」

山形「ゼロ距離射撃!(笑)」

「前に飛び出してゼロ距離射撃。自分のDEXの1/3以下の距離だと、命中率が2倍になります」

山形「そうします」

「1メーター以内に近づいて(笑)。これでも外れることがあるのが面白い」

山形「2ばーい。(コロコロ……)成功かな? あ、失敗だ(笑)」

美崎「(笑)反動でコケたんですね」

山形「そう。あ、片手で撃ったからだ!」

美崎「しかも脚悪いですし」

山形「反動で後ろに飛んだんだ」

「さて、次のラウンド。お次の方は――相原は離脱しているので――フェンシング・フォイルの人でいいのかな?」

西谷「突きますね。(コロコロ……)失敗! またしても外れてます」

「じゃあ、逃げるふたりで、こっちの番ですね」

美崎「走って逃げます」

淀川「学生軍団、全員逃げちゃった(笑)」

「(コロコロ……ダイスで行動を決定中)――7匹とも、またもや自分勝手に蠢いています」

西谷「じゃあ、構わなくても何とかなるか」

「でも1体だけ、西谷さんの足元まで、えっちらおっちら近づいてきて、まるで鎌首をもたげるように上体を起こしたけど、突然気が変わったかのように逃げ出したね」

西谷「はあぁ」

山形「もしかしたら、これに姿を変えられたのかもしれない。今までの人たちが。――で、近寄ってきたのは、下着を取り返そうとして(一同笑)。実は滝口さんだった」

西谷「でも俺の姿を見て、呆れ果てて物も言えないと(一同笑)」

山形「そうそう。そういう推理が、プレイヤー発言ですけれど。パンツ頭に被っているので呆れられた(笑)」

琴音「頭に被ってんの?」

西谷「被ってますよ。穿(は)けないもん、だって、女性物は(一同笑)」

「穿かなくていいよ(笑)」

美崎「もう駄目だ(笑)」

「まあ、とりあえずそれはいいとして――逃げてきた方ですが、通路は真っ直ぐ伸びると、やがて行き止まりになり、左と正面にドアがある」

美崎「ドア? ドアですか」

「ドアです」

山形「ダンジョンになってきましたね(笑)」

淀川「どっちかから光が漏れてたりってことはないんですか?」

「そういうのはないですね」

美崎「開いてないんですね」

「ドアは閉まってますね。――さて、戦闘中のふたりですが、どうします?」

西谷「自分たちから芋虫に構っていてもしょうがないから、みんなのいる方向へ、後方を警戒しつつ」

相原「俺は一番こいつが恐いんだけど」

「別段、この蛇のような触手のようなやつらは、追ってきたりとかはしませんね」

西谷「ああ、よかったよかった。呆れてくれたんだな」

「ごろごろ転がったりしています」

西谷「ああはなりたくねえよな、人間やめても(笑)」

琴音「勝手に(笑)」

「みなさん合流しました」

美崎「駆け寄って正面のドアを開けようとします」

「開きました」

美崎「開きました? じゃあ、入る」

西谷「その一個だけなんですか?」

琴音「ふたつある」

「正面を開けるとですね、もの凄く広い部屋です。そうですね、礼拝堂と同じくらいでしょうか」

山形「その入る姿はこちらから見える?」

「え? もちろん」

山形「おーい、危ないぞー! と声をかけておく」

美崎「入っちゃいますね」

「照明はちゃんと点いてますよ。凄いだだっ広い、コンクリート打ちっ放しって感じの、殺風景な部屋です。いちばーん奥の左端に、テーブルとか椅子とか本棚が無造作に置いてありますね。その上に色々と小物とか本とか置いてある」

山形「床に何か書いてあるとか」

「特には」

美崎「開けて、早く入って早く入って、と言ってますね」

相原「左側の部屋を調べたかったのは気のせいだろうか」

西谷「あとから行く我々が開けちゃいます。左側のドア」

「左のドアの向こうは、寝室ひとつ分くらいの大きさの倉庫になっています」 地下

西谷「倉庫か」

山形「調べたいと思うのは私だけ?」

相原「私も調べたいんですが、それは。非常に」

淀川「何か言ってくれるんですか? もう大丈夫だよ、とか」

山形「何も言ってない」

美崎「入んないなら閉めるよ! って言って、学生三人が入ったんなら閉めちゃいます」

琴音「チキンな三人」

西谷「とりあえず、DEX高い俺たちがショットガンとレイピアを交換して、レイピアのほうを山形さんに持っていってもらって、山形さんをみんなと一緒の部屋に送り込んだあと、俺がショットガンを持って倉庫に行く」

「はい。色んなものが積んであるって感じで、特に変わったものはないです」

相原「武器になりそうな物は?」

「そういうのを探す場合は<目星>ロールですね」

(コロコロ……)

相原「成功です」

西谷「大失敗です」

「じゃあ――、大きな棍棒を(一同笑)」

相原「五芒星のやつとか、ないですか?」

「そういうのはないですね」

相原「怪しい、呪術的なものは?」

「ないですね。もう、ガラクタばっかりって感じではある」

入手した武器の一覧
名称命中率ダメージ射程装弾数所有者
フェンシング・フォイル [2本]20%(貫通可)1D6+1+dbタッチ-山形・相原
小さい棍棒25%1D6+dbタッチ-相原
大きい棍棒25%1D8+dbタッチ-相原
12ゲージ・ショットガン(ポンプ)30%4D6/2D6/1D610/20/50m5発西谷

西谷「<目星>に失敗したために頭に来て、足でそのへんのものを蹴って、狼藉(ろうぜき)を働く」

「(笑)働いてください」

淀川「乱暴者になっちったよ(笑)」

美崎「絶対『シャイニング』だ」

西谷「力は人を変えるって言うしね。ショットガンなんか持っちゃって。――で、まあ、とりあえずブツは持ったし、出て、みんなが行ったほうに移ります」

「はい、じゃあ、全員入ったね」

美崎「あ、ちょっと待ってください。テーブルなどって、どんなものがあるんですか?」

「ひとり掛けの椅子とテーブルと、質素な本棚。本棚には別に、ぎっしり本が詰まっているわけではない」

美崎「なるほど。じゃあ、部屋の隅にいるかな。テーブル運べそうもないし」

琴音「電気は普通に引かれてるってこと?」

「ですね。高い天井で明かりが光っています」

美崎「礼拝堂ぐらい広いんですよね」

「うん」

山形「罠かな」

琴音「ちょっと、壁をざっと見て廻ることにします。さっき礼拝堂で見た紋様を思い出しつつ」

「はい。他の人たちは?」

淀川「僕もそうします」

山形「そうします。隠し扉がないか、とか」

美崎「あ。机の上の物とかを調べてみたいと思います」

山形「扉とかないんですよね? ここ」

「そうですね。見当たらないですね」

山形「じゃあ、隠し扉があるんじゃないかと」

「では調べる方、全員<目星>をどうぞ!」

山形「今度こそ!」

(コロコロ……)

相原「成功してます」

(あとみんなしっぱい)

「先に机を調べた方の戦果ですが」

美崎「はい」

「<目星>に失敗はしましたが、机の上に分厚くて古めかしい書物が置いてあるのは見つけた」

美崎「うーん。まあいいや」

「英語か何かでタイトルは書いてありますが。
 ――で、<目星>成功した方」

相原「はい」

「部屋の一番奥の壁にですね、床から一メートル半くらいの高さかな、直径五センチくらいの穴が空いている」

淀川「厄介だ(笑)」

相原「塞ぎたいんですが。大きい棍棒で」

琴音「(笑)大きい棍棒で」

「入んないな。大きい棍棒は」

相原「小さい棍棒じゃあ」

「入るけど隙間ができるよ」

琴音「誰か噛んでいるガムをください(笑)」

「――とかやっていると、入口のドアがバタンと閉まる音がした」





 
読者へ

 少々遅すぎたかもしれない。本作がミステリ風シナリオである以上、そのリプレイに「これ」を差し挟むということは、いわば当然のなりゆきと言える。

 手掛かりは全て出揃っている、と言うつもりはない。無論、私は読者に挑戦する、とも言わない。

 読者諸兄にはここでひと息ついていただき、冗長で無駄の多いこのリプレイに関して、頭の中で整理をしていただきたい。

 そして事件の真相について、少しばかり想像を巡らせていただきたい。――真相? 今さら何を問うというのか?

 犯人についてはもちろん訊くまでもないだろう。あなたの予想どおりの人物である。

 密室構成の方法(HOW)に関しても、疑問自体が生じる余地のないものである。

 さて、それではここで、以下の事柄について、私は読者に想像して(予想して)愉しんでいただきたく思う。

 この先に登場する神話存在は何か?

 賢明なる読者諸兄には簡単すぎる問題であろうから、蛇足ながらもうひとつばかり付け加えさせていただく。

 なぜ、密室は創られたのか(WHY)?

 あまりにも容易な謎かけゆえにほとんどの読者が呆れられていることとは思うが、たとえひとりでも謎解きを愉しんでいただける方がいるのならば、それは私にとって至上の悦びと言えよう。

 それでは、あなたにナイアルラトホテップの加護があらんことを。

―― Trapezohedron.

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