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Act.3 殺戮と彷徨



他者の多数決におもねろうと血道をあげているのがこの国の人々だよ。

― 島田荘司 『ある騎士の物語』



(場面転換)


「さて、TVクルーですが」

琴音「ほれ、来た来た♪」

森谷「ブレア・ウィッチごっこで楽しんでました」

南田「そろそろ寝ようよー。疲れたよー」

森谷「実は俺は体力が有り余ってるんだ。収録がなかったからなー!」

「そうこうしていると、森の奥のほうから、『きゃーっ!』という悲鳴を聞いたような気がした」

森谷「びくぅっ!」

南田「聞き耳を立ててみて、方向を確かめましょう」

「<聞き耳>を振ってみてください」

(コロコロ……)

南田「しっぱーい」

森谷「おっ、成功です」

「では続いて、怒号のような悲鳴がいくつか、微かに聞こえてくるね。同じ方角から。聞き覚えがあるね。スタッフの声だ」

森谷「これは、プロデューサーの誰々さんじゃないか!」

南田「彼らも楽しくブレア・ウィッチごっこだよ(一同笑)」

山形「じゃあ寝よう」

森谷「頭の中では――こいつ俺よりもボケのセンスある! ――と(一同笑)、恐い目で見つめて。南田、お前行け」

南田「うわー、マジすか? あっちですね? そこにいてくださいよ」

森谷「俺はここで、電波が入るかどうか待ってるよ(一同笑)」

「違う電波が」

南田「機材からライト取り出して、これつくかなぁ、と」

「南田さんがひとりで行くんですか?」

森谷「恐っ。途端に心細くなったんで、うわー、待ってー」

「つったかたーと行くとだね、いくつかテントが張られているのを見つける。スタッフたちが張ったテント思うけど。明かりもなく、懐中電灯が転がっていたりしますが」

森谷「なんだ、こんなとこにいたんだ」

南田「おかしいな、まだスープが温かいぞ」

「(笑)スープが温かい前に、」

琴音「死体も温かいぞ(笑)」

「人が何人か倒れてます」

南田「なんだ、こんなとこにいたんですか、ディレクター。ディレクター、ディレクター? 冗談やめてくださいよー」

森谷「こいつ、ボケのセンスがぁ!」

南田「ボケじゃないボケじゃない。首に手を当ててみましょう」

森谷「助け起こしてみたり」

「数名、絶命していますので<正気度>ロールをどうぞ(笑)」

森谷「うぎゃー」

「全員、殺されてますね」

(コロコロ……)

南田森谷 「成功」

「成功したなら減らさなくていいです。ビックリだけで」

南田「し、死んでるよ、おい」

「木でできた杭のようなもので刺されていたり、撲殺されたかのような跡があってみたり」

森谷「びっくりした拍子に――き、きゅ、吸血鬼じゃねえんだコラ!」

琴音「やっと何か言えた(笑)」

森谷「死んでるのかよ!(三村マサカズ風に)(一同笑)――ビクビクしながらあたりを見回してみますが」

「テントのひとつがね、やけに赤いなあ(笑)と思ったら、血がべっとり、ひとつのテントについてますね」

南田「その血はわざとつけられたの? 返り血なのか調べてみますけど」

「自然に飛び散った血ではなくて、塗りたくられたというかぶかけられたというか、そんな感じです」

森谷「恐る恐る中を見てみましょう」

「見ちゃった(笑)」

南田「なんだ、なんだ」

「覗くと、Tプロデューサーが――」

山形「Tプロデューサー(笑)」

南田「これは怨みによる犯行だ」

「テントの壁というか、奥の布のところにですね、立てかけられてますね」

森谷「立てかけられている――って、どういうことですか? こうなっているんですか?(座ったまま、足を投げだすようにして壁によりかかって実演してみる)」

「うーん、両脚がついていたら、そうなっていたでしょうけど――」

<一同>「うわーい」

琴音「あーあ、見ちゃった(笑)」

「両腕両脚が、根元近くで切断されてまして、今にも『ほう』とか言いそうな(一同笑)」

南田「白木の匣に入れて持って帰ってやろう」

「というわけで、<正気度>ロールを今一度」

(コロコロ……)

南田「困ったもんだ。成功ー」

森谷「58です(成功)」

「猟奇的だし知ってる人なので、成功しても1減らしてください」

森谷「じゃあ、唖然としてます」

南田「びっくりしましたねえ」

「唖然とした」

南田「ここはひとつ、冷静になろうじゃないか。息があるかどうか見ます(一同笑)」

森谷「死んでるよ! って突っ込んでおこう」

山形「血の海の中でボケつっこみやっている。凄い」

琴音「手足とかは、そこらへんにあるんですか?」

「手足は見あたらないです」

森谷「見あたらないですか。他に外傷みたいなのって、見受けられますでしょうか? 頭かち割られてるとか」

「はいはい、お腹のあたりから血が流れていますね」

南田「手足は引きちぎられたのかな、それとも切られたのかな」

「こういうのは素人目で判るかなぁ? <医学>の2倍で判ると思います」

南田「(コロコロ……成功)実は実家が医者なんですよー。適当なこと言って」

「判りました。なんらかの鋭利な刃物で切断されているような跡に見える」

南田「人の仕業ですよ」

森谷「人の仕業かぁ、よかったー。――よくねえよ! 突っ込んでしまった。僕はボケなのに(笑)」

「乗り突っ込みだ」

南田「怨恨による犯行ですな(一同笑)」

森谷「正気を保つために、なんとかしてコントに仕立てようとしてる(笑)。コロンボの顔真似したりとかして」

南田「すでに発狂してるんじゃないかなぁ、あの人」

森谷「とりあえず、オエッとかなりそうなので外に出ます」

南田「生きてる人を捜しましょう。誰か、生きてる人いませんかー?(笑)」

森谷「突っ込んでから、真面目に捜し始めます」

南田「まさか全滅とか」

森谷「どうなるんですか、ギャラは出るんですか? 交通費は?(一同笑)」

「生存者は見あたらないですね。全員死んでるというわけではなくて、行方不明が何人か」

南田「逃げた人もいると。正確には何人死んだんですか?」

「死体は、じゃあ――(じゃあって)――4人」

南田「大量殺人ですよぉ」

森谷「プロデューサー含めてですか?」

「含めて4人」

南田「なんでプロデューサーだけ両手両足を持っていかれてしまったんだろう」

「捜しているうちに、この現場の近くで、プロデューサーのものと思しき両腕両脚が、綺麗に揃えて置いてあったのを見つけた(笑)」

森谷「どのように揃えて?」

「棒っきれのように4本並べて」

森谷「ぎゃー」

山形「やだー(笑)」

南田「これはオカルト集団の仕業でしょう。<オカルト>振ってみていいですか?」

森谷「ほう、なるほど」

南田「(コロコロ……)判りません(笑)」

森谷「おかると寛平だっちゅーの」

南田「とりあえず、これはちょっと大変ですよ。街に戻って、助けを呼んでこないと」

森谷「警察呼んでこないと、警察」


(場面転換)


「じゃ、刑事さん」

山形「グロックにライトを取りつけてる(笑)。ライトを向けるとすでに銃口も向けてる(笑)」

「恐っ」

南田「まず最初にヤツが殺人犯だと思うな」

「橋を渡ってすっかり夜ですが」

山形「無線もつけてますので、一応」

「それじゃあ、もう陽は落ちてすっかり暗いのですが、ライトを方々へ向けながらうろついていますと、岩手くんが――」

山形「やばい、死ぬ(笑)」

南田「死ぬために連れてこられたのか(笑)。あまりに哀れだ」

「いや、大丈夫。まだ」

山形「まだ(笑)。やっぱり死ぬ運命にあったのか、岩手」

「『あれ? 山形さん、あれ、なんでしょう?』と言ってライトを向ける」

山形「私もライトを向ける」

「今立っている場所よりは若干小高くなっているところに――でこぼこしている地形なのです――50メートルくらい遠くかな、白い人影が、ぽつんと浮かんでいる」

山形「『誰か!?』と誰何」

「えーとね、手配されている深山光一くん(笑)」

山形「撃つ(笑)」

「撃つんですか? 50メートルだからなぁ。拳銃の射程、なんぼだっけ」

山形「射程20メートル」

「倍でも40か」


(ここでルールの確認。基本射程の2倍の距離に対しては、命中率が半分に。3倍までなら命中率は1/4に。4倍の距離までなら命中率は1/8になります)


「だ、そうです」

山形「当たんねーっ!(笑)やめた」

南田「近づかないと」

山形「岩手、走れ! 命令(笑)」

「『解りました!』」

森谷「あ、山形さんは走りたくても走れないのか」

山形「そうそう。あと無線つけてるから、今。無線いじる」

「はい、いじっててください。――岩手はタッタッタッと走っていきます」

南田「これがヤツを見た最後だった(笑)」

山形「<無線>振るの?」

「なんか、ノイズしか聞こえないですね。ピーガーガヤガヤ」

山形「やばっ。ここ通じないの? もしかして。駄目だ、ここも電波が悪いか」

南田「さすが人喰いの森だ」

都筑「そのうち、岩手さんが走っていった方向から、ドスって音がして」

「いや(笑)。遠くから、パーン! っていう音が」

山形「あ、撃ってるー(笑)」

琴音「こいつも山形と同じかー(笑)」

「いや、判らないよ。犯人が撃っているのかもしれない」

森谷「あ、そうか、拳銃所持してる」

山形「<拳銃>ロールして、それがナンブ式かどうか聞き分ける(笑)」

「<聞き耳>と<拳銃>の両方に成功してください」

南田「結構簡単だな。成功しそうですよ」

「かっこよく決めていいですよ(山形なら聞き慣れていそうだしね)」

山形「てやっ!(コロコロ……)全然駄目」

「じゃあ判んない」

山形「乾いた音がするな」

南田「車のバックファイアですよ(笑)」

山形「DEX3で一生懸命走る」

南田「マジで、若いの帰ってこない(笑)。可哀想に」

「じゃあ、そっちの方向へ向かって、一生懸命走っていくのですね」


(ここでキーパー、何やら紙を数枚取り出します)


「さて、それでは、そろそろ本番かな。みんながバラバラになったところで――(がさごそ)。
 ――ヘクス要る人ー?(笑)」

山形「はーい♪」

琴音「ええーっ」


(キーパーが出したのは、ヘクスの白地図でした)


琴音「私は要らないよ、きっと」

「各自マッピングしてください」

琴音「私は要らないです。すでに現在位置を見失っているし。今いる地点からの地図なら作れるけど」

「それをつけてほしいんです」


(というわけで、これが今回のシナリオ最大の特徴、古き良き懐かしきコンピューターゲームを彷彿とさせる“マッピング作業”であります。各自森をさまよいながら、地図をつけていってもらいます。合流したときに互いの記録をつけ合わせましょう。
 尚、こちらが森の地図となっています。まさかマッピングしながらリプレイを読んでいただくわけにもいかないでしょうから、最初に公表しておきます。諸処の都合により非常に拙く汚いものとなっておりますが、ご参照ください)


「まずは琴音っちから」

琴音「1ヘクスどれくらいの大きさなんですか?」

「二百メートルくらいかな。現在いる地点ですが、森にまるで道のようなものができていますね」

琴音「それはもう、疑わずに進みますね、そっちに」

「道は道なんですけど、幅が三、四メーターぐらいで、まあ人工的に作られたものではあるんでしょうけど、どうも変な作られ方というか、木々が左右にバッタバッタ倒されている(笑)」

琴音「無理やり倒されてんだ(笑)」

南田「巨大なものが這ったような(笑)」

「そう、木々が変な倒れ方をしてますね」

琴音「ちなみに、どっち方向? 前に倒れているのか、後ろに倒れているのか」

「それは、まあ、どっちもどっち(笑)」

南田「その道だけは避けたほうがいいですよ」

琴音「じゃあ、どっちから来たのかは判んないけど、来たと思しきとこにこんなのはなかったから、南の方向に向かっていってみよう」

「そっちへ行くとですね、トロッコのレールが左右に伸びてまして、それが途中で切断されています」

琴音「はーいー? トロッコのレールってのは、来るときにも見たよね?」

「うん、見ましたね」

琴音「別に、錆びてるだけで普通のレールだったよね。切断面は錆びてますか?」

「うん、まあ、錆びてますね。綺麗に切断されてます。ズバッと」

琴音「地面は切断されてます?」

「地面は切断されてないです」

琴音「じゃあ――いいや」

「ひとり1ヘクス進むごとに、どんどん次の人に行っちゃいます」


(場面転換)


「というわけで都筑さん、トロッコのレールに行き当たりました」

都筑「おー」

「そのヘクスの北から来た感じですね。ちなみに学生さんたちバラバラになってから、結構時間は経過したものと思ってください」

琴音「銃声とか叫び声とか、そういうのは聞こえてませんね?」

「はい」

都筑「レールに沿って北西へ」

「レールが延びていますが――そうですねえ、いちいち<目星>振らせるのも面倒なので――何かをみつけました。さっき浅賀助教授のテントの中でちらっと目にしました、先生のスクラップブック――資料を挟んだファイルがありましたが、その一ページだけ、なぜか落ちてます」

都筑「拾ってみますね」

「先生の手書きの文字で色々書いてあって、ところどころ汚れていたりして読みづらかったりはしますが、長い論文か何かの一部のようです」

(キーパー、ハンドアウトを手渡します)

 このような造りの町が災害に脆いことは必然であった。瞬く間に炎は屋根から屋根へと燃え移り、折からの北風に煽られて鳴兎子を覆った。
 ひと晩のうちに鳴兎子のほぼ半分が消失。死者・行方不明者は人口のおよそ三分の一に及んだ。
 鳴兎子に暮らす人々は絶望に打ちひしがれた。自分の命以外の全てを失った者たちが、何人も路上に溢れた。一向に鎮まる様子のない炎はとてつもない熱さを誇っているのに、吹きつける風は憎々しいほどに冷たく、身も心も凍えさせる。



(場面転換)


「はい、お次。TVのおふたりさん。まだスタッフたちのキャンプ地にいます」

南田「自分たちのキャンプに戻って、正確に帰りましょうよ」

森谷「そうですね、とりあえずここを出ます」

南田「そんなに遠く離れてるわけじゃないですよね、音聞こえたくらいだから」

「そうですね」

森谷「あっ、そうだ、カメラなどを持っていきます。南田、お前持てって言って」

南田「いいですよ」

「さっきいたところから南に行くと、さきほど琴音さんが見たのと同じような描写の道がありました。さっき来たときには気づかなかったけれど」

森谷「木がなぎ倒されてる」

南田「熊でも通ったんじゃないか?」

森谷「なるほど」

琴音「納得してる(笑)」

森谷「グリズリーかぁ」

南田「我々のキャンプの方角はこっちでいいのかな」

「そうですね、南から来ました」

森谷「じゃあ、このまま南に向かいます」


(場面転換)


「刑事さん」

山形「グロックを構えつつ走っております。超遅い。足引きずってるし」

「追いかけていくと――<幸運>振ってみてください」

山形「(コロコロ……)成功っす」

「おっ、よかったねえ。それじゃあ、自分が足をドンッと置いたところのすぐ横に、熊用のベア・トラップが(一同笑)あったのを見つけた」

山形「危ねえー!」

森谷「もう片方の足まで動けないようになったら」

「罠は比較的新しい品に見えますね」


(場面転換・琴音)


琴音「とりあえずね、線路に沿って北東へ向かってみるです」

「崖に突き当たりまして、そこに穴が空いている」

琴音「やったー♪(出口だと思ってる)」

「あ、これが炭坑かしら(笑)というものが、黒々と口を開いてまして、その横に、管理小屋のような古びた小屋がある」

琴音「小屋を調べに行ってみましょう。誰かー!? って、いるわけねえ」

「足元を照らしてみると、足跡らしきものを見つけたね」

琴音「つけていくことは」

「不可能ですね。小屋の中の埃にペタンペタンとつけられている。それが、裸足の足跡のような気がする」

森谷「土踏まずがあったりとか?」

「そうですね」

琴音「野人だ(笑)」

「ここには他に、緊急用に使われていたであろう斧が、壁にかけられています」

琴音「斧だ。やったー、強くなった。もちろん、斧を取る」

山形「ピロリロリーン。斧装備」

琴音「装備はしないけど、敵に渡すよりは自分で持っていよう」

「若干錆びてますよ」

琴音「おっきい斧なんですか?」

「大きめだけど、データとしては手斧かな」

琴音「なんだろう、この裸足。でも、中には誰もいないんですよね」

「もちろん」

琴音「じゃあ、また出て、穴の中へ行ってしまおう」

森谷「川口浩が洞窟に」

「炭坑に入りました。入って行くとね――あ、また何か手掛かりが」

琴音「落ちてるらしい。先生の手足――は別になくなってないんだ」

「勝手にバラバラにしないように(笑)。さすがに奥のほうには入っていかないと思うので」

琴音「ええ。入っていきません」

「入口付近に、ふたつのものが落ちているのを見つけた」

琴音「拾いまーす。あ、いや、拾わないものかもしれない(笑)」

「ぶよぶよした紫色のものが(嘘)。ひとつは、これまた派手に錆びたつるはしを見つけた。これを持っていくなら斧は置いていこう」

琴音「つるはしは置いておこう」

「それとね、15センチ四方くらいの、白い紙が落ちている」

琴音「拾ってみよう」

「裏返って落ちていたみたいだね。古ぼけた昔の白黒写真のようです」

山形「なんかゲットしてるよ」

「ライティングが甘いんでしょうね、ほとんど真っ暗」

琴音「なんだよー」

「ところどころ、人影っぽいのが見えるような感じ。でも場所はどこか判らない」

琴音「心霊写真みたいだなー」

「うん、まさに心霊写真みたいに、暗がりの中にひとつだけはっきりと、誰かの目が光ってるというか、くっきり写ってる。真っ暗の中に、目だけポツンと」 写真の瞳

琴音「厭。これ要らないかな。恐いよー。捨てていこうかな、これ。――もとあったところに戻して」

「はい、戻した。でもね、恐いけど綺麗な――というか、凛とした澄んだ瞳ではある。それがかえって不気味だったりもする」

琴音「不気味だから置いていこう。で、炭坑出て、壁に沿って南へ」

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