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Act.4 香奈の行方は



「君の根底にあるのは愛情じゃない。同情なんだよ。ただの憐憫さ」

― 麻耶雄嵩 『遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる』



山田「それじゃ、まず親を起こして……」

「家族会議?」

山田「いや(笑)、警察!」

「というか、村じゅう大騒ぎになりますね。駐在さんが押っ取り刀で駆けつけてきた。『あんら、どうしたんだべ? こりゃ、大変だべなぁ』と。
 それと、村の年輩の人たちが固まって、何やらボソボソ話をしている。秘密の話(笑)」

日向「研ぎ澄まされた聴力で(笑)――」

「<聞き耳>どうぞ」

日向「(コロコロ……)59、成功」

「それじゃあねえ――『神隠しだべか』とか『"せばん"だべ、"せばん"のやつらだべ』とか言っているね」

日向「神隠し、"せばん"?」

「そうだねぇ、"神隠し"、"せばん"、他にも"あき"、"くら"といったキーワードが飛び出してきた」

日向「ふぅん。ところで今どこにいるの?」

「旅館の大部屋」

日向「旅館のおっさん(巽の父親)もいるの?」

「いるよ」

日向「じゃあ、おじさんに、この村での神隠しについて教えてもらえませんか、と訊く。……溢れる<信用>を(笑)」

「よそ者がいきなりそんなことを言ったので驚いているね。――うーん、<信用>の半分」

日向「(コロコロ……)38、成功」

「『神隠しか。昔はあったんだがなぁ。まあ、二十年くらい前までは、当たり前のようにこの村で使われていたが、今じゃなあ――。これはそういったことじゃなく、刑事事件だろ』」

日向「あと"せばん"とか"あき"とか"くら"というのはどのようなものか、ご存知ですか?」

「(全部ここで訊くつもりかよ)もう一回<信用>半分で」

日向「これで全ての謎が解けてしまうな(笑)。――(コロコロ……)24、ほら成功(笑)」

山田「(笑)解けちゃうよ。解決だよ」

「えーとね、まず"せばん"について。『この村よりも更に奥地にある集落のことだよ。地図にも載っていない小さな集落で、世萬渓谷と呼ばれている場所にある。その集落のやつらを"せばん"と呼んでいるんだな』」

日向「この村の人と世萬の人々は、あまり仲が宜しくないんですか?」

「『いいも悪いも――交流がない。世萬のやつらは誰とも接触を取ろうとしないんだ』本当に"隠された集落"といったところだね。民俗学者などがたまに調査に入ることもあるらしいが、にべもなく追い返されるらしいね。と、いうのも、その集落では定期的に何らかのお祭りがおこなわれるようで、(民俗学者は)それの調査に赴いたりしているらしい。『まあ、こういうことは、この村の民俗資料館の館長が詳しいな』」

日向「"あき"と"くら"っていうのは?」

「 "あき"ってのは、その集落でおこなわれるお祭りのこと。"くら"ってのは、その集落のまた違った呼び名らしいけれど、お父さんは詳しいことは知らないようだ」

<一同>「うーん(メモしながら暫し思考)」

日向「お父さん、これからどうしましょうか」

「『まずは警察だ。駐在さんに、麓から本格的に警察を派遣してもらうようにお願いしよう(もうしているだろうけれど)。あとは、村人の有志を募って森の中を捜索だな』」

日向「僕らも行きますよ」

「『いや、お客さんにそれは申し訳ない』」

北村「巽君は、どんな感じかな」

「ひとり、思いつめたように黙って、下を向いている。誰とも話そうとしないし、目を合わそうともしない」

北村「じゃあ勇気づけてあげよう。俺たちも探すから、そんなに気を落とすな、と声を掛けるよ」

「『あ、ああ……』と、ろくに聞いていない状態です」


(ちなみに、日付は変わっていますが、まだ夜中です)


日向「現場百回って言うしね。うちらだけで独自の部隊を築いて」

「遊撃隊?」

山田「現場を荒らす(笑)」

「愚連隊とも言う」

山田「足跡を全て掻き消し(笑)」

日向「て言うか、うちらが足跡を追ったところで、元の足跡なんて――」

山田「うん、もう掻き消えて――。やっちまった(笑)」

北村「あちゃあ」

日向「これは明らかに、怒られるじゃん」

「黙っていたほうが……(笑)」

山田「いやいや、言わないと。足跡は自分のだ、って」

日向「犯人となってしまうやもしれない」

山田「とりあえず正直にそこのところを」

日向「じゃあ、さっきの活躍ぶりを(笑)、駐在さんに、さも誇示するかのように(一同笑)」

「『あんた駄目だよぉ、素人さんがそんなことしちゃあ』」

日向「救助のためにやむを得ず、と申し訳なさそうに言ってみる(笑)」

「急に殊勝げになったなぁ(笑)。『いや、それはありがたいけどね。悪気どころか、本当に助けようとしてやってくれたことだからね』と解ってくれたみたい」


(やがて白々と夜は明けていきました)


「さて、遊撃隊は何かしますか?」

日向「なにげに世萬の在処(ありか)を訊いてしまう?」

山田「在処(笑)」

「(日向に)あ、そうだ、ろくに寝てないのでMPの回復はありません。――悪酔いしているので」

山田「まだ悪酔いしてるんだ(笑)」


(ルール的には間違っているかもしれませんが……)


日向「世萬の場所を尋ねてみる」

「誰に?」

山田「全員集まってる? 村人」

「いや、全員ってわけじゃない。主立ったメンバー」

山田「民俗資料館の館長さんは?」

「館長さんはここにはいない」

山田「いないか。……民俗資料館はいつ開く?」

「うーん、まあ、事情が事情だけに、朝早く行っても、開けてーって言えば開けてくれるかもしれない」

山田「かもしれない」

「ちなみに通常は11時から、のんびりと」

山田「場所訊いて、そこへ車を飛ばす」

「飛ばした。三人で行くんだね」

日向「縒木君は?」

「巽君は行かない」

山田「まだ落ち込んでるんだ」


(資料館に到着した三人は、館長を呼び出します)


「ドンドンとドアを叩いていると、仏頂面をした痩せ形のおじさん――毛糸の帽子を被って眼鏡をかけている――が、『何〜っ?』と出てくる。彼はまだ事件を知らないようです。『まだ開かないよ』」

山田「とりあえず、今起きた事件の話をして、至急世萬の場所を教えてもらいたいと、直談判――を、溢れ出る<信用>の持ち主を通して(笑)」

「<説得>をどうぞ」

日向「え、何? すぐ話したがらない雰囲気な訳?」

「突然よそ者が訪ねてきて、そんなことを言われちゃあねえ」

日向「(コロコロ……)成功」

「『ふぅむ、そういうことなら――。とりあえず、中入んな』」

日向「ああ、悪りぃね(笑)」

「このへん一帯の詳細な地図を拡げてくれる」


(世萬渓谷は道の通じていない山奥にあり、相応の準備がなければ迷ってしまう可能性が高いことが解りました)


山田「じゃあ、とりあえず地図コピーさせてもらって――」

「コピー機? 壊れてるよ」

山田「ああああ(笑)。手書き。上からトレースするしかないのかな」

「<機械修理>か<電気修理>で直るかも」

山田「…………<応急手当>では?(笑)」

「<機械修理>か<電気修理>」

山田「…………<芸術:クレイアート>は?(笑)」

北村「ふたりの力で何とか(笑)」

「ならない」


(代表で北村が挑戦することになりました)


山田「壊すなよぉ」

北村「(コロコロ……)……99です……」

山田「プスプス……煙が出てきた(笑)」

北村「(館長に)駄目ですね、直りませんわ、と」

「トレースするしかないね。<ナビゲート>どうぞ」

北村「(コロコロ……)はい、失敗」

「我ながら綺麗にトレースできた(笑)」

北村「ひとりご満悦(笑)」

山田「ちょっと隣で見ていて――違くないですか、ここ?」

北村「俺の地図はこれだ!」

山田「迷っても知りませんよぉ」

北村「君は君なりの道を行けばいい」

日向「(館長に)神隠しってのはよくあったことなんですかねぇ、と」

「『ああ、昔はね。今はないよ』」

日向「当時何名ぐらいが神隠しに遭ったの?」

「資料をペラペラと捲って――『記録に残っているだけで、九人だな』」

日向「それは一年のうちに?」

「いや、記録を残すようになってからだから、二十五年間くらいのトータルだね」

日向「なるほど。あとは――この世萬という集落について何か知っていることがあったら訊きたいんですけれども」

「『世萬の集落ねぇ……地図を見てもらえば解ると思うけど、道なき道を行って、徒歩で何時間もかかるところにある』」

山田「徒歩かぁ」

「『人口は四十人と言われているが、まあ、だいぶ昔の記録だから、今はどうなっていることやら。何せ交流がないからな。
 年に一度、独自の秘祭をおこなうんだが、ちょうど今くらいの時期だよ。その祭の名前が"悪鬼送り(あきおくり)"と呼ばれていてね、"あき"とは"悪い鬼"と書くんだが、一説には"痾(やまい)の鬼"じゃないかとも言われている。民俗学者がもっと調査をすれば解るんだろうが。
 それで、この祭がおこなわれる、世萬の土地の場所の名前を、"倶藍(くら)の地"と呼んでいるんだ。これの語源は不明だが、恐らく"倶利伽藍(くりから)"じゃないかと思われる。
 どんな祭か、詳細は不明だが、悪い鬼あるいは痾の鬼を送り迎えして悪い気を取り去ってもらうという由緒正しい祭だといわれているが、どうだろうな。あるいは土着宗教の類かもしれない』」

日向「この祭で、生贄なんか使うとかいう噂は、聞いたことないですか?」

「『いまどき、それはないと思うがね』」

日向「まさかね(笑)」

「だとしたら毎年生贄を捧げなければいけないはずで、これは大変だ」

日向「うん、この集落の人、あと一名しかいなくなってしまう(笑)。
 ……この村の人で、世萬まで行ったことのある方はいらっしゃるんですか?」

「『いや、いないと思う。俺は知らないね』」

日向「じゃあ、たまにやってくる民俗学者さんは、どのようにして世萬まで行かれるのですか?」

「貴方たちと同じ。道なき道を、地図を見て」

日向「コンパスを貸してもらえません?」

「『いいよ』。貸してくれる」

日向「やったね」

山田「コンパス、ゲット」

日向「返さない(一同笑)」

「ちなみに、青木ヶ原樹海と違って、ちゃんとコンパス効くから」

山田「くるくる回るんだよー(笑)」

「うん。ちゃんとくるくる回るから大丈夫(笑)」

山田「効いとらんじゃないかぁっ!(笑)」

「いや、効きすぎて(笑)」

北村「(館長に)ちょっと話は変わりますが、僕は縒木巽君の友人なんですけど、彼の子供の頃って、どんな感じだったんですかね。知ってますか?」

「『うーん、俺がこの村に来たのは、だいたい二十年近く前になるから、よくは解らないが――』(北村の質問の意図を察して)館長が来た頃には既にいましたよ、巽君は」

北村「狭い村ですからねぇ、みんな顔見知りなんですかねぇ」

「うん。顔見知り」

山田「……じゃあ、ここはもういいかな。……ちょっと行きたいところがあるんで。ふたりを載せて、村の病院へ――病院は一件?」

「個人で開いている小さな病院となると、村に一件。でかい病院となると麓まではるばる」

山田「その小さいほうへ」


(山田はここで、何とか縒木一家のカルテを盗み見し、全員の血液型を調べられないか――つまり、巽の出生を探れないか――画策しました。しかし違法行為であるうえに危険も大きいため(侵入関係の技能がなきに等しいため)、諦めざるを得ませんでした)


山田「じゃあ、旅館に戻ります」

日向「女将さんに、香奈ちゃんを探しに(山奥へ)行きたいので、おにぎりを作ってもらえないかなぁーと、それとなく(笑)」

「うーん、じゃあ、どうせ成功するだろうけど<信用>」

日向「鮭、鮭(笑)」

山田「シャケ限定らしいです」

日向「(コロコロ……)やばい。93で失敗しちゃった」

「『お気持ちはありがたいのですが、そういうことは駐在さんに任せて、貴方たちはここにいてくださいな』」

日向「食料品店で買っていけばいいか」

北村「ちょっと、巽君のところに行きたいな」

「はい。巽君の部屋に行きました」

北村「ノックする。巽くーん」

「返事はない」

北村「巽くーん!」

「返事はない」

北村「ちょっと、開けてみる」

「開いた」

北村「顔を入れながら、巽くーん、と」

「誰もいない」

北村「そのまま入っていって――押し入れの上のほうでガムテープで縛られていたりしませんか?(笑)」

「ない(笑)。でも机の上に書き置きがある」

北村「あ。読む」

「見覚えのある巽君の字で、走り書きのだいぶ汚い字ですね。
 『香奈の行き先が解るような気がする。何の根拠もないものだ。だからひとりで確かめに行く。心配しなくていい』」

北村「他に何か、机の上にはないですか?」

「ない」

北村「ないか。――(ふたりに)こんなものが見つかったよ」

日向「それは、旅館の主人に言うべきではないのかい?」

北村「そうだね(笑)」

山田「あっ。北村さん、ちょっと待ってください。いなかったんですよね? 部屋に、人が」

北村「うん」

山田「ちょっと別行動。――部屋に行って、ひととおり本棚を調べてみる。オカルト関係とか宗教色のあるものがないか」

「<図書館>ロール」

山田「(コロコロ……)成功」

「ない」

山田「ないぃぃ。――地図とかない? ここらへんの」

「ないねぇ」

山田「持って行ったのかな」

北村「女将さんのところに走り書きを持っていって、――こんなものが部屋に!」

「『まあ、なんてこと!』――だいぶ慌ててます」

北村「しっかりしてください!」

山田「じゃあ、戻って合流。――なに発狂させてるんですか!(笑)」

「駐在さんも『ただごとじゃないな』と。――駐在さんも実は慌ててまして、いま麓から連絡が入ったんだけど、途中の道が崖崩れということだ」

山田「ああああ。――えっ!? ってことは、ここは――密室に!(嬉しそう)
 犯人は――」

北村「この中にいる!(笑)」

山田「ジャジャン、ドーン(TVアニメ『金田一少年の事件簿』の効果音)」


(金田一少年談義が続くので割愛)


「――だ、そうです」

北村「崖崩れかぁ」

山田「ってことは帰れないんだ。どちらにしろ、しばらくは。
 ――この村から出る方法の、唯一の――?」

「まあ、ちゃんとした道としては」

日向「じゃあ、ウチらはちょっと出てきます、と言って出てしまう」

北村「あ、出る前に、女将さんにもう一回、巽君の行方を探したいんで――ということで、懐中電灯だけ貸してもらいたいなぁ、と」

「貸してくれた」

日向「今なら、おにぎりもいけるかもしれない(一同笑)」

山田「懐中電灯と言えば、遅くなりますよねぇ(笑)」

「おにぎりも作ってくれる(笑)。まあ、このおばさんが、と言うよりは、村のご婦人がたが」

山田「炊き出ししてるんだ。
 ――あ、そうだ、目星があるところってあったけど、その場所自体は書いてないんだよね、その紙には」

「<心理学>!」

(コロコロ……)

日向「失敗だ!」

北村「はい、失敗です」

山田「……訊かないでください」

「じゃあ、判んないなぁ」

山田「お母さんとかに訊いてみたら判んないかな。ダイレクトだけど。
 ……縒木さんの走り書きにあった、めぼしいところについて思い当たる点はありませんか、と訊く」

「みんな<信用>振って」

(コロコロ……)

(日向と北村が成功しました。この場面は、誰かひとりでも成功したらOKの予定でした)

「えーとね、お母さんは『ちょっと、こちらへ来ていただけませんか?』と、みんなだけを別室に呼ぶ」

日向「信用ある人だけ?」

山田「後ろからこっそりと(笑)」

「三人共でいいよ。――『貴方だけは駄目です』なんて言われません(笑)。
 さて……、『心当たりというわけではないのですが、実は巽は――――実の子ではないんです――』」

日向「ええっ!? ――ここはみんな凄く驚かないと(笑)」

北村「なんとなく、顔が似てないとは思っていましたが」

「『あの子自身は全く知らないはずなんですけれど、たぶん四歳か五歳くらいの年齢の頃、ひとりで森の中に倒れていたのを、うちの旦那が見つけて、保護して、育てることになったんですよ。――二十年くらい前になりますか。
 見つけたときは、和服を着ていました。裸足で、だいぶ長い距離を歩いたようで、足は傷だらけでした。着物に"巽"と名が入っていましたから、この子の名前に違いないと思い、そう名づけて養子に迎えました』」


(身元不明の子供を養子にするまでの経緯とか、ややこしい手続きとかは、この際カットです。はい)


「『もしかしたら、あの子が来たのは、方向からしても、世萬かもしれません。
 ……それと――みなさん、巽のお腹をご覧になったことはありますか?』」

山田「?」

北村「いえ、ないですけど」

「夕べも彼だけ温泉に入らなかったしね」

山田「ああ、そうか」

「『あの子のお腹には、何か大怪我をした痕があるんです』」

北村「それは、子供の頃、見つけたときから?」

「『見つけたときはまだ真新しく、つい最近ついた怪我に見えました』」

北村「ほう」

「『丸い、何か尖ったものが刺さったような……決して大きくはないのですが、結構深くて、見つけたときは危険な状態でした。ほとんど奇跡的に助かったのですが』」

山田「後ろまで貫通はしていない?」

「してない」

北村「香奈ちゃんのほうは、間違いなく――?」

「『私が生みました』(笑)」

日向「まあ、旦那は判んないけど(一同笑)」

山田「そうか、連れてこられた別室っていうのは、他の人には聞こえないっていう意味での別室ってことで、特に何があるってわけじゃあないのか」

日向「お話をありがとうございました、ということで。
 ――じゃあ、巽君を捜しに、ちょろっと行ってきます」

「『どうか、気をつけてください』」


(やっと、本格的に事件に足を踏み入れましたね。さて、このズッコケ三人組、これからどうなるのか……。クトゥルー神話に詳しい方なら、早くもこの時点で、既におおよその見当はついているのではないかと思いますが――幸か不幸か、このプレイヤー諸氏は皆、あまり神話に詳しくないんですねぇ。ふふふ……)


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