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Act.6 倶藍の地



そっけなく云うとメルは井戸の蓋に手をかけた。
「美袋くん。君も手伝ってくれ」「開けるのか?」「ああ」「どうして?」「早く」
メルが声を尖らせる。こんな時は逆らわない方がいい。
わたしは駆け寄り、井戸の蓋に手をかけた。

― 麻耶雄嵩 『水難』



世萬の集落

「明るくなって判ってきたんですが……」


(ここでキーパーは、つたない(汚い)手書きの地図を一同に見せます)


「はい、こんな感じ。何て詳細な地図なんでしょう!(笑)」

山田「うわあ、凄ぇ詳細だぁ!」

日向「とりあえず、屋敷の裏まで廻る。また」

「廻った」

山田「扉は相変わらず壊れたまんま?」

「(頷く)」

日向「屋敷訪ねなくていいのかな」

北村「それより前に」

日向「見たほうがいいか」

北村「行ってみましょう」

山田「林のほうへ」

「じゃあ、林に入った。登り坂です。
 ちなみに(地図を示して)この集落、これで全部だから。他には何もない(と、"あるもの"がないことを、秘かに強調)」

山田「――ちょっと、行くの待って。ええと、今は誰も人は出ていない?」

「うん。今は出てない」

山田「ちょっと、田畑に植えられている作物を」

「はい、行きました。えーと、田んぼは涸れてますね。何も植えられてない」

山田「畑は」

「<生物学×2>か<知識1/2>」

(全員<知識>で挑戦)

(コロコロ……)

日向北村「成功」

「成功した人は、この畑は土地がよくないな、ということが判る」

北村「あまり作物を育てるような感じではない?」

「うん。あまり向いてないね」

山田「どうやって食い物喰ってるんだ?」

「それと、田んぼは水路に囲まれているんだけど、水路がこっちに(林のほうに)伸びている」

山田「水は流れている?」

「ない。涸れてる。ちなみに、田んぼのほうもあまり良い土地ではない。それと――<アイデア>振って」

(コロコロ……)

<一同>「成功」

「昔の記録ではだいたい四十人くらいが住んでいると聞いたけど、この田畑の面積で40人全員を一年間養えるものだろうかと疑問に思った」

山田「うーん……。さっき話してた感じ、フツーの子供?」

「うん」

山田「遊んでたのもフツーの子供?」

「うん」

山田「監視してたのもフツーの大人?」

「監視かどうか知らないけど、まあ、見てたのも」

山田「全員」

「普通だよ。目が三つあったけど(笑)」

山田「ええっ!?(笑)。まあ、一個多いだけだから許してあげよう(笑)」


(もちろんジョークです。ジョークですってば)


日向「そこらへんの周りがさ、もともと田んぼだとか畑だったとかいう感じはないわけ?」

「ああ、ないですね」

日向「……ほぼ解ったから行こうか」

山田「あ、解ったんだ(笑)。さすがは日向さん(笑)」

「謎は全て解けた!(笑)」

山田「あとは証拠だけを」

「美雪、これを用意してくれ」

北村「はじめちゃん、こんなものどうするの?」


(金田一少年談義が続くので割愛。しつこいですね)


日向「さっきのチビッ子が指した方向ってのは、ここらへん(大屋敷の裏)なの?」

「うん、そうだね。そのへん」

日向「ふうん。じゃ、そのへんの坂を上る」

「がさごそと森を掻き分けていくと、突然、開けた」

日向「おっ!」


(キーパーは、地図を書き足します)


倶藍の地

山田「あれ?」

「えーとね、まあ、でっかいと言っていいのかな。ある程度の規模の盆地です」

山田「こっち(世萬の集落)ほどではない?」

「うん。やや小さいかな。深さは結構ある。
 盆地の周囲に、鉄籠(てつかご)――篝火(かがりび)を灯すような――が置いてある」

山田「あぁ、こっちでやってるのか(お祭り)」

「そして盆地を見おろすと、底の真ん中に何かがある。丸いものが」

日向「何だろ」

山田「ここからは、よくは――」

「もっと近づかないとね」

山田「その他、あとはない?」

「その他、ここからじゃ判んないかな。
 ――あ、ごめん。大事なの言うの忘れてた」

山田「え?」

「君たちが出てきたところの近くに、古びた石造りの台がある。これくらいの大きさ」


(大人の腰くらいの高さで、畳半畳ほどの面積がある直方体です)


山田「何か載ってるわけではない?」

「別に」

山田「何か書いてあるわけでもない?」

「書いてもいない。汚れたりはしてるけど」

日向「どういう汚れ? 泥汚れ? 雨汚れ?」

「色々」

山田「あんな汚れやこんな汚れも(笑)」

日向「真ん中のそれ、見に行く?」

山田「うん。行きますか」

「じゃ、下りて行ってください。
 えー、結構傾斜激しいです」

山田「うわーっ(笑)」

「うわーっ、と縦に転がる(笑)。
 ――で、下りると、巨大な井戸だと判る。かなりでかい。でけぇっ!(笑)
 でかいと言っても、井戸の背丈はお腹のあたりくらいです」

山田「そこでも恐いな、やっぱり、でかいと」

「本当にでかいよ。直径十メートル近くある」

<一同>「うーわー」

日向「釣瓶(つるべ)と桶はついてる?」

「ついてない。全部蓋が閉まっている。木でできた巨大な蓋が」

日向「開けちゃう?」

山田「その前に、周り、何もない?」

「あ、そうだ、<生物学>か<地質学>の2倍、あるいは<知識>の半分振って」

(コロコロ……)

北村「成功」

「成功したら、ここの土地はだいぶ肥えていて、豊かであるということが判ります。しかし手はつけられていないみたいですね」

北村「ふぅん、……おかしいな。こっちで(農作物)作ればいいのに……」

山田「え? 何を言っているんですか?」

北村「こっちの土地は、凄く土がいいよ」

日向山田「(関心なさそうに)へえー(笑)」

「更に全員が<目星>」

(コロコロ……)

山田「はい成功。01」

「盆地の一角、斜面の途中に、門がついている。頑丈そうなね。えーと、どう説明しようかな……。
 まあ、見に行くとだね、集落から伸びる水路が繋がっている」

山田「ああ!」

日向「その水はどこから来るの?」

「(敢えて無視して)門は閉じている」

山田「――溢れるのか?」

日向「その水はさ、ここ(倶藍の地)が溢れないと、こっち(世萬の集落)に流れないような仕組みになってるってこと?」

「ふーん、水って何の話でしょう?」

日向「水なんかないのにねぇ」

山田「水路の傾斜は? どっち?」

「(倶藍の地へ)登り坂だったよ」

山田「ああ、こう、(世萬の集落へ)流れる"予定"なんだね」

日向「水が流れた跡なんかは見受けられるのかな」

「<地質学>だね」

(コロコロ……)

(一同失敗)

「よく判らない」

日向「何かよく判んないけれど、いいや」

山田「いいや(笑)」

日向「井戸の蓋を開けてしまう」

「重たいので――」

山田「何かあるのかな、専用の開ける器具とか」

北村「一枚の蓋で閉じてあるの?」

「うん」

日向「そりゃ重いね」

山田「十メートルはでかいぞ(笑)。下手すると、そのまま落っこっちゃうからね」

日向「みんなの力を合わせても動かないの?」

山田「三位一体の(笑)」

「えーと、(全員のSTRはそれぞれ6だから)3×6=18だな。じゃ、代表者、(蓋の重量を表すSTRは18なので)50%以下振ってみて下さい」

日向「(コロコロ……)69(笑)」

「うーん、ちょっと動いた」

日向「これを繰り返せばいつかは開くよ」

山田「隙間はできた?」

「できた」

山田「覗けるかな」

「ライトで照らして、何とか覗けるよ」

山田「水?」

「いや。――すぐ底。さっき、お腹のあたりの高さだと言ったけど、もしこの中に入ったとしたら、やはり同じ高さで足がつく」

山田「あれ?」

「すぐ地面になっている」

山田「あれれ?」

「ええと、隙間からだから<目星>だな、こりゃ」

(全員で覗き込んで<目星>ロールをしましたが……(コロコロ……)失敗、失敗、失敗!)

日向「もうちょっと開けようよ」

山田「もうちょっと頑張ろう」

「また50%以下出して」

日向「はい、次の人」

北村「あ、俺?」

山田「代表者変わるんだ(笑)」

「(繰り返されると間抜けな状況だな)――大失敗した場合は、どうにかなるかもしれないので注意してください」

山田「ぐぎっ、てなるよ。ぐぎっ、て(笑)」

日向「なぜかぴったり閉まってしまうからね(一同笑)」

山田「もう絶対開かないくらいぴったり填っちゃうんだ(笑)」

北村「(コロコロ……)あ、成功だ」

「じゃあ、何とか、人ひとりが入るには充分なくらい開いた。
 中を見ると、床に、見たこともないような奇妙な模様が描かれている」

山田「模様?」

「うん。下は、土も多少ばらついてるけど、概ね、石か何かで出来ていて、そこにレリーフ状に刻まれている感じですね。見たこともない奇妙な模様で、見るからに忌まわしい。――<クトゥルフ神話>ロール」

山田「あーい。5%♪ 出てくれれば面白いんだけど……(コロコロ……。失敗)」

「うん、よく判らない。禍々しいものは感じるけど」

山田「何か、見た覚えあるんだけど――ああ、厭な思い出がぁ(去年の事件が尾を引いている)」

北村「下、地面になってるんじゃないの?」

「石です」

日向「中に入ってみようよ。――(突然)中に入っちゃった(一同爆笑)」

山田「ひゅ、日向さん!(笑)」

「みんなで相談してたら、いつのまにか日向さんだけ、立ち位置が井戸の中になってる(笑)」

山田「いつのまに!?(笑)」

日向「中で、よく見てみる」

「よく見てみたけど……ゲジゲジが一匹歩いてるだけ」

日向「何をしようかね」

山田「入ったはいいけど(笑)」

日向「みんなもおいでよ(笑)」

北村「三人で夜まで待つか?」

山田「――あ、底で、何か隠し扉というか、二重底というか、そういうふうになってませんか? 日向さ〜ん(笑)。自分から入ろうとはしないぜ(笑)」

日向「調べちゃおうかな」

「<目星>」

日向「89で失敗」

「そういうのは見つけられなかった」

日向「出ちゃう。――じゃ、次の人入って(笑)」

山田「ひとりずつなんだ。みんなで入ろうか、んじゃ」

北村「次は私が。何かある?」

日向「蓋を閉められるよ(笑)」

「ばーん!(笑)」

山田「誰も入ってませんよ〜(笑)」

「……そうこうしているとね、みなさん、上のほうから視線を感じます。高いところから」

山田「やばい。やばい。やばい」

日向「見返して――みた」

「盆地の上から誰かが見おろしていたらしくて、みんなが振り向くと、ササッと森の中へ隠れていった」

山田「やばい」

日向「――これはもう、出ていってさ、こっちのほうの森(世萬とは逆方向)に入り、夜まで待機する?」

北村「その前に、せっかく入ったから、俺も、隠し通路か何かないか、探して――」

「(にべもなく)ないよ」

山田「(((笑)))))」

日向「その文字みたいなのに触ってみて〜、って言う(一同笑)」

北村「触るのはちょっと勘弁を」

日向「(指で)なぞって〜(一同笑)」

「北村君がなぞっていると、突然指の先が……(笑)」


(閑話休題)


「えーっと、それじゃあねぇ、盆地の斜面の上の、さっき何者かがいた場所とは違う位置、みんなが上ってきたところだね。そこから、『おじさんたち〜っ!』と。さっきの子だね」

山田「あれ?」

日向「なんだ〜い!? って、素敵な笑顔で(笑)」

「『ここ、入っちゃいけないんだよぉ〜!』」

日向「お前もだろぉ〜!(笑)」

「『ぼくは、長に言われて来たんだぁ〜!』」

日向「僕らもだ〜っ!(一同爆笑)」

山田「うわ、嘘丸出しだぁ!(笑)」

「『戻って来てぇ〜!』と言う」

日向「おう! 解ったぁ〜!」

北村「じゃあ、出る」

日向「蓋も一応、閉めないといけない」

「今度はすんなり閉まった」

日向「じゃあ、その素敵なチビッ子のところに行く。素敵なお友達に会いに行く」

「戻ってくると、『んーとね、長がね、外人さんたちを招待してきて、だって』」

山田「(乾いた笑い)ついに。生贄だよ」

日向「ああ、そっかー。やだー(笑)」

山田「今年は三人だよ。三人」

「『だからさ、ちょっと来て』」

日向「うん……」

「そうだ、<心理学>振ってみて。そんなに怪しむんなら」

山田「怪しいよ!」

日向「食べようとしている」

(コロコロ……)

北村日向「成功」

「全然、後ろめたさは感じられないよ♪」

山田「まあ、長が言ってるのは、その言葉だけだからねぇ……」

「あれえ? おかしいなあ(笑)」

山田「どうする? すぐ行きますか?」

日向「とりあえず、行く間に、秘かな声の会議により、ここに何しに来たことにするか(笑)」

山田「口裏合わせておかないと」

北村「そのチビッ子が案内してくれるの?」

「まあ、案内も何も、すぐそこだもん。長の大屋敷は」

山田「ああ、そうか」

日向「民俗学者になろうか?」

北村「にわか民俗学者」

日向「(ダークスーツ姿なので)もう、これでグラサンかけたら、ちょいヤクザ(笑)」

山田「ショバ代取りに来た(笑)」

日向「……行方不明者を探しに来ました、と正直に言うか……いや……。
 じゃ、大学の民族学サークルということで」

北村「サークルいいねぇ」

山田「今年できたばかり。第一回目の研究として」

日向「8回生ぐらいだね、これ(笑)。――そういうことにしておこう」

「じゃあ、連れられていいですね? ――じゃあ連れていって、正面から堂々と……」


(と、こうして我らが探索者一行は、集落の"長"なる者の大屋敷へと足を踏み入れていったのでした……)


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