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Act.7 それではここで密室についての考察を



さて、そもそも『密室』とはなんでしょうか?
辞書的な定義づけを行うならば、それは"侵入不可能、脱出不可能の部屋"のことです。
探偵小説的意味においては、その上さらに部屋の中に他殺死体が転がっていなければなりません。
したがって今回の事件は探偵小説的意味での『密室』の条件を満たしているのです。

― 星の君

(小森健太朗 『ローウェル城の密室』)



「では、尋問から片づけましょう。まあ、カマかけられたしな、ペラペラ喋っちゃおうかな」

山形「お願いします♪ さっきからロール失敗してるし(笑)」

「『これは、ここだけの話にしていただきたいのですが――』」

山形「解った」

「『そうですね、何からお話ししましょうか。――この館が建てられたときのことから話しましょう。
 榮太郎様が鳴風館を建てられたのは、今から二十年前のことでございます。その五年前に奥様を亡くされたショックも大きく、まるで独り山に閉じこもるかのように、このような豪勢な館をお建てになったのです。
 榮太郎様は厭世家、神秘主義者で、人当たりもいいとは言えなかった方で、そうですね、この山の麓に住んでいる方たちからも、あまりいい噂はされませんでした』」

美崎「(ぼそり)神秘主義者だったのか……」

「『榮太郎様は、自室に何日も閉じこもることが多く――その中には私は入ることを許されませんでしたが――』まあ、今は晶さんの寝室となっている場所ですね。『年々、榮太郎様はまるで何かに取り憑かれたかのようにお窶(やつ)れになり、眼光鋭く、口数も少なくなり、それでいながら何らかの、まるで自信に満ちた態度を取るようになっていかれました。
 そして、十五年前の冬の夜、――そう、こんな日でした。礼拝堂に榮太郎様がひとりで閉じこもりになり、そこで――行方不明となってしまったのです』」

美崎「んんぅ?」

「『私が鍵を掛けたわけではないので、恐らく、内側から榮太郎様が鍵を掛けたものと思われます。完全な密室状態でした。室内はまるで嵐が起きたあとのような状態で、そして、榮太郎様は失踪されていたのですが、不思議なことに、榮太郎様の身につけられていた衣服や装身具の類だけが、室内に残されていたのです――』」

琴音「(ぼそり)ああ、どっかで聞いたことがある」

「『――そのあと、禄郎様が遺産を相続されましたが、禄郎様はこの鳴風館に住むことをお嫌いになり、一家揃って街へ引っ越すこととなりました。その禄郎様も五年前に病死され、晶様が当主になられると、再び、鳴風館に移り住むこととなりました』――そんなことがあったんです、十五年前に。『――あのときと、とてもよく状況が似ていて――、そう、あの厭な臭い、あれも同じだったような気がいたします。
 ――これが、私の存じていることの全てでございます』」

山形「本当に全てかどうか、<心理学>ロール」

「どうぞ」

山形「今度こそ! (コロコロ……)――天は我を見捨てた(笑)」

「(笑)でも、まあ、なんとなく、見た目は、肩の重荷が落ちたような表情はしている」

山形「なるほど。信じよう」


(場面転換)


「――さて、そのとき図書室ですが、図書室に入るとですね、中央の机に座っているのが――霜月慶太くん。何かを紙に書きながら話しているのですが、話を聞いているのは逆木原直人くんと、典子さん、滝口かほりさんもいることにしましょう。計四人ですね」

美崎「じゃあ――なに話してるんですかぁ? って言って、ずかずかと近寄っていきますね」

琴音「オロオロしながらついていきます(笑)」

「それでは霜月くんが、『いやあ、僕、実は、ミステリ大好きでして(笑)、今回の事件をミステリ・マニアなりに、ちょっと探偵してみてるんですよ』」

美崎「へえー。どうなるんですか? 面白そう」

「『うーんと、今回は密室殺人ですよね、明らかに』」

美崎「はいはい」

「『密室殺人が起きた場合はですね――、HOW? ではなく、WHY? なんですよ。つまり、どうやって密室を創ったかではなく、なぜ密室が創られたかを考えることが重要なんです』」

美崎「ふんふん。なるほど」

「『そこで色々とリストアップしてみたんですが――』」

美崎「霜月メモが(笑)」

「『ええと、大きく分けて六つの理由があるんですよ』」

琴音「凄ーい(笑)」

「『まずひとつは、自殺に偽装するためですね、密室といえば。しかし今回は明らかに違いますね。首はないですし、明らかに他殺ですから、これは却下ですね。
 ふたつめの理由として、特定の人物を疑わせるためというのがあります。唯一鍵を持っている人物とか。――まあ、状況から、晶さんに注目せざるを得ませんけれども、殺害方法とか頭部隠蔽の謎が残りますから、晶さんなら犯行が可能だったかと言えば、そうでもないですから、晶さんに大きな疑惑の目を向けるまでには至りません。というわけで却下です』」

美崎「うんうん」

「『三番目として、犯罪の立証を妨げるためってのがあります。これは密室の構成の理由としては最も消極的であって、寧ろ首を斬った方法や、それを隠した方法ですね、そちらのほうが大きな謎ですから、これも考察のひとつの観点としては却下されます。
 四番目ですが、密室構成の意図はなかったというもの。偶然に密室ができたんじゃないか、と。しかしあの扉では内側からも外側からも鍵を差し込んで回さないと密室になりませんから、何らかの拍子で偶然に鍵がかかったというのは考えづらいですね。というわけでこれも却下です』」

美崎「ふんふん」

「『五番目が、ただ虚栄心を満足させるために密室にしたんじゃないか』」

美崎「ほほう(笑)。"密室"がやりたいと――」

「『ただ、閉ざされた礼拝堂という、何らかの特殊な"場"を創りたかったのではないか、と。この場合、密室そのものを重視するというよりは、キリスト教に歪んだ愛着ないし憎悪を持っている人ではないかという感じで、あまりこれも重要なものではないですね。
 そして六番目、職業的義務感ですね』」

美崎「"密室"が創りたい人(笑)」 シモツキ・メモ

「『はい。ミステリ作家、ミステリ脚本家、ミステリマニア――』」

相原「犯人はあんたや!(笑)」

「『――あっ! 僕かぁ!』と、頭を抱えた(笑)。『ミステリマニアは僕ぐらいしかいないですよねぇ……』」

相原「やっぱりこいつだ(笑)」

「『あるいはここに、もしかして、名探偵気取りの自作自演をするような人でもいたら別なんですが』」

淀川「はっ! ――淀川だ!(一同笑)」

「『――と、六つの主な理由を挙げてみても判らないんですよね。もしかしたら、七番目の理由があるのかもしれません』」

美崎「ほおお。面白そうに聞いてます」

琴音「晶さんはキリスト教徒じゃないって窺ってましたけど、典子さんとか直人さんとかは?」

「ふたりとも、『いえ、違いますよ』と。『全然、神様は信じてません』」

琴音「じゃあ、あの礼拝堂に行く習慣は、別に――?」

「『――ないですけど、まあ、僕らは普段ここにいるわけじゃないので。もしかしたら、兄にそういう習慣があったかもしれないですけど、でも聞いてはいませんね』」

美崎「直人くんに――、あのおやじ――と言いかけてやめて、佐伯さんって、どんな人だったんですか?」

「『ああ、そうですねえ、ワンマン社長って感じでしょうか。あんまり故人を悪く言うのもなんですけど――。父と仲がよかった方で、大会社の社長ということもあって、結構我の強い、頑固な人だったようですよ。あまり親しくなかったですし、そんなに親しくなろうとも思っていませんでしたけど、僕は』」

美崎「怨みを買ってた、とかってのはないんですか? よくあるじゃないですか、そういうの」

「『まあ、会社の社長さんですからねぇ、敵もそれなりに多いでしょうね』」

美崎「ふんふん。なるほど」


(場面転換)


「――さて、じゃあ、探索組。よろしいでしょうか」

相原西谷淀川「はい」

「では、物置・寝室の方面から――廊下を廻っていきまして、途中はちゃっちゃと省略しましょう。一階は殆ど何も起きませんでしたが、展示室の前の角――応接室の前の角――を曲がった途端にですね、奥の書斎のドアをガチャリと開けて、中へ入っていく人影を見た」

相原「誰ですか」

「黒いコートでオールバックです」

美崎「何ぃ?」

相原「それは――庵さん」

「ですね」

山形「翻訳の仕事で入っていったのかな」

「そうですね、では<幸運>ロールを何となく(笑)」

(コロコロ……)

淀川西谷「失敗です」

相原「成功です。16」

「それでは、たまたま一番最初に角を曲がった相原さんが、全部見てました」

相原「はい」

「ドアの向こう側――書斎の中に、逆木原晶さんが立っていたみたいです。招き入れたって感じですね。――そしてドアはパタリと閉じられた」

相原「ダッシュで走っていって、そこで<聞き耳>(一同笑)」

淀川「なに走ってるんだろう? って、ついて行きます」

西谷「聞き耳やってるのを見て――」

琴音「自分も他人からはああ見えてるんだなぁっと(笑)」

淀川「じゃあ、僕も一緒に(笑)。三人で」

「全員でドアに寄り掛かって、内側にドアごと倒れたりして(笑)」

淀川「三人で<聞き耳>できるんですか?」

「いいですよ」

(コロコロ……)

淀川「ああ、一応成功してる」

相原「成功してる。01です」

美崎「素晴らしく耳がいいですね」

「それでは、晶さんの声が聞こえたぞ。『いやあ、庵くん、よく訳してくれたね。あの書物に書いてあったことは、本当のことだよ』」

<一同>「う〜ん(苦笑)」

「そうすると庵さんが、『はあ、そうですか。それはどうもありがとうございます』と言ってますね。
 すると晶さんが、『そうそう、そういえばこのあいだ、君が言っていた、例の社会性生物の話、あれこそまさに世の常だね』。
 すると庵が、『はあ』って感じで生返事ですね。『そうなんですか。――まあ、確かにあれは、そうですね、蟻や蜂のみならず、多少メタファー的ではありますが、我々人間にも言えることですしね。個人個人では愚かでも、集団になると宇宙まで飛び出す知恵も得るという。――まあ、そんなことはどうでもいいですけれども。よくは解りませんが、お役に立てたのでしたら幸いですね』。
 すると晶さんは、ひとり何かに納得したかのように『はっはっはっ』と小さく笑う」

美崎「んんぅ? すっかり元気ですねぇ」

「そんなとこかな」

淀川「じゃあ、出てきそうになるんですか?」

「まだですね。――『そうそう、今後の仕事の話だがね、まだ続けてくれるね?』と、商談に入った」

淀川「はーん」

「『ええ、もちろん。雇っていただけるのなら』」

淀川「三人ひっついて聞いてる(笑)。フムフム……。やべっ、執事出てこないで!(笑) そろそろ戻ろう。前の教訓」

相原「あんまり関係ない話に入ったら、耳を離して、食堂のほうの探索にでも」

「では、みなさんが角に戻ったぐらいでタイミングよく、執事室のドアが開く(笑)」

淀川「危ない危ない」

「――さて、一階が終わって二階ですが。そうですね、図書室では相変わらず密室について語り合っていますが」

美崎「あ、いいですか? 図書室で、密室に触発されたのか、琴音を呼んで――ちょっと、礼拝堂行ってみない?」

山形「鍵かかってるよ」

美崎「えっ!?」

「現在、鍵がかかっています」

美崎「なんだ、鍵かかってるんだ」

琴音「でも、それは判んないんだよね? だから、とりあえず行ってみよう」

淀川「山形さんは、今、取り調べ中?」

「尋問は終わってますね」

山形「執事の部屋から出てきたところ」

淀川「じゃあ、僕は下りてそっちに向かう」

「山形さんが部屋から出たところに、淀川さんが来た」

山形「何だ? また何かやらかそうとでも思ってんのか?」

淀川「ニュー情報です」

山形「当てにならんな(笑)。でも聞いておこう」

淀川「えっとねぇ、――あ、執事は? 行っちゃいます?」

「そうだね、厨房のほうに行っちゃったね」

淀川「それじゃあ、ぼそぼそっと、晶さんが起きていることを言います」

美崎「もう晶さん気がついたということを」

淀川「さっき話してたことを、こそこそと」

山形「なるほど。――じゃあ、晶氏がいるところに行く」

「書斎ですか?」

淀川「後ろから秘かについていく」

「書斎の前に来ました」

山形「コンコンと叩く」

「叩いた。それじゃあ、ガチャッと開いて、庵さんが顔を出した」

山形「あっ――、えーと、晶さんにお会いしたいのだが」

「ちょっと後ろを振り向いて、頷くと、ドアを開けて、『僕はこれで』と言ってすれ違って立ち去る」

山形「ちょっと、あなたもあとでお話がありますので、と声をかけて、部屋の中に入る」

「入るとですね、パジャマの上にガウンを纏った晶さんが座ってますね」

淀川「僕は入れるんですか? ふ〜ん♪ って普通についていくけど(笑)」

「刑事さんが許可すれば」

山形「新情報をくれたお礼として見逃してやろう、という目つきをする(笑)」

淀川「よしっ! 行ける! と思った」

「では――『ああ、刑事さんですか。何か御用で?』」

山形「前回は助ける側になったが、今回は――みたいな感じで話しかけて、一応、あのときの状況を訊きたいのだが」

「『いや、それが――刑事さんも大変なことでしょうから、私もできるだけのご協力はしたいのだが、なにぶん昨夜の記憶が全くないのだよ』」

山形「記憶がない――」

「『ああ、何も覚えていないんだ』」

山形「どこまで覚えてないのですか?」

「『どこまで? ――うーん、そうだな――ちょっと待ってくれ――』」

山形「カマをかけてみたのだが。"どこから?"じゃなく"どこまで?"と」

「『わたしの父についての思い出話をしたくなって、佐伯社長を部屋に招いたんだ』」

山形「それは、ここですか?」

「そう、ここ。――『そうだな、深夜の十二時ぐらいかな。そして一時間ぐらい話して、そろそろ休もうということになって、佐伯社長が戻っていき、そのあと私は寝て、そして今朝いつものように起きたつもりだったんだ、私は。そうしたら実は、昨夜あんなことが起きていたというじゃないか。ということで驚いているよ』」

山形「その目を見て<心理学>(笑)」

淀川「僕も振ってみていいですか?」

「まあ、どうぞ」

(コロコロ……)

淀川「大失敗(笑)」

山形「ようやく成功した!」

「晶さんは明らかに何かを隠しています。――でも、大した役者ですね」

山形「ああ、なるほどね」

淀川「探偵、判んない。ああ、そうなんだ」

山形「あの状況が、昔と同じ状況だったようだが――? と振ってみるが」

「『昔とは? 何のことでしょう?』」

淀川「かなり直球勝負を」

琴音「なんか、消されそうだよね(笑)」

淀川「いきなり、鍵の所在について訊いてみます。あなたがもう一個持ってるらしいんですけど、今その鍵はどこにあるんですか?」

「『今? ――そこの戸棚の中にあるよ』と、部屋の一角を指差してくれた」

淀川「ちょっと見ていいですか?」

「『私が出すよ』と言って開けて見せてくれた」

淀川「執事のと同じやつですか?」

「そうですね」

淀川「じゃあ、持ってたんだ」

山形「あと何訊こうかな」

淀川「さっきの話訊いちゃ拙いですよね。<聞き耳>したこと(一同笑)」

山形「遠回しにカマかけてみるというのも――そういえば、彼とはどんな話をしてたんですか?」

「『彼?』」

山形「扉の向こうを指す感じで言ってみるけど」

「『ああ、庵くんか。翻訳の仕事や養蜂のアドバイスを頼んでいたからね、そのことの今後について話していたんだよ』」

山形「うーん、なるほど。――こんな事件が起こったのにも関わらず?」

「『いけないかな?』」

山形「動揺の色は見えないか。
 ――そういえば、お爺さんが行方不明になられたときは、あなたはどこにいらっしゃったんですか?」

「『おや? 祖父の行方不明のことはもうご存知なのか』」

山形「はい。そのときの状況とかも。――やっぱ、直球勝負だ(笑)」

「『実は私はそのとき、ここにいなかったものでね。よくは知らないのだよ。――そうだね、執事の六平のほうが詳しいんじゃないか?』」

山形「それは嘘ではなさそう?」

「まあ、何か隠していそう」

淀川「物的証拠が挙がるまで判んないですかね。――一応、あれ訊いてみようかな――、礼拝堂に、何か、穴みたいなのあったんですけど、あれはもともとのものなんですか?」

「『ああ――そうだよ。あれはこの鳴風館の重要な要素のひとつだね。つまり管楽器の穴だよ』」

淀川「穴はあそこだけなんですか?」

「『いや、あそこ以外にも空いているよ、幾つか。まあ、大抵、館の外に向かっているけどね』」

淀川「中にあるのはあそこだけ?」

「『そうだね、あそこだけだね、うん』」

淀川「なるほどねぇ。――穴っていうのは、見て取れるんですか? 外に出てみれば」

「うん。見ては取れるよ」

淀川「見てこようかな。液体みたいなのついてるってことはないかな。――じゃ、ちょっと行ってきます」

西谷「天候は相変わらずでしたっけ?」

「猛吹雪です(笑)」

淀川「あれぇ? そっか、無理だ(笑)」

相原「行ってくるなら止めないよ」

西谷「トラペゾさんが『BROTHER』を観に行ったとき以上の?」

「以上です(笑)。あっというまに積もる」

山形「そういえば、この館の改装した部分っていうのは、どこいらへんですか?」

「まあ、全体的かな。壁を綺麗にしてみたり、床板を張り替えてみたり」

山形「どうカマかけようかなぁ――いい案が浮かばないなぁ。
 あ、そうだ、翻訳させてる内容は、どんなものなんですか?」

「『祖父・榮太郎の遺品の、色々な本ですよ』」

山形「オカルトについて書かれているのも?」

「『そういうのもありますね』」

山形「どんな内容だったんですか?」

「『まあ、遙か昔の西洋における様々な神秘学など』」

山形「興味がおありなんですか?」

「『嫌いじゃないけどね』」

山形「――話を進めたのはいいが、どうカマをかけたらいいかなぁ(笑)」

琴音「晶が何かしたはずだから、晶がボロを出すように?」

山形「うん、何か」

淀川「服装は変わっているんですか? あのときと」

「礼拝堂の中に倒れていたときとですか? そうですね、今は寝間着に着替えてる」

美崎「つまり、それ以前は寝間着ではなかった――?」

「あのときはそうですね」

山形「オカルトについては結構詳しいんですか? 興味がおありで?」

「『興味はあるけど、詳しくはないよ。囓った程度かな』」

山形「榮太郎さんの肖像画に描かれていたペンダントについては、お詳しいんですか?」

「『いやあ、そんな、詳しいわけじゃないよ』」

淀川「お爺さんはいつもあれをつけていたんですか?」

「『そうだね』」

淀川「あれはどこにあるんですか? 今は」

「『今は、祖父の遺品の中に埋もれてると思うよ』」

淀川「遺品は?」

「『遺品は倉庫の中だよ』でも鍵かかってるよ(笑)」

山形「どうも、いい台詞が見つからないので――」

淀川「一時撤退しますか」

山形「撤退です(笑)。するしかないよね」

「戦略的撤退(笑)」

山形「ありがとうございました。何か思い出したことがありましたら、おっしゃってください」

「始終、何か隠しているようでした(笑)。あらゆるコメントに関して」

山形「廊下に出て、隣にいる人に、何か隠しているなぁ、と洩らす」

淀川「どうしようもないっすよ。証拠も何もないんですから。――物的証拠か、何かアクションが起こらないと」

相原「名探偵、こういうときは口先三寸で丸め込まなきゃ」

山形「お前の"めい"は、やっぱり"迷"だな」

「さて、それではその間、他の人たちはどうしているのかしらん」

相原「探索の続きやってます」

美崎「礼拝堂に向かいます」

「では礼拝堂ですが、鍵かかっています」

琴音「あ、鍵かかってる」

美崎「なんだ、入れない」

相原「――と、そこへやってきて、礼拝堂の写真も撮ろうとしているんですが」

「鍵がかかってるみたいですねぇ」

美崎「入れないですよー、って言って」

相原「じゃあ、物置探しましょう」

美崎「どうしよう」

山形「立入禁止の黄色いテープが張ってあるよ。現場保存のため。誰かが鍵を開けて出入りしても、テープが切れるなり位置が変わるなりするから、ちゃんと判る」

美崎「なるほど。うーん、じゃあ、あとはリビングにでも行ってみましょう。暇だねーって言って」

「誰もいませんが、何かやることってありますか?」

琴音「ソファに座ってみる(笑)」

美崎「大変なことになっちゃったねー」

琴音「人間椅子じゃないことを祈る(笑)」

「テレビはあるけどね」

美崎「テレビのチャンネル変えてみたり」

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