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Act.1 山岳と森林



あの事件のことを綴ろうとこうしてあらためてペンをとると、
私の精神は恐怖のあまり震えはじめる。
あれはなんとも奇怪で残忍で、いやそれ以上に不可解な事件だった。

― 島田荘司 『暗闇坂の人喰いの木』



キーパー(以下、K)「現在、21世紀初頭の5月1日。ゴールデンウィークの真っ最中でございます。えー、学生は暇でございますね」

琴音「学生は学生で忙しいんだよね」

「いきなりですけど――皆さん、今なぜか森にいます」

山形「あれーっ!?(一同笑)」


(時間短縮のためです。ご了承ください)


「それぞれ、なぜ森にいるかは、これから言いますね。まず学生さんですが、」

琴音都筑「はい」

鳴兎子(なうね)には鳴兎門大学(めいともんだいがく)という総合大学がございまして、そこに浅賀喜義(あさか きよし)という助教授がいます。文化人類学の先生でして、専門が、日本のこのへんの地方、特に鳴兎子の人々の歴史・生活・風習について研究している方なんですが――ちなみに40歳で独身で、騙し絵みたいな顔してます。髭ボーボーで」

南田「上から見ても下から見ても」

「“騙し絵先生”って呼ばれています(笑)」

南田「森の中で逆さ吊りになっても判らない(笑)」

山形「やだな、それ(笑)」

「しまった! 読まれている(笑)。――で、浅賀先生がですね、ゴールデンウィークを利用して、学生たちを何人か引き連れて、」

琴音「バイトだバイトだ」

「そう、まあ学生にしてみれば、キャンプ気分で先生についていってフィールドワークのお手伝いをするだけでお金が貰えちゃうという」

琴音「お金も単位も貰えるね」

都筑「そうだ、単位も貰える。やったー」

「参加者の学生は少なめ、といっても、そんなにたくさんでゾロゾロ行ってもしょうがないですけど。で、そこにですね、琴音さんと都筑さんが行くことになりました。琴音さんのほうは、歴史研究会絡みの興味があるかもしれない」

琴音「ああ、そっかそっか」

「浅賀助教授が言うには、鳴兎子の北にある妻守山(さいがみやま)の中に森があるのですが、その森にですね、鳴兎子の過去に起きた、とある事件の痕跡みたいなのがあるらしくて、そこが鳴兎子の文化人類学の研究上、非常に重要なポイントらしい。この先生個人の調査によるのですが」

琴音「はあー」

「それで調査に行くらしいのですが――ここで全員、鳴兎子出身の方、もしくは鳴兎子での暮らしが長い方は、<知識>ロールを。そうでない方は<知識1/2>ロールをしてください」

(コロコロ……)

琴音「妻守山って、スキー場のあったところだよね」

「今回、そちらとは全然違う方角ですが。――成功した方は? あら、南田さんだけですね。前情報として教えておきましょう。――妻守山の一角に、地元の人も恐れて立ち入らない、“魔の森”らしきものがあるのです(笑)」

琴音「(南田を指して)TVクルーとしては押さえておかなければならない(笑)」

「うん、それなんですね、TV関係者の森へ入る理由は。――森はそんなに大きくないですが、そこがなぜ魔の森になっているのか、心霊スポットになっているのかは知りません」

南田「不明ですか」

「それはまたあとで。――とりあえず学生さん」

都筑「先生もご一緒なんですよね」

琴音「日帰りじゃないですよね」

「もちろん」

都筑「車で行くんですか?」

「途中までは」

都筑「ということは、都筑は自分の車を出してもいいですね」

「はい、構いません。途中からは歩きになりますが」

都筑「そこに趣味の釣り道具を。フィールドワークに使うであろう写真器材は持って歩きますが」

「はい、それで行ったわけですね。――さて、いきなりNPCが何人も出てきてすみませんが、一緒に行く学生たちの名前を挙げておきましょう。四人いますね。まず身鍔護(みつば まもる)。男性、20歳。この人、歴史研究会に所属しています」

琴音「わーい、同じだー」

「お友達でしょうね、たぶん。気弱で真面目な好青年です。眼鏡っ子です(笑)」

琴音「典型的な好青年――なのかな(笑)」

森谷「どうなんでしょう(笑)」

「ロリ顔巨乳の眼鏡っ子です(一同笑)」

都筑「えーと、何をメモしようとしてたか忘れてしまった(笑)」

「身鍔くんは人類学科の学生です。次の人――芹澤菜摘(せりざわ なつみ)さん。女の子、19歳、文学科。こちらは身鍔くんとは対照的に明るく元気溌剌とした活動的な人です。短期バイト感覚というよりは、まさにハイキング感覚で来ているかのような感じではあります。
 次、木村敏夫(きむら としお)くん、男、21歳、史学科。この人は結構がっしりした体格で、無口です」

琴音「岩のような人」

「次、秋原貴志(あきはら たかし)、男、24歳、院生です。人類学のね。浅賀助教授の助手ってほどじゃないですけど、」

琴音「子分その1」

「まあね。その1しかいませんが(笑)。以上4名の学生がついてきます。……菜摘さんと関係を持ちたいという男性キャラはいませんか?」

都筑「持ちたいですねえ(笑)。でもやめときましょう」

「総勢7人パーティーですね」

琴音「教授も入れて」

南田「前衛後衛を決めて(笑)」

琴音「じゃあ、あたし後ろー」

「車で麓まで行って、そこから全員リュックを背負わされて――もちろん浅賀助教授も背負ってますが――、妻守山の登山コースを大きく外れまして……」

都筑「ふむふむ、このへんか(鳴兎子の地図で妻守山の位置を確認中)」

「皆さん、すでに魔の森の話は聞かされてますので」

都筑「なぜ地元の人が恐れているかは、学生ごときには判らないんですか?」

「そうですね、お年寄りの一部くらいでしょう、知っているのは。――その森なんですが、昔は炭坑があったらしくて、そこで掘り出した石炭を運んでいた道の名残はありますけど、ほとんど獣道に近いものとはなってきている。
 地図上でだいたいの位置は教わってますが、浅賀助教授が言うには、その森は盆地状になっているらしくて、周りの地形からガクンと窪んでいるから他と区別しやすいうえに、間違って足を踏み入れてしまうということもほとんどないということだね」


(平地の一部を巨人が掬ったような窪地となっています)


「やがて道には、半ば土に埋もれたレールが見えだしてきます」

琴音「昔、トロッコで運び出していた?」

「そうだね。今はもう使われていない。そんな道を歩きながら、菜摘がレールの上を綱渡りでもするようにバランス取りながら歩いていたりします」

都筑「絵になりますね」

琴音「一応、自分の懐中電灯と電池は持ってきてます」(琴音は闇を恐がる気質なのです)

「はい、いいですよ。やがてそのレールを遡ってゆきますと、ここが森の入口だよ、というところに来ましたね。えーと、左右が絶壁になっています(笑)」

琴音「おかしいよ、これ、あからさまに怪しいですよ(笑)」


(黙りなさい)


都筑「怪しいところ撮っておきます」

「本当に、高い壁に囲まれたクローズドサークルって感じですね」

琴音「ああ、そうか。高いところから下りていくんじゃなくて、自分たちが出たのは、もう低いところなんだ」

「そうですね」

都筑「すり鉢の底みたいなところに出ちゃったと。それで両脇が壁になっていると」

琴音「何か、結界を示す石みたいなのあったりするですか?」

都筑「人影が! とかないですか?」

「まだないです」

琴音「まだ(笑)」

「さて、それではレールに沿って行きます。このへんに来ると、レールがだいぶはっきりとしてきますね。――やがてレールが分かれ道になっていて、そこに転轍機があってみたりして、さらにそれを過ぎていきます」

都筑「どっちかに行くわけですか? 二股の」

「そうですね。分かれ道には曲がらず、真っ直ぐ行きます。で、森に着いたのが午後遅いんで、とりあえずテント張る場所を決めて、今日はカレーか何か作って過ごしましょう(笑)ということになりまして、レールからちょっとそれたあたりに沼がありまして、そのほとりに開けた土地があったので、そこにテントを張ることにしましたとさ」

琴音「水は、川か何かで大丈夫ってこと?」

「飲料水は持ってきてます。顔を洗ったりするのは沼でどうぞ」

琴音「いやーん」

南田「沼ってことは淀んでるんですよね」

都筑「緑色だったりはします?」

「水棲昆虫はいそう」

都筑「別な意味で行ってみてえ(笑)」

琴音「何か釣れそう? お魚とか」

都筑「バッチリ釣れます。今夜のおかず、必ずや釣ってみせます」

琴音「わーい」

「どうしよう、ここで昆虫の写真を撮っている怪しい男を出そうかな(一同笑)」

都筑「すっごい実は期待してたんだけど(笑)」


(『神の子らの密室』参照)


「というわけで、学生さんはここでお休みです」


(場面転換)


「次、TV関係者さん」

南田森谷「はい」

「――と、いうわけで、くだんの心霊スポットへ番組を撮りに行くこととなりました(笑)」

森谷「魔の森ですね」

琴音「レポーター役?」

山形「ADとふたりで?(笑)」

「いやいや、結構大所帯ですので、NPCはすべて端折ります(笑)」

森谷「解ります。なんか、現場のディレクターとかプロデューサーとか」

都筑「ロケ隊ですか」

「そうです、で、レポーター役に森谷さんが」

森谷「車とかで乗りつけたりしてるのですか?」

「麓までは。そこからは歩きです。南田さんは、プロデューサーあたりから、『南田、荷物持て』くらいのことは言われてますね」

南田「力弱いですよー」

「重たい荷物をどんどん押しつけられます」

南田「青ざめた顔してます(笑)」

森谷「芸人なんで、暇そうなていで歩いています。煙草吸いながら」

南田「もうそろそろ道に迷いたいところですな、ふたりで(笑)」

「あれ? みんながいない!(笑)――って、そうしちゃいます?」


(そういうことになりました)


南田「森谷さーん、どこですかー!(笑)」

森谷「おーい、南田ー、南田ー」

南田「みんないなくなっちゃったんですよー」

森谷「なんだって!? そういや、誰もいねえ!」

南田「きっと、目的地で待ってるはずですよ」

森谷「じゃあ、そっちへ向かおう! どこだっけ?」

「まあ、レール辿っていりゃ着くだろうぐらいのことは聞いてますので」

南田「あれ? なんかいい匂いがしますよ」

森谷「え?」

南田「お腹がすいてくる」

森谷「あ! 学生のカレー!」

「まだ会いません(笑)。学生はレールから離れた場所でキャンプしてますんで」

都筑「足跡はあるのかな?」

「地面は草ボーボーだし、特に雨降ってたわけでもないので、足跡は判んないですね」

南田「幸いなことに荷物は私が持ってますんで。キャンプ道具あります」

森谷「やっぱ、持つべきものは後輩だよな」

「――でも、なかなか合流できないなー。あれれ、このままじゃ、日が暮れちゃうよー」

森谷「吸い殻をポタポタ、道ばたに捨てまくりながら歩いてます。スモーキングクリーンじゃないんで」

南田「ヘンデルとグレーテルじゃないんだから」


(場面転換)


「さて、そのころ刑事は――ちょっと話は遡りまして」

山形「はいはい」

「ひと月くらい前から、鳴兎子では連続殺人事件が起きてまして」

山形「うわ(笑)。シリアルキラーだな。じゃあ、銃携帯の許可はすでに出ているわけだな。よし、グロックを使う(笑)」


(日本の警察官が……という突っ込みはあるでしょうけれど、これも次シナリオへの布石だったりします)


「山形さんは、警部補より偉いですか? 偉くないですか?」

山形「警部補、だと思います」

「同じ警部補か。署内には、一条(いちじょう)さんという警部補がいたりします」

山形「やっばー(爆笑)。たぶん喧嘩している」


(『彼女のためにできること』『蝶密室』等参照)


「大変猟奇的な殺人事件でして、被害者・犠牲者は皆、銃で撃たれているんですけど、7.62ミリ弾が現場に残っていたりして、貫通しているものが多いのでトカレフあたりかなと言われてますが――、銃で撃たれているだけじゃなくて、何ヶ所か身体の肉を囓り取られています」

山形「おおー。猟奇じゃないかぁ!」

「歯形はすべて一致している」

都筑「人間の歯形なのかな」

「うん、人ですよ、もちろん」

都筑「いや判らん。人に似た何かかもしれない」

「(笑)その可能性は否定できない」

山形「県警からお偉いさんが来ているわけだ。そんぐらいの事件ともなると」

「それで、つい最近、四人目の犠牲者が出たばかり。で、犯人なんですが――」

山形「だいたいの限定は?」

「もうできてます」

山形「ほーう」

「で、この妻守山に、」

山形「逃げ込んだ(一同笑)」

琴音「やっぱりにゃー(笑)」

都筑「この沼、クリスタルレイクじゃないの?」

森谷「(爆笑)」

「という情報を得てます。ただし、なぜか不思議なこーとにー、上からのお達しで、なぜか、その魔の森だけは調査してはいけないという」

山形「え?」

都筑「妻守山は調査しなきゃいけないけど、魔の森には入っちゃいけないと?」

琴音「つつきたくなるよね、そういうの聞くとねー」

「山形さんとしては?」

山形「埼玉生まれ東京育ちの山形としては――納得できませぇんっ!」

「一条警部補から、『そういうことです。よろしくお願いします、山形さん。くれぐれも、いつものような独断先行は避けていただきたい』と静かに言われる」

山形「指摘されてるけど(笑)」

「まあ、オールバックにスリーピースのキザッたらしい刑事です」

森谷「『ポリス・ストーリー』の署長みたい(笑)」

「どうしましょう? 山形さんには部下がいますけど。岩手竜一(いわて りゅういち)くんという、28歳の刑事ですね。巡査部長あたりかな。まあ、元気溌剌な男です」

山形「こいつを連れてく、と(笑)」

「『よろしくお願いいたします、山形警部補』――敬礼された」

山形「じゃあ、ついて来い!」

「『どちらへ行くのでありますか?』」

山形「そりゃあ、もちろん(笑)」

森谷「うわあ、連れてくんだ(笑)」

山形「だいたい、山形の性格はみんな知ってるから、たぶん汗がツーと出てるだろう(笑)」

森谷「頑張れよルーキー、とか言われて(笑)」

「あと犯人の特徴ですが――」

南田「人を噛む、とかそういう特徴(一同笑)」

都筑「犬に似た顔をしている、とか」

山形「名前は判ってるんですか?」

「うん、特定されちゃってます。名前は――深山光一(みやま こういち)という男。26歳。無職。だた、この男なんですが、犯行現場で一度、ある巡査に目撃されまして、その人が誰何したんですね。そうしたらこの男は、深山光一とは名乗らずに、謎の名前――シラミネキリトと名乗って消えたらしい』」

琴音「なんだそりゃ(笑)」

「では刑事さん、<知識1/2>か<歴史>を振ってみてください」

山形「<知識>の半分で。(コロコロ……)06!」

「過去に鳴兎子で、やはり猟奇的な殺人事件が起こったらしくて、そのときにもシラミネキリトという名が挙がっていることを噂で聞いています」

山形「おおー。それは何年前?」

「だいぶ前だな(笑)」

南田「口裂け女みたいなものですね。ときどき流行る」

山形「模倣犯かもしれない」

「それで、そのシラミネキリトという名前が出た途端、警察内部で、ざわ…ざわ…となりました(笑)」

森谷「山形さんの顎と鼻が伸びてきて(笑)」


(カイジ談義に花が咲きそうになったのでカット)


「腫れ物に触るかのような扱い」

山形「山形はその内容知っているの?」

「詳しくは知らないですね。どうやら何かあるらしいなといった程度」

山形「同僚にちょっと訊く」

「一条さん?」

山形「もうちょっと口の軽そうなやつ」

「はい。じゃあ、<言いくるめ>振ってください」

山形「(コロコロ……)あ、失敗だ」

「じゃあ、『いや、それは……』と口ごもる」

山形「岩手は知ってるの?」

「『いえ、自分はさっぱり。なんのことでありましょうか?』」

山形「吐けーっ(笑)」

「本当に知らないみたい」

山形「駄目かぁ」

「というわけで、山へGO」

琴音「闇雲に進んでいく」

山形「岩手、君もグロック(笑)」

「『私は、この38口径リボルバーが……』」

山形「二丁拳銃で(笑)。グロックいっぱい持ってるから(笑)。これグロック6でしょ、これグロック18、これグロック36……」

「(無視)はい、山に着きました。ちなみに、シラミネキリトを名乗る深山光一が、魔の森付近で地元住民に目撃されたという情報を得ています」

山形「行くっす」

「森に行っちゃいました。で、夕方」

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