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Act.3 夜の悲鳴
脳細胞が張りつめ、破裂しそうになったまさにその時、
共鳴でガラスを割ってしまうかと思われるほどの激しい悲鳴。
― 麻耶雄嵩 『夏と冬の奏鳴曲』
K「その夜。皆さん寝ますか?」
日向「既に爆睡」
北村「同じく」
山田「夜風に当たる」
K「爆睡している人は<聞き耳>、夜風に当たる人は<聞き耳×5>」
(コロコロ……)
山田「92。危ない」
日向「楽勝」
北村「失敗」
K「それじゃあねえ、『きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!』という、若い女性の絹を裂くような悲鳴が聞こえた。
言うの忘れてたけど、現在この村に滞在している若い女性といったら、香奈ちゃんくらいだね」山田「ダッシュ! ――部屋は判っているの?」
K「いや、部屋ではなく、外から聞こえてきた」
山田「あれ? その方向は――遠い?」
K「旅館の裏手はすぐ林になっているのですが、そちらから」
山田「林……車が突っ込めるようなところじゃないね。車に走って中から懐中電灯を取って、ダッシュ!」
K「<聞き耳>に成功した日向君にも、彼女の悲鳴が聞こえた」
日向「はっ!?」
K「隣では北村君が爆睡している」
日向「蹴り起こす(笑)」
K「どぎゃっ! 内臓破裂(笑)」
北村「ブラック・ジャックみたいに自分で手術する(笑)。
――(日向に)何すかぁ!?」日向「香奈ちゃんの悲鳴が!」
北村「何!? ――ああ、でも俺には関係ないかなぁ(笑)。でもやっぱり行こう」
山田「なんでそこで葛藤するんだ?」
日向「どっちの方向からってのは判る?」
K「(頷き)外」
日向「じゃあ、外を見た」
K「裏手から見ると、林の入口あたりで懐中電灯の光がさまよっている。山田君のものだと判る」
日向「うちらも行ってみよう。電灯とかないのかな……じゃあ、マイ行燈(提灯?)」
K「ない(笑)。まあ、月は出ているので大丈夫でしょう」
日向「じゃあ合流」
山田「こっちから悲鳴がぁ! ――って、場所の確定はできてない?」
K「<目星>」
山田「持ってないんだよなぁ」
日向「(北村に)<目星>担当だったよね?」
北村「目星す(めぼす)よぉ」
(めぼす 【動詞】 TRPG『クトゥルフの呼び声』において、<目星>ロールを試みること。また、ロールに成功し、何かを発見すること)
北村「成功しました」
K「林の入口の地べたに、ごく最近、ついさっきついたような、乱れた複数の足跡がある」
北村「あそこに足跡が!」
山田「集まって照らす」
K「林の奥へ続いている。林はやがて森となり、山の奥へ続きます」
日向「何名くらいの足跡なの?」
K「判らない。乱れている」
山田「とりあえずそちらの方向に……」
北村「その前に、巽君のほうへ行ったほうが……。(ふたりに)とりあえず追って行ってもらって、俺はちょっと呼びに行ってくるよ」
山田「じゃあ、ふたりで追いに行く」
K「ふたりで<追跡>ロール」
山田「<追跡>もないよな、確か……。(コロコロ……)駄目です」
日向「(コロコロ……)駄目だった……もう駄目だぁ」
山田「うーん、判らないぃ」
K「それじゃあ北村君、旅館に戻りました」
北村「OK、巽くんの部屋に行きます」
K「巽君の部屋に着いた。寝てる」
山田「蹴起こす?(笑)」
北村「じゃあ巽君を一本背負いで起こす(笑)」
K「いや、STOで(笑)。――というわけで起きた『何? どうしたの?』」
北村「いや、俺の連れが若い女性の悲鳴を聞いたそうなんだが、それがどうも香奈ちゃんらしいんだけど」
K「『ええっ!?』と飛び起き、香奈ちゃんの部屋へ行きましたが、空の布団があるだけです」
北村「ふたりが今、足跡らしきものを発見して追っかけている最中だから――」
K「『行こう!』」
北村「案内します」
山田「現場では、口をポカーンと開けて立ち尽くしています」
K「(北村に)<追跡>ロール」
北村「これで俺が見つければ、香奈ちゃんは俺のものー(笑)――あ、駄目です。失敗」
K「(巽の<追跡>ロール)巽も駄目でした」
(やがて一行は、森の中で足跡を見失ってしまいました)
K「見失ったので戻るしかないかな、と――」
山田「うん、戻る」
K「――と、いうときに! ガサッガサッ、と森の奥のほうで物音が……」
日向「何の音か<聞き耳>」
K「いや、もう聞こえている(笑)」
北村「そっちのほうへ――行ってみたいなぁ」
K「まあ、ライト向ければ見えるけど」
山田「向ける」
K「向けた。……あれ? 誰かが立っている」
山田「誰か?」
K「突っ立って、みんなのほうを見ている。じーっと」
山田「知ってる人?」
K「まあ、多分、初めて見ると思うよ(ニヤリ)。古風な和服のようなものを着ている。結構ボロいね。黒っぽいかな。かなりの痩せ形だね。ガリガリ。それで肌の色が――黒い。干からびているねぇ」
山田「え?」
K「骨が出てるねぇ」
山田「えぇ?」
K「ところどころ穴が空いているねぇ。眼窩(がんか)が落ち窪(くぼ)んでいて、鼻もぺったり。歯茎も剥き出しだね。頭髪も殆ど残っていない。不健康そうな爪が伸びている。まるで、生きている死体でも動いているかのようだ。――<正気度>ロール!」
<一同>「うわあ!」
(コロコロ……)
北村「成功」
山田「あ、よかった。05」
日向「……92(笑)」
K「成功しても1ポイント減らしてください。失敗した人は1D8減ります」
日向「……2」
K「これはたまげた、と吐き気を催してみたり逃げ出そうとしてみたりしているうちに懐中電灯の光がブレて、再び照らし出した頃には消えている」
山田「あれ? どこ行ったんだ、いったい」
日向「そこのいたらしきところに行って、足跡があるか見てみる」
K「ある」
日向「わらじ?」
K「YES」
日向「そこからはもう、足跡は追跡できない?」
K「できないね。深い茂みになっていて。……それじゃあね、<心理学>」
北村「あ、成功した」
日向「成功した」
K「えーとね、巽君の様子がちょっとおかしいよ。単に恐がっているだけとは思えないものがある」
北村「訊いてみる。どうした、巽くん?」
K「『いや、な、何でもないよ』」
北村「いや、でも何か、おかしかったような――」
K「『何でもない。何でもないよ!』」
北村「そ、そうかい?」
K「でもか細い声で、『まさかそんな……』とボソボソ言っているのは聞こえた」
日向「溢れる<信用>と溢れる<説得>力で説得をしてみよう(笑)」
K「(無視して)というわけで、みんなは森を出た」
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