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Act.8 数学者の秘密


「定義できるものが、すなわち存在するものである」




(場面転換)


「大変お待たせしました、浮田さんと西郷さん。えーと、西郷さんの依頼により、浮田さんが鳴兎子署に保管されている7年前のジャーナリストの所持品を探すわけですが――保管されてるのかな? まあ、いいや」

浮田「証拠品とかが置いてあるところで探します」

「じゃあ、なんやかんやで<幸運>ロールを(笑)」

浮田「はい」

山形「なんやかんや(笑)」

浮田「幸運だといいな。(コロコロ……)10超えてます」

西郷「はぁ……」

「見つからない」

西郷「7年も前じゃねえ……」

浮田「見つかったとしても、持ち出すなんて無理だよ!」

(鳴兎子市−猫鼠洞村 間で、電話にて会話中です)

西郷「さっき、おたくのボスが、岸野さんにノートがどうとか言ってたけど、なんのことですか?」

浮田「それは言えないよ」

西郷「なんか、大発見ですか?」

浮田「いやいや、大発見なんて、そんな」

西郷「それと、麻耶野家の戸籍は調べてくれた?」

浮田「あ、調べてねえや」

西郷「何やってたの?」

浮田「数学者訪問したり」

(結局、この夜には何もすることがないふたりでありました)

西郷「じゃあ、美容と健康のために寝ます」


(場面転換)


「では翌朝ですが、山形さんも怪我はしていますが、行動できていいですよ。さらに4人で情報交換したということで」

西郷「敷地内でトンパチしていたのに、誰も出てこないってのは不自然だよ」

岸野「これはもう、化け物はあいつだと思うよ。数美じゃないかな」

西郷「でも、数美さんは人間じゃないの? 母様って言ったんでしょ? 数美の子供なんじゃないの?」

岸野「だって、化け物を産んだんだから、人間じゃないだろ」

西郷「でも、眼が色違いだったんでしょ?」

岸野「そうそう」

西郷「数美さんと、誰かへんてこりんな人の子供なんじゃないの?」

山形「へんてこりんって(笑)。……ノートの数式がなんなのか、まだ判っていないから、今日はとりあえず鳴兎門大学の数学者のところに行って、ノートを見てもらおう」

西郷「あと、村のお婆さんに、麻耶野家の息子さんのことを訊こう。それと、あの時計塔は誰がいつどうやって建てたかも調べていない」

岸野「水火水村の歴史そのものを、もう1回当たろうと?」

西郷「村というよりも、あの時計塔のことを。何かあると上空が光るんだよ」

岸野「時計塔の上空が? 湖面の上空だと思ってた」

「水火水村の湖側の上空ですね。時計塔の上とも言える」

浮田「あ、時計塔を観察したときの状況とか印象も話しておきますね。何かが刻まれていたこととか」

西郷「あとは、私まだ数美さん本人に会っていないんで、どこで生まれてどこで育ったのよ? って訊いてみたい気もするけど――それは最後でもいいのかな?」

岸野「安易に行ってみるっていうのもなあ……」

西郷「あそこに行くと、話が長くなるんだよね」

(ごめんなさい)

山形「子供の眼の色が数学者と同じだったので、それを捜査会議で報告して、あの数学者が怪しいと思います! と(笑)」


(場面転換)


西郷「このへんの村の歴史とか調べられそうなところへ行きます」

岸野「じゃ、同行します」

「ふたりで猫鼠洞村の資料館へ行きました。では<図書館>ロールを」

岸野「(コロコロ……)76で1ポイント上回って失敗しました」

西郷「(コロコロ……)成功」

山形「彼女のほうが一枚上手だった(笑)」

「調べたのは、水火水村の過去とか時計塔のことですね? ――時計塔が建てられたのは五十数年前。建てさせた人物は、麻耶野丈之助。麻耶野数美の祖父に当たる人です。この人が村の駅前に大きな時計塔を造らせました。
 なぜ造らせたかと言うと、息子である史丈の婚姻を記念し、かつ村の発展を祈願したモニュメントとして建造されたものです」

岸野「“婚姻”ってのが引っかかるな」

「大層立派な塔ではありましたが、デザインがどことなく奇妙で、当時の村人にあまり歓迎はされなかったみたいですけど、もちろん表向きは喜んでいたふうです。
 あと、塔の表面に、当時丈之助が研究していたことと関係があるのかどうか判りませんが――数式が刻まれていたらしい」

岸野「うーおー」 時計塔

西郷「xとかyとか、そういうのがいっぱい刻まれてたのね」

「それが意味不明で、やはり評判はよくなかったらしい」

西郷「実際に、写真があったりしないんですか?」

「こういう、ぼんやりした白黒写真しかないですね」

岸野「数式の写真とかは、ないんですか?」

「ないです」

西郷「結婚のことだけど、奥さんについて何か語られてたりしませんか?」

「奥さんについても記録が書かれてあります。家族関係をまとめますと、丈之助がいまして、その妻がせつ。ふたりの息子が史丈。史丈の妻が静子(しずこ)という名前になっています。
 ですが、50年前――塔が建てられた数年後――なぜか村人が皆一夜にして消えてしまって、正確には何名か生き残りはいたそうですけど、彼らも村を捨てていったらしい。そのさいに、麻耶野家の生き残りも出ていきましたが、出ていった人たちというのが、史丈と静子のふたりだけです」

西郷「丈之助さんとせつさんは、そのとき亡くなったと、こないだ婆ちゃんが言ってましたが、そういうことは載ってない?」

「記録を読んで察するに、丈之助・せつは、“村人失踪”という意味合いで消えて、史丈・静子は、“引っ越し”といったところですね」

西郷「なるほど」

「もちろん、この記録が真実かどうかは判りませんが。――まあ、こんなところでしょうか。水火水村と時計塔に関しての情報は」

西郷「時計は、村人がみんないなくなって、史丈と静子がいなくなってから、そのまんま放置されて今に至る、と」

「そうですね」

西郷「時計塔がどうやって建ったか、というのは?」

岸野「普通の大工さんが建てたんですか?」

「そうですね。普通に。ただ、石造りで細く高いので、苦労はしたらしい」

西郷「一夜にして建っちゃったとか、そういうのではないですね?(笑)」

「はい」

岸野「建てた業者とかは判りますか?」

「まあ、地元の業者でしょうね」

岸野「設計は全部爺さんがやって?」

「そう」

西郷「史丈さんはひとり息子なんですよね?」

「そうですね」


(場面転換)


「では、同日午前、刑事組はいかがしましょう?」

山形「私は大学に行ってノートの数式を見てもらう」

浮田「こっちはですね、半年前に帰省したOLと、今回の女子高生に、何か共通するものがないかを――」

岸野「あ、そっか! もっと早く気づくべきだったね」

「ではまず、鳴兎門大学のほうから」

山形「はい」

「先日、浮田さんが話を聞いた数学教授の林さんでいいですか? ――ノートの数式を見せて、なんですかこれ? と訊くわけですね」

山形「はい」

「すると林教授は『なんだろうね、これは』と言いつつも、パッと見、『ああ、あれに似ていますね。麻耶野数美の他元数学証明式。――あの本に書いてあった証明式に非常に似ているけれども、大きな違いがありますね』」

山形「ほう」

「『麻耶野数美が書いたものを“証明式”とするなら、これはさながら“否定式”とでも呼べるものだよ』」

山形「ほう」

浮田「なるほど! そういうことか!」

「『あの証明式を真っ向から否定する内容の数式ですね。――でも、これはこれで、元が元だから、やっぱり荒唐無稽だよ』」

山形「判りました。――これで勝てるぞ!」

岸野「それって、やっぱり文字の羅列になっているわけですよね?」

「そうです。なんとかイコールなんとかかんとか……と」

山形「これが呪文みたいになっているのかも。塔に刻むことによって、呪文みたいな効果を現す――のか」

浮田「唱えることはできないですよね」

山形「うん、できないから」

「では、ここで山形さん、<幸運>を振ってください」

山形「(コロコロ……)幸運です。超幸運です」

「すると林教授が、『先日も別の刑事さんが麻耶野数美に関してやって来たことがあって、ひさしぶりに思い出してね、昔のアルバムなんかを見ていたんだけど――何か、事件でもあったんですか? 捜査に関係があるんですか?』」

山形「ちょっと関わっているというか、参考人として、ちょっと……。ところで、木辺さんという方をご存じですか?」

「『木辺と言いますと?』」

山形「弘造さん」

「『あああ、木辺先生ね』」

山形「今、彼女の下で働いているらしいんですよ」

「『どこですか?』」

山形「彼女の自宅で、今、研究を」

「『自宅というと、どこでしょう?』」

山形「水火水村」

「『あの廃村で? へえー。あれから7、8年経ったけど、お変わりないですかねえ』」

岸野「大いに変わったと思います(笑)」

山形「で、過去を訊いてみる。ふたりの関係とか」

「『木辺先生は、麻耶野博士に首ったけと言うか、崇拝していましたね。私はたんなるファンでしたけど、彼は本当に心底崇拝していて、他元数学を発表して学会から総スカンを食ったときも、木辺先生だけは今までの意志をまったく変えずに、彼女について行こうとしていました』」

岸野「やっぱり、しもべなんだ。数美たーん」

「『そうそう、これが、彼女が姿を消す前、最後にこの大学で撮影された写真なのですけどね』と言って、写真を見せてくれた」

山形「見ます」

「若干離れたところから撮られていて、しかも真正面ではなく横からの姿なのですが、ああ、麻耶野数美だな、ということは判ります。彼女の他に、様変わりする前の木辺弘造とか(笑)、他にもお偉方のようなスーツとか白衣を着た教授連中みたいな人たちとかと立ち話しているところを、たまたま撮影したスナップ写真のようです。
 この写真を見てあることに気づくかどうか――<アイデア>か<目星>、好きなほうでどうぞ」

岸野「うわ、その写真、見てえー」

山形「<アイデア>のほうが高いです。出てくれ! (コロコロ……)出た」

「――ん? 微妙に、麻耶野数美のお腹が若干膨らんでいるような気がする」

山形「じゃ、それについて訊く。――えーと、彼女、妊娠していたんですか?」

「『そういえば、そんな噂がありましたけど、浮いた話ひとつ聞かない、お堅い人でしたからねえ――』」

山形「誰が父親かっていうのも判らない?」

「『そうですね』」

山形「なるほどねー(笑)。ひとりで納得してる。『母様』っていうのがあったから」

岸野「君たちの言葉で言えば、とかなんとかかんとか言ってたけど、結局はそういうことなのかな」

山形「(3人に)他に何か訊くことある? 天の声を(笑)」

(【天の声】――その場にいないキャラクターのプレイヤーが、その場にいるキャラクターのプレイヤーに助言をすること。TRPGでよくある風景です)

浮田「数美の父の業績ってのは、特にないんですか?」

岸野「数学者だったんだよね」

「丈之助は在野の数学者でしたが、史丈は職業としての数学者だったらしいですよ」

浮田「鳴兎門大学にいたんですか?」

「鳴兎門ではないですね」

岸野「静子さんは?」

「特に、数学関係者ではない」

山形「――蔵の2階を暴きたい」

西郷「暴いても、もう何もないんじゃ?」

山形「確信が得られるかもしれない」


(場面転換)


「では浮田さん」

浮田「OLと女子高生の共通点がないのかどうかを。――ただたんに、通りすがっただけで殺されたのか」

岸野「OLはどこで殺されたんでしたっけ?」

「猫鼠洞村のどこかの通りですね。OLと女子高生の関係は、はっきり言って、よく判らないですね。面識があったわけでもなさそうですし」

岸野「変なのがウロウロしてたってだけなのかな。運が悪かっただけかもしれない」

浮田「あとですね、消えたジャーナリストがどこの人だったかというのを」

「東京の人ですね」

浮田「数美が東京にいたということは?」

「東京にもいましたね。各地を転々としていたみたいですから」

浮田「その調査報告を聞いて、――よし、判ったぞ! 全部見えた! 犯人は――とか言ってる(笑)」


(場面転換)


「それでは、午後ですー」

山形「麻耶野家に行って、蔵を調べます。鋏男の眼を見て、あいつが犯人であることは察せますから、捜査令状を――」

浮田「令状取られるものなら取っておいたほうがいいと思います。取れなくても、漁りに行くべきだと」

「取れるかな?」

岸野「そしたら、僕が襲われたときに無我夢中で撮った写真があると思うんですよ。それで、瞳の色が特徴的だということが判るかも。――あの化け物の写真が信憑性あるかどうかはともかく、なんですけども。
 上手く撮れてれば、当然、情報提供していますし、目ん玉の特徴が判るようなものだったら、この化け物みたいな顔はマスクだろうという外野の突っこみはあるとしても、眼は生身じゃないと見えないんで、こんな眼している人、普通いませんぜ――って話にはなると思うんですよね。
 まず、撮れていたかどうかを、<写真術>の半分でロールしなきゃいけないんですよね?」

「そうですね」

岸野「ということは幾つだ? 30%だな。(コロコロ……)07! 凄え」

「では、後ろ手に撮った割には、バッチリ撮れてます」

岸野「撮れてました? じゃあ、やっぱり、山形さん、アレっすよ、赤緑っすよ」

山形「一応、これがマスクだとしても、眼だけは隠すことができないだろう、と言って、捜査令状を――お願いします! 取らせてください!(笑)」

岸野「少なくとも、こんな眼をして、人を殺しかけた奴がいるっている以上、眼つながりで、失礼だけど調べさせてくれない? って、お巡りさんが動くのが普通じゃないかと思うけど」

山形「どうでしょう?」

「そうですね、令状出るかどうか、上層部を説得できるかどうかということで、<説得>ロールをお願いします」

山形「(コロコロ……)成功!」

「じゃあ、取れました(笑)。普通はこんな簡単じゃないのかもしれませんが。一応言っておきますが、捜査令状であって逮捕状じゃないですからね(笑)。蔵とか屋敷を捜索してもいいですよー、ということになりました。
 昼過ぎに即発行でGO! というのは早すぎるかな? じゃあ、夕方ぐらいには動けることにしましょう」

山形「はい。それまで待ってます。令状が出るまで、ちょこん、と座って。――あ、いや、それまでに何か調べることはあるか? ……あ、出産履歴か、お産婆さんがいなかったかどうか」

浮田「麻耶野数美がどこかで子供を出産したことが、記録されていないかどうか」

「では、夕方までにそれを調べるということで、その間、午後のジャーナリストふたりですが……」


(場面転換)


岸野「ふたりはもう一度、時計塔に行きます」

「では、時計塔に着きますと――今日の天気は曇りで、ちょっと不気味な雰囲気です」

岸野「うー」

「で、やはり<アイデア>ロールに成功すると、デザインがちょっと奇妙であることが判ります」

西郷「(コロコロ……)奇妙」

岸野「(コロコロ……)超奇妙」

西郷「なんか、文字が刻まれていた跡に沿って傷をつけていくことはできますか?」

「傷をつけること自体はできそうですが、刻まれていた文字を再現することはちょっと、できなさそうです」

西郷「中には入れないんだっけ?」

「入れる仕組みにはなっていますが、扉は固く閉ざされています」

山形「その鉄の扉をぶっ壊さないと」

岸野「開かなくなっちゃてるってことなんですか?」

「そうですね。錆びついていて」

西郷「この前、変な上陸跡があったあたりって、ここから離れていますよね? ここから見えますか?」

「見えない」

岸野「車に工具積んでいるんで、それで扉を開けないか試みることはできますか?」

「小さな道具では、ちょっと無理ですね」

西郷「これはこういうレベルではないんですね」

「バールみたいなのが必要ですね」

岸野「あー、さすがにバールはないなー」

西郷「時計は全面にあるんですか?」

「いや、一面だけですね」

西郷「お屋敷のほうを向いて?」

「はい」

岸野「写真を1枚撮っておくか」

山形「バールを買いに行って――」

西郷「いや、たぶん、そういうんじゃないと思います、ここは。たぶん、開かないと言ったら開かない」

岸野「その心は?」

西郷「キーパーがそう言っているから(笑)」

(お察しいただき、ありがとうございます。プレイ時間がいくらかかっても構わないのであれば、別に開けてもらってもいいのですが……。手掛かり何もないけど(笑))

岸野「ここって、時計塔だけが単独で立っているんでしたっけ? じゃあ、開かないとすれば、中には全然入れないんですね? じゃあ、しょうがねえなー。
 ――天気が曇っているってことは、時計塔の影は地面に差していたりますか? あんまり判んない?」

「ちょっと判りにくいですね」

岸野「時計塔が地面に落としている影で何か判るかなと思ったんだけど、それもないよね」

西郷「たぶん、この時計塔は、これから使うんですよ」

岸野「あればいいだけ、ってこと?」

西郷「そう。――これを建てたのが祖父ってことは、刻まれていたのは、あれなんだよね、数美さんの式とおんなじほうなんだよね。てことは――」

岸野「史丈の式に書き換えようとか、そう企んでるんでしょ?」

西郷「うん。でも、駄目なんだよね。判らない」

山形「――こっち(刑事組)では、時計塔をダイナマイトで吹っ飛ばすか、って話になってるんですけど(笑)」

岸野「今の段階で、そこまでのことは、このキャラクターにできないじゃないですか」

(結局、たいした手掛かりも得られぬまま、時間は進んで夕方になってしまいました)


(場面転換)


「では、礼状が取れましたー。行ってらっしゃーい」

山形「やる気満々なメンバーを引き連れて、行くぞぉーっ!(笑)」

「では、刑事ふたり+警官隊が麻耶野家についたころ、時計塔からの帰りに近くを通りかかった岸野さんと西郷さんが、警察の車が麻耶野家の前に停めてあるのを見つけた。
 ――あ、あれは山形さんと浮田さんじゃないか。なんだろなんだろ」

(井上敏樹脚本ばりの偶然の出会いですが、そろそろPC全員まとめておかないと……)

西郷「なんか元気だなあ、山形さん」

山形「警官を5、6人引き連れて、行くぞ! 野郎ども! と車から出てきます」

西郷「あの元気よさっぷりは、きっと、ちゃんと礼状取ったんですね」

岸野「とりあえず、見てみようか。暇つぶしに」

西郷「うん」

「まず母屋のほうですが――」

山形「はい」

「――誰もいません」

浮田「げえっ」

山形「逃げられた」

西郷「あ、もし、ついて行けそうだったら、山形の後ろからゴソゴソと(笑)」

岸野「乗りこんでいきます」

山形「もしかしたら逃げられたのかもしれないから、と部下に言って、――証拠を探せ! 持ち逃げされたかもしれない! みたいに指示して、勝手に探させる。
 で、私がふたり(数美&木辺)を探す。荷物とかをまとめて出て行っちゃったのか、それとも、残したままいなくなったのか」

「見たところ、あまりよくは判りませんが、博士の部屋は以前と変わりはないですね」

浮田「数式が何かつけ加えられていたりとかは?」

「そのまんまですね」

山形「チッ、ひと足遅かった!」

浮田「いや、なんか変だぞ」

西郷「じゃ、言います。――蔵は見なくていいんですか? 蔵! 蔵!」

「やって来た(笑)」

山形「お前ら、なんだ(笑)。まあいい、スクープ撮らせてやる。蔵行くぞ、蔵」

浮田「ちょっと待ってください。――山形さん、麻耶野史丈のノートって、今あります?」

山形「ある」

浮田「じゃ、それを貸してもらいます。たぶん、これじゃないかな、と思うんで。――僕はちょっと、やることがあるんで」

山形「何っ?」

浮田「先に行ってください。あとから追いつきます」


(場面転換)


「では、3人で蔵へ行きますね?」

岸野「行きます」

「行きましたー。まあ、以前と変わらず暗い蔵です」

山形「ライト、ライトー!」

「つけまして、何をしますか?」

山形「上。もう、暴くでしょ。ガーン! ガーン! って(笑)」

西郷「じゃ、私は隅っこにいて、山形さんが発見したらしきノートの残りを確認する」

「時間短縮のために結論から言いますと、特にめぼしいものはないです」

西郷「でも、あることはあるんですよね」

「はい。――では、山形さんがバールか何かの道具を使って叩き壊すと、さすがに上げ戸はぶち破れました(笑)。どっかーん、と破って、上がっていくことができます」

山形「はい」

「では、山形さんが入っていきますと――<聞き耳>ロールをどうぞ」

山形「やっぱ、何かいるんだ」

岸野「もぬけの殻になってるだけじゃないの?」

西郷「そうなのかな」

山形「(コロコロ……)あーっ! 00が出てしまった(笑)」

「どっかーん、どっかーん、ばーん、イエーイ! と、やかましく入っていったので聞こえませんでしたが、上がった途端、『うぉーっ!』と叫び声とともに、鍬を持った木辺さんが襲いかかってきました」

岸野「じゃ、木辺をみんなで半殺しにしよう」

山形「やれやれ! と後ろに下がる(一同笑)」

浮田「やれやれ! って、ぶち殺す気満々じゃないですか(笑)」

「(コロコロ……)あ、攻撃はずれです。床を叩いた」

西郷「木辺さーん! 数美さんはどこに行ったんですかーっ! とレポーター風に訊いてみる(笑)」

「いや、今のところ、山形さんと一対一です」

山形「あ、一対一なんだ(笑)」

浮田「他の警官がガサガサ開けてるところで、山形さんひとり、わーい! って入っていったんだ(笑)」

「まあ、ゲーム的にも、警官はあまり頼りにしないでください」

山形「はい。ナイフ抜きます(笑)。シャキーン! あ、銃のほうが命中率高い。こっちにしようかな」

「このラウンドで1回、反撃していいですよ」

(不意打ちだと思うのですが、このキーパー甘いですね。時間がなくて焦ってきたのかな)

「近接戦ですが、DEX3なので、ゼロ距離射撃はできないことにしましょう。よっぽど近づかない限りは。この前みたく、肉を切らせて骨を断たないと(笑)」

浮田「抱きついたりしないと駄目なんだ」

山形「ゼロ距離だったら脚を狙おうとしたんですけど。部位狙いって、どれくらい命中率減るんでしたっけ? 『クトゥルフ・ナウ』でしたっけ、あれって?」

「そうですねえ――とりあえず、半分でいいですよ」

(身体の一部――頭部とか腕とか脚とか――を狙うさいのルールが『クトゥルフ・ナウ』にはあったと思うのですが、『クトゥルフ神話TRPG』には用意されていないですよね? そこまで厳密にすることはない、というルールだからなのでしょうが。だから適当に決めました。『ナウ』覚えてないし)

山形「そうすると、一気に減るんだよな。じゃあ、普通に撃ちます。(コロコロ……)当たり」

「ダメージ振ってください」

山形「(コロコロ……)6」

西郷「(笑)」

「一気に半分になっちゃった。<CON×5>ロール。(コロコロ……)失敗。ショックで気絶した(笑)」

山形「取り押さえろーっ! って言って、俺は後ろに退く(笑)」

「では、そこに警官隊がやって来て、取り押さえた」

西郷「数美さんはどうしたんですか!? 数美さんは、ねえ! 木辺さん、木辺さーん!」

山形「一応、手錠をしてから応急手当をします」

「<応急手当>あるいは<医学>をどうぞ」

山形「<医学>を。(コロコロ……)成功です」

「1D3回復させてもいいですし、させずに気絶回復だけでもいいです(笑)」

山形「(コロコロ……)3回復」

「じゃあ、回復して意識を取り戻した」

山形「手錠してますよ」

西郷「一生懸命訊いてます。――数美さんはどうしたんですかー!」

「では、<心理学>を振るまでもなく、まともじゃなくなってるなー、というのは判ります」

山形「ああー」

「なんか、凄く痛いはずなのに、痛みを感じさせない歓喜の表情をしていまして、『時は来たーっ!』と言ってます。――The Stars are Right!」

岸野「あ、言うかと思ったら本当に言った(笑)」

「『星辰の正しき時!』と叫んでいる」

山形「チッ、何か遅かった(笑)。それは<クトゥルフ神話>を振って何か判る?」

「特に判らないですね」

岸野「“星辰”って言葉から、何か判るかな?」

西郷「判んねーよね、普通」

浮田「聖心女子大!?」

西郷「違うと思う」

「『ふはは……博士は、始まりの地へ行かれたのだよ!』」

西郷「それはどこ!? どこ? どこなんだーっ!」

山形「あ、時計塔っていう気がした」

西郷「気はしてるんだけど、そこが始まりなのかは判んないんだよね」

「<アイデア>ロールをどうぞ」

西郷「(コロコロ……)判った」

「そもそも麻耶野数美が探求していたのが、他元数学。他元数学を始めたのが丈之助。で、丈之助が建てたのが時計塔」

西郷「じゃ、そういうことをブツブツ垂れ流して、時計塔だーっ! と言って走っていきます」

山形「じゃあ、俺も、時計塔じゃねえ? って言って、時計塔へ」

「じゃあ、3人で行きますか」

浮田「ちょっと待ってください! それまでにですね、数美の部屋のホワイトボードを全部消して、数式を否定式に書き直したいんですが」

「どうぞ」

(証明式がどこかに“書かれてある”こと自体が、他元を証明することにつながり、いわゆる魔力のようなものを持つのではないか、みたいなことを浮田は考えたのだと思います)

山形「君だけ助かる気だな?(笑)」

浮田「いや、それを終えてから合流します」

「では、タイミング的に、ほぼ同じく母屋と蔵から出てきて、4人で向かうことにしましょう。警官隊は家捜しと木辺の後処理で全員残ります」

山形「時計塔だ! 乗れーっ!」

浮田「判りました!」

「では、時計塔に着いたころは、陽も暮れてあたりは暗く、ちょうどいい雰囲気だなー」

(ちなみに、訊かれなかったので描写を忘れていましたが、蔵の2階には、子供を監禁していた形跡がありました。壁や天井にフックがあったり、鎖でつながれた手枷足枷首輪があったり)

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