Opening Act. 1 Act. 2 Act. 3 Act. 4 Act. 5 Act. 6 Act. 7 Act. 8 Act. 9 Act.10 Act.11 Act.12 Act.13 Act.14 Ending
Act.3 そのとき不意に館が鳴動する
それに、人間大の物質に関する密室、細菌大の物質に関する密室、
気体に対する密室、電磁波に対する密室、なども定義する必要があります。
外部からいかなる影響も受けない部屋を作ることはたぶん不可能です。― 犀川創平
(森博嗣 『詩的私的ジャック』)
K「というわけで、飯になりました。わいのわいの」
美崎「わーおいしー」
K「うん。大変旨いです。それじゃあ――逆木原晶氏ですが、近くに座った庵利御さんと、何やら親密に話し合ってますね。結構親しそうです」
淀川「聞いていい? 遠巻きから。探偵精神を」
美崎「やつらは何を話しているんだ!?(笑)」
K「<聞き耳>×2でいいや。聞こうと思えば聞ける」
相原「(コロコロ……)それでも失敗です」
琴音「長細いテーブルなんですか?」
K「そうですね」
淀川「近づいて喋ってる感じなんですか? それとも普通に?」
K「双方僅かに身を寄せて(笑)。微妙なところですね」
淀川「(コロコロ……)OKです」
西谷「(コロコロ……)成功」
K「ええと、では、話の内容から察することができたのですが、庵さんはだいぶ前から逆木原晶さんとつきあいがあったらしくて、庵さんは、晶さんから仕事を頼まれているらしいね。ふたつの事柄について話をしています。
ひとつは、どうやら逆木原晶さんは庵さんに、色々な書物の翻訳の仕事を頼んでいるらしいですね。庵さんは、どうやら英語が堪能な人らしい。榮太郎さんが残した色んな海外の書物、洋書などの翻訳を庵さんに頼んでいて、半年くらい前から、そのことで庵さんがちょくちょくこの館を訪れているみたいですよ。そういうことを話しているね。『翻訳状況はどうだい?』なんて」琴音「『Creature Companion』を渡しておこう(笑)」
淀川「何のことだろう(笑)」
K「で、もう一個がですね、逆木原晶氏が何でも、趣味で養蜂を始めようとしているらしいね」
美崎「ようほう?」
琴音「蜂を飼う養蜂?」
K「YES! そのことについて、昆虫に詳しい庵さんに――」
山形「(笑)まさか密造酒を?(笑)」
(註:以前、ある方が「黄金の蜂蜜酒」を「黄金の密造酒」と言い間違えたことがあり、それ以来定番となっているジョークです。ご本人の名誉のため、どなたが言い間違えたのかは伏せておきましょう)
K「――庵さんに、色々とアドバイスをされています」
相原「ちなみに、晶氏はまさか、あのメダルを持っていたりなんてことは――?」
K「メダルは別に、つけてはいないみたいですよ。
――で、養蜂のアドバイスなんですが、かなり詳しく、話も逸れて、蜂の生態や、蟻の生態にまで話が及んでいますね」美崎「アリの生態?」
K「うん。何でも、社会性生物・社会性昆虫についてのレクチャーをしてあげてるね。――念のために言っておきますと、一匹一匹単体では大したことをしない蟻や蜂ですが、集団になると途端に社会性を有して巧みに理知的になるという、そういう話ですね。
――それで、集団性・社会性生物の話に及ぶとですね、庵さんが急に懐から写真を取り出してみたりして、『これが蜂球(ほうきゅう)ですね』とか言いながら解説している」琴音「お食事中に……」
K「覗くと、たぶんウェッってなるような写真ですね、これは。蜂の塊。蜂が何十匹も何百匹も。『新たな巣が見つかるまで、こうやって寄り添って女王蜂を守るんですよ』なんて。『その間に役割分担ができていて、巣を探しに行く蜂が出ていって――』とか、そういう話をしていますね。
で、話は養蜂から、そっちの全然関係ない昆虫の生態の話に移っているにもかかわらず、晶氏はより興味深そうに聞いている。なるほど、と真剣になって聞いている」琴音「他の招待客の人たちも、今いるんですよね? それはみんな放っぽらかしになって、晶氏は庵さんの話を聞いている?」
K「そうですね。首ったけです」
美崎「みんなは普通に、ちょくちょく話をしながら飯食ってるみたいな感じで?」
K「そうです。――では、飯食って、虫の話をしていると――一番上座に近い人って誰だろう?」
琴音「招待客ですね」
K「じゃあ、近場にいた山形さんに、『これなんですけどね』なんて、写真を(笑)」
山形「うわーっ(笑)」
K「庵さん、虫の話になると急に愛想よくなる」
山形「虫が好きでらっしゃるんですか?」
K「『昆虫写真家なもので』」
山形「あ、そうなんですか」
K「『で、これなんですよ。これが分蜂蜂球ですね、で、こちらが……』」
琴音「実は食べてないで喋ってんじゃないの?(笑)」
相原「やっぱり、昆虫の写真撮るのって難しいですか?」
K「『そうですね、簡単そうに見えてこれが難しい。"ヤーポニカ学習帳"の表紙などもたまに任されるのですが』(一同笑)」
美崎「ヤーポニカ(笑)」
西谷「オオムラサキの写真とか」
相原「やっぱり、瞬間的に撮るのは難しい?」
K「『ええ、そうですね。僕なんかは、割と新しい人間ですので、デジカメなんか使っていますけど――』」
西谷「アメリカに行って、イナゴの群れなんか撮ったりするんですか?」
K「『一度それやりたいんですけどね。なかなか海外へ行く機会は。まだ新人なものですから』」
西谷「そうですか。ぜひそのときには取材に同行させていただきましょう(笑)」
K「『ええ、いいですよ。喜んで』」
西谷「見てぇ、イナゴ!(笑) 虫偏に皇帝と書いて蝗(イナゴ)!」
K「(笑)」
美崎「虫の王ですからね。字面だけ見ると」
K「『まあ、まだ国内が主ですね』――と、話しているとですね、外でいちだんと強い風が吹いた気配がした」
<一同>「おお」
K「すると、それにワンテンポ遅れて、みんなを取り囲む壁の内部が鳴動するように『ブォォォォン』と、凄い音を奏でた」
西谷「うわ」
美崎「ちょっと、ビクッとしますね」
K「腹の底に響く音でありながら、全然不快感はなく、どちらかというと心地いい低音って感じですね」
西谷「パイプオルガンみたいな」
K「うん」
相原「あ、これで空洞になってるんだ、と秘かに思いながら」
美崎「隣の琴音ちゃんに、何か今、変な音したよねー?」
琴音「うーん」
K「と話し合っていると、晶さんが、『お気づきになりましたか? これがこの館が"鳴風館"と呼ばれているゆえんですよ』」
<一同>「おおー」
K「『外で今のように風が鳴りますと、壁の中に造られた空洞を強風が通り、至るところに管楽器のように穴も空いていて、それを通して空気が漏れ、音が鳴ると。そういった仕組みになっているのですよ』と得意げに」
琴音「(ぼそり)凄い暖房費使いそう」
美崎「すぐ冷えそうですね(笑)」
相原「これはやっぱり、祖父の逆木原榮太郎さんが考えたことなんですかね?」
K「『そうです。私の祖父は偉大な方でした。今の私があるのも、祖父のおかげですよ』――まあ、<心理学>ロールを振るまでもなく、祖父・榮太郎のことを誇りに思っていることが判りますね。
……あとは何か、訊きたいこととかありませんか?」相原「まあ、あとで訊きたいことはあるので、多少インタビューの時間は取らせてくれませんか? ぐらいのことは言いますけど」
K「『ああ、それはもちろん、食後にでも』――では、というわけで、飯はみんな胃に収めたということでいいですね?
じゃあ、食後です。食後のティーなんかも飲み終わって、逆木原晶氏から、『というわけで、今日はこのあたりでお開きにしたいと思います。改装パーティーは明日の夕方六時からとなっています。クリスマス・パーティーも兼ねて、素敵な夜を皆さんと一緒に過ごしたいと思っていますよ』」淀川「あ、そうか。クリスマスだった」
琴音「私たち、どうしたらいいと思う?」
美崎「うーん」
K「『ああ、そちらの学生さんたち、もし明日になっても天候が回復しないようであれば、泊まっていただいて構いませんよ』」
美崎「ええっ!? 本当ですか!? ――顔を輝かせて」
K「『もちろん。賑やかなほうが私も楽しい』」
美崎「だってだって。よかったねよかたね」
琴音「――芳樹の命日って、いつだったっけかな」
K「えっと――今日ぐらい?(笑)」
山形「でも、死体がなかったから行方不明になってんじゃないの?」
琴音「そうだね。でも、私的には命日なんだけど」
西谷「世間的には特別、法事をやるわけじゃないけど、ってことにはなるわけだから」
琴音「じゃあ、いいやね。いてもいいか」
西谷「法事があるからスキーなんかしてる場合じゃない、ということにはならない」
美崎「気晴らしってことで(笑)」
K「――じゃあ、執事の六平さんから、館の使用の注意について。まあ、常識的なことですけどね。人様の部屋には勝手に入らないようにとか、あと、『一階奥の書斎と寝室ですが、こちらも入れないようになっておりますので。晶様のお部屋になっております。それと、何かございましたら、私の部屋か使用人の尾道夫婦の部屋をお尋ねいただければ』」
美崎「家族の部屋は、他には?」
K「一階の寝室A、B、C。Bに直人さん、Cに典子さん」
山形「じゃあ、Aは?」
K「空いてます」
美崎「なるほどなるほど(笑)」
相原「(((笑)))))」
K「空いてます! そんな、誰もいません!(笑)」
相原「直感、直感(笑)。――榮太郎氏がいそうな気がするんだ。俺の直感では(笑)」
K「そんな、仮面の怪人なんていません!(笑)」
(足の不自由な少年とか、大火傷を負った狂女とか、そういうのはいません!)
琴音「この上って礼拝堂だったと思うんですけど、何かミサを挙げたりとか?」
K「『ああ、それは榮太郎様の代ですね。現在は使われておりませんが、開放はされておりますので。礼拝堂もサロンも図書室も、リビングも展示室も、ご自由に出入りしていただいて構いません』」
美崎「じゃあ、あとで見に行ってみようよー!」
相原「展示室の写真なども撮らしてもらってよろしいでしょうか?」
K「『もちろん結構です。どうぞどうぞお撮りになってください』」
琴音「歴史ものなんかあるかな」
美崎「あ、そっか。一応、歴史やってるんだった」
K「図書室の本も読み放題ですよ」
山形「じゃあ図書室に。寝る時間には、まだ早いので」
相原「こちらは、晶さんと話ができれば」
西谷「そうですね、こっちも図書室に行きたいけど、先に取材のほうを」
琴音「展示室行こう、展示室。淀川くんも展示室行こうよ」
淀川「え? くすねるんですか?」
琴音「なんで君はさ、そういう発想になっちゃうのかなぁ」
K「本当に探偵なのかな(笑)」
琴音「みんなに言ってるんですか? 自称探偵は」
淀川「言ってるよ。大学生探偵の淀川だ!(笑)」
K「あの有名な!?(笑)」
美崎「事件を混乱させることで(笑)」
淀川「山形さんにはお世話になってますよ」
西谷「事件の重要参考人として」
淀川「展示室行こうかな。図書室行こうと思ってたんですけど――」
山形「図書室は私が」
淀川「じゃ、山形さんについて行こう。事件の話でもしましょうよ。――あのときの事件は凄かったですねー(笑)」
山形「お前が事件を混乱させたんだろう!(笑)」
西谷「凄くしたらしい」
淀川「大活躍で。もう、自分でもほれぼれしますよ。自画自賛(笑)」
K「――さて、よろしいかな? それじゃあ、お仕事からやっちゃおうか。
えーと、逆木原氏はどこで話そうかなぁ。じゃ、応接間で」相原「はい、ここですね」
K「一階応接間におふたりさんが案内されまして、逆木原晶と向かい合って座りました」
相原「テープレコーダー持ってきてたんで、録音の許可を貰いますが。一応」
西谷「バックアップの意味で、こちらもMDに」
K「どうぞどうぞ。――『さて、それで、何から話せばいいのかな』」
相原「とりあえず、今回、鳴風館に戻ってきた理由について。――一回、空けてるんですよね? それで、戻ってきた理由について、お聞かせいただけませんか?」
K「『理由ねぇ、そうだね、祖父の面影を求めて、といったところかな。もともとこの館を造ったのは祖父榮太郎なんだよ』」
相原「ああ、そうなんですか」
K「『二十年前ぐらいかな。まあ、祖父は十五年ほど前に亡くなってしまったが、それまでは家族全員でここに暮らしていてね。私は、まあ、"お爺ちゃん子"というやつで、祖父にはつきっきりだったんだよ。――いま私がいる部屋、あそこがもともと祖父の部屋だったんだ』」
相原「なるほどね」
K「『祖父が亡くなって、私の父・禄郎の代になった途端、急に父はこの館に住むことを嫌ってね、家族全員で街へ――鳴兎子市内だね――越したわけだよ。
そしてその父が五年前に亡くなって、私の代になり、まあ、私自身、あまり街での生活は好きじゃないんだ。人と会って煩わしい関係を築いたり壊されたりするのはね。それが厭で、この館に戻って来ようと計画を立てていて、そして改築・改装をし、つい先月それが終わったんだ。それで、クリスマスが近いこともあって、明日に身内でパーティーを開こうじゃないかということになったわけだ』」相原「はあはあ。――さっきも鳴っていました"鳴風館"の由来――風の鳴る音ですよね、あれなんですけど、壁の隙間とかは結構広いんですかね?」
K「『実際見たわけじゃないが、図面から察して狭くはないだろうな。まあ、そうだね、変な譬えだが、人ひとりが何とか通過できるぐらいの広さじゃないかな』」
相原「それは一、二階両方にあると?」
K「『館じゅうにあるらしいね』」
相原「じゃあ、あと、風の方向とか特に決まってなくても鳴るわけですね?」
K「『何でも鳴るというわけじゃないんだ。ある一定の強さと、館の外に空いている穴に上手いこと吹き込む風じゃないと駄目なんだ。――ほら、こんなふうにね』なんて言ってるそばから『ごぉぉぉぉぉ』と鳴った」
相原「榮太郎さんが、やっぱりこれは考え出した?」
K「『そうだね』」
相原「榮太郎さんは、音楽とか、そういうのに結構ご興味がおありだった?」
K「『特別、音楽に興味があったとは、私は記憶していないが』」
西谷「どうやってこの館のインスピレーションが得られたかは?」
K「『それは実は私も知りたいところなんだよ。――今は亡き祖父に訊いてみる他はないが、まあ、こういう突飛なところ、からくり趣味とかはあったかな』」
西谷「ああ、からくり趣味――」
K「『あと外国の色々な怪しげな道具や書物を蒐集したりね』」
琴音「怪しげな(笑)」
相原「ここには礼拝堂もありますが、信心深かったんですか?」
K「『ああ、キリスト教徒だったよ、祖父は。父も私も無宗教だがね』」
相原「礼拝堂の中に入ったことは?」
K「『ああ、何度も』」
相原「あとで中の写真撮らせていただいてよろしいですか?」
K「『もちろん。ステンドグラスが北向きだから、今の時期はたとえ昼間でも、あまり見栄えはよくないがね』」
相原「珍しい方向に作りましたね」
K「『でもたまにあるタイミングで陽が差すと、これがまた綺麗なんだ』」
西谷「あとは――一面ガラスになっているサロンですが、全面ガラスにしてしまって、風の強いときとか、雪の多い日とか、強度的に不安をお感じになったことはないんでしょうか?」
K「『私もそれを、改装時に建築家の者に訊いてみたんだが、大丈夫らしい。防弾――じゃなかった、強化ガラスだからね』」
淀川「実は命を狙われている(笑)」
西谷「対ゴルゴ用に」
淀川「そしたら、そんなガラス張りにしない(笑)」
西谷「――ちょうど、街を見下ろすような構造になっているわけですね」
K「『そうだね。天気がいいと絶景だよ、まさに』」
西谷「いずれ天候が回復した折にでも写真を撮らせていただきたいのですが」
K「『ああ、ぜひ撮っていってほしいものだね』」
西谷「もしよかったら、晴れた日の様子を収めた写真などを、こちらで見せていただくことができましたら、そうさせていただきたいのですが。――要するに、館の色んなところで暮らしている人たちの姿とか、改築しているところとかの写真を」
K「『解った。約束しよう』」
西谷「ありがとうございます。――それが結局、館の取材の目玉になるんで」
相原「あとは……兄弟について。典子さんと直人さんのおふたりなんですが――」
K「『ああ、彼らはこの館には現在一緒に暮らしているわけじゃないんだ』」
相原「街のほう?」
K「そうだね。『まあ、私だけだからね、"お爺ちゃん子"は』と言って苦笑い。――『まあ、榮太郎は決して人当たりのいいお爺ちゃんではなかったなぁ。却って、お爺ちゃん子である私のほうが珍しいくらいさ。あのふたりは、どこか恐がっていたふしがあるね。年齢がだいぶ違っていたせいもあるのだろうが』」
相原「ちなみに、六平さんとか尾道さんは、昔からこちらにお勤めで?」
K「『尾道夫婦は父の代からだね。六平執事は祖父の代から。かなり古い人だね』」
相原「いなかったときも、屋敷の管理だけはしていたんですか?」
K「『いや、この館は、父・禄郎の代は放っておかれていたよ』」
相原「ここらへん、土地が広そうなんですが、それを放っておくというのは、ちょっともったいないような気もしないわけじゃないですよねぇ」
K「『そうかな? もったいないかどうかは、その人の感覚だからね。私の父にとっては別に、どうでもよかったんだろう』」
西谷「ちなみに、これは話から外れるかもしれませんが――晶さんのお車は何でしょう?」
K「(笑)お車ですか? なんだろうなぁ。僕、車種に詳しくないからなぁ――。この人はそうだねぇ、国産じゃないだろうな」
西谷「晶さんのお車だけですか? この屋敷に常駐しているのは」
K「そうだねぇ、まあ、車を使わないと麓と行き来できないから、もう一台あるかな」
相原「ところで山道はどのくらい距離があるんですか?」
K「街からこの館まで、半日近くかかっちゃうね」
山形「それが全部土地だったら凄い(笑)」
K「そこまでは(笑)」
相原「ちょっと晶さんに、ご趣味とか訊こう」
K「『まあ、最近はやってないが、昔はよく海外でハンティングをしてみたり』」
相原「さっき、蜂の話をしていましたが」
K「『ああ、そうそう。養蜂でも始めようかと思ってね』」
相原「やっぱり養蜂というと、蜂蜜を採るんですよね?」
K「『蜂蜜が目的というわけじゃないが、何かを育ててみようと思ったんだよ。飼育してみようとね』」
相原「それが蜂というのは、なかなか珍しいですよね。普通は犬とか猫とか」
K「『犬や猫は、飼育という感覚じゃないからな。まあ、面白い趣味だと私は思うがね』――そうだね、そろそろおふたり、<心理学>ロール振ってみてください」
(コロコロ……)
相原「28。成功です」
西谷「29は、成功です」
K「成功したら、そうだね、榮太郎さんがなぜこういう館を造ったのかというくだりとか、今の、なぜ養蜂を始めようと思ったのかというくだり、そこで何か隠してそうな気がする」
相原「なるほど。……では、ありがとうございました、と言って――。展示室のほうで早速写真撮らせてもらってよろしいですか?」
K「『もちろんどうぞ』」
相原「あと、さきほど榮太郎さんの肖像画を見させていただきましたが、あの首に掛かっていたメダルとかも飾ってあるんでしょうか?」
K「『ああ、あのメダルか。祖父が昔よくつけていたが、あれは別段、展示室には。――祖父の遺品の中に入っているかもしれないな』」
相原「そうですか」
K「<心理学>に成功してみると何か判るかもしれないぞ(笑)」
相原「(コロコロ……)成功です」
K「成功したら、明らかに、そのメダルについて何か知っていそうですね」
相原「……じゃあ、早速、展示室のほうに行かしてもらって」
西谷「まあ、さっきのことも、まだ本当のことを何か言ってないよね、っていうことは」
相原「うん。ふたりとも、そういう感じには思っている」
K「――では、展示室へGO! ですね。
――さて、その間、図書室ですが」
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