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Act.10 数学者の定義


「人類史上、これが最大のトリックだった。これは、神のトリックです」



 第7ラウンド 第7ラウンド開始時

「次のラウンド、西郷さんからです」

(あ、前のラウンドで西郷の行動忘れてた!)

西郷「数美さんは唱え終わってどうしてますか?」

「唱え終わって、皆さんのことはアウト・オブ・眼中(死語)で、空を見上げて両手を広げて、恍惚とした表情です。片手に握っていたナイフは、取り落としました」

西郷「じゃ、そのナイフを拾いに行って、一生懸命数式を削る」

「ちなみにナイフのデザインですが、儀式用のちょっと変わったもので、刃の片側に、定規みたいな目盛りがついています(笑)。何か測れるんでしょう」

西郷「お役立ちグッズだ」

「特殊な数学の何かを測るものに違いない」

西郷「一生懸命、ガシガシやります」

「では、やっといてください」

山形「やべえ、これ正気に戻っても逃げるしかない(笑)」

「麻耶野数美は、すぐそばで西郷さんが削っているのも無視して、『父よ! 夫よ!』と叫びました」

岸野「うわあ」

西郷「頭おかしいよ」

「それだけですね。他には何もしません」

浮田「僕は、ノートを探しますね」

岸野「ノートはポイして車に飛び乗ってますから、そのへんに落ちています」

浮田「ノート、ゲットだーっ!」

「ゲットしました」

浮田「よっしゃーっ! ――儀式がどのようにおこなわれているか解ったので、たぶんこのとおりにすれば止められるだろうと思っている」

岸野「あ! ビンゴビンゴ。なるほどね、そうかそうか。ノートのほうを刻んで唱えれば、たぶん」

浮田「瞳孔を開きながら――、解ったぞ、解ったぞ! 畜生、畜生!」

岸野「そしたら、浮田さんを車に乗っけて突っこんでいく、というのは――駄目かな? 最初はとにかく、数美を挽肉にしてやろうと思ってたんですけど」

「じゃあ、それを優先させてください。狂っているので、周りは見ない状態で」

岸野「解りました」

「では、ブロロローと車で突っこむということで、<運転(自動車)>を振ってください」

岸野「はい。20%のデフォルトだなあ。(コロコロ……)あちゃー!」

「失敗しましたか? じゃ、今度は<幸運>を振ってください」

山形「どっちに走っていったんだ?」

岸野「まさか、いきなりバックギア入れたわけじゃないよね(笑)」

浮田「ニュートラルで、ブーーーー」

岸野「なんだこれ、のろいなあ!(笑)――(コロコロ……)05。幸運でした」

「じゃ、βには当たりませんでした」

岸野「そういう幸運か!(笑)――まあ、いいや。贅沢は言うまい。幸運だったんだから」

「轢こうと思って一気に行ったわけですから――塔にぶつかりました」

岸野「あー、塔にぶつかっちゃったか」

「エアバッグが作動しました」

岸野「塔はびくともしませんでしたか? 車でぶち当たっても」

「びくともしない、というわけではないですが――ああ、それぐらいの勢いでぶつかったら、怪我するかもしれないですね」

岸野「怪我もするでしょうし、車も無事では済まないでしょうし、ガソリンも漏るでしょうし、電気系統もバチバチッとか言ってるでしょうし」

山形「どかーん!」

「怪我から決めましょう。落下ダメージ扱いとして、エアバッグはありますがシートベルトしてないだろうから――」

西郷「ぶつかる瞬間に飛び降りればよかったんじゃないですかね?」

岸野「そういうことは、狂ってなければ考えてた」

(話し合いの結果、なんだか大袈裟なことになって――)

「では、ダメージ2D6(6〜9メートル程からの落下と同等)」

(1D6でもいいかな、という気がしないでもない)

西郷「<跳躍>に成功すると減るとか(笑)」

「受け身取れるかなー」

浮田「こればっかりはできないんじゃあ」

岸野「(コロコロ……)8」

西郷「ぎりぎり生きてますよ」

「<CON×5>以下を振ってください」

岸野「50%以下。(コロコロ……)89!」

「はい、気絶(一同笑)」

岸野「エアバッグ食べてる夢を見よう」

「次はβだ。どうしよう。どこへ行こう。あ、お母さんが呼んでいるー♪」

西郷「呼ぶな呼ぶなー!」

浮田「ぎゃーっ!」

「塔に近づいてきます。西郷さんに隣接しました」

山形「最後の1発撃ちます。これ当てたら英雄。(コロコロ……)駄目でした。カチ、カチ、カチ、カチ……」

 第8ラウンド 第8ラウンド開始時

「では、次のラウンドです」

岸野「β大活躍かな?(笑)」

西郷「振り向くと奴がいる、って感じですか?」

「そうですね。西郷さんどうしますか? もう、背後に来てるのは判ります」

西郷「とりあえず、数式削っても、あんまり効果なさそう?」

「なさそう」

西郷「じゃ、そのナイフでβに向かって――」

岸野「え? 数美を取り押さえて、βてめえそこ動くんじゃねえ! って(笑)」

西郷「だって、今、数美さんは何もしていないって、私からは見えるんですけど」

岸野「見えないところに向かっていくの? 数美なんにもしてねえや、って思って」

西郷「うん、だって、数美さん何もしてないよ、もう。――じゃあ、βに向かってナイフを突き出す」

「そうしたら命中判定ですけど、でかいとはいえ不可視だから、当たらないかな?」

岸野「それ微妙っすね。でかいのに見えない(笑)」

山形「飛びこんでいけば当たるかも。もしかして、抱きしめられるかもしれないけど」

岸野「もしかして、じゃなくて、絶対やられるに決まってんじゃん(笑)」

「では、めくら滅法に振り回すということで、命中率半分で」

西郷「はい、13%。(コロコロ……)失敗」

浮田「そしたら、畜生畜生やってやるぞと言いながら、塔に駆け寄ります」

山形「あ、英雄になれるチャンスだ」

「では、近づいて終わりです」

浮田「はーい」

「数美さんは、感極まったのかどうか知りませんが、塔によじ登り始めます」

西郷「はあ?」

浮田「ああ、パパの近くに行きたいのか」

「父にして夫の近くに行きたいのでしょうか」

西郷「登るって、どうやって登ってるんですか?」

「虫みたいに」

浮田「凄っ(笑)。彼女も人じゃないからだ」

岸野「じゃあ、しょうがねえや(笑)」

「蜘蛛みたいに登っていきます」

岸野「そうしたら、車の油が漏れて漏電してるから、爆発判定というのは?」

「では、気絶していて暇でしょうから(笑)、毎ラウンド<幸運>を」

山形「浮田は、爆発する車の反対側の壁に書いてないといけない(笑)」

浮田「(笑)恐ぇーっ!(笑)」

岸野「(コロコロ……)おっ、成功しました」

「では、このラウンドは大丈夫」

岸野「どっちのほうが幸運なんだ?(笑)」

「ではβは、特に意識的に攻撃するわけでもないのですが、塔に近づきます。なので、西郷さんを巻きこむ可能性があります。西郷さんはもう<回避>はできないから、<幸運>ロールをお願いします。――さっきから<幸運>ばっか振らせてますね(笑)」

西郷「(コロコロ……)幸運じゃないです」

「あ、じゃあ、何か無色透明なものが、身体にぴったり貼りついて――」

山形「あっ! 溶ける、溶ける」

「――そうですね、じゅじゅじゅーっと」

西郷「あ、溶けてきたような気がする」

「これはもう、命中率100%なんで、ごめんなさい。ダメージ行きます。1ラウンド目は、押しつぶしのダメージだけですが。(コロコロ……)5点」

西郷「でかーい。<CON×5>ロール。(コロコロ……)気絶した」

「あ(笑)」

西郷「しかもナイフはまだ私が持っている」

岸野「うはー(笑)」

「次が山形さんの番ですが」

山形「まだ、カチカチッ、カチカチッと。予備弾があることはあるんですが、正気に戻ってないんで、交換できません」

 第9ラウンド 第9ラウンド開始時

「西郷さんは気絶しているので――数美は塔の頂上に登りつめて、『いあ! ようぐそうとほうとふ! 門にして鍵! すべてにしてひとつのもの!』とか叫んでいます」

岸野「ヨグ=ソトース礼讃だな」

「それだけ」

浮田「どうしよう。警棒じゃ数式刻めねえよなあ」

「さっきまで数美が数式刻んでいた鉄筆が落ちていますが」

浮田「それだ! それでノートの数式をガリガリ写します」

岸野「血は?」

西郷「書いたあとで」

浮田「空いてるところにガリガリ書きます」

「すべてを書き終えるのには、5ラウンドかかりそうです」

浮田「畜生、畜生! 気違い女め、気違い女め!」

「今回が1ラウンド目ということで、あと4ラウンドですね」

浮田「はーい」

岸野「車の中で夢を見続けている岸野ですが」

「爆破の<幸運>ロールを(笑)」

岸野「爆破ロール担当になってしまった(笑)。(コロコロ……)05、大丈夫でしたね」

「じゃ、βですが、お母さんと一緒に塔に登ろうとしています。ただ、身体の一部が西郷さんをつかんで吸っている状態です」

山形「吸ってるんだ」

「身体を溶かされつつ吸われる――体外消化をされている状態ですね」

岸野「アメーバだ。――ということは、そこの部分だけ色がついて判る状態に?」

「(コロコロ……)西郷さん死んでください。ダメージ10点です」

西郷「あー、死んだ」

「さらに、こいつ、捕食中は姿が見えちゃうんですねえ(笑)」

西郷「みんな見てください(笑)」 Sons of Yog-Sothoth

「――と思ったけど――」

西郷「もうみんな狂ってるんだよ」

「浮田狂ってる山形狂ってる岸野気絶してるで、誰も見ません(笑)」

浮田「もの凄いスペクタクルなのに、壁しか見ていない」

「それはそれは凄い姿をしています。言うなれば、人間の胎児を巨大化させて、ところどころに穴を空けて触手を出し入れさせてみたり――」

山形「あ! 鉄雄だ!(笑)」

岸野「このデコ助野郎が!」

「で、次は山形さんですが、どうしますか?」

山形「まだ撃ってる(笑)」

 第10ラウンド 第10ラウンド開始時

「西郷さんがあの世逝きなので、数美が頂上で叫び続け、浮田さんは書き続けるということで――では岸野さん、爆破ロールを」

岸野「爆破担当みたいじゃん(笑)。これで不幸だったらどうしよう。(コロコロ……)01」

(一同)「おーっ!」

西郷「これは、POWが上昇するチャンスですよ」

(<幸運>ロール時に01を出すと、POW上昇のチャンスがある、という選択ルールがあります。主にNPC用のルールではありますが、どうせ短い寿命の探索者なのですから、少しでもいい夢見てもらおうと、採用しております)

「生還できたら上昇するかもしれません。――では山形さんも撃ち続けるということで、ひとまずここで戦闘ラウンドをストップします」

(時間もないので)

「βですが、お母さんと一緒に行きたがっているようで、塔をじりじりよじ登ろうとしています。その重みで、塔が傾きかけています(笑)」

西郷「潰されちゃう(笑)」

山形「プチッ」

浮田「何ー」

「そのとき、数美がくるっと振り向いて、下のβに片手をかざしました。すると、βが何メートルも後ろに吹っ飛びました」

浮田「(笑)」

西郷「子供なのに……」

「子供とか、そういう意識はないのでしょうね。なんてったって、αとβなどと名づけているくらいですから」

岸野「あー、数式なんだ」

「ですね。記号なんです。――その後、βがゆっくりと起きあがって再び塔に向かい、空の球体は次第に近づきつつありましたが、やがて浮田さんが否定式を書き終えることができました。
 書き終えた途端に、頭上のキラキラした球体の数が減少していき、だんだんと遠ざかっていくように見えます」

浮田「はい」

「そのとき、数美が叫びます。『父よ! 夫よ! せめて我のみでも共に!』
 ――すると、それに応えるかのように、天から銀色に輝く球体がひとつ、降ってきます」

岸野「わあ」

「で、その球体がですね――――これぐらいの範囲を包むんですけれど……(図参照)」 球体の範囲

(一同)「うわーーーああーーー(爆笑)」

岸野「高いところではちっちゃく見えたんだけど、うわ、こんなでけえ!(笑)」

浮田「あー」

「えーと、この球体のデータは……(ルールブック捲りながら)……みんなにはこいつの正体は秘密なんですけど、えーと、ヨ、ヨ、ヨ――あった(一同笑)」

岸野「ヨ、なんだろう(笑)」

「この中で意識があるのは、狂ってはいるものの、浮田さんだけですね」

浮田「はい」

「では浮田さんは、咄嗟に<回避>か<跳躍>を試すことができます。お好きなほうを」

浮田「<跳躍>です!(回避:22、跳躍:25)――25%行きまーす」

山形「死ぬなー」

浮田「死ななかったら、こいつも新たなヒーローなのかな(笑)。でも気違いだ。気違いプロファイラー(笑)。畜生、お前らみんなアレだろ? アレなんだろ?(笑)(コロコロ……)」

(ここで10面ダイス2個を転がしたところ、10の位は「2」が出て、1の位のダイスは長時間転がり続け――)

西郷「あ!」

浮田「20と――」

(――そして止まった1の位は――)

浮田「6(一同爆笑)」

山形「最高!(笑)」

「咄嗟にジャンプしたのですが、1%差での失敗ということは、身体半分だけが消えました」

浮田「(爆笑)」

山形「そこには巨大なクレーターができたの?」

「そうですね。時計塔も含め、その周囲もすべて消えてしまいました。球体状に地面も抉れています。見事なまでに綺麗な半球ですね。おそらく、別の世界に行ってしまったのでしょう。
 あとは湖の水が流れこみ、静寂だけが残る中、いつまでも引き金を引き続ける人がいました」

岸野「あと、半分になった人が(笑)」

山形「君は英雄だな(笑)」

「というわけで、勇気あるひとりの刑事の活躍のおかげで、麻耶野数美の野望――この世界を“他元”に取りこんでしまおうという計画はついえてしまいました。
 宇宙を丸ごとひっくり返すような、宇宙をひとつ消してしまうに等しい壮大な計画なわけでしたが、なんとかそれを阻止することができました。
 ――これでまた平和な日々が戻るといいなというところで、このシナリオは終了です」

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