Opening Act. 1 Act. 2 Act. 3 Act. 4 Act. 5 Act. 6 Act. 7 Act. 8 Act. 9 Act. 10 Ending
Act.4 巨木と祭壇
こういう縮み志向の民族の道路は、当然ながら狭い。
広げると不安になる民族なんだ、日本人は。― 島田荘司 『都市のトパーズ』
(都筑はレールに沿って歩き続けました。TVクルーたちは、自分たちのキャンプ地に戻ってきます)
K「テントの前に見慣れぬものが落ちてますねえ」
森谷「なんだろう? 照らしてみます」
K「キラッと金属的な光を放ちますね。えーと、武器のようです(笑)」
森谷「武器ぃ?」
K「鎌のようです」
森谷「近づいてみる。――質問でーす、これは男か女か?――ってやってから、鎌を取り上げる」
K「この鎌なんですけど、よくドルイド僧が持っているような(一同笑)」
森谷「ショーテルですか」
南田「何を我々にさせたがってるんだろう」
K「湾曲した刃の内側――峰の部分が、でこぼこしてるね。細かーく」
森谷「でこぼこ? 鋸状になってる?」
K「鋸とはちょっと違うけど、そんな感じになってる」
森谷「ソードブレイカー状に」
南田「血はついてるんですか?」
K「血は――ついてます(笑)。新しい血がついてます」
南田「どうやらプロデューサーたちをやった得物らしい」
森谷「握ってペチャッとつきますか」
K「手に血がつきますね」
森谷「他にも変化がないかどうか、自分たちのテントの中を見てみます。荷物とかに異常はないかとか」
K「荒らされてますね」
森谷「荒らされてますか。中身をバラバラッと? なくなってるものとかは?」
K「特にないです」
森谷「たとえば、テントの入口のところに手形がついてたりってことは?」
K「なるほどなるほど(そういうのもいいかもしれない)――べっとりと赤い手形が」
森谷「ということは、だ」
南田「俺の手とピッタリだ(一同笑)」
森谷「ぎゃーっ! カイザー・ソゼッ!(一同笑)
……とりあえず、いいか、ワトソン君、これは犯人がつけたんだぁ! と解りきったことを言ってみたりなんかします。
――こんなとこにはいられねえ! と言って食料品と水をバッグに詰めなおして、武器は――」南田「鎌を持って」
森谷「えー、持つんですか?」
南田「持つさ」
森谷「森を出よう!」
南田「解った!」
(場面転換・山形)
山形「岩手の名前を呼んでも返事なし?」
K「返事なし。見失いました」
山形「あの莫迦」
南田「死んだ人を悪く言うとバチ当たりますよ(一同笑)」
琴音「死んでない死んでない(笑)。いや、判んないけど」
山形「ナイフを抜いて、木に傷つけておきます。数メートル行ったらまた傷つけて」
K「(処理が)面倒なので、この森で迷うことはないです。――走らない限りは(笑)」
山形「北へ行く」
K「はい。特に珍しいオブジェなんかはないですけど、刑事さんは知りませんが、浅賀助教授の資料が落ちてました、ここには。なんだろう、これは? スクラップブックの一ページみたいですよ」
山形「拾う。なんだろう、これは。犯人の手掛かりか?」
たと言えよう。
彼らは独特の宗教を信仰していた。当時の鳴兎子にそれを研究していた者はおらず、残念ながら公式な記録は一切残っていない。手掛かりとなるのは、今もなお存命の古老たちから聞き出せる断片的な記憶の残滓、そして数少ない当時の町民の手記のみである。
それらの情報によれば、なんでも、まだあどけなさの残る無垢な少女が彼らの宗教的指導者つまり教祖として、共同体の頂点に君臨していたという。彼女が大衆の面前に登場することはなく、これはあくまで風の噂としての情報である。
噂というものはとんでもない尾ひれがつき、しかも信じられない馬鹿馬鹿しさにも関わ
山形「やはりこれは、オカルティックな事件だったんだー(笑)と、“信仰”という字を目にしただけで」
(琴音は崖沿いに南下し、ここでも資料の断片を見つけました)
大正十四年(1925年)の晩秋(11月21日)、鳴兎子が火に包まれた。
原因は判っていない。金物屋の主人の寝煙草とも、心ない浮浪者の放火とも、夜勤労務者の焚き火が飛び火したとも言われている。ともかく、陽はとうに沈み、雲ひとつない夜空にぞっとするほど艶やかな満月が煌々と照っていた頃、端緒となる火種が息吹をあげたことだけは確かである。
秋とはいえ、この日は真冬並みの冷え込みと乾燥した空気、そして強い北風まで吹きすさぶ始末で、人々は、夜更かしなどして風邪でもひいてはたまらぬと、いつもの夜よりも早くに床へ就いたものだった。
森谷「ああ、なんか、ちまちまと資料をみんな見つけてる」
(場面転換・都筑)
都筑「恐くなったんで、どっちかに行きますね」
南田「あ、線路を外れた」
K「水たまりに足を踏み入れました。浅いですけどね」
都筑「うわ。パシャ」
K「赤い水たまりです」
<一同>「うわー(笑)」
都筑「やっちまったか」
K「でも別段、それ以外は何も見あたらない」
琴音「血の主はいないの?」
K「うん、見あたらない」
森谷「ええぇ?」
K「まるで血抜きをされたかのようです、この場で」
森谷「なんだそれ」
都筑「手に取って啜ってみる(一同笑)」
琴音「うわー、やめとけ、やめとけ」
南田「血液型判るかもしれない」
都筑「――まだ若い娘だな(笑)」
(場面転換・南田&森谷)
森谷「南へ行きます。帰りたーい」
K「はい、線路です。線路が二股に分かれてる箇所で、転轍機がありますね」
南田「これ、どっちが森の奥側くらいは判りますよね、いくらなんだって」
K「判りますよ」
森谷「一本になってるほうが出口ですよね?」
南田「さっそく向かいましょう」
森谷「目新しいものとかは?」
K「特には。ちなみに現在、線路を真っ直ぐではなく、脇に逸れるように方向が定められています」
南田「思い出してみよう。来た道どっちだった? もちろん覚えてるだろう? 俺は覚えてるぞー」
森谷「すべては心の中にあるのさ」
南田「俺も。大丈夫、判ってる判ってる。よし、ゴー」
森谷「戻ります」
(場面転換・山形)
山形「北へ」
K「壁に突き当たったよ」
山形「おっ」
K「また落ちてたねえ。よかったねえ(笑)」
都筑「雨のように資料が(笑)。空から注いで来るんじゃないのか」
山形「思わず上を見る(笑)」
南田「犯人が行く先々に置いていってる(笑)。さあ来いさあ来いって」
いどんな抵抗の手段があろうか。逃げることも身を庇うこともできないまま、切り刻まれる肉塊と化すしかなかった。
女性、子供、老人の別なく、見つけたそばから殺していった。逃げれば追いかけ、先回りし、囲み、いたぶり、殺した。泣き叫ぶ子供を火に投じた。そのあとで母親をリンチした。部落民に、味方となってくれる者はいなかった。法を順守するべき駐在までもが、暴徒と一緒になって彼らを追い回した。
(場面転換・琴音は南西へ行きますが、特に何もありませんでした。次に都筑)
都筑「水たまりから出たい」
K「はい、出た」
都筑「北西へ」
K「レールがありますね。左右へ延びています」
(場面転換・南田&森谷がレールに沿って南西へ向かいました)
K「誰かがいます」
森谷「?誰がいますか?」
K「ぶっちゃけた話、都筑さんなんですけど(笑)」
南田「よかったー」
森谷「じゃあ、なんか、青年がいるわけですか。おー!」
南田「誰だ、貴様! 鎌構える(笑)」
森谷「うわっうわっ」
南田「貴様がプロデューサーを殺ったんだな!?」
都筑「あ! ドジソンズの森谷!」
南田「ドジソンズを知ってる奴は、悪い奴じゃねえな」
都筑「(南田に)相方さんですか?」
南田「元ナンダ・カンダの南田でーす」
都筑「よろしくー」
森谷「とりあえず、これこれこういう状況だよーんと話そう。で、君はどうしたの?」
都筑「突然誰かが木の杭でうちの大学の先生を串刺しにして殺したあとテントに火をかけて僕らはちりじりになってしまいました」
森谷「やばい奴がうろついているらしいから危ない」
南田「一緒に逃げよう」
森谷「こっちに行けば、たぶん逃げられるはずだ」
都筑「ぜひご一緒させてください」
南田「任せたまえ。我々は食料だって持っている」
都筑「それは素晴らしい。さっそくここで召し上がろう(一同笑)」
(場面転換・山形)
山形「さらに北へ。北東へ」
K「川に出まして、北は滝になっています」
山形「何ぃ? 上から落ちて来るわけだ」
K「そう、滝壺」
山形「川は渡れそう?」
K「このへんはちょっと流れが急ですよ」
山形「じゃあ、川に沿って下る」
(場面転換・琴音)
琴音「琴音ちゃん線路に戻る(北西へ)」
K「おっ、玩具を見つけた」
琴音「やったー」
K「トロッコ〜」
琴音「トロッコに乗るんだー」
K「ギッコンバッタンやるタイプです」
琴音「やっぱり?」
K「小さな恋のメロディごっこができます」
琴音「じゃあ、これから2ヘクス進めるのか(笑)」
山形「錆びてたりして」
K「調べてみますか?」
琴音「はい、もちろん」
K「これは――<機械修理>ロールをどうぞ」
琴音「(コロコロ……)68。うーん」
K「動くか動かないかは、やってみないと判らない」
(場面転換・都筑&南田&森谷)
南田「我々は、何かがあるまでひたすらレール沿いでーす」
K「レールがカーブになっていて南へ続いてますね」
(場面転換・山形)
山形「川に沿って下る。ひたすら」
K「橋があります。さっき川を渡るときに通った橋ではない」
山形「じゃないのか。別の橋か」
K「丸木橋ですね」
山形「足を引きずってるから渡れない」
K「ですね、ちょっと辛いかもしれないね」
山形「下る」
K「<目星>振ってみてください」
山形「(コロコロ……)成功」
K「川の対岸にね、スクラップブックのページが(笑)」
山形「何ーっ! 銃を縛って杖を抱きかかえて――(笑)」
K「あ、ホントに行きます?」
南田「やる気満々だ」
K「拾う気満々なんですね? じゃあ、<登はん>振ってください」
山形「(コロコロ……)失敗」
K「落ちる」
山形「ドボーン」
K「<泳ぐ>ロール」
山形「畜生。(コロコロ……)溺れた(笑)。あ、足がつった。度左右衛門になって今日は終わり?(笑)」
K「果たして彼の運命やいかに?」
山形「あっ」
(場面転換・琴音)
琴音「とりあえずね、動くかどうか漕いでみる」
K「動きます」
琴音「じゃあ、下りて、歩いて南西へ」
K「レールに木が一本倒れかかっています」
琴音「周りは他に木が倒れてなくて、これだけ一本?」
K「ですね」
琴音「意図的に?」
K「それは判らない」
(場面転換・都筑&南田&森谷)
K「南下すると、壁が見えてきた」
森谷「ということは、そろそろ出口ですね。帰れる帰れるー。ていうか、警察呼べる呼べるー」
(場面転換・山形)
K「さて山形さんですが、1ヘクス流されまして、ここで岸に流れ着いた。どっち側についたかはダイスを振って決めてください」
山形「(コロコロ……)2」
K「はい、じゃあ、橋を渡ったところに」
山形「スクラップブックを取りに行こう」
K「それは次のターンなんですが――なんと、ここにも落ちていた」
山形「(笑)」
しいものである。
はじめのうちは行方不明になった者など数えるほどしかいなかったが、日を重ねるうちに数は増し、しかも消えたのは男ばかりだというから――恐らく、噂に高い可憐な少女をひと目見ようといった動機ゆえんであろう――いよいよ噂は真実味を増し、鳴兎子の人々は被差別部落民と疎遠になり、あからさまに蔑視し、見たら石を投じる子供まで出る始末だった。
(場面転換・琴音は北西へ行って、例の木がなぎ倒された道のようなものに出ました。続いて三人組です)
南田「我々は南下」
K「おっ、出口だ」
南田「街の光だぁ!」
K「早っ(笑)」
森谷「やったー」
都筑「帰りましょう」
琴音「なんだよ、みんな出ちゃうのかよー。早く来てよ、こっちのほう。穴が空いてるんだってばー」
南田「あなたの存在自体を知らない(笑)」
K「帰るのですか?」
南田「一応、帰りますねえ」
K「はい、じゃあ、帰ろうとすると――」
都筑「ドスって音がした」
K「(笑)ドスじゃないですね。――突然、地響きが」
山形「(笑)崩れて行き止まりになっちゃうんだ」
K「ゴゴゴ……と地味な地響きがしたあと、目の前で片方の崖がガラガラと」
森谷「うぉーっ、逃げろーって言って逃げます」
K「皆さん逃げますね? じゃあ、逃げぎわ、<目星>を振ってください」
(コロコロ……全員成功)
K「おっ! じゃあ、ガラガラ崩れる崖の合間にね、何か太くて長いモノがのたうってるような――」
森谷「ええーっ!?」
南田「これは三段オチで――ミミズかよ!」
森谷「蕎麦かよ!」
都筑「イソギンチャクかよ!」
K「どうも宇宙的なものに見えるので(一同笑)、<目星>に成功した人は<正気度>ロール」
(コロコロ……全員成功)
K「成功なら減らないです」
都筑「我々、宇宙を見ましたよ」
南田「垣間見たね」
K「一瞬だったんで、あれ? 見間違いかな? という気もしないでもない」
南田「崩れが収まるまで、崖から離れたところにいる。なんかよく判んないけど、ここには大きな生物がいる」
(場面転換・山形)
K「<幸運>ロールをどうぞ」
山形「(コロコロ……)成功」
K「じゃあ、杖をしっかり抱きしめていた」
山形「よかった(笑)」
K「それでは、北上して丸木橋のところですね? 行きますと、資料を拾えます」
て恐れている場所である。それ以上捜索を続けることは危険であり、また、ここに入ったからには放っておいても部落民たちは息絶えるだろうという憶測も相まって、追跡は打ち切られることとなった。
そして妻守山の人喰いの森は、これまで以上に――物理的な意味のみならず、精神的な意味においても――禁忌とされ、足を踏み入れるどころか、近づく者さえいなくなったという。
(場面転換・琴音は地図上の空白を埋めるべく北東へ移動します)
琴音「ときどき、誰かー! とか、助けてー! とか叫んではみてますけど、返事は――」
K「ないですね」
(場面転換・都筑&南田&森谷)
K「崩れた崖を呆然と見ている状態です」
森谷「とりあえず、お話し合いの結果、しばらく逃げられなさそうなので、生き残りを捜して――」
都筑「パーティーのメンツを増やす」
森谷「増やして、この妙な事態を解決するか、プロデューサーを殺したやつないし、学生たちを襲ったやつから身を護ろうという方向性で、戻っていきます」
都筑「琴音ちゃんが心配だ」
K「今回はどちらに?」
森谷「線路沿いに」
南田「学生さんのキャンプ地に行ってみましょうよ。戻ってるかもしんないですし」
K「キャンプの位置が」
琴音「入口が判ったんなら、こっちのほうっていうのは判るじゃん」
都筑「そうか。来た道を逆に辿っていけばいいんだから」
南田「道案内任せた」
K「都筑さん<ナビゲート>の2倍振ってください」
都筑「(コロコロ……)あ、大失敗です」
K「うーん、どっちだったかなぁ」
南田「判んなくなってるー」
琴音「虫に気を取られた(笑)」
都筑「そうだぁ」
K「みんなについていったから、あんまり覚えてない」
(場面転換・山形は川沿いに南下。琴音は北上です)
K「はい、パーティーのみなさん」
南田「とりあえず、分岐まで戻る」
K「レール沿いですね? それでは、カーブのところまで来ました」
(場面転換・山形は川沿いに南下。川がカーブしている地点に来ました。そして琴音)
K「変な言葉ですが、巨大な大木がありました(笑)。ジャイアント・ビッグ・ツリーが」
琴音「巨大な大木がー」
K「その根元のところに、まるで洞穴のようにでっかく、穴が空いてまして。中にね、余裕で何人も入れそうな」
山形「燃やしとこう(笑)」
K「それでですね、その中にですね、よーく見てみると――」
琴音「よーく見ちゃうと(笑)」
K「幅が2メートル、奥行きが1メートル、高さが1メートルぐらいの、直方体状の石造りの、表面に禍々しいレリーフが――」
琴音「禍々しいレリーフだぁ(笑)」
森谷「禍禍禍禍禍禍」
K「――施されてまして、上部は受け皿のように若干凹みがあって――」
琴音「何を受けるんだろうなあ(笑)」
K「そういうものが」
琴音「洞穴の中にね?」
K「外から見た感じだと、そうなってるけど。まだよくは見ていない」
南田「日本とは思えないような……」
K「例の幅広の道らしきものですが、その木の穴の中に続いている。ここに入っているのか出ているのか」
琴音「よく見ます」
K「近づいていくとですね、よくオカルトもので見る、祭壇風のものだなあ、と」
琴音「祭壇でしょう。謎の浅浮き彫りだ」
K「それでですね、ここの地面は多少柔らかめなんですが、裸足の足跡みたいなのがいくつも見受けられます」
琴音「まただ。いくつもだ。うわーい」
K「この祭壇の他の特徴としては、受け皿の真ん中に穴が空いてまして、その穴は中へと延びている」
琴音「なんか、どっかへ行っちゃうんだろうな、溜まった液体が(笑)。うーん」
K「では、<クトゥルフ神話>ロールをどうぞ」
琴音「(コロコロ……)出ません」
K「判りませんねえ。で、祭壇の正面、手前側の側面部ですが、真ん中のあたりに、高さ5センチぐらい、幅が1センチくらいかな、縦状のスリットみたいな切れ込みがある」
琴音「何かを突っ込むのかな。それとも何かが見えるのかな」
K「それと、祭壇がある位置からさらに奥に空間があるみたいだけど、何があるかはよく判らない。祭壇を越えて行くこともできなくはなさそうだけど、身体をギュウギュウ隙間に滑り込ませないと行けない」
琴音「足跡は、一定の向きとかあるんですか?」
K「バラバラ。ちなみに祭壇ですが、なんか、赤黒い汚れがいっぱいこびりついていて、真新しいものもあるぞ」
琴音「やっぱり液体入ってるやんか。受け皿は? 血の臭いする?」
K「ガンガン」
森谷「めちゃめちゃ臭ーいわけですね」
琴音「そこまで見て取ったら外に出て、もう一回、誰かーって叫んで、また動いてみましょう」
K「誰かーって叫ぶんだね」
琴音「うん。え? わらわら出て来ちゃったら厭だわ(笑)」
K「いや、南西の方向の茂みからですね、ガサガサと音が」
琴音「誰!? 誰!? 菜摘ちゃん? それとも――とか言いながら、ガサガサを照射します」
K「茂みの中から、何かキラーンと光るものが、ライトに反射した。なんか、刃物みたいだね」
琴音「刃物?」
K「うん、まーるく曲がって」
山形「出た(笑)」
K「茂みの中からヌッと出てくる」
琴音「そしたら、こっちも負けじと斧を構えるわ。斧を左手に、ライトを右手かな」
K「人影が――姿を現した」
琴音「――さようならぁ(笑)」
森谷「ついに、ついに鷹見琴音の命も風前の灯火に?」
琴音「き、木村くんだと思うんだよねー、私はねー、これ」
森谷「(キーパーを指して)うわー、なんかニヤニヤしてるー(一同笑)」
山形「トラペゾさんは絶対に殺すんだ(笑)」
K「どうしてそうなるのかな?」
山形「だって、いつも殺してるじゃないですか(笑)」
K「人聞きの悪い」
(可哀想な好青年に対する謂われのない誹謗中傷が続くので割愛です。割愛です)
琴音「見覚えのある人ですか?」
K「はい。木村くん」
琴音「ほうら♪ やっぱ木村くーん♪」
K「木村くんがちょっと眩しそうに出てきたよ」
琴音「き、木村くん!?」
K「『あ、どうも』って感じ」
琴音「血濡れた鎌で?」
K「血濡れてはいないよ(笑)」
琴音「どうしたの? そうか、無事だったんだ」
K「『ああ、鷹見さんも。みんなは――見てないですか?』」
琴音「見てない。秋原さんとか、都筑くんとか、どうしちゃったんだろう。今、どっちのほうから来たの?」
K「『川のほうから』」
琴音「川? 途中で何か見た?」
K「『うん、見たよ。これ拾った(鎌ね)。それと、テントがいっぱい張られているところがあって、人がたくさん死んでいたな』」
琴音「ええっ!? 自分らのじゃなくて?」
K「『うん、知らない人が何人か死んでいたよ』」
琴音「そ、それはどうしたの? 鎌」
K「『落ちていたから拾った』」
南田「怪しい」
琴音「だけど、自分の斧だって充分怪しい(笑)」
K「『だって、何か持ってないと不安じゃないか』」
琴音「そ、そうね。じゃあ、これから一緒にみんなを――私、こんなのと一緒にいるの厭なんだけどなぁ(笑)――ひとりよりふたりのほうがいいから、じゃあ、一緒にみんなを捜そうか?」
K「『ああ、いいよ』」
南田「これで別れて行動したら凄いけど(笑)」
琴音「じゃあ、巨木の浅浮き彫りのことは言わずに、自分たちのいたテントの場所って覚えてる? と訊いてみる」
K「『うーん、覚えてないな』」
琴音「だいたいこっちかなって私思うんだけど。こっちのほうに向かって進みましょ」
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