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Act.9 湖畔のまつり



神様ともなれば、そう易々と庶民の前に現れないものだ。
既に熟成され完成されたイデアを否定しかねないからだ。

― 麻耶雄嵩 『鴉』



「さて、外に出ると真っ暗です。夜になっています」

山田「うわあ」

「森の向こう、盆地のほうから、何やらガヤガヤと声がする」

日向「おっ、盛り上がっている感じがするの?」

「みんなで――詠唱しているような」

山田「最高ですかぁーっ!?(笑)」

「木々の隙間から篝火が見える」

日向「巽君はどうしたらいいのかな、これ」

「巽君は落ち着いたよ」

日向「あ、もう落ち着いた? ちょっと、事情聴取を。どうしたんだい、巽君」

「『さっきの魔道書といい、地下の石棺といい、あのミイラじみた手といい、この墓地のない集落といい――全てがひとつに繋がります』」

北村「どう繋がるんだ」

「えーとね、それ以上何も語ることなく、きっぱりとした口調で『僕は、香奈を助けに行きます』」

山田「え? いる場所が判ってる?」

日向「僕らも行くさ!」

北村「友達じゃないか」

「『いや、ここはあまりにも危険です。それに人数が多いと、却って目立ってしまう』」

日向「任せようか(笑)」

「『晃二、君はいち早く村に戻って、みんなにこのことを――!』」

北村「ほかのふたりには何かできることはないかい(笑)? 自由に使ってくれ給へ(笑)」

山田「じゃ、じゃあ――(笑)」

「囮で(笑)。
 ……というわけで、さっさとひとりで森の中に入っていった」

北村「そうは言われてもなぁ」

日向「こっそりあとについて行こうか――」

北村「ここで信号弾を撃ってみると」

日向「どんなメリットがあるんだい」

北村「ああ、そうだね。うーん、村の人が気づいてくれないかなって思ったんだけど、見てなかったらアレだよねぇ」

「て言うか、凄え遠いぞ村」

日向「電話してみたらどうかな」

「電波が届かない」

日向「しかしイリジウムを持って――」

「ない(笑)。特に最初に断ってない限りは」

日向「なぜかポケットにでっかいケイタイが(笑)。――じゃあ、いいや」

北村「追っかけよう」

日向「こっそり――かつ大胆について行く(笑)」

「何も気にせず、巽はさっさと森の中を走っていく。そして森が開け、盆地に出ると、木陰に身を隠す」

日向「あ、こっちも隠す」

「さて、……儀式はもう始まっています。盆地の周り中に篝火が焚かれ、恐らく集落の人であろう者たちが、ずらりと縁に並んでいる」

日向「見た目は普通の人?」

「まあ、そうだね。さっき君たちを取り押さえたような――完全に身体を隠している人と、そうでない人と」

北村「みんな、若い人なの?」

「そうだね。男ばかりだね、しかも」

北村「何人くらい?」

「いっぱい」

山田「四十どころじゃない?」

「もうちょっといそう。
 ……さてそれでは、近くの台――祭壇の近くに、見るからに威厳のありそうな、大僧正みたいな衣服に身を包んだ人影が立っている。完全に顔は隠れているし、手も足も全部隠れているから、どんなやつかは判らない。
 そのそばに、ごつい奴ともやしっ子が控えている。恐らく儀式用であろう厳かな衣裳に着替えている。
 ――ま、長なんだろうね、これが」

日向「うん。――しかし見守ることしかできないよね」

「さて、長が両手をあげ、何かを叫んだ。発音不能の言葉を叫ぶと、周りの全員も同じ発音不能の言葉を一斉に叫びだした。――(山田に)<クトゥルフ神話>ロールに成功してみたらどうでしょう(笑)?」

山田「そんな無理な要求は突きつけないでください(笑)。(コロコロ……)――失敗」

「禍々しい、宇宙的な響きです。――"宇宙的"って、凄い便利な言葉(笑)」

山田「(笑)」

「宇宙的詠唱が始まると、宇宙的恐怖感に苛まれる(笑)。何やら複雑な言葉を唱えてるね。その言葉の端々に――
 『ぐらあき、ぐらあき、いあ! ぐらあき!』
 ――という響きが入っている」

山田「ぐらあき、ぐらあき――?」

「そうすると、ゴゴゴゴゴゴ……と僅かに地面が震動する。ピリピリッと身体が痺れる感じですね。そして、中央の井戸ですが――蓋は取り除かれています」

山田「あっ」

「そのへんで、何か動きがありますね。どうやら井戸から何かが溢れてきているよう」

日向「あらぁ」

「じゃばじゃばじゃば……」

山田「――水?」

「もの凄い勢いで水が流れてくる。信じられないほど大量の水だ。どんどん盆地に溜まっていき――。
 見る見るうちに、盆地は水で満たされてしまいました」

日向「あ、凄え」

山田「ちょっと――ひとりだけ、別に――(田んぼと繋がる水路のほう)こっちのほうを見に行く」

「いいよ。でも結構距離あるからね。
 さて、激しく波打っていた盆地――いや、今は湖と化していますが――は、しばらくすると激しい波が嘘のように鎮まり、水が凪いだ。
 詠唱はまだ続いています。それがクライマックスに達します。『いあ! ぐらあき!』と長が叫ぶと、周りの全員が同様に叫びます。そして――湖の中央、ちょうど底に井戸のあったあたりだね――そこの水面が泡立ちます。ゴボゴボゴボゴボ……」

日向「うん」

「すると、水面から大量の棘(とげ)が生えてきた! 細く長い、密集した無数の棘です」

日向「サボテンみたいな感じ?」

「いや、様々な色の入り混じった棘で、まるで金属でできているかのように鋭利な光沢を放っている。一本一本が別々に生きているかのごとく、蠢き、震えている。
 棘は、恐らく、水中の"何か"から生えているのでしょう。恐らく円形であろうその物体の正体は、今は知る術がないですが、想像を絶する恐怖を感じずにはいられません。
 互いに擦れあってぎしぎしと音を立て、厭な響きをあたりに発しながら、全ての棘が一斉に移動を始めた。いや、棘ではなく、棘の生えた"何か"が、ゆっくりと水の中を移動している。祭壇のほうに向かって。
 岸へ近づくにつれて湖底が浅くなっていくためでしょう、棘がどんどん長さを増していき、やがて――水の中のものが、徐々に徐々に姿を現し始めた。
 ……楕円形の身体です。最も狭い部分で三メートル強といったところでしょうか。楕円の尖っていないほうの端から、三本の細い茎が生えています。それぞれの先端には、綺麗な球形をした黄色の器官がついています。それらが恐らくは眼球なのでしょう。その付近から長く伸びているのは二本の触肢。あるいは触角であるかもしれないそれらの器官は、細長く薄っぺらい、昆布(こんぶ)を思わせる捻れた茎状のものです。
 そいつは速度を緩めることなく、着々と岸へ身を寄せてきました。棘を震わせながら。
 口が見えました。三つの眼の下に、厚い唇のついた巨大な口が、だらしなく開いています。奥には調和の取れていない乱杭歯が僅かに生えているのが窺えます。これらの付属器官と進行方向から見て、この部分がこの生き物の貌であることは確かでしょう。まるでスポンジのようにフワフワと弾力のある、身の毛よだつ冒涜的な貌でした。
 というわけで、<正気度>ロール!」 Glaaki

山田「私は?」

「見てない」

(コロコロ……)

北村「成功」

日向「あぁ、駄目だぁっ!」

「成功しても1D3減ります」

山田「うわ、凄いものだ」

北村「(コロコロ……)――1」

「失敗したら1D20減ります」

山田「うわあっ!」

日向「(コロコロ……)――3」

<一同>「おおっ!」

「でも、かなり恐いことは確かです。何せ、こいつは、世萬の集落の者たちが呼び起こした存在、痾鬼の送迎という秘かなる儀式、それによって召喚された《神》なのですから。
 ――眼前に広がる名状し難き光景、こうして"痾鬼"は"去来"します」

日向「はぁーん」

「そうするとだね、祭壇のところに、若い男女ひと組が連れてこられた。見覚えはない。やはり着物を着ている。そのふたりは連れてこられたと言っても、自らの意志で歩いてきた感じだね。なんだけど、祭壇のところに来ると、周りから何人かが近づいてきて、しっかりと身体を押さえ込む。
 すると、《神》が棘を伸ばした。一本、するすると。そして、押さえられている男の胸に、ぐさり、と刺した」

日向「あらぁ。後ろの人、大丈夫なの?」

「貫通はしないよ。断末魔の絶叫。しばらくるすと棘は抜かれて戻っていく。また違う棘が伸びてきて、今度は女の人にグサッ、するするする……と戻る」

日向「あぁ」

「この光景を見ている人、<アイデア>ロール」

日向「(コロコロ……)あ、99が出てる」

「じゃあ、よく解らない。何か、恐いことしてる!(笑)」

北村「(コロコロ……)閃かない!」

「恐いことしてるなぁ」

日向「閃きがないなぁ」

「まあ、魔道書の内容から予想はできるかもしれないけどね。
 その男女は森の奥のほうに戻されて、今度は、みんなテンションが高まっている中で、長が嗄(しゃが)れた声で朗々と『花嫁を照覧あれ』。すると――
 薄物一枚を身に纏わされた、気を失った女性、香奈だ。彼女が祭壇に運ばれた」

日向「大ピンチじゃないか」

北村「やばい。……巽君は?」

「今にも飛び出そうとしている」


(そのころ山田は……)


「山田君」

山田「はい」

「着きました」

山田「何か流れてくる様子は――?」

「ない」

山田「その雰囲気は?」

「恐らく、水門を開ければ水が流れる仕組みになっているのでしょう」

山田「ああ。そゆことか」

「そゆこと。ついでに(田畑を)潤すという」

山田「なるほど」

「つまり、やはり毎年おこなわねばならない重要な祭ということなんですね。これはあくまで"ついで"。本来の意味は別にある」

山田「うーん、今は、いつ流れてくるかちょっと見ている。向こうからふたりが下りてこないかもちらちらと見ながら」

「そのときふたりは大変なものを――《神》を見ている(笑)」


(場面転換)


「そういうわけで、《神》を見ているふたり。どうする――?
 …………じゃ、巽が飛び出した!」

日向「うん。それを待ってたんだ(笑)。よし、今だ! と一瞬遅れて飛び出した(笑)」

「『うわあっ!』と声をあげて飛び出すと、一斉にみんながぐるりと振り向く」

日向「後ろから廻ったほうがよかったかな。(北村に)あれ? 君も出てきたのかい?」

北村「(頷く)」

「ふっ、無駄なことを(笑)。……じゃあ、巽君が捕まった」

日向「すぐ、逆に逃げて隠れよう(一同笑)」

「じゃあ、<隠れる>ロール」

(コロコロ……)

日向「駄目だった……」

北村「成功しました」

「北村君だけ隠れた。日向君のほうは、『何奴!?』『誰そ』『誰そ』(笑)と、何人かが君のほうに向かってきたよ」

日向「ダッシュで逃げる」

「解った。じゃあ、森の中を逃げてください。
 さてその間、北村君が見る光景としては――、巽君が捕まると、遠くのほうからふたりの人影が近づいてきた。どちらも、黒い衣裳で完全に身体を覆い隠している。ヨタヨタと、ちょっと不器用な歩き方だね。
 嗄れた声で『たつみ、たつみぃ』と言っている」

北村「巽君は?」

「後ろ姿なので表情は窺えない。
 ――そしてふたりは頭巾を取った。……生ける屍でした!」

北村「前に見たような?」

「(頷く)<正気度>ロールどうぞ」

北村「(コロコロ……)成功」

「成功しても1ポイント。
 ――それでは、巽はぼんやりとした感じで『父さん――!? 母さん――!?』と言いました。
 じゃあ、ここで、改めて<アイデア>ロールだ」

北村「(コロコロ……)ああ、成功」

「それじゃあ、気づいたぞ(これで、ゲーム終了後に説明する必要がなくなった)。
 君は、この親子関係を見て、更に、横にいる《神》の姿、魔道書の内容、墓のない集落、全ての情報を統合して、あることに気づきました。
 ――この集落の人たちは皆、《神》グラーキの信者でした。グラーキの祝福、つまり棘に刺された者は、不老不死になります。歳を取ることもなく、死ぬこともありません。一切の食事を必要としません。しかし、"不老不死になる"イコール"子孫を残す必要がなくなる"イコール"生殖能力がなくなってしまう"ということになります。そのため、ある程度年齢が行き、子供を産んだカップルだけが、祝福を受けることができるというシステムが生まれたわけです。まだ子供を設けていない人は、祝福を受けることができない。祝福を受けた者だけが本当の信者となって、以後不老不死となり、永遠に信仰を続けていくことができるのです。
 更に、この集落には年頃の女の人がほとんどいませんでした。まあ、深刻な嫁不足だったわけですね。そのための"花嫁"、香奈でした」

北村「花嫁ってことは、香奈ちゃんは誰の花嫁として?」

日向「"村人A"じゃないの?」

「うん、そんなところ。あるいは――可哀想だけど、殆どの住人の相手とか」

日向「あぁ」

「現在、布瑠部村にいた年頃の女性は彼女だけでしたからね、それで狙われたのでしょう。
 ――というわけで、この恐るべき真相に気づいてしまった貴方は、<正気度>ロール!(笑)」

北村「えええっ!(笑)」

山田「連続攻撃(笑)」

北村「(コロコロ……)」

(失敗)

山田「やっちまったぁ」

「1D8でいいよ♪」

北村「まずいなぁ。(コロコロ……)4」

「まあ、何とか耐えたけど、今回で一番恐かったんじゃないかな。《神》の出現よりも(笑)。
 というわけで、貴方はしばらく行動不能です。あまりの恐さに隠れていてください」

北村「あらら。はい」

「追いかけられている日向さん」

日向「なに? まだ追いかけてくるの」

「まあ、たぶん君のほうが速いだろうけど、向こうのほうが土地勘あるだろうし、何と言っても夜目が効く(日光を恐れるアンデッドモンスターだからね)。追いかけてきました。DEXで対決しよう。幾つ?」

日向「10」

「("グラーキの従者"のDEXは――)低いなぁ。じゃあ、85%以下振って」

日向「(コロコロ……)14! 見せるねぇ!」

「こいつだけじゃないからね。まだいる。次は90%以下」

日向「楽勝だよね。まさか――(コロコロ……)77」

「次は95%以下」

日向「ありえないね。――(コロコロ……)40」

「最後、80%以下」

日向「(コロコロ……)73。渋いなぁ」

「何とか目下のところ逃れて、<幸運1/5>か<ナビゲート>」

日向「<ナビゲート>で……(コロコロ……)おおっ! 10。凄いな、ぴったりじゃないか」

「上手く撒いた。それで、どこに行きたい?」

日向「香奈の後ろ」

「じゃあ、来た」

日向「素晴らしい活躍。奇跡のプレイだよね」


(そのころ山田は……)


「まだ待ってる?」

山田「どれくらい騒がしくなってる?」

「かなり。『追いかけろ』とか『捕まえろ』とか聞こえる」

山田「やばいぞ(笑)。まあ、でも、やや遠巻きに、上っていこう」

「それじゃあねえ、彼(日向)を追いかけていたひとりと鉢合わせする」

山田「あっ」

「追いかけていて、見失って、畜生どこ行きやがったんだぁ――あ、いた! って感じです(笑)」

山田「しまったぁっ!」

日向「身代わり御苦労(笑)」

「視界が悪いから、かなりの近距離で邂逅した」

日向「もう、駄目だよね」(山田を殺したいらしい)

「別に、生ける屍ではないですよ」

山田「ああ、人間だ」

「いいや、人間かどうか――棘を刺されたカップルも、刺されていきなり屍じみた外見になったわけじゃないですから」

山田「ああ、そうか」

「徐々にああなると思われます。
 じゃあ、<幸運>振って(面倒臭いや。<幸運>で解決させちゃえ)」

山田「(コロコロ……)ああ、危ない危ない。成功」

「不意討ちは逃れました。どうします? 向こうはですね――農作業用の小さな鎌を持ってます」

山田「逃げるわ!(笑)」

「逃げてください。DEX幾つ?」

山田「12」

「95%以下」

山田「まさかねぇ。(コロコロ……)OK」

「それじゃあ、引き返した。何とか撒いた」

山田「ハア、ハア、何だよ今の」


(場面転換)


「日向さんが隠れている目の前で巽君が押さえられ、長がゆっくりと巽に近づいていく。
『たつみぃ、たつみよ。儂のことを覚えておろうなぁ。二十年前、そう二十年前だ。お前はこの儀式を隙き見し、見つかり、その際、時期尚早ではあったが我らの仲間として迎え入れようとしたものを。すんでのところで逃げよったな。不幸なことよ。――今度は、しかと抑えておくのだぞ』と周りの者に言うと、ぐいっと押さえつけられた」

日向「あぁ……。香奈ちゃんはどうなっているの?」

「香奈ちゃんは気を失っているためか、祭壇の上に放っておかれている」

日向「――今ちょっとヒーローチャンスだよね(笑)」

山田「おいしいところを(笑)」

「みんな巽君につきっきりですね」

日向「でもさ、巽君のほうはさ、(集落にとって)身内じゃん」

山田「うん。もともといた人だから(安全――かな?)」

「(北村に)別に減るわけじゃないけど、<正気度>ロールして」

北村「うーん、成功」

「じゃあ、恐がっていたの治っていいや。
 それでは、長がバッと両手を拡げて、『《神》よ! 我らがグラーキよ! 我が"湖の隣人"の名において! この者に大いなる祝福を!』」


(アドリブで(勢いに任せてともいう)こんなこと言っちゃいました。湖の隣人さま、どうもすみません……)


「――と叫ぶと、するするする……と棘が一本、巽君のほうに伸びてくる。さあどうする、おふたり!」

日向「じゃあ、こっちは香奈ちゃんを」

北村「こっちは巽君を助けるよ」

「それじゃ、香奈ちゃんのほうからやろう。サッと出て、すぐに引っ込みたいわけだね。えーと、日向さんはSTR低いんだよなぁ(笑)」

日向「6だよ。6」

「(香奈のSIZと対決させよう)30%以下。彼女軽いけど、咄嗟に持ちあげるのは、やはり難しい。気を失っている人って重いしね」

日向「これコケたら、カッコ悪いよぉ。(コロコロ……)77だ(笑)」

「持ちあげようとしたけど、うまく力が入らなかった。ずるっ、パキッと小枝を折ってしまった。誰かが振り向く」

北村「そこで、(信号弾)撃ちます」

「はい、フレアガン。信号ピストルを撃ってください。命中率25%です。――何に向かって撃つ?」

北村「――《神》に向かって」

<一同>「おおおおっ!」

北村「(コロコロ……)はい、54%」

「じゃあ、故障せずに発射できた。プシューンて、《神》の棘の上を飛び越えていったけど、もの凄く眩しい光が一瞬、あたりを覆いました。儀式に参加していた者全員が、あまりの眩しさに顔を覆った。彼らは光を嫌っているんですね」

日向「じゃあ、運ぶよ」

「はい。落ち着いて運べます」

北村「飛び出して、巽君のところに行って、周りを押しのけて巽君だけ抱えて逃げてくる」

「STR6だね? 15%以下」

北村「(コロコロ……)失敗ですね。79」

「ファンブルではないんだね。それじゃあ、何とか突き放して巽君を確保したけれども、思うように彼の身体を引っ張ってこれない。どうやらまだ誰かが掴んでいるみたいだね。
 と、戸惑っている間に、ええと……………………(笑)」


(場に、不穏な空気が流れます)


山田「あれ?(笑)」

北村「(笑)」

「――北村一族は呪われているらしい(笑)」


(前回『闇に用いる力学』事件で、同じプレイヤーの操る北村智(従弟)が、やはり死亡しています)


「するするするするする〜っと」

北村「ええええーーーっっっ!!」

山田「お約束の(笑)」

「棘が伸びてきた! どうする!?」

北村「逃げる」

「<回避>か<受け>か」

北村「<回避>!」

山田「<受け>ろ(笑)」

「どうぞ」

北村「(コロコロ……)ああぁーっ! 成功! 04!」

「おお、素晴らしい。大成功じゃないか!」

日向「見せるなぁ」

「じゃあ、ふたりとも回避できたことにしよう。巽君の身体を抱えたまま、身を投げ出して回避できた」

日向「カッチョええ〜(笑)」

「棘は――空を切る、なんてカッコ悪いことはせず――そのまま何ごともなかったように戻ってゆく。まるで躱されることを読んでいたような動きだね。
 それではふたりとも人を抱えて、その場を離れることが可能ですが」

日向「離れるね」

北村「逃げる」

「逃げると、そうだね、じゃあ、三人合流できる」

山田「あ、よかった」

日向「……人工呼吸を(一同笑)」

山田「いや、急いで逃げましょう!(笑)」

北村「何やってんですか、日向さん!? ――ここは医者の俺が!(笑)」

「さてさて、それでは――で、どーすんの?」

山田「急いで逃げる」

「じゃ、急いで山に戻ってください。
 走り出そうとすると、後ろのほうから嗄れ声が響いてくるね。長の声だ。
 『"湖の隣人"の名において! この儂の手から逃れられるわけがないぞ!』」


(また言っちゃいました……)


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