Opening Act. 1 Act. 2 Act. 3 Act. 4 Act. 5 Act. 6 Act. 7 Act. 8 Act. 9 Act. 10 Ending
Act.5 時の塔
「人類の文明は僅かに数千年だ。史上最大のトリックとは何かな?」
(場面転換)
K「では、これで午前が終わりまして、午後からの探索活動に入ります。まずは刑事から」
山形「えーとですね、今、会議室で作戦を立てていたところですが、事件は現場だー! と言って、岸辺から続いているという跡を見に行く。(過去の神話事件経験から)ピーンと来て、ちょっと調べたいというふうになっているのと、そのあたりで小さな人影の目撃情報があるので、数学者の家に行って、蔵を見せてくれと言う。もしも駄目だと言うなら、隠すんですか? と鎌をかけて<心理学>ロール。そして、夜に侵入して鍵を開ける。
――蔵をあっさり調べさせてくれる場合は、あまり考えていない(笑)」浮田「水火水村に犯人が潜伏しているかもしれないので――」
山形「そうそう、調べさせてくれない場合は、殺人犯がうろついているので、と言って、入り口に警官を立たせておく。で、死んでくれたらラッキー(一同笑)。堂々と中を調べさせてもらえるかなーと」
浮田「山形さん正気度0になってるんじゃないかなー」
西郷「昼になったら、私、浮田さんに連絡しようと思っているんですが。昼ご飯のときに電話して。見た影が子供っぽかったんで、あの家に子供がいるかどうかとか、戸籍とかを当たってみたらどうかなー、と」
浮田「なるほどなるほど」
西郷「もし普通に生まれたんだったら、7、8年くらい前に、麻耶野さんが、どっかの病院に入院とかしてないかなーと」
浮田「自宅で出産したというのは?」
西郷「それはあるかもしれません」
山形「片方はお父さん似(笑)」
西郷「変なものが生まれたか、そこらへんは知りませんが。足跡もあったし、小さい子供がいるというのは絶対なんで」
浮田「どのような血筋のものかを調べてみるということですか?」
西郷「そうそう。――で、何か見つかりましたか? 巨大生物の痕跡とか」
浮田「いや、さっぱり。巨大生物とこの事件は関係ないんじゃないですか?」
西郷「でも、あの家の前まで巨大生物の痕跡があったんですよ」
浮田「そんな非科学的なことが――」
西郷「でも実際にあったじゃないですか」
浮田「“ナッチ”なんていねえよ」
(その他、昨夜から今日の昼までの情報交換をしました)
浮田「蔵に侵入してみたところで、なにも見つからない。あるいは子供を匿っているのかもしれないが、その子供が犯人なのかは判らないし」
西郷「でも、その農機具に血とかはついていなかったんですか?」
浮田「そんなの判んなかった(笑)」
西郷「じゃ、いいや。ひとまず電話を切ります」
浮田「もしかして、鋏で首をちょん切ったりとかしようとしたのかな」
岸野「農機具の形をしたクリーチャーだ」
山形「厭だ(笑)」
浮田「そしたらですね、被害者がどういう状況で致命的な首の切り傷を受けたかというのは、判らないんですか? たとえば、立っているときに正面から切られたのか、下から切られたのか。あるいは、ぶっ倒れた状態で、上から切られたのか」
山形「司法解剖で判りますよね」
K「首への刃物の侵入角度ですが、正面からですね。倒れてから切ったのかもしれない」
浮田「うーん。時間差というのは判りませんか? 切られたのが先か、溶けたのが先か」
K「切られたのが先ですね」
浮田「はあ。全身にも似たような傷があるというのが判らない」
山形「切り刻みたかったのだよ」
浮田「あげく、謎の酸か何かをかけて溶かすんですか」
山形「溶かしたかったのだよ」
西郷「涎が酸なんだよ」
浮田「うわー」
K「――さて、午後からの刑事ふたり組は、結局どう動きましょう?」
山形「水火水村のズルズル這ったような跡を調査」
K「行きました。着きました。前回説明したときの状況のままです。なんじゃこりゃ、といった跡ですね」
山形「で、湖からたどっていって、あの家まで行きますか」
浮田「その前に、時計塔に行きたいです」
K「では、ちょっと逸れて時計塔のほうに行ってみました」
浮田「もし犯人が麻耶野家に匿われていないのだとしたら、もしかしたらこのへんに潜伏していないかしらん、みたいな感じで調べてみます」
K「時計塔は高さ約10メートルくらいです」
山形「高っ」
K「材質は、おそらく石」
浮田「レンガですか?」
K「レンガではない。で、てっぺんに大きな時計がついていて、もちろん止まっているわけですが、時計塔の内部に入って上っていって時計の機械をいじることはできるんでしょうけれど、扉は固く閉ざされています」
山形「<鍵開け>できない?」
K「扉自体が錆びついています」
山形「あー、駄目ですか」
浮田「外階段とか梯子とかは?」
K「そういうのは、ないですね。中に入ったら梯子があるのでしょうけれど、人ひとりが入ったらもう窮屈そう」
浮田「あ、そんなに狭いんですか」
K「そうですね。だから、ちょっとバランスが悪そうに見えます。――では、時計塔を見ているふたりは<アイデア>ロール」
浮田「(コロコロ……)成功」
山形「(コロコロ……)あーっ! 失敗ーっ!」
K「浮田さんは、なんか、見ていると、厭なバランスで造られているなあ、という感じがして、若干の不安感を覚えます。たとえば、上から俯瞰して見たとき、本当に正方形なのかなあ、とか、なんか微妙にずれていたり歪んでいたりしていないかな、とか」
山形「怪しい時計なんだ」
K「見ていて生理的に嫌悪感を催すと言うか、あまり綺麗な形ではないですね」
浮田「一応、デジカメで写真を撮っておいたりはしますけど、それが終わったら、そそくさと離れたいような感じです」
K「さらにおふたり、<目星>を」
浮田「(コロコロ……)53で成功です」
山形「(コロコロ……)目が悪いなあ!」
K「成功した場合は、時計塔の表面に、だいぶ風化はしているのですが、細かい文字のようなものが刻まれていたような痕跡を見つけます」
浮田「うわ、ブルッと来たー」
山形「キタ━━━(゚∀゚)━━━ッ!」
(すみません、慣れていないもので。“キター”って、これでいいんですか?)
K「文字なんだろうけれども、なんなのかは判らない」
浮田「ズームして写真に収めたいのですが、根本とかにありますか?」
K「そうですね、目の高さと言いますか、普通に立って文字を書こうとしたら、ちょうど手が届くぐらいの高さです」
浮田「それをカメラに収めて、山形さんに教えます」
山形「確認します。これは風化であって、削り取ったわけではないの?」
K「そうですね、削り取ったと言うよりは、自然な摩耗なのではないか、と思われます」
浮田「定礎でも書いてあったんですかねえ」
K「さらに、塔の表面は結構汚れているんですけれど、上のほうよりも下のほうが汚れが激しくて、その汚れというのが、何かをぶっかけたような(笑)跡です」
山形「湖の水位が変わった跡とか?」
K「水の跡が真っ直ぐついているようなものではないです」
浮田「何かが跳ね飛んだような感じですか」
K「そうですね。何かがぶっかかって染みついたような。だいぶ古いものです」
山形「血の跡か!?」
浮田「大量の人が殺されたんなら、事件になっていますよ」
山形「一夜にしていなくなったじゃないか」
浮田「一夜にしていなくなったとしたら、そんな、大量にぶち殺されるなんてことは……」
(とにもかくにも、時計塔の調査は打ち切り、麻耶野家へ向かうことになりました)
K「では、ズルズルの窪みをたどりながら」
山形「ニカッと笑う山形さん(笑)」
浮田「え?」
西郷「喜んでるよ、こんな光景を見て」
浮田「山形さん、いつもどおり強引な捜査でなんとかなると思わないでくださいよー」
(おそらく、二度の神話事件を解決(?)した、ゴーストハンターとしての血が騒いだものと察せられます)
K「窪みに関しては、特に新発見はありませんでしたが、麻耶野家にたどり着きました」
山形「では、さっき言った作戦に出ます(笑)」
浮田「お話を聞かせてくだせぇ、と交渉している間に、山形さんが蔵に侵入して――」
山形「それか、鎌をかけて駄目だったら、夜に侵入ということで」
K「ちなみに、門番みたいに木辺が立っているわけでもないので、すんなり敷地には入れます。どうしましょうか?」
山形「中に入っていって、ピンポーン」
K「チャイムはないでーす(笑)」
山形「こんにちはー! ガンガンガン!」
浮田「ごめんくださーい」
K「そうすると、畑のほうで野良仕事でもしていたらしい木辺がやって来ます」
山形「これはこれは、木辺教授(笑)。――経歴は判ってますよ、ということを臭わせて」
K「無愛想な顔が、よりムッとしたようになる」
山形「ニカーッと笑っていますね、こっちは」
K「まあ、昨日の刑事がまた来たなぁ、って感じで、『今度はなんの用です?』」
浮田「昨日の事件のことなんですけど――このへんで目撃証言があったことを喋って、そういった心当たりがないか訊きます。もしかしたら、このへんにそういう凶悪犯が潜伏している可能性があるから、気をつけてほしいな、と」
K「『いや、何もないけど。もし何か気がついたら、連絡させてもらうよ』」
浮田「ところで、先生は眠らないっていうのは、本当なんですか?」
K「『本当だよ』」
浮田「それでしたら、先生にお話を聞けないでしょうか? もしかしたら、不審な人物とかを見かけたことがあるかもしれません。半年前にも同じような事件が起きているので、そのときにも何か目撃していたりしませんでしょうか?」
K「『博士はそういったものは見ていないと仰っている』」
山形「ほほーう? 事件の話をしていないのに、そういった事情をすでに話しているんですかー! と、鎌かけてみる」
浮田「感情の変化とか、判ります?」
K「<心理学>ロール」
浮田「70%です。(コロコロ……)00、全然判りませーん(笑)」
山形「何ぃーっ! せっかく鎌かけたのにー! (コロコロ……)あーっ、1の差で失敗したーっ!」
K「じゃあ、よくは判らないけど、早く帰ってほしいなーという感じはする」
山形「そういえば、そこの蔵のところで、犯人を見かけたという人がいたんですが、その蔵をちょっと覗かせてもらってもよろしいでしょうか?」
K「『博士の許可を取ってくる』と言って家の中へ入っていって、そして戻ってきて、『今すぐか?』と」
山形「そうですね」
K「『構わないそうだ』」
山形「おー」
西郷「たいしたものはないんだ(笑)」
浮田「でも、調べたいことがあるので、それはそれで構わない」
K「では、木辺に案内されて、蔵の前へ」
山形「白い手袋をして、じゃ、見せていただきます。もしかしたら、この中に潜伏している可能性もあるので、危ないので、後ろに下がっていてもらえますか? と言って、外に出てもらっちゃう」
K「まあ、入り口の外にはいます。では、蔵の中へどうぞー。中は暗いので、懐中電灯はつけてください」
浮田「捜索しながら、あのでっかい鋏を注視したい。何か血糊がついていたりしないか」
K「まあ、普通に綺麗と言うか、特別汚れてはいませんが――ただ、植木鋏はありますが、屋根屋鋏は見あたりません」
浮田「ん! あ、れ! あったのにぃー? ――じゃ、それを探します。どこかに実は落ちていたりするんじゃないか」
K「では<目星>をどうぞ」
浮田「はい」
山形「(浮田に)なんか、話しかけて(笑)。ダイス振りたいんですけど。耳打ちしていただければ、私も探します(笑)」
浮田「自分でまずは探します。(コロコロ……)96(笑)。そしたらですね、山形さん、ちょっとちょっと……外になるべく聞こえないように……」
山形「探しまーす。(コロコロ……)おっ! 09!」
K「では、鋏を探そうとガサゴソガサゴソしていると、鋏は見つからなかったのですが、積んである長持に腕を引っかけて、どんがらがっしゃん! と倒してしまった」
山形「あららら」
浮田「大丈夫ですかー!」
K「すると、中から色んな古いノートとか本とかが、バサバサっと」
西郷「やったー! お爺ちゃんの日記だー!」
K「そうしたら、木辺が『どうかしたのか?』と」
山形「いや、ちょっと、つまずいてしまいまして。ちょっと、そこで待っていてください。もしかしたら、中に隠れてるかもしれないんで」
浮田「そしたらですね、――山形さん、大丈夫ですか? 足悪いんだから気をつけてくださいよ、と言って、木辺さんと山形さんの間に入ります」
山形「ナイス・コンビネーション!(笑)」
K「まあ、木辺は入ってはきませんけども」
山形「それじゃ、その本を素早く見て、素早く隠す(笑)」
K「何冊もあるから、どうしましょうねえ――パッと見て、何が重要そうか判るかなぁ(笑)」
西郷「そこが問題ですね(笑)」
K「こうなったらもう、<幸運>で」
山形「(笑)えーっ! 幸運じゃないのにー!(笑)」
(困ったときの<幸運>ロール。ちなみに山形の<幸運>は55%です。悪くはないですね)
山形「しょうがない。(コロコロ……)おおーっ! 出た!」
K「あとは、うまく隠すことができるかですが、浮田さんのナイスプレイで、自動的に成功していいですよ。適当なノートを1冊だけ懐に忍ばせました」
浮田「では、ふたりで協力して、箱をもとどおり収めました」
K「この長持の中には、そういった書類関係ばかりが入っていたのですが、どれもだいぶ古い感じですね。変色していて」
浮田「そのあとは何事もなかったかのように、調べ始めます。そして、あまり時間をかけずに階段にたどり着いて、上階に行こうとして、鍵が閉まっているかどうか確認します」
K「もちろん閉まっています」
浮田「じゃあ、木辺さんに、――すみませーん、上も見させていただいてよろしいですか?」
K「『上への入り口は塞いであって、もう何十年も入った人はいないらしいぞ』」
浮田「これって、下から開けるんですよね?」
K「『下に鍵穴ついてるから、おそらくそうだと思うが』」
浮田「上からは閉められないんですか?」
K「『それは知らない』」
浮田「もしも上に犯人がいたりしたら、おちおちお休みもできないでしょう?」
K「『その鍵自体がないからな、開かないよ』」
山形「鍵穴を見て、本当に使われていないか、回している感じがあるかどうか判ります?」
K「鍵穴の内部のほうを見てみないと、よく判りませんね。――では、<鍵開け>の半分で振ってみてください」
山形「うわ、半分か。(コロコロ……)あーっ、出なかった」
K「さらに、今のやりとりの間に<心理学>ロールも」
山形「(コロコロ……)成功」
浮田「(コロコロ……)プロファイラー気取り失敗(笑)」
K「木辺は、この階段の上のことについて、何か隠したがっている雰囲気ですね」
浮田「それとはまた別に、周りを見て、手の届く高さにあるタンスとかの上に、実は鍵が置いてあったりしないのかなーと」
山形「コンピュータゲームみたいに、キラリンって光ったりしないの?(笑)」
K「そういうことはないです」
山形「じゃあ、この2階は夜にってことで、と耳打ちを」
浮田「どうも、お騒がせしました〜、と」
山形「あと、警備をつけといたほうがいいと思うんですよね、っていう話を。現場に近いこともありますし、警官ひとり立たせておきますから」
浮田「ご迷惑でなければ。おふたりの安全を守るべく」
K「『じゃあ、博士に訊いてきま〜す♪』」
西郷「なんでこんなキャラになってきたんだ(笑)」
K「それでは、やがて木辺が戻ってきまして、博士は『それには及ばない』と言ってはいたのだけれど、そこまで言うなら、警察の話をじかに聞いてみたいということだそうです。――というわけで、家に上がってもいいけど、上がらなくてもいいですよ(笑)」
山形「じゃ、上がらせてもらおう(笑)」
浮田「すいません、お邪魔いたします(笑)」
K「では、2階に上がっていった。部屋の描写は、先ほど岸野さんに言ったのと同じです。彼女の描写も同じですが、<アイデア>ロールに成功すれば、やはり人間離れした雰囲気というものを感じます」
浮田「(コロコロ……)成功。うーわ、なんだ、この人」
山形「(コロコロ……)失敗か」
西郷「全然感じない(笑)」
K「浮田さんには、これがカリスマか! といった感じで」
浮田「おおーっ!」
山形「そうか?(笑)」
K「ふたりが入ってくると、麻耶野数美が『君たちが担当の刑事かね?』」
山形「一応、手帳を見せて、担当の責任者でありますみたいなことを」
K「『猫鼠洞村で殺人事件が起きたと聞いている』」
山形「そうなんです。この森の向こう側で起きて、こちらのほうに犯人が逃げていくのを見かけた人がいまして、この家の周りでも目撃されておりまして――<心理学>」
浮田「(コロコロ……)22で、ロールは成功ですが……」
山形「(コロコロ……)成功です」
K「はい。まったく感情が読み取れません」
浮田「ですよね」
山形「なるほどー」
浮田「誠に遺憾なことで、犯人は常軌を逸した人間だと思うんですが」
K「『残念なことだ』」
浮田「犯人がこのへんに潜伏しているかもしれないとなると、やはり、身の危険というのもあると思いますし――というわけで、かくかくしかじか、警官を配置させていただきたい」
K「『私には関係のないことだが、それが君たちの職務であるのならば、それをおこなうことは自由だ』」
浮田「もしかしたら、生活を脅かされることもあるかもしれませんし――と言って、相手が何か反応しないかな、と思うんですけども、やっぱり表情は何も変わらずでしょうか」
K「そうですね。身の危険を感じていないと言うよりは、まったく興味がない、といったふうにも見える」
浮田「これがカリスマってやつなのか!? 昔の武士みたいに生きていて、ちょっとかっちょいいぞ、とか思います」
山形「私は逆に、いや、こいつが関わってるなと、違うレーダーがピピピピっと」
K「『他に用件はないかね?』」
浮田「まったく事件とは関係ない、個人的な興味なんですけども――『他元数学概論』を読ませていただいたんですけれども、僕にはよく理解できなかったので、もう少し、僕らにも解りやすく教えていただくことはできないでしょうか?」
K「『現在のところ、他元数学理論を君たちの言葉で定義することは難しい。現時点では、私にはできない』」
浮田「では、もう少し進んだ内容の著作を著す、あるいはその研究を引き続きされているのでしょうか?」
K「『理論は完成し証明式も完成している』」
浮田「であれば、それはすでに証明されたのではないんでしょうか」
K「『すでに証明されている』」
浮田「それは発表されることは?」
K「『君たちの言葉で言う発表とは違う形になるかもしれないが、発表の用意はある』」
浮田「たとえば、著作を著すという形ではなく?」
K「『今後私は、著作を著す予定はない』」
浮田「ないんですか……。では、その理論を先生が証明されたとして、それを僕らにも解るように説明したりしていただけるのでしょうか?」
K「『その質問は重複している。説明の必要はない。――じきに必ず解る時が来る』」
山形「うーん、何も言葉が出てこない(笑)」
浮田「それは、待っていれば僕らにも解るものなのでしょうか? それとも何か、明確にレセプションとかコミュニケーションみたいなのをおこなうということなのでしょうか? 形に表すということがないのかどうか」
山形「判った。テレビ出演だ(笑)」
K「『8年前、私が本を書いたとき、誰ひとりとして理解させることはできなかった。しかし今回の方法では、同時にすべての人類に理解させることができる』」
岸野「なーにー」
西郷「それはいつだー(笑)」
浮田「お部屋を拝見させていただいたところ、インターネットの設備もないようですが……それで世界中に?」
K「『ネットは私には必要がないものだ』」
浮田「ホームページを開設されてとか、そういうことでもないですよ、ね。――やはり凡人には判らない」
K「『ネットでは情報が制限されすぎている。あまりにも狭い世界だ』」
山形「なんか、霊的電波をピピピピっと発するのか(笑)」
浮田「では、それは正確にはいつごろなんでしょう? 証明が済んでいるというのであれば、あとは準備が整えば、たとえば来月にでも?」
K「『時期は些末な問題だ』」
岸野「厳密さが要求される数学において、それは答えになっておりません! とか言っちゃったら、駄目かな?」
山形「あー、なんか言いたいけど、気の利いた台詞が出てこない」
(明確な日時を言いたかったのだけど、PCたちがあと何日で情報収集できるか不定だったから、ごまかしたんだよー。ごめんよー)
浮田「話は変わりますけど、今こちらにお住まいなのは、下男(笑)の方だけということになるようですけど、代々こちらにお住まいということであれば、ご家族の方などはいらっしゃいませんか?」
K「『家族は現在存在しない』」
浮田「亡くなられたんですか」
K「『祖父母も両親もすべて亡くなっている』」
浮田「結婚はされてない?」
K「『君たちの言葉で言う結婚ならばしていない』」
岸野「なーにー(一同笑)」
山形「じゃあ、お子さんとかいらっしゃるんですか?」
浮田「そう言ったら、じゃあ、――山形さん、人のプライベートなことは、と(笑)」
山形「何か意味を含んでいるような訊き方で」
K「『私に子供はいない。私には、他者という概念がない』」
山形「ほほーう」
浮田「他者という概念がないと言うのは、たとえば僕と先生が同じ存在であるということなんでしょうか?」
K「『君がそう定義するのであれば、それが真だ』」
浮田「僕の意識は先生の意識とは違うようですが。そうであれば、僕と先生は違うものなのでは?」
K「『本当にそう思うかね?』」
浮田「えええーっ。なんか、恐がってる顔になります。なんだこの人、おかしいんじゃねえの? みたいな」
山形「それは――人間の中には微生物がいて、その微生物の意識は――あー、うんぬるかんぬる(笑)。まあ、そういうことを言って、そういった意味合いでひとつの意識ということなんでしょうかね?」
K「『質問の定義が曖昧で答えられない』」
西郷「ロボットみたいだね」
岸野「たぶんロボットなんだぜ」
浮田「もしかして、そのような先生の人生観が、この新しい理論を生み出すことになったとか? 言ってしまえば、我々一般の人間の世界観と先生の考え方は異なっている様子ですが、それと我々には理解が難しかった理論とは、もしかして結びつくものだったりするんでしょうか? それとも、そもそも数学が持っている、そのような世界の認識の仕方というものを、我々が統括してないと駄目なんでしょうか?」
K「『それは他元数学理論のことかね?』」
浮田「そうです」
K「『他元数学理論を生み出したのは、私ではない。私の祖父が“発見”したものだ』」
山形「ほほう。発見」
浮田「するとやはり、数学には我々の知らない世界があると? 我々にはまだ理解できないものが」
K「『我々に生み出せるものは何もない。最初からそこにあるものを見つけるだけだ』」
山形「そもそも、我々『他元数学概論』ちゃんと読んでないよね? あとで読みに行こう。理解すれば凄いことになるかもしれない(笑)」
岸野「誰にも理解できないから、凄い安全な魔導書かもしれない」
浮田「では、これ以上は突っこめないと考えるので、――すみません、お時間取らせました、と言って、山形さん、行きましょう」
山形「それでは、失礼いたします」
浮田「帰りまーす。……山形さん、あの人おかしいっすよ!」
山形「そんなの見れば判る!」
浮田「理解できないDEATH!」
山形「今回の事件に、あれは関係しているな」
浮田「えー? ただたんに、頭のおかしい人ですよー」
K「では、屋敷から出ました」
山形「じゃあ、警官を配置しよう。門の前――ずるずるの跡のあたりに。で、もうひとり、こっそり森にも配置しようか」
岸野「こっちに廻してくれたっていいのになー」
山形「あ、それでもいいか」
(山形が岸野に情報をリークし、森の中で決定的瞬間を収めるべく張りこみ――という展開になりそうです)
(この後、ふたりは鳴兎子署に帰りました)
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