Opening Act. 1 Act. 2 Act. 3 Act. 4 Act. 5 Act. 6 Act. 7 Act. 8 Act. 9 Act. 10 Ending
Act.10 数学者の定義
「人類史上、これが最大のトリックだった。これは、神のトリックです」
第7ラウンド
K「次のラウンド、西郷さんからです」
(あ、前のラウンドで西郷の行動忘れてた!)
西郷「数美さんは唱え終わってどうしてますか?」
K「唱え終わって、皆さんのことはアウト・オブ・眼中(死語)で、空を見上げて両手を広げて、恍惚とした表情です。片手に握っていたナイフは、取り落としました」
西郷「じゃ、そのナイフを拾いに行って、一生懸命数式を削る」
K「ちなみにナイフのデザインですが、儀式用のちょっと変わったもので、刃の片側に、定規みたいな目盛りがついています(笑)。何か測れるんでしょう」
西郷「お役立ちグッズだ」
K「特殊な数学の何かを測るものに違いない」
西郷「一生懸命、ガシガシやります」
K「では、やっといてください」
山形「やべえ、これ正気に戻っても逃げるしかない(笑)」
K「麻耶野数美は、すぐそばで西郷さんが削っているのも無視して、『父よ! 夫よ!』と叫びました」
岸野「うわあ」
西郷「頭おかしいよ」
K「それだけですね。他には何もしません」
浮田「僕は、ノートを探しますね」
岸野「ノートはポイして車に飛び乗ってますから、そのへんに落ちています」
浮田「ノート、ゲットだーっ!」
K「ゲットしました」
浮田「よっしゃーっ! ――儀式がどのようにおこなわれているか解ったので、たぶんこのとおりにすれば止められるだろうと思っている」
岸野「あ! ビンゴビンゴ。なるほどね、そうかそうか。ノートのほうを刻んで唱えれば、たぶん」
浮田「瞳孔を開きながら――、解ったぞ、解ったぞ! 畜生、畜生!」
岸野「そしたら、浮田さんを車に乗っけて突っこんでいく、というのは――駄目かな? 最初はとにかく、数美を挽肉にしてやろうと思ってたんですけど」
K「じゃあ、それを優先させてください。狂っているので、周りは見ない状態で」
岸野「解りました」
K「では、ブロロローと車で突っこむということで、<運転(自動車)>を振ってください」
岸野「はい。20%のデフォルトだなあ。(コロコロ……)あちゃー!」
K「失敗しましたか? じゃ、今度は<幸運>を振ってください」
山形「どっちに走っていったんだ?」
岸野「まさか、いきなりバックギア入れたわけじゃないよね(笑)」
浮田「ニュートラルで、ブーーーー」
岸野「なんだこれ、のろいなあ!(笑)――(コロコロ……)05。幸運でした」
K「じゃ、βには当たりませんでした」
岸野「そういう幸運か!(笑)――まあ、いいや。贅沢は言うまい。幸運だったんだから」
K「轢こうと思って一気に行ったわけですから――塔にぶつかりました」
岸野「あー、塔にぶつかっちゃったか」
K「エアバッグが作動しました」
岸野「塔はびくともしませんでしたか? 車でぶち当たっても」
K「びくともしない、というわけではないですが――ああ、それぐらいの勢いでぶつかったら、怪我するかもしれないですね」
岸野「怪我もするでしょうし、車も無事では済まないでしょうし、ガソリンも漏るでしょうし、電気系統もバチバチッとか言ってるでしょうし」
山形「どかーん!」
K「怪我から決めましょう。落下ダメージ扱いとして、エアバッグはありますがシートベルトしてないだろうから――」
西郷「ぶつかる瞬間に飛び降りればよかったんじゃないですかね?」
岸野「そういうことは、狂ってなければ考えてた」
(話し合いの結果、なんだか大袈裟なことになって――)
K「では、ダメージ2D6(6〜9メートル程からの落下と同等)」
(1D6でもいいかな、という気がしないでもない)
西郷「<跳躍>に成功すると減るとか(笑)」
K「受け身取れるかなー」
浮田「こればっかりはできないんじゃあ」
岸野「(コロコロ……)8」
西郷「ぎりぎり生きてますよ」
K「<CON×5>以下を振ってください」
岸野「50%以下。(コロコロ……)89!」
K「はい、気絶(一同笑)」
岸野「エアバッグ食べてる夢を見よう」
K「次はβだ。どうしよう。どこへ行こう。あ、お母さんが呼んでいるー♪」
西郷「呼ぶな呼ぶなー!」
浮田「ぎゃーっ!」
K「塔に近づいてきます。西郷さんに隣接しました」
山形「最後の1発撃ちます。これ当てたら英雄。(コロコロ……)駄目でした。カチ、カチ、カチ、カチ……」
第8ラウンド
K「では、次のラウンドです」
岸野「β大活躍かな?(笑)」
西郷「振り向くと奴がいる、って感じですか?」
K「そうですね。西郷さんどうしますか? もう、背後に来てるのは判ります」
西郷「とりあえず、数式削っても、あんまり効果なさそう?」
K「なさそう」
西郷「じゃ、そのナイフでβに向かって――」
岸野「え? 数美を取り押さえて、βてめえそこ動くんじゃねえ! って(笑)」
西郷「だって、今、数美さんは何もしていないって、私からは見えるんですけど」
岸野「見えないところに向かっていくの? 数美なんにもしてねえや、って思って」
西郷「うん、だって、数美さん何もしてないよ、もう。――じゃあ、βに向かってナイフを突き出す」
K「そうしたら命中判定ですけど、でかいとはいえ不可視だから、当たらないかな?」
岸野「それ微妙っすね。でかいのに見えない(笑)」
山形「飛びこんでいけば当たるかも。もしかして、抱きしめられるかもしれないけど」
岸野「もしかして、じゃなくて、絶対やられるに決まってんじゃん(笑)」
K「では、めくら滅法に振り回すということで、命中率半分で」
西郷「はい、13%。(コロコロ……)失敗」
浮田「そしたら、畜生畜生やってやるぞと言いながら、塔に駆け寄ります」
山形「あ、英雄になれるチャンスだ」
K「では、近づいて終わりです」
浮田「はーい」
K「数美さんは、感極まったのかどうか知りませんが、塔によじ登り始めます」
西郷「はあ?」
浮田「ああ、パパの近くに行きたいのか」
K「父にして夫の近くに行きたいのでしょうか」
西郷「登るって、どうやって登ってるんですか?」
K「虫みたいに」
浮田「凄っ(笑)。彼女も人じゃないからだ」
岸野「じゃあ、しょうがねえや(笑)」
K「蜘蛛みたいに登っていきます」
岸野「そうしたら、車の油が漏れて漏電してるから、爆発判定というのは?」
K「では、気絶していて暇でしょうから(笑)、毎ラウンド<幸運>を」
山形「浮田は、爆発する車の反対側の壁に書いてないといけない(笑)」
浮田「(笑)恐ぇーっ!(笑)」
岸野「(コロコロ……)おっ、成功しました」
K「では、このラウンドは大丈夫」
岸野「どっちのほうが幸運なんだ?(笑)」
K「ではβは、特に意識的に攻撃するわけでもないのですが、塔に近づきます。なので、西郷さんを巻きこむ可能性があります。西郷さんはもう<回避>はできないから、<幸運>ロールをお願いします。――さっきから<幸運>ばっか振らせてますね(笑)」
西郷「(コロコロ……)幸運じゃないです」
K「あ、じゃあ、何か無色透明なものが、身体にぴったり貼りついて――」
山形「あっ! 溶ける、溶ける」
K「――そうですね、じゅじゅじゅーっと」
西郷「あ、溶けてきたような気がする」
K「これはもう、命中率100%なんで、ごめんなさい。ダメージ行きます。1ラウンド目は、押しつぶしのダメージだけですが。(コロコロ……)5点」
西郷「でかーい。<CON×5>ロール。(コロコロ……)気絶した」
K「あ(笑)」
西郷「しかもナイフはまだ私が持っている」
岸野「うはー(笑)」
K「次が山形さんの番ですが」
山形「まだ、カチカチッ、カチカチッと。予備弾があることはあるんですが、正気に戻ってないんで、交換できません」
第9ラウンド
K「西郷さんは気絶しているので――数美は塔の頂上に登りつめて、『いあ! ようぐそうとほうとふ! 門にして鍵! すべてにしてひとつのもの!』とか叫んでいます」
岸野「ヨグ=ソトース礼讃だな」
K「それだけ」
浮田「どうしよう。警棒じゃ数式刻めねえよなあ」
K「さっきまで数美が数式刻んでいた鉄筆が落ちていますが」
浮田「それだ! それでノートの数式をガリガリ写します」
岸野「血は?」
西郷「書いたあとで」
浮田「空いてるところにガリガリ書きます」
K「すべてを書き終えるのには、5ラウンドかかりそうです」
浮田「畜生、畜生! 気違い女め、気違い女め!」
K「今回が1ラウンド目ということで、あと4ラウンドですね」
浮田「はーい」
岸野「車の中で夢を見続けている岸野ですが」
K「爆破の<幸運>ロールを(笑)」
岸野「爆破ロール担当になってしまった(笑)。(コロコロ……)05、大丈夫でしたね」
K「じゃ、βですが、お母さんと一緒に塔に登ろうとしています。ただ、身体の一部が西郷さんをつかんで吸っている状態です」
山形「吸ってるんだ」
K「身体を溶かされつつ吸われる――体外消化をされている状態ですね」
岸野「アメーバだ。――ということは、そこの部分だけ色がついて判る状態に?」
K「(コロコロ……)西郷さん死んでください。ダメージ10点です」
西郷「あー、死んだ」
K「さらに、こいつ、捕食中は姿が見えちゃうんですねえ(笑)」
西郷「みんな見てください(笑)」
K「――と思ったけど――」
西郷「もうみんな狂ってるんだよ」
K「浮田狂ってる山形狂ってる岸野気絶してるで、誰も見ません(笑)」
浮田「もの凄いスペクタクルなのに、壁しか見ていない」
K「それはそれは凄い姿をしています。言うなれば、人間の胎児を巨大化させて、ところどころに穴を空けて触手を出し入れさせてみたり――」
山形「あ! 鉄雄だ!(笑)」
岸野「このデコ助野郎が!」
K「で、次は山形さんですが、どうしますか?」
山形「まだ撃ってる(笑)」
第10ラウンド
K「西郷さんがあの世逝きなので、数美が頂上で叫び続け、浮田さんは書き続けるということで――では岸野さん、爆破ロールを」
岸野「爆破担当みたいじゃん(笑)。これで不幸だったらどうしよう。(コロコロ……)01」
(一同)「おーっ!」
西郷「これは、POWが上昇するチャンスですよ」
(<幸運>ロール時に01を出すと、POW上昇のチャンスがある、という選択ルールがあります。主にNPC用のルールではありますが、どうせ短い寿命の探索者なのですから、少しでもいい夢見てもらおうと、採用しております)
K「生還できたら上昇するかもしれません。――では山形さんも撃ち続けるということで、ひとまずここで戦闘ラウンドをストップします」
(時間もないので)
K「βですが、お母さんと一緒に行きたがっているようで、塔をじりじりよじ登ろうとしています。その重みで、塔が傾きかけています(笑)」
西郷「潰されちゃう(笑)」
山形「プチッ」
浮田「何ー」
K「そのとき、数美がくるっと振り向いて、下のβに片手をかざしました。すると、βが何メートルも後ろに吹っ飛びました」
浮田「(笑)」
西郷「子供なのに……」
K「子供とか、そういう意識はないのでしょうね。なんてったって、αとβなどと名づけているくらいですから」
岸野「あー、数式なんだ」
K「ですね。記号なんです。――その後、βがゆっくりと起きあがって再び塔に向かい、空の球体は次第に近づきつつありましたが、やがて浮田さんが否定式を書き終えることができました。
書き終えた途端に、頭上のキラキラした球体の数が減少していき、だんだんと遠ざかっていくように見えます」浮田「はい」
K「そのとき、数美が叫びます。『父よ! 夫よ! せめて我のみでも共に!』
――すると、それに応えるかのように、天から銀色に輝く球体がひとつ、降ってきます」岸野「わあ」
K「で、その球体がですね――――これぐらいの範囲を包むんですけれど……(図参照)」
(一同)「うわーーーああーーー(爆笑)」
岸野「高いところではちっちゃく見えたんだけど、うわ、こんなでけえ!(笑)」
浮田「あー」
K「えーと、この球体のデータは……(ルールブック捲りながら)……みんなにはこいつの正体は秘密なんですけど、えーと、ヨ、ヨ、ヨ――あった(一同笑)」
岸野「ヨ、なんだろう(笑)」
K「この中で意識があるのは、狂ってはいるものの、浮田さんだけですね」
浮田「はい」
K「では浮田さんは、咄嗟に<回避>か<跳躍>を試すことができます。お好きなほうを」
浮田「<跳躍>です!(回避:22、跳躍:25)――25%行きまーす」
山形「死ぬなー」
浮田「死ななかったら、こいつも新たなヒーローなのかな(笑)。でも気違いだ。気違いプロファイラー(笑)。畜生、お前らみんなアレだろ? アレなんだろ?(笑)(コロコロ……)」
(ここで10面ダイス2個を転がしたところ、10の位は「2」が出て、1の位のダイスは長時間転がり続け――)
西郷「あ!」
浮田「20と――」
(――そして止まった1の位は――)
浮田「6(一同爆笑)」
山形「最高!(笑)」
K「咄嗟にジャンプしたのですが、1%差での失敗ということは、身体半分だけが消えました」
浮田「(爆笑)」
山形「そこには巨大なクレーターができたの?」
K「そうですね。時計塔も含め、その周囲もすべて消えてしまいました。球体状に地面も抉れています。見事なまでに綺麗な半球ですね。おそらく、別の世界に行ってしまったのでしょう。
あとは湖の水が流れこみ、静寂だけが残る中、いつまでも引き金を引き続ける人がいました」岸野「あと、半分になった人が(笑)」
山形「君は英雄だな(笑)」
K「というわけで、勇気あるひとりの刑事の活躍のおかげで、麻耶野数美の野望――この世界を“他元”に取りこんでしまおうという計画はついえてしまいました。
宇宙を丸ごとひっくり返すような、宇宙をひとつ消してしまうに等しい壮大な計画なわけでしたが、なんとかそれを阻止することができました。
――これでまた平和な日々が戻るといいなというところで、このシナリオは終了です」
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