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― セッション終了 ―



T・RPGなんて誰もしないしな。

― 麻耶雄嵩 『あいにくの雨で』



「発狂者は無しかぁ(残念)。じゃあ、今回初めて神話事件を体験したふたりは、<クトゥルフ神話>が5%増えます」


(シナリオ終了時にボーナスとして<クトゥルフ神話>が上昇するということは、ルールには明記されていません。ですが、神話事件との邂逅は大きな刺激――言うなればパラダイム・シフト――となり、探索者たちにこれだけの成長をさせるものであると、僕は確信しております)


日向「やったねぇ」

「代わりに、正気度の最大値が5減ります。そして、神話事件二回目の山田さんは、1%だけ増えます」

山田「やった、増えた〜♪ ――特典は?」

「正気度上限マイナス1(笑)」

山田「あれえ? 減ったぞ。何でだ?」

「禁断の知識を詰め込むと、正気が減っていきます。
 ――さて、今回の事件を見事乗り越え、目的を果たしたことにより、全員にボーナスです。1D10だけ正気度が回復します」

山田「6。前回より2減っちゃったよ」(それでも初期値より高いという)

日向「あぁ、2かぁ」

北村「6です」

「それではみなさん、レベルアップ(技能の成長)どうぞ」


(今回のシナリオで使用した技能が、各自僅かに増加しました。ほんの少しの成長ですが、結構嬉しい♪)


―― 『痾鬼去来』 了

(プレイ時間:260分)

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あとがき

 今回のシナリオ『痾鬼去来』は、僕の創ったものにしては素直でストレート、えせ科学知識も突飛な実験的要素も入っていないものです。そのせいか、皆さん結構楽しんでプレイしていました(笑)。

 それにしましても、TRPGこそ筋書きのないドラマですね(ストーリーの骨子はあるにしても)。そのときのプレイヤーとキーパーの気分次第、何よりダイス次第で、いかようにも変わってしまいます。今回のクライマックス、グラーキ御大の前で北村と日向の見せたファインプレイは、まさに見事のひと言でした。ここでどちらかでも失敗していたら、あるいはその前にグラーキ出現シーンで誰かが発狂していたら、結末は全く違ったものとなっていることでしょう(全滅も充分にありえますね)。

 今後も、僕がへこたれない限りは、彼らの事件は続きます。今回風邪のために不参加だったプレイヤー・I氏も加え、更なる恐怖と夜の夢を――提供してゆきたい所存です。

 最後になりましたが、このシナリオは、湖の隣人さまのアイデアなくしては決して創られませんでした。シナリオの核を担う、「湖ごとグラーキを召喚」という素晴らしい奇想を称賛するとともに、湖の隣人さまには心から御礼を申し上げたいと思います。本当に、どうもありがとうございました。そして――勝手にお名前出しちゃってごめんなさい(笑)。

―― 2000/5/29 Trapezohedron.



 【影響を受けた作品】

 『湖の住人』ラムジー・キャンベル著/湖の隣人さま訳

 『鴉』麻耶雄崇(幻冬舎ノベルス)

 『痾』麻耶雄崇(講談社ノベルス)

 『鬼去来1〜3』菊地秀行(祥伝社ノン・ノベルス)



追記

 当シナリオの改良アイデアとして、湖の隣人さまから以下の助言をいただきました。このたび御本人の承諾を得て、掲載させていただきました。ありがとうございます。

 えー、グラーキの司祭(笑)の立場から解釈させていただくと、巽君のように一度でもグラーキの手に掛かった人間は、たとえ肉体が従者と化す事はなくても、何らかの影響を免れ得ないのではないでしょうか。例えば彼はその傷というか「印」故に、グラーキの発する思念波「夢引き」を、たとえそれが彼を狙ったものではなかったとしても、距離に関係なく受けてしまうとか…。

「クトゥルフ」のカードゲーム"MITHOS"には"Dream Sending of Graaki"「グラーキの夢を送る」という呪文カードが登場します。ゲームデータ的には単に相手を操るだけのものなのですが、これを「グラーキの従者がグラーキ自身の思念波を中継する呪文」と解釈してTRPGに取り込む事ができないかと考えていました。毎年行われている世萬の儀式において、今年この呪文を投射する役目が巽君の両親にまわってきており、近隣の村々に投射された「夢引き」を遠く離れた巽君がその血のつながり故に受け取ってしまった、というのはどうでしょうか。

 ご存じの通り「夢引き」は、主に従者達の記憶から再構成されると思われる恐ろしい、しかし催眠誘導のような効果を持つ夢を見せます。巽君は忘れていたあの「儀式」に関するおぼろげな夢を見て、恐怖に震えつつもその中に現れた場所へと強く惹かれてしまうのです。彼はその場所が自分の故郷にあるのではないかという事を漠然と感じ、そこに惹かれる気持ちを「里帰り」という形で現実化させつつ、不安を和らげ紛らわせるためにPC達を里帰りに誘います。もしかするとPCがそのような不思議な話に強い、というか少なくとも聞く耳を持ってくれるという事を頼りにしたのかも知れませんね。「闇に用いる力学」を生き延びたPCにはちょうど良いのではないでしょうか。

「グラーキの夢を送る」の呪文については、グラーキ自身による「夢引き」の成功率「D100でグラーキのマジックポイントから犠牲者のマジックポイントを引いた値」(POWから考えてグラーキのマジックポイントは最大28…成功率はかなり少ないような気がします)よりも強力なものにするか否かが議論の分かれるところです。個人的にはグラーキ自身及びその崇拝の衰退ぶりを表すものとして、そして「神隠し」をそんなに頻発させるわけにもいかないので、神自身の力を越えるものにはしない方が良いと思いますが…。

 巽君はもちろん悪夢の暗示する具体的な事実は何も知りませんし、過去の記憶もクライマックスに向けて徐々に思いだしていくだけです。そのような本人の自覚とは逆に、「夢引き」の発信地に接近した事は巽君へのその影響をより強いものにしていくと思われます。「夢引き」の影響下にある徴候として、「印」である古傷がうずいたりするかも知れません。

 実は夜中に香奈ちゃんを林まで連れていき、従者達に引き渡したのは巽君本人だった、というのはどうでしょう。眠りに落ちたところを「夢引き」によって操られた巽君は香奈ちゃんを林の入口まで連れていき(逢い引きという口実でしょうね)、そこで香奈ちゃんは従者達に襲われ、巽君の目の前でさらわれます。悲鳴を聞いた、あるいは彼らがいなくなった事を不審に思って探していたPC達が駆けつけると、倒れている巽君だけを発見します。何かと準備に手間のかかる生贄とは違うし、「儀式」までにはまだ時間もあったので、従者よりも融通のきく「駒」として残されたのですが、彼自身は夢と現実の記憶とが混乱していて「さらわせるために」香奈ちゃんを連れ出したという自覚はほとんどありません。PC達には彼が「被害者」に見えつつも、その怪しさもまたより強く感じるようになるでしょう。

 そしてクライマックスでは、長である「湖の隣人」が後ろで見守る中、今年の司祭役である二人の従者によって「儀式」が遂行されていきます。香奈ちゃんを生贄に捧げようとする(この場合、グラーキ様に死なない程度に「印」をつけてもらって「夢引き」の影響下においてしまうのが目的?)司祭達のもとに跳びだしていく巽君。しかしその司祭達こそが彼の実の両親なのでした。“ごたーいめーん”ですね。全てを知りつつ後ろにひかえる「湖の隣人」の悪逆非道っぷりも上がるというものです。実際のリプレイのように、この悲劇的な対峙をPC達がいかに打開するかが見せ場になるのかも知れませんね、ふっふっふ。


 また、このシナリオを当初のコンセプトであった「山岳版インスマス」により近づけるため、以下の助言をいただきました。

「山岳版インスマス」なら、主人公は最後に「還っていく」事になりますよ(笑)。そうですね…拡大解釈すれば(御都合主義とも言う)、神の御元に近づく事によって巽君はその精神だけでなく、わずかながら注入されていたグラーキの毒が活性化される事でその身体まで変質し始めていた、というのはどうでしょうか。

 クライマックスで妹を逃がすために巽君は祭壇へと突進し、立ちはだかる従者達―彼の両親に儀式用の短剣を突き立てられます。しかし彼の突進は止まらずそのまま両親を引きずるように進み、引き裂かれた衣服の下からは従者達と同じ放射状の赤い筋が「印」を中心に浮かび上がっているのが見えます。ここで「湖の隣人」としては「ヨグ=ソトースの拳」でも使って、しがみついている両親の片割れといっしょに巽君の片腕でも吹き飛ばしてみたいですね。まぁその程度では巽君の突進は止まらず、さすがに怯む「湖の隣人」に最後の力でぶちかましを喰らわせてくれるでしょう。で、彼らはそのまま湖へと転落し、指揮系統の混乱で従者達の大部分は無目的にうろつき始め、PC達が逃げる隙を作ってくれるというわけです。


 以上のアイデアを取り入れることにより、シナリオの完成度を一気に高めることが可能となるでしょう。ありがたいことです。



 また何かございましたら、皆様、宜しくお願い致します。

――2001/1/26 Trapezohedron.


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