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Act.10 ここらでひとつ計略を巡らし攻勢に転じようとする



ご推察の通りです。
それこそが密室トリックなのです。

― 九十九十九

(清涼院流水 『コズミック』)



「もう寝る時刻ですけど」

山形「寝首をかかれないように(笑)」

琴音「毎日毎日こんなことしていて、やばいよね」

相原「まだ外は――」

「まだですね」

美崎「早く帰りたいよ〜」

「天気予報では、『しばらく止まねぇだろー』と言ってた(笑)」

美崎「じゃあ、みんなに電話しないと」

相原「――西谷さんの部屋を捜してみて、ベッドの下とかに怪しいものはありませんよね」

「特には」

相原「ベッドの下に泊まります」

西谷「もう、どうぞご自由に」

琴音「夜這ってるのかと思っちゃうよ(笑)」

「ベッドの下に泊まってください(笑)。まあ、一応下はカーペットですから。
 じゃあ、部屋に帰りましたね、皆さん。それでは、その夜――」

西谷「蛇と蜂、って呟いてなかなか寝つけない」

琴音「可哀想(笑)」

美崎「演技がどんどん身に入っちゃって(笑)」

西谷「もう、やめられなくなってるもん」

「それじゃあねえ、西谷さん」

西谷「はい」

山形「(笑)本物が来た」

「部屋のドアがコンコンと軽く、微かにノックされる」

西谷「はい、と返事をして――」

琴音「(ぼそり)かほりさんかな?」

美崎「うふふ」

西谷「かほりさんだといいなぁ、とワクワクしつつ。スキップしつつぴょんぴょんと」

美崎「凄く普通ですね(笑)」

「どうしますか? ドア開けますか?」

西谷「ドアまで寄ってって、ドアノブに手をかけながら、どちらさまですか?」

「返事はないですね。それで視線を下に落とすと、ドアと床の隙間から折り畳まれた紙切れが。見た瞬間に入ってきたわけじゃなく、既に入れてあったのを見つけた」

西谷「こっちが用件なんだな、と解ったわけですね」

「まあ、解りますね」

西谷「拾って開けて、即座に読みます」

「"礼拝堂に来られたし。――ひとりで"(一同笑)」

西谷「何ぃ〜」

淀川「これ、何時ぐらいの話ですか?」

「もう深夜一時ですね」

淀川「じゃあ、寝てるな」

西谷「それは即刻呼び出しって感じですよね。時間も何もないわけでしょう? 筆跡で誰か判ります?」

「いや、判んないねぇ。まるで定規を使って書いたような」

西谷「うーわ」

淀川「体育館裏へ来い、っていうのに近いな(笑)」

西谷「蜂と蛇の歌を唱いながら(笑)礼拝堂に行ってみようか」

相原「この部屋って、山形さん隣ですよね」

西谷「あ、その手紙を、相原さんの部屋に入れてコンコンと(一同爆笑)」

相原「その部屋にいるんですよ」

西谷「あ、そっか。いるんだ。もうバレてるわけですよね、相原さんには」

山形「うん。ふたりで一緒にいるんだから。
 ――あ! 庵さんの部屋にコンコンと(笑)」

西谷「そうそう。でも庵が招いているんだとしたら元も子もないかな」

山形「いや、庵でいんじゃない?」

西谷「いいなぁ、それしかないなぁ、もう」

山形「庵に行こう! やろう!(笑)」

西谷「手紙を何枚も偽造してみんなの部屋に(一同爆笑)」

美崎「それやるのって、名探偵の役じゃあ」


(長い討論の末、作戦が固まりました)


「ではまず相原さんがひとりで礼拝堂の様子を窺いに行き、下り階段から礼拝堂のドアを見てみると、ドア自体は閉まっています」

相原「じゃあ手振りで西谷に合図を送り、そのままトイレに行くふりをして下におりていきます」

山形「庵作戦、開始(笑)」

西谷「すると角から出て、礼拝堂の前を通り過ぎます」

「はい。通り過ぎることはできました。で、向かいの曲がり角へ。客室Iですね?」

西谷「庵の部屋に同じことをやって、ダッシュで逃げてきて、角から様子を窺います」

「はい。入れてノックして走って、どこまで行くのかな」

西谷「淀川の部屋の角のところまで」

「そうするとですね、五分くらい経ってからかな、庵の部屋がガチャリと開いた。中から、いつもの姿の彼が(笑)。お前、いつもオールバックかよ、みたいなのが」

美崎「形状記憶頭髪なのかもしれない(笑)」

「手に紙切れ持ってるね」

西谷「それを取ったらしいことを確認したら、すぐ階段に隠れる」

「下り階段をおりて、覗くようにして観察しているわけですね。それでは、てくてくとやってきたねぇ。そうだね、<隠れる>2倍ロール」

西谷「(コロコロ……)充分成功です」

「どうやら気づかれてはいないみたいですね。そのまま礼拝堂のドアに手をかけてノブを回した。開く。ドアを押して入って、閉めた」

相原「急いで上がります」

「上がってどこへ行く?」

山形「<聞き耳>? ドアの前にふたりで(笑)」

「ドアに近づくと、カチャリ、と鍵がかかる音がした。<聞き耳>するならしていいですよ」

西谷「しましょう」

(コロコロ……)

相原「13、成功です」

「凄い成功するなぁ」

美崎「本当にこの人たちは、館の写真を撮りに来たんでしょうか(笑)」

「それじゃあねえ、――『まさか君が来るとはね』この声は逆木原晶のものですよ」

琴音「ですよねぇ」

「『だいたい、ことの次第は解ったよ』と言って。庵はずっと黙ってるみたいですね。――『さて、これからどうしたものかな。……君はどうしたらいいと思う?』――で、しばらくしーんとしてますね」

西谷「こっちも聞き続ける以外ないですね。"まさか君が来るとはね"ということは、晶と庵の関係も、こっちが思っているように単純に仲間同士じゃなかったかもしれないし」

「『どうやら今日の客の中に、すこぶる勘のいい男が混じっていたようだ』(一同笑)『このまま例の儀式は続けていけないだろう』」

西谷「例の儀式? ――やっぱり蜂と蛇の――」

相原「それはいいから(笑)」

「『何とか彼を誘い出せないものかな。何かいい知恵はないか、庵くん?』」

西谷「これはもう、黙って聞き続けますね」

「すると庵は『さて僕には何とも。どうぞご勝手に』」

美崎「そうか。庵はまともな昆虫写真家じゃないのか」

山形「我関せず、って感じ」

「『そろそろ僕はこれでおいとましたいと思いますが』」

相原「それを聞いた瞬間に、早速もとの部屋に戻ろうとしますが。こっちは」

西谷「戻りますね、やっぱり。とりあえず、一日何もなかったようにしらを切りとおして」

「『それでは私も、こちらから帰ろうか』」

西谷「"こちら"から帰る? 何ぃ?」

山形「やっぱり、隠しナントカがあるんだ」

「――と言ってですね、じゃあ、おふたりが立ち去って客室Gの前の角を曲がったぐらいかな、礼拝堂のドアがカチャリと開いた」

西谷「はいはい」

「ちらっと覗くと、庵だけが出てきて、奥の自分の部屋に戻っていきますね」

相原「やはり、出てっていけるのは晶の部屋だね。晶の部屋とどこかで繋がってるんだ」

「他に誰かが出てくる様子はないです」

相原「開けたまま?」

「ドア自体は閉じてあるけど、鍵はかかったかどうかは、ちょっとここからじゃあ」

西谷「帰って寝ますね」

相原「ええっ!?」

西谷「晶の部屋に通じる道を、礼拝堂に入って調べるってこと?」

相原「――でも今だと厳しいな。はっはっはっ、待ってたよ、なんて言われた日にゃ困るなぁ(笑)」

淀川「蛇みたいになるんじゃないんですか? にょろにょろ……」

美崎「なーんてね♪」

相原「あ、何となくそんな気がしてきた」

美崎「キャラクターはそんなこと考えないですけどね」

西谷「ちょっと調べたいことがあるから、黙って寝ますね」

相原「また西谷の部屋に行って、今度はベッドの上に寝てるかな」

「はい、解った」


(やがて夜は明けていきました)


「特別なアクションを起こす方が特にいないなら、今日一日終わらせるつもりですので(時間がないよー)」

西谷「あ、電話だけ。カズ兄ぃに、佐伯の仕事のトラブルの相手と内容と、解決したときのいきさつについて。地元でとうだったかってのを聞いたうえで、晶に対して言えるネタを探りたい」

相原「こちらは、山形さんに、礼拝堂について徹底的な捜査をお願いしますというか、させてくださいと」

美崎「とりあえず、ロッジの友達に、――なんか、まだ帰れないよ、ぶう! って電話しますね(笑)」

相原「刑事に報告します。昨日あった事柄を」

「佐伯さんの仕事のトラブル関係ですが、やっぱり星の数ほどあって、特定はできないですね。まあ、逆木原さんとのトラブルとかは、特にないですね」

西谷「逆木原とのトラブルがないんだったら、結局、何で消されたのかはよく判んない」

山形「儀式のために? ――"本当だった"って言ってたから、実験するためにただ単に手近な人間をやった可能性もある」

淀川「警察はいつぐらいに来るんですか?」

「まだ」

山形「どうせ来ないでしょ(笑)」

「あと他に何かする人は?(いませんよーに)」

山形「押収――できるのかな」

琴音「何を押収するんですか?」

山形「魔道書。あれも押さえときたい」

琴音「どこにあるんですか?」

相原「庵が持ってた魔道書」

美崎「魔道書かどうか判んないですけどねぇ」

山形「判んないけど。一応、何らかの形でそれが事件と関わりがあると――」

琴音「そんなオカルトチックな(笑)」

相原「いや、みんなの所有物を一度押収するという形で、返却する際にどさくさ紛れに取ってしまう」

美崎「うわあ」

琴音「何のために?」

山形「押収できないでしょう、それは」

相原「凶器を探しているという名目で。無能な警官のふりだね、完全に」

淀川「でも今警官ひとりだけだから、断固として反対されたらどうするんですか?」

琴音「しかも、客人として来ているだけだから」

美崎「大きな行動は取れないですね。そんなに権力があるかどうか。この屋敷の中で」

琴音「ところで、どうして庵の魔道書が怪しくなったの?」

西谷「全員の物を押収する理由を作るよりも、庵のだけを押収するほうが簡単だな(笑)」

美崎「――美崎は、滝口のところに遊びに行ってもいいでしょうか? 暇なんで」

「はいどうぞ」

美崎「遊びに行って、大変ですよねぇ、みたいな話を。――そういえば滝口さんって、逆木原さんのお兄さんのほうと知り合いなんですよね? と言って、昔の話などを。ロマンスはあったの? みたいな感じで」

「『私の映画の配給の関係で晶さんの仕事と関わりがあって、そのときに友達になって』みたいな、そういう関係ですね」

美崎「じゃあ、映画関係で今流行りの俳優さんと知り合いになったりするんですよねぇ、みたいなミーハーな話をひとしきりして帰ります」

山形「――押収する理由が見つからないよねぇ。それを読めば、何らかの情報が得られるとは思うんだけど。何の儀式をしているのか、っていうのが」

琴音「それは庵の魔道書じゃなくて、祖父の魔道書じゃないの?」

美崎「そうですね、庵が持ってたわけではなく」

相原「祖父の榮太郎さんが持っていたのを庵さんに翻訳させてましたよね? その本についての儀式をやってるような気がするので――」

琴音「気がするから(笑)」

相原「いや、こちらとしてはそれが本心だから、こじつけて押収するような理屈を考えなきゃいけない」

山形「でもそれが見つからないのよ、今。押収する理由が」

西谷「押収じゃなくてもいいんじゃないの? 単純に、榮太郎さんの本を私にも見せていただきたいと。それを断る理由が晶に特別あるとは思えない。庵が断るのは、自分の持ち物じゃないから解るけど」

山形「何か書いてあると思うんだよね、この儀式っていうやつについて」

美崎「庵は全然関係ないと思うんですが」

琴音「私もそう思うんですけど」

山形「庵が持ってる本が関係あるんであって、庵は犯人じゃないから」

美崎「確かにそうですけど……」

山形「庵が持ってる、お爺さんの本を見たいのよ」

西谷「方法としては単純に、押収とかいうこと抜きに、貸してと晶さんに頼めばいいだけの話なんじゃないんですか?」

美崎「そう思うんですが。小難しい手を使わなくても」

相原「じゃあ、晶さんに頼んできます?」

美崎「貸してくれるんではないでしょうかねぇ」

相原「山形さん、お願いします」

山形「――そういう理由らしい(笑)」

「それじゃあ、現在庵が所有している書物ですね? それを貸してと晶に言う」

山形「その適当な理由はどうしようか?」

淀川「何か熱心に調べてるのが見たいんですけど、っていうのでいいんじゃないですか? それで見せてくれないんだったら、何で? ってことになる」

山形「見してちょーん(笑)」

「じゃあ、晶さんは、『どうしてあの本に興味を?』」

山形「この事件がオカルトチックな(笑)――誰かその内容を知っている者が、それを模倣してという事件が起こっているような気がするから」

「『あれは"魔女の槌"だったかな、確か。まあ、別に構わないが。しかし祖父の遺品だから、大事に扱ってくれたまえ』」

山形「それはもちろん、と言って」

「『それなら、庵くんにも私から話しておこう』とは言ってくれた」

山形「じゃあ、庵くんのところに行った」

「で、庵さんは『そういうことでしたら、どうぞ』」

山形「じゃあ、借りるよ、と言って。サロンへ行って、三人で見る。私は英語が解らないので扉のところに立って、誰かが扉の向こうにいないかを監視しつつ、ふたり(相原&西谷)に訳してもらう」

「はい、<英語>ロールどうぞ」

(コロコロ……)

相原「成功です」

西谷「失敗した」

「『魔女の槌』オカルト本ですね。まあ、何でしょう、特にこの事件に関する手掛かりはないですよ」

西谷「本そのものにも――」

「別に仕掛けはないですよ。ただ、そうですね、一日かけて色々学んだので、<オカルト>+01%あげます」

相原「まただ(笑)」

美崎「ちまりとした成長(笑)」

琴音「実験してみるぐらいだったら、もう訳し終えてるんじゃないかと思うのは私だけ?」

美崎「今訳しているのは別に何も関係ない」

相原「儀式というキーワードを見ていってるんですが」

「ないですよ。手掛かりは」

美崎「何もないまんま、この日も過ぎちゃうんですかねぇ」

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