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Act.1 まずは館が雪に閉ざされる



さて、密室殺人ですが、
ここで重要なのはHOW?ではなくWHY?です。
つまりどうやって密室を創ったかではなく、
なぜ密室が創られたかです。

― メルカトル鮎

(麻耶雄嵩 『翼ある闇』)



キーパー(以下、K)「さてそれでは、現在12月23日。導入部分はですね、いきなり、ある館に皆さんが向かっているところからになります。
 さて誰から始めようかな――じゃあ、ジャーナリストですね」

相原西谷「はい」

「ふたりはコンビという扱いでいいですか? どっちが主導権かな?」

西谷「主導権はどちらかというと、相原さんでしょうね」

「じゃあ、相原さんのところにですね、上司から仕事の話が来ます。
 ――鳴兎子(なうね)の北に妻守山(さいがみやま)という山があるんですが、その山奥に豪邸を構えている、逆木原(さかきばら)家というのがありまして、そこの逆木原晶さんという人が現在の当主なんです。館自体はだいぶ前に建てられたものの、代が変わったりして最近まで住み着かなくなっていて、現在の晶さんの代になってからそこに住むようになって、大幅な改装をおこなったらしいんですね。その改装が終わって、落成パーティーというか、そういったものを身内で催すらしいんですよ。それで、うちの社から取材を申し込んだところ許可が出たので、それに行ってくれないかと」

相原「ああ、なるほど」

「まあ、適当に豪邸の写真を撮るなりパーティーの様子を取材するなり、逆木原晶氏に踏み込んだ質問をしてもいいですし、新進気鋭の女流映画作家・滝口かほりさんも呼ばれているらしいですし」

西谷「あ、これは取材しないと」

「あと、鳴兎子で一、二を争う大会社の社長・佐伯道敏という方も呼ばれているらしい」

相原「招待客の名簿ぐらいは手に入れてますね? 既に」

「そうですね。それで、もう向かっちゃってていいですね。どっちか車の運転できますか?」

相原「(ふたりとも)免許持ってますね」

西谷「レンタカーか、あるいは会社の車か」

「さて、そんな感じで館に向かい――ちなみに、館の名前は"鳴風館(めいふうかん)"といいます。
 じゃあ、おふたりで車で向かっているということで。――山道でしてね、逆木原邸以外には民家なんて殆どないらしく、ほぼ私道のような、狭くて悪い道を行くうえに、雪もだいぶ降ってきて、予報によると積もるらしいですね」

相原「最悪だ」

西谷「あいやー。こんなことになるんじゃないかと思ったから四駆借りてこようって言ったじゃないですかー! ――こっち(相原)を見ないで言う(笑)」

琴音「気が弱い(笑)」

「ちなみにパーティーは、24日夜からおこなわれます」

琴音「クリスマス・イヴなのにそんなことするなんて、寂しいな」

「で、23日のうちにお客さんが集まって、という段取りですね。この予定ですと、23日の夕方頃に着きますね。
 ――と、それは置いておいて、次は刑事にしようかな。じゃあ、山形さんは――」

山形「はいはい」

「現在休暇を取っていまして、というのも、逆木原晶さんに招待されていることにしましょう」

山形「どういう関係?」

「やはり、鳴兎子で以前に何らかの事件が起こったときにお世話になったということでしょう。逆木原晶さんは大富豪なんですが、親の代からそのまま引き継いでいるたくさんの会社を経営しているんですが、まあ、色々持ってるんですね。それで権利関係でトラブルがあって、刑事事件にまで発展したことがあって」

山形「解決してあげたっていう感じ?」

「そうですね。晶さんはもちろん被害者の立場で。悪い人じゃなかったですね。
 ――そのとき、だいぶお世話になったんで、今回もしよろしかったら来てはいただけないでしょうか、みたいな招待状を貰いました」

山形「なるほど」

「予定としては、23日夕方頃にお越しいただければ。パーティーは24日から」

山形「じゃあ、参りますということで、車を運転しつつ」

「そうですね、夕方頃に着く感じで。状況としては同じですね。雪が降ってきて、うわ、これ帰れるかな? って感じですね」

山形「四駆ですから(笑)」

「いやあ、四駆でもちょっとこれはなぁ(笑)(意地でも帰さない)」

山形「ああ、なるほど」


(場面転換)


「――さて、学生三人組ですが」

美崎「学生三人組です」

琴音「鳴兎子出身の人は、逆木原さんの一般的な情報みたいなのは知ってるんでしょうか?」

西谷「地元の有名人ということですよね」

「<知識>に成功した人は知ってていいです」

美崎「あ、でも、こいつ知らなさそう。知らないです」

琴音「(コロコロ……)思い出せなかった」

淀川「(コロコロ……)余裕で知らないぜ(笑)」

「探偵なのに(笑)」

淀川「知らないことばっか(笑)」

美崎「最近デビューしたてなんですね」

「お三人方には、"招かれざる客"となってもらいましょう」

<三人>「はい」

「えーと、クリスマスへ向けての休みを利用しまして、みんなでサークルのメンバー、友達などを集って、大学の仲間で妻守山にスキーに来ていました」

美崎「来ました」

「ところが三人で――いい穴場の坂があるんだよ、みたいな情報を得て」

琴音「ああ、スキー場で」

美崎「滑りやすそうな、誰も来ない」

「そうそう。それで、じゃあ行ってみようかなと行ったら、見事に道に迷ってしまいました(笑)。陽も落ちてきて、ああどうしよう、雪が激しくなってきたな、視界が悪いな、このままじゃあマジで死ぬんじゃないか、という」

相原「そういうのマジでありますからね。一回やりましたからね、本当に(笑)」

「というわけで山の中を彷徨い」

琴音「貴子ちゃん、どうする?」

美崎「(コロコロ……)今、<アイデア>ロールに成功して、本当に死ぬんじゃないかと想像力が働いてるんで、無口になってます(笑)」

淀川「どうしようかな。荷物持たされてるんですかね、僕は」

琴音「でも、スキーだから、せいぜい、ちょっとしたものくらい」

淀川「一生懸命、誰が悪いのか考えています(笑)」

美崎「じゃあ、そんなところに、――あんたがちゃんと道を確かめないから駄目なのよ! と」

西谷「ブレア・ウィッチの学生みたいだな……(一同笑)」

淀川「僕じゃないよ! 誘ったのは」

琴音「淀川くん責めても道が出てくるわけじゃなし」

淀川「ちょっと待ってください。僕が誘ったんですか? もしかして」

美崎「あんたでしょう!? ――と、こっちが誘ったけどそういうことにしておいて(笑)」

琴音「とりあえず、ちょっとキョロキョロしてみますが。雪? 雪?」

「そうですね。360度同じ風景です」

琴音「かなり下ってきてるんですよね? 歩いてまた来たところに戻ろう、とかいうのは大変?」

美崎「上も解んないし、下も解んないし?」

「現在位置が全然解らんという状況ですね。視界も効かないです」

淀川「吹雪いてんですか、今?」

「吹雪いてます。しかも陽も落ちてきています。死にます」

山形「死にます(笑)」

西谷「断言してる」

琴音「(1D6コロコロ……)ポケットに五個だけチョコレートが」

美崎「ああっ!(笑)」

「三つだけって、嘘をつく(笑)」

美崎「とりあえず下りようよ、と言います」

琴音「下りようよって、このまま?」

美崎「だって、ここでこんなことしてても駄目じゃん。死にたくないよー」

「というわけで、しばらく迷っていてください」

美崎「はうぅ!」


(場面転換)


「それじゃあ、ジャーナリストふたり組と刑事。面倒臭いので同時にやっちゃいましょう。
 西谷さん、相原さん、山形さん。えーと、二台の車が、時を同じくして道の前後に並びまして、狭い道を行くという感じですね。お互いの車の中では、向こうの車の人も恐らく――」

西谷「行き先は同じだろう、と」

「で、だんだん吹雪いてきました。さて、しばらく経つと陽が落ちる瞬間くらいの時刻に、目指す鳴風館が見えてきました。山の中の崖の上に(笑)」

相原「崖の上!?(笑)」

美崎「怪しいなぁ(笑)」

相原「写真を一枚撮っておきました。パシッ」

「ぽつんと建つ、荘厳な二階建ての駒形切妻屋根(笑)。早くも雪を纏って美しいですねぇ」

西谷「くそう、アレとアレとアレを読んでから来ればよかった」

「何だろう(笑)」

西谷「アレとアレとアレです」

美崎「"館もの"ですか」

相原「でもこういうときって、館の図面欲しくなりますよね(笑)」

美崎「どうかなぁ……トラペゾさん用意してますか?」

山形「館の図(笑)」

「いやぁ。そういうのはねぇ。面倒臭いからねぇ(笑)。
 ――ええと、さてさて、お三人さんが着いたところで、館の様子ですが、敷地はかなり広くて、駐車場もだいぶ整備されていますね。既に三台、四台、……いっぱい停まっています。来客のもあれば家の人のもあると」

西谷「誘導とかされちゃうんですか?」

「いや、されないです。もう、勝手に停めちゃってください。
 えー、館のポーチへと続く道を、中年の小柄な男性が雪かきしていますねぇ」

相原「適当に停めて、館の中に入りましょう」

西谷「ぶつけると面倒臭そうな車ばっかりだなー。こんな山道にジャガーなんかで登って来るな!(一同笑)」

「うん。実際、高そうなのが並んでいますよ」

相原「ベンツもありますかね」

西谷「あるでしょう」

美崎「滝口かほりさんとかって、ジャガーとか乗ってそうですよね」

西谷「新しいセルシオとか乗ってやがる。くそう、10円玉持ってくりゃよかった(一同笑)」

「車から降りて荷物持って玄関へ向かうとですね、雪かきしていた中年男が振り向きまして、『あっ、貴方たちも、招待されたお客さん?』なんて気さくに声をかけてきます」

相原「ええ、取材を許可された者です。と言って」

「『ああ! 記者さんね?』」

相原「はい。よろしくお願いします」

「『聞いてるよ、聞いてるよ』なんて気さくに。四十代半ばぐらいの、おっさんですね」

山形「以前事件に関わったんなら、このおっつぁんのこと知ってんの?」

「この人は知らないですね」

山形「知らないのか」

「『私は、ここの使用人してます、尾道って言います。どうもよろしく』」

相原「よろしくお願いします」

「『今、執事さん呼んできますね』と、てくてくと玄関へ」

西谷「執事がいるということは、相当に旧態依然――と言って悪ければ、古風な大金持ちの一族だな」

相原「やっぱり使用人のひとりやふたりは必要だろう」

西谷「確かにねぇ」

「と言いながら三人で玄関までついていき、尾道さんがドアをガチャリと開けると、まるで待ち構えていたかのようにモーニング姿のロマンスグレイの執事が(笑)」

西谷「おお、渋い。執事の鑑のような(笑)」

「ぺこりと頭を下げ、『お待ちしておりました。わたくし、当家執事の六平と申します』」

相原「『FOCUS』の記者、相原です。と名刺を渡します」

「『これはご丁寧に』」

西谷「下っ端の西谷です(笑)」

「『よろしくお願い致します』」

山形「ところで、私もこっちにいるの?」

「はい、三人で」

山形「玄関にいるわけだ。じゃ、その前に西谷に、なぜお前がここにいるんだ? と」

西谷「あ、そう言えば(笑)。――何やってるんですか? こんなところで」

山形「いや、俺は招待されたんだ」

相原「お知り合いですか?」

西谷「まあ、ちょっとした知り合いですよ。さんざんお世話になってまして、こっちは。お世話もしてるけどね、みたいな(笑)」

山形「借りのほうが多いような少ないような」

西谷「それはお互い様じゃないですか」

「さて、それではいいですか? じゃあ、六平さんがですね、『それではお客様、とりあえず、二階のサロンにて、皆様お待ちです』」

山形「もう来てるのね、みんな」

「『そうですね。お客様たちで最後ですね。ですが他のお客様たちも、つい先ほど到着されたばかりですので』」

西谷「とりあえず玄関で雪なんかを叩き落として、上がるわけですね」

「玄関は、大きなホールになっていまして、すぐに上り階段があって、二階は吹き抜けになっています」

西谷「当然、洋館ですよね。靴履いたまま入っていいんですね」

「洋館です」

相原「ついでに訊きたいんですが、ここは何階建てですか?」

「二階建てです。見た目は」

相原「見た目(笑)? ていうことは本当は四階まであるとか(笑)」 

西谷「屋根の内側が実は斜めになっていてとか、そういうことかもしんない」

美崎「不吉な婆ぁが(笑)」

西谷「でっかい鼠が(笑)」

美崎「数学者の若者、大混乱」

「――で、二階へ案内されます。二階の一角がですね、大きな部屋になっていまして、そこに通されますよ。サロンというかサンルームというか、外側の壁が総ガラス張りになっていて」

西谷「おおっ。崖に面しているから、結構そばに寄ってみたりするとドキドキしちゃいそうですね」

「絶景ですね」

相原「今は視界が悪くて見えないと思うんですけど、もし晴れてるとしたら湖とかは見えるんですかね」

「ですね、これは。遠くに湖が見えますな、こりゃあ」

西谷「こりゃあ、晴れてりゃ、さぞかし壮観でしょうねぇ」

相原「晴れてれば写真撮りたかったなぁ、と思いつつ」

「で、このサロンなんですが、ソファがありテーブルがあり、暖炉があり、高そうな調度品があり」

山形「高そうな(笑)」

「高そうな。高級な(貧相な語彙力)。――そうですね、先客がいますね。えーと、禿頭で恰幅のいい、眼鏡をかけた中年の男。まあ、紹介されたことにしましょう。『こちら、佐伯様でございます』」

相原「よろしくお願いします」

山形「会社社長?」

「うん。『おう!』って感じで、軽く頷きました」

相原「名刺、一応渡しときますけどね」

「それを一瞥して、別に大した興味も示さずに、そのまま仕舞った」

西谷「その様を横目で見つつ、渡さない、みたいな(笑)」

相原「こういう場合は、とりあえず顔売っとくのがアレだからね(笑)」

「そうですね、まあ、傲岸不遜なイメージは受けますね」

相原「なるほど」

「それともうひとり、女性がいますね。『こちらは、滝口かほり様です』――最近撮った映画は何だろうなぁ……。まあ、結構、評価の高い――」

琴音「(ぼそり)『SISTER』(一同笑)」

美崎「どんな映画なんだろうな、『シスター』って(笑)」

「独特の暴力描写が大評判(笑)」

山形「どんなだ?(笑)」

西谷「西谷はファンだったりするかもしんないな」

「彼女は三十代半ばとはいっても、結構若く見えて、でも、やはり大人の女の魅力はありますね。髪はアップにしてて、薄いブルーの眼鏡をかけてたりしますね。理知的そうな顔で」

相原「まあ、会った人には必ず名刺を渡しながら」

西谷「西谷は、相原さんより先に、滝口に名刺を渡しに行きます(一同笑)。ファンです、とかいうのが喉まで出かかっているのを堪えつつ」

山形「ファンなんだ(笑)」

西谷「そう。『SISTER』ってタイトルを聞いたときに思い出した。脱兎のごとく駆け寄って行って。これはもう、今回の取材は決まったなぁ! とか、完全に喜んでいる。ひとりで」

「それじゃあ、名刺渡されて、『あ、記者さんなんですか?』と。割と人当たりはいい人のようです」

西谷「前に取材したことあるんですけど、たぶん、滝口さん、お忘れでしょうねぇ、とか言いつつ、自嘲的に名刺を渡してみたり」

「『ごめんなさいねぇ、最近取材ばっかりで』」

美崎「おお、売れっ子だ」

「さて、それでは、貴方たちが揃って、色々と自己紹介などもし終わったころに、ドアを開けて誰かが入ってきた。
 六平さんが、『あ、こちら、様と霜月様でございます』と紹介される。どちらも若い青年ですね。庵さんのほうは、黒ずくめですねぇ。眼鏡かけて、オールバックだったりしますね」

山形「(キーパーを見て爆笑)」

「(眼鏡を押し上げ、オールバックを撫でつけ、黒のジャケットの襟を正しつつ)――何か?」

西谷「西谷はたぶん、滝口より昆虫写真家のほうが好きなんだな。映画よりも昆虫写真。――前を上回るスピードで走っていく」

「霜月さんは、割とラフな格好で、愛嬌のある顔をしている青年ですね。あんまり金は持ってなさそうですね(笑)」

美崎「なるほど」

西谷「パーティーなんですけど、正装で――?」

「あ、そういうのはいいみたいですよ」

西谷「そういうわけじゃないんですね」

相原「でも、正装に近い服は着てますけどね」

琴音「(ぼそり)スキーウェア(笑)」

美崎「スキーウェアですよ。どうしましょう(笑)」

琴音「こんなこともあろうかと――(笑)」

西谷「霜月だけ、服装的にはちょっと浮いてるようなんでしょうか?」

「ああ、そうですね。この人だけは。でもまあ、庵さんも、割とラフではありますね。ジャケットは着てますけど。
 ――で、寄って行って、名刺ですか?(笑)」

西谷「あ、そうそう。やります」

「それじゃあ、霜月くんはですね、愛想よく『あ、どうもどうも(笑)』なんて。『僕だけ浮いちゃってるんですよね(笑)』みたいなことを自ら(笑)」

西谷「いやいや、僕らもネクタイ締めてるだけで、中身一緒ですよぉ」

相原「年齢は大して変わんないんで」

「『直人くんの友達ってだけで呼ばれちゃって、それはありがたいんですけど、気まずいと言えば気まずいですね』」

西谷「でもこんなもん、楽しんだもん勝ちだから」

山形「――椅子はあるんですか?」

「ありますよ」

山形「座ってます」

「座ってください。
 ――庵さんのほうは、あまり愛想よくないですね。なんか、『どうも』って感じで軽く頭を下げて、それっきりですね。目を合わそうともしない」

西谷「そうすると、ちょっと残念だな、西谷は」

相原「とりあえず、そちらにも名刺渡しておきますんで、よろしく」

「ああ、はい。――それでは――、スキー客のほうに場面を移そう(笑)」


(場面転換)


「ごぉぉぉぉぉぉ(笑)」

琴音「陽が暮れちゃったね(笑)」

山形「零下まで下がってますもん(笑)」

美崎「どうしよう、琴音ちゃん」

琴音「とりあえずチョコレートを出す(一同笑)」

美崎「ありがとう!」

相原「何か違う(笑)」

美崎「美味しいよ! とか言ってパクパク食べる(一同笑)」

琴音「どんどん下っては来たけれど……」

「じゃあ、皆さん、戯れに<ナビゲート>技能なんか振ってみてください」

(コロコロ……)

<三人>「失敗」

琴音「ウロウロ……」

美崎「こっちよ、こっち! とか言って(笑)」

琴音「貴子ちゃんがそう言うんなら……」

「じゃあ、変な方向にどんどんどんどん進んでいくとですね、もうすっかり陽も落ちて暗くなった雪景色の向こうに、微かに明かりが!」

美崎「おっ! こっち合ってたじゃない!(一同笑)」

琴音「ホントだぁ(笑)」

相原「ある意味、合ってたかもしれない」

「ああ、これで元のロッジに戻れた――」

琴音「やれやれ」

「――と思ったら、見慣れぬ館!」

美崎「ああっ! 何、ここ!?(一同笑)」

淀川「そっちだって言ったじゃないか!」

琴音「ここどこ?」

美崎「全然解んない」

西谷「今ちょっと、スティーブン・キングの『シャイニング』のような」

淀川「でも車とか、停まってるんですよね?」

「停まってます。さっき言ったように、二階建ての荘厳な館が崖の上に建っていまして」

琴音「崖から落ちなくてよかったね、私たち」

美崎「ホントだよね、もう、淀川! あんたがちゃんとチェックしとかないから駄目なのよ!」

「車が何台も停まっていて、各窓から明かりが漏れています」

琴音「よかった、人がいるみたい」

淀川「五メーターぐらい下がって、いじけてよう」

琴音「淀川くんも早く行きましょうよ。人がいるみたいよ、何か」

「二階に、やたらガラス張りの部屋がありまして、」

琴音「キラキラ光ってる(笑)」

「その中で談笑している人たちのシルエットが(笑)」

美崎「あ、誰かいる! 誰かいる!」

琴音「ハイソな人たちが。――こんなところにこんなのがあるって、知ってた?」

美崎「全然知らない」

「周りの半径数十キロぐらいは人が住んでいなさそうな雰囲気ではある」

美崎「なんか、きっと凄いお金持ちなんだろうねー」

琴音「こんなんで場違いじゃないかしら。迷っちゃったって言えば、泊めてもらえるかしら」

美崎「電話借りよう、電話。電話借りて、みんなに連絡しようよ」

琴音「貴子ちゃん、ケイタイ持ってないの?」

美崎「あ、そうだ! 今やっと思い出して、ケイタイでかけてみますね」

「ここは圏外ですね」

美崎「ちぇっ、アンテナ立ってないよ!」

琴音「駄目だったのね。うーん、淀川くんは何かないの?」

淀川「僕は、双眼鏡があります(一同笑)」

琴音「雪じゃ見えない。じゃ、とりあえず、あそこのお屋敷に――」

淀川「あ、縦笛もあります(一同笑)」

美崎「そんな役に立たないもん、どうすんのよ!」

「ピーッって呼ぶの?」

淀川「縦笛吹いてみます。<芸術:縦笛>05%――えいっ(コロコロ……)おおっ、凄い音が鳴った(失敗)」

山形「あ、雪崩が起きる(一同笑)」

美崎「ちゃんとお酒飲んで、呪文唱えてから吹かないと(笑)」

山形「密造酒?(笑)」

琴音「――じゃあ、とりあえず、ノックノック」

淀川「いないんですか、人は?」

「いないですね」

美崎「――ノックしないで、ずかずか入ります(笑)。ガチャって開けて、中見て、ふんふんと」

「ガチャって開けると、ああ、暖かいなぁ、中は(笑)」

淀川「入ろ入ろ(笑)」

「広い玄関ホールで、誰もいませんね」

琴音「いいのかな、入っちゃって」

美崎「入っちゃっていいよ。上に人いるし」

淀川「すみません、鳴らすものないんですか?」

「ああ、ノッカーはありますね」

淀川「じゃあ、やってみます」

「ゴンゴ〜ン。――それじゃあ、それが二階まで響きまして、それを耳にした六平執事が、『失礼いたします』と、ひとこと言って出ます。
 ――それで、そうですね、二階へ続く階段から、モーニング姿・ロマンスグレイの執事さんらしい人が――」

美崎「凄いよ、凄いよ、執事だよ、あれ! 映画みたいだよね」

琴音「『風とともに去りぬ』みたいな」

「――下りてきました。で、きみたち三人の姿を見て、ちょっとびっくりしたみたいですね」

美崎「じゃあ、あれですね、――あのぅ、あたしたち、道に迷っちゃったんですけどぉ、というよなことを、大きな声で。電話貸してほしいんですけどー」

「六平は『それは災難でしたね。少々お待ちください、こちらで』と言って、一階奥の廊下へと消えていきますね。で、しばらくして戻ってきて、『どうぞ、お電話をご利用ください』と言って、応接間に入れてくれる」

美崎「じゃあ、行きます。スキー靴ガチャガチャ言わせながら(笑)」

琴音「わーい。がっちゃんがっちゃん」

淀川「誰か、ロッジの電話番号とか控えてるんですか?(笑)」

琴音「――でも、友達のケイタイなら」

美崎「そうですね。ではメモリを見て」

「では応接間にある電話を借りて――」

美崎「友達のケイタイに電話」

「それじゃあねぇ――、『貴子、何やってんのよー! どこ行っちゃってるの!?』」

美崎「何か、迷っちゃってね、淀川がね、道ぜんぜん解んなくってね、もう大変だったんだから!(一同笑)」

「『え? 何? 淀川とふたりなの、今?』(一同爆笑)」

美崎「違う違う!! そんなわけないじゃない!! ――大声で否定しますね(笑)」

淀川「何話してるんだろう、って思いながら」

美崎「いくら男いないからって、あんなの襲うはずないでしょ!」

淀川「ちょと<聞き耳>していいですか?(笑)」

美崎「琴音ちゃんも一緒だよー!」

「『なーんだ、そうなんだ』」

西谷「琴音ちゃんの趣味がおかしくなったんだ(一同笑)」

「『今どこだって?』」

美崎「今、なんかね、変な、おっきなお屋敷って言うか、凄い大きな家ん中」

琴音「凄いお金持ちそうなんだよ〜」

「『よく解んないけど、とりあえず無事なんだね?』」

美崎「大丈夫、大丈夫」

「『で、帰って来れんの?』」

美崎「帰って来れる――かな(笑)。ぜんぜん場所とか解んないんだけどね。ああ、帰れないね、どうしよう」

琴音「応接室に窓とかって、ありますか?」

「ありますよ」

琴音「外は――見えますか?」

「外は、暗いですね」

淀川「執事さんは、どっか行っちゃったんですか?」

「部屋の入口で待っててくれますね」

淀川「タッタッタッ――。ここはどこですか!?(一同笑)――重要なこと訊くの忘れてた。こいつ一応、探偵なんだよな(笑)」

「まあ、妻守山中腹。スキー場からは四キロほど離れたところですかね」

淀川「直線距離で?」

「うん」

美崎「ちょっとずつ下がりながら、こっち方面に来ちゃったのかな」

淀川「帰るのは難しいですか」

「『この天候ですからねぇ、ちょっと』」

淀川「じゃあ――ここに泊めてもらえるんですか? もらえるんですね?(笑)」

「『少々お待ちください』と言って、執事はまた廊下の奥へ」

淀川「微妙な説得を試みてみました(笑)。というわけで、泊めてもらえる――かもしれない」

美崎「お、やるじゃん、淀川」

淀川「可能性だから」

美崎「(電話で友人に)泊めてもらえるって!!(一同笑)」

「『じゃあ、泊まっちゃいなよ』って言われたね。『こっちはこっちで、もう盛り上がっちゃってさー』」

美崎「こっちつまんないよー。まあいいや、仕方ないなぁ。じゃあね、楽しんでねー。みたいなことを言って」

「『じゃあねぇ』――じゃあ、電話切ったら執事さんが来た。
 『えー、お困りのようですから、どうぞお泊まりになってくださいと、ご主人様が』」

淀川「よかった!」

美崎琴音「ありがとうございまーす」

「『実はですね、当家では――かくかくしかじか――』明日からパーティーよ〜ん♪ ということを教えてくれた」

淀川「おお! らっきぃ〜」

琴音「ラッキーって、何が?」

美崎「じゃあ、私たちも出ていいですかー? みたいなこと言って」

淀川「凄く厚かましいというか(笑)」

美崎「厚かましいですよ(笑)」

琴音「(ぼそり)貴子ちゃん、やめなよ」

美崎「でも、いいじゃん、琴音ちゃん。こんな素敵なところでパーティーとかやるんだしさー」

琴音「そんな素敵なところに、私たちスキーウェアで出るのよ」

美崎「あ! そうだね(笑)」

淀川「借りるんじゃないの? ――か、貸してください」

美崎「そうか! 淀川、交渉して! 交渉して!」

淀川「解りました」

琴音「いや、泊めてもらえるだけで結構で――」

「『ご主人様のほうからも、もしよろしかったらご参加いただいても一行に構いませんとのことでした』」

淀川「ちょっと待ってください。ということは――服を借りられるんですね?」

琴音「もう、やめてよ、淀川くん!」

美崎「いいじゃん、琴音ちゃん。だって、こんな格好で出れるなんて誰も思わないし、そしたら貸してくれるよ、きっと」

淀川「うんうん(笑)」

「『そうですね、雪山を長いことお歩きになって、服のほうも濡れていることでしょうから、お着替えのほうもこちらで用意させていただきましょう』」

淀川「これ、どんな格好させられるんだろう?(笑)」

西谷「紋付きとかじゃない?(笑)」

美崎「やったやった、金持ちって凄いよね!」

琴音「それよりも熱い紅茶をひとつ――」

「『かしこまりました。他のお客様がたも今、二階のサロンにてお待ちいただいておりますので、そちらへご案内いたしましょう』」

琴音「ご案内って、この格好で?(笑)」

「はい」

美崎「スキー靴のままで、ガッチャンガッチャンいいながら――」

「(サロンで待つ三人に向かって)――というわけで、六平執事が奇妙な一団を連れてきた(笑)」

相原「ところで、荷物は部屋に置いてきてよろしいですか?」

「あ、部屋割りはこれからで」

相原「じゃあ、とりあえず荷物はサロンに」

「――で、学生たちがサロンに通されますと、やっとPC(プレイヤーキャラクター)全員がお会いできたというわけですね。皆さんにも、招待客などを色々と紹介されました」

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