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Act. 8 Act. 9 Act. 10 Ending



Act.10 BULLET


その甘ったれた考えが妄想を生み出すんだよ。
人は狂気に触れれば感染する。
特効薬なんぞない。
根性で叩き潰すんだ。
でなきゃ侵されりゃいい。


 第1ラウンド Round 1

「この“Y”こと《神》のDEXは14です」

安原「早っ」

「それと、便利なお助けNPCになりたくないので、イチジョウ警部補は周りの子供たちの相手をすることにします(笑)。なので、イチジョウと子供たちの戦闘は省略します」

安原「近づいてきたのを、パン! パン! パン! って感じなんだ」

「それと、《神》が暴れた衝撃で左右の什器が両方とも崩れまして、無数のトカレフがザザザーッと床に(一同笑)」

神保「撃ち放題なわけだ」

安原「これまた、ジョン・ウーとは違った様式美がここに(笑)」

神保「でも、安全装置がないから、全部床で撥ねてババババババーン! なんてことになったら、どうしよう(笑)」

安原「漫画漫画(笑)」

山形「撃っては投げ、撃っては投げ、撃っては投げ(笑)」

「どれもこれもが鈍色に光ってます」

(ここでプレイヤー全員、右手にモデルガン、左手にダイスで戦闘を開始しました) Tokarev-TT33

安原「ライブ・クトゥルフ(笑)」

神保「この異様な光景は、他の人に見せられない(笑)」

山形「さあ、山形の最期になりましたね」

安原「ですね。もうおしまいだ(笑)」

(気が早い)

「では、安原(DEX11)、神保(DEX10)、山形(DEX3)の順番ですね。ではまず、《神》と神の子供たちですが――まず子供たちは、《神》の降臨にひれ伏して拝んでる。イウォークみたいに(笑)。あるいは、感極まったのか無関心なのか、物心ついてまもない子供のように、フラフラと勝手気ままに歩いたりしている。知能がほとんどないんですね、こいつらは」

神保「はあー、なるほど」

「一方、《神》は近くにいる適当な子供に片手をかざす。すると、子供の頭が、めりんっ、と、なくなったりします」

安原「うげぉ」

山形「喰ってる、喰ってるよ」

「手当たり次第って感じです。1ラウンド目は、これで終わりです」

安原「頭を手で貪り喰ってるわけですね。うげえ」

神保「自分のコピーをいっぱい作って、みんなでどんどんでっかくなるのかなって思ったんだけど、違うか」

「1ラウンド目は、正気度減ったこともあって、飛び道具だけ優先的に撃てる、というのはなくします。皆さん、DEXの順番になってから撃てます」

山形「撃ち放題♪」

安原「どうしよう」

神保「でも、あれだね、俺ら、入ってきた退路をやつに塞がれちゃった形になるけど、マサヤヒカルをとりあえず、吹っ飛ばしたい気持ちがあって――。やつが向こうから来たってことは、向こうに出口があるんじゃなかろうかっていう――」

安原「その推理は成り立ちます」

神保「神保としては、たぶん、〈アイデア〉に成功しないと駄目なのかもしれないけど、思ったと思うんだよな」

「それはもう、プレイヤーの判断で」

神保「よーし、じゃあ、そういうことを、安原に。――おい安原、どう見てもあっちだと思うぜ、っていう話をします」

安原「いや、でも、俺はあいつを放っとけねえよ! って言います。あんなんになっちゃったけどさ、なんとかしてやんなきゃいけないんじゃないかなー?」

神保「――そんなこと言って、どうするつもりなんだ?」

安原「あーうー、よく判んねえけど――どうしよう」

山形「山形は発狂してますから撃ちますけど。撃つ撃つ撃つ撃つ!」

安原「マサヤは何してるんですか?」

「《神》の降臨だー、みたいな感じで感動しています」

神保「じゃあ、《神》を見て度肝を抜かれつつも、神保としてはマサヤを狙いに行きます」

「はい。じゃあ、15メートル弱の距離まで行って、トカレフを構えました」

安原「どうしようかなあ、うーん。――ミツバぁ、なんとかなんねえのかよぉ、おい! とか言ってます」

神保「無駄だ。耳ねえんだから」

安原「あ、そうか」

「貪り喰うための口だけしかないです」

安原「なんとかなんねえのかよー! と言ってます。それでおしまいです、こいつは」

「イチモツがギンギンになってます」

安原「エレクションしてる(笑)」

神保「じゃあ、まず、あのイチモツの下の袋から吹っ飛ばそうか(笑)」

「じゃあ、安原さんは何もしないということで、神保さんはこのラウンドに1発撃てます」

神保「じゃあ、1発撃ちます」

「命中判定をどうぞ」

神保「38口径と同じですよね? で、故障ナンバーは96?」

「そうですね。安原さんのトカレフだけ、故障ナンバー99。じかにマサヤからもらっただけのことはある」

安原「これはいい銃だ」

山形「キシリア様にも――」

「安原さん、弾切れになった場合どうしましょう。捨てて拾えばすぐ撃てますけど、他の銃から弾倉抜いて詰め替えるとしたら、丸々1ラウンドかかる(笑)。まあ、別にダメージが変わるわけではないですが」

安原「故障しづらい、というだけで」

「確率的に、一度空になって捨てたやつをまた拾ってしまうということは、ないものと思ってください」

安原「それだけいっぱいあるわけですね」

(判定面倒だし)

神保「あと、慌てて逃げるときに発煙筒を投げたりすると思うんですけど、これは〈投擲〉で?」

「〈投擲〉ですね」

神保「武器じゃないから、ダメージ与えられるわけじゃないんだよな。――じゃあ、トカレフ1発撃とう。20%以下。(コロコロ……)28出ちゃった。はずれたなー」

「マサヤの顔の近くをかすめていきましたけど、彼はまったく動じず、挑戦的な表情をしています」

神保「撃つだろうな、次のラウンドも」

「では、山形さん。このラウンドではグロックを2発撃てます」

山形「(コロコロ……)はい、当たり。(コロコロ……)ダメージ9点。
 もう1回行きまーす。(コロコロ……)貫通。(コロコロ……)14点」

「えーと、計算機――」

(ここでキーパー、《神》の耐久力を減らすだけではなく、密かに各PCが拳銃で相手に与えたダメージも集計していきます。理由は後述)

山形「貫通も確率上がってるからねー」

安原「でも山形さん、クトゥルフ・ハンターにもなれませんねえ。これ、ただの殺人鬼になっちゃいますよ(笑)」

神保「ここを生き延びて正気に返れば――」

「《神》は赤い血を流します」

安原「もとは人間ですからね」

 第2ラウンド Round 2

「次のラウンド。拳銃持ってる3人が、まず1発ずつ撃てます」

安原「えーと、でも別に、撃たないで、――おい、なんとかなんねえのかよーっ! と言い続けてます」

神保「じゃあ、もう1回、マサヤに向かって」

「ちなみに、命中率を高めたいのであれば、自分のDEXの3分の1メートル以内に行けば――」

神保「3以下ってことですか」

「3メートル以内に近づけば、命中率2倍になります」

神保「近づくと、1ラウンド消費したりしません?」

「します。トカレフ散らばってて歩きにくいし、何より、子供たちを避けながらなので」

神保「でも、逃げるとしたら結局あの方向か。――消費します。あ、でも、うかうか近づくと撃たれるか? いや、でも近づくな。これは、考えずに近づきますね」

「はい。近づきます」

山形「3メートルって、近いよぉ」

神保「いや、神業的な早撃ちの持ち主でもない限り――あ、でも、向こうのDEXが早いと、俺が先に撃たれるのか(笑)」

「では、神保さん、このラウンドは撃てません。〈回避〉はできますが」

神保「はい」

「では、山形さん」

山形「(コロコロ……)あ、はずれた」

「次に《神》ですが、こいつの移動力は――10。早っ(笑)。大股で歩いて、山形さんに近づいてきます」

山形「あ、ゼロ距離射撃? 命中率さらに倍?」

「いや、ゼロ距離ってほどじゃないかな。お互い常に密着し合っているというわけではないですから」

山形「はいはい」

「マサヤヒカルに関しては、ずっと立ち止まっているので、ゼロ距離射撃で好き放題撃っていいですが。《神》は大股でどんどん移動するので」

神保「あー、なるほど」

山形「“大きな対象”のルールは?」

「そこまで大きくはないです」

(SIZ30以上の対象に対しては、SIZ+10ごとに飛び道具の命中率+5%されます。この《神》のSIZは25なので、該当しません)

「で、近づいただけではもちろん終わらず、山形さんにかぶりつきます」

〈一同〉「うわーっ」

(ダイスを振ることもなく)もちろん命中です(笑)。00が出ても命中だもんなあ」

山形「嘘っ」

「だって《神》ですから(笑)」

安原「むさぼり食う100%だから」

「(コロコロ……)ダメージ3点」

山形「痛ーっ。痛たたた」

安原「治癒不能のダメージ(笑)」

(この傷は化膿し、絶対に閉じることはありません)

「山形とかいう刑事が危ないぞ、ということは学生ふたりにも判ります。――で、イチジョウはマイペース」

神保「(笑)」

安原「このおっさんも狂ってるのかもしれないなあ」

神保「頼みの綱にはならないですね」

「子供たちも、物好きなやつらが何体か『美味しそう〜♪』なんて感じで3つの口を開いて寄ってくるのですが、そいつらを着実に撃ち殺してくれています。
 ――では《神》の行動が終わったので、安原さんはトカレフを撃とうとするなら1発撃てます」

安原「じゃあ、そこで、撃ちます。――やめろこの野郎ーっ!」

「どうぞ」

安原「20%以下ですね。(コロコロ……)当たりません。バキューン」

神保「マサヤの胸の真ん中を撃ちたい」

「では、このラウンドで3メートル以内まで近づいて終わりですね」

山形「よーく狙って撃つと、さらに命中率上がらない?」

「“慎重な照準”のルールですね? あれは基本射程が上がるだけで、命中率は変わりません。ゼロ射程の距離も倍になるというメリットはありますが」

山形「変わんないんだ」

神保「射程が伸びるんですか」

「では、山形さんどうぞ」

山形「(コロコロ……)当たり。(コロコロ……)ダメージ7。2発目。(コロコロ……)当たり。(コロコロ……)ダメージ5」

 第3ラウンド Round 3

「次のラウンド。拳銃1発目撃てまーす」

安原「行きまーす。やめれー。(コロコロ……)10、当たりです。貫通にはならないですね。(コロコロ……)ダメージ6です。
 あと3発しか残っていねーや」

「次に、神保さん。40%以下で」

神保「(コロコロ……)えーっ! 62なんか出ちゃったよー! なーんだ」

山形「(コロコロ……)はずれ」

「では次に《神》の行動ですね。このラウンドは特に攻撃してきませんでした。山形さんよりも手近にいる子供たちを捕らえて貪ったり、意図したのかしてないのか、足を踏み出したさいに子供を下敷きにして踏み潰したりしてます」

山形「ぐちゃーって」

「近くにいる山形さんと安原さんは、潰された子供から吹き出る脳漿を被ったりします」

安原「うげえー」

山形「もう狂ってるので(笑)」

「それでは次に、拳銃2発目」

安原「くそー、やめれー。(コロコロ……)89。パーンと撃っておしまい」

神保「マサヤをぶち抜きたいな。(コロコロ……)38、成功。あー、よかった」

「ダメージ1D8どうぞ」

神保「(コロコロ……)8! 最大ダメージを」

「腹にくらって、バタン! と後ろに倒れた。生きているかどうかは、近づいてみないと判らない。ひょっとしたら即死したかもしれない。起き上がってくる気配はないです」

安原「意識不明に突入している可能性もあるわけですね」

「そうですね」

神保「残り全弾撃ちたい気もするけど(笑)」

山形「(コロコロ……)当たり。(コロコロ……)8点。2発目。(コロコロ……)当たり。(コロコロ……)7点」

 第4ラウンド

「次のラウンド。また1発ずつ撃てます」

安原「はい。撃ちます。(コロコロ……)33、はずれです」

「神保さんどうします? 続けて撃ちますか?」

神保「もう1発、マサヤの額にやりたい。キャラ的な気持ちとして」

山形「やっちゃえ、やっちゃえ。脳髄をぶちまけろ!」

「今3メートルの距離なので、2、3歩近づいて、自分のDEXの順番に真上から撃ってもいいですよ。故障ナンバー振らなければ命中ってことで」

神保「はい、そうします。――返り血浴びたら死んだりして(笑)」

「では山形さん、最初の1発を」

山形「(コロコロ……)02、貫通だ。(コロコロ……)ダメージ8」

「次は《神》か。――では、元気のいい山形さんに手を伸ばします。当たるかな? (コロコロ……)当たったー(笑)」

山形「100%だから、当たるよ、そりゃあ(笑)」

安原「邪神にファンブルは存在しない」

「(コロコロ……)3点ダメージ」

安原「じわじわ持ってかれてますね」

「めりんっ、と喰われた」

山形「発狂してるから、痛みは感じない」

「そうですね。血は流れて、体力は失われていきますが。――あるいは、痛みがより憎悪を増して――」

神保「元気になっていくんだ」

「この《神》の前では、あらゆる刺激が憎悪と悪意になります。それは力となり、みなぎってきます。
 ――それでは次に、安原さん」

安原「あと2発しかないですが、そんなことは判らないので、撃ちます。(コロコロ……)69です。はずれバキューン」

「それでは、神保さんはマサヤに近づいていって、撃てます。故障しないかどうかだけ振ってください。96以上で故障です」

神保「(コロコロ……)90。危ねえ(笑)」

「自動命中で、しかも額にくっつけて撃つので、ダメージ2倍で判定してください。2D8で」

(即死でもいいかなという気もしますが、皆さんの総ダメージ算出の都合上)

神保「(コロコロ……)14」

「どうやら死んだようです。目を閉じたまま、ピクリとも動かない。
 ――次は山形さん」

山形「(コロコロ……)命中。(コロコロ……)ダメージ10」

「で、最後の1発」

山形「(コロコロ……)あ、貫通。(コロコロ……)18点」

「はい。では、山形さんの今の1発が胸を貫いた途端、ミツバマモル、いや《神》は、断末魔の痙攣を始めました。両手の口が絶叫しているように開きますが、なんの音も発しません」

安原「もがもがもが」

「両方の口から、赤黒い血がごぼごぼごぼと大量に溢れ出ます。たくさんの弾痕からも、水芸のように血が噴出しています。そして《神》は、盲目滅法にもがき、暴れます。凄まじいパワーで壁にぶつかると、そこからレンガに罅が入り、崩れてしまいます。亀裂は瞬く間に天井や床へと走り、頭上からレンガがボロボロと落ちてきました。――さあ、皆さんどうしましょう?」

山形「発狂してますから、撃ち続けます。危ないとは思わない」

神保「神保は、叫ぶだけ叫びます。――安原ぁっ! こっちだー! ていう感じで」

安原「うわあああーっ、て振り返って横を見ると、カチカチ引き金を引いてる人(山形)がいるんですよね?」

「山形さんは《神》に銃口を向けている? 子供たちではなく?」

山形「そうですね。《神》を撃ちます」

「やがて、《神》の姿が萎んでいきます。しゅるしゅるー。――やがて、その場に取り残されたのは、蜂の巣にされたミツバマモルの死体です」

山形「ああああ」

安原「うげーっ」

「友人の無惨な死体を見たので、学生ふたりとも〈正気度〉ロールを(笑)」

神保「あー」

安原「(コロコロ……)30。成功です。なんだこいつ、結構頑丈だなあ」

神保「(コロコロ……)うわ、やべぇ、00だ!」

「成功は0でいいです。失敗は1D6減らしてください」

(“友人の非業の死を目撃”ってやつです)

安原「危ないですねえ」

神保「よいしょ。(コロコロ……)2」

「(笑)まあ、割と平気(笑)」

神保「いやいやいや(笑)」

「2も減ったので、平気ではないですが(笑)」

安原「正気なら、何をすればいいのか判るような気がするんで――逃げる方向でいきます」

「どちらへ逃げます?」

安原「神保のほうへ行きます」

「はい。では山形さんですが、弾倉を空にしたあとも一心不乱に撃ち続けていると、突然、ゴツンと後頭部を殴られます」

山形「(笑)」

「自動気絶してください(笑)」

山形「はい、します(笑)」

「安原さんが逃げ際に刑事たちのほうを振り返ると、意識朦朧としている山形さんに肩を貸すような形で、イチジョウが運びだそうとしている様子が窺えます。――彼は、もと来た入口のほうへ行きます」

神保「あ、やばいかもしれない(笑)」

「では学生ふたりが奥の通路へ行きます。そうこうしている間にも、壁は崩れ天井はボロボロと落ちてきて、混乱し狂乱している子供たちが犠牲になっています。
 ――薄暗い通路が真っ直ぐ続き、やがて行き止まり。そこに、とても頑丈そうな鉄の扉があります(笑)」

安原「糞ったれ!」

神保「開きませんかね」

「ドンドンドン! 開きません。鍵がかかっています」

神保「鍵か」

安原「生き埋めかよ!」

神保「しまった。俺はなんてところに来ちまったんだ(笑)。っていうふうに、安原に謝って――」

「そのとき不意に背後から――なぜか、マサヤヒカルの声が」

神保「何っ」

「『その扉には合言葉が必要ですよ。おふたりさん』」

安原「銃向けます」

「仰向けに倒れたまま、大きく顎を上げてのけぞり、カッと目を見開いている」

安原「げーっ! 生きてんの、こいつ!?」

「『私は死にません。私はただの依代であり人形でありますから』――その言葉が正しいかどうかはともかく、とりあえず人間ではなさそうですね。うそぶいてるだけかもしれませんが」

山形「こいつも、イゴーロナクの子供?」

神保「ああ、できそこないではないけれども、っていうことかな」

山形「キリトのなり損ね?」

神保「ここでツカモリのように自決しちゃえば、環が断ち切れるような気がするんだけど、キャラ的にはそんな真似はできねえなあ(笑)」

「『その先に何があるか――知らないほうが身のためですよ。ふふふ』」

安原「今から引き返して、入口に行けそうですかね?」

「走ればなんとかなるかも」

神保「どうせ死ぬかもしれないんだったら、そっちのほうがいいかな」

安原「うん。そんなところ(このドアの向こう)には行きたくないですね」

「じゃあ、走りますね? ――それでは、〈DEX×3〉ロール」

安原「33%。うわ、少ねえ!」

山形「成功すると、瓦礫が後ろに落ちてくる中を駆け抜けられるんだ(笑)」

安原「ハリウッド映画っぽくなれる(笑)」

神保「なれるかどうか……」

安原「(コロコロ……)80! 死んだかな?」

神保「(コロコロ……)23。成功!」

「失敗した安原さんは、瓦礫が相当降ってきて、頭上からだから見えないので、〈回避〉の半分を振ってください」

安原「〈回避〉はちょっと上げてたんですよ。21%か。こりゃあ、どうかな。(コロコロ……)34!」

「ボコッと当たった。(コロコロ……)ダメージ4点」

安原「うげーっ! 実は初ダメージです」

「今のロールで、ドームの中央あたりまで行けました。ということで、もう1回、〈DEX×3〉ロールを」

安原「(コロコロ……)03〜!」

神保「(コロコロ……)10!」

「おおっ。じゃあ、無事に、崩れ落ちるドームから抜け出すことができました」

安原「危ねえー」

「すると背後から、またマサヤの声が。哄笑しながら、こんなことを言います。『第2の〈マズルパズル計画〉の終焉です。これでシラミネキリトは甦る――』」

安原「ん? なんだってんだ?」

「瓦礫が崩れ落ち、あとはもう聞こえません」

安原「なんだか、どうでもいいや」

神保「うん。それどころじゃねーや」

山形「……もしかして、俺?(笑)」

「というわけで、なんとかかんとか、全員脱出できました。特に学生ふたりは下水道の地図を頼りに、Parkのところから抜け出せます。ちなみにイチジョウも山形さんを連れて、Parkから抜け出してます。出た場所は、公会堂近くの公園にあるマンホール。4人とも生き残り、ひとり気絶状態です」

安原「出血して気絶している」

神保「あ、救急車呼ばなきゃ」

山形「肩を喰われてるから、腕がプラーン」

神保「生きてますかね?(笑)」

「『恐らく生きているでしょう』とイチジョウ(笑)」

神保「とりあえず自分の携帯で119番を」

「――それでは、なんやかんやで後処理が終わります」

神保「終わるのかな、ほんとに(笑)」

「イチジョウ警部補がよきに計らってくれるので、学生ふたりが銃刀法違反などに問われることはありません(笑)。もちろん事情聴取はされますけどね」

安原「あうあうあうあう」

神保「ツカモリの母ちゃんに合わせる顔がないな」

安原「ないですねえ。ミツバ君のご両親も」

「――では後日、山形さんですが、《神》に貪られた怪我以外は回復しました。精神も落ちつきます。《神》による傷は治りません。医者もさじを投げます。どうやったらこうなるんだ? って」

山形「ああー」

「やがて山形さんはなんとか退院できまして、学生たちはもう、この哀しみを背負って生きていくしかないだろう、みたいな状態です(笑)」

安原「はい」

「山形さんもなんとか日常の生活を取り戻そうとしているときに、アケミさんから連絡が入ります」

山形「はい」

「アケミさんが言うには、『主人の遺品らしきものが、ひとつ見つかったんですけど――私はまだ、聴いていないのですが』」

山形「聴く?」

「『山形さんに預けたほうがよろしいかと思いまして――。先日、ランの誕生日に主人が送ったプレゼントのぬいぐるみの中に、これが入っていたんです』――というわけで、MDを1枚渡されます」

安原「ほう」

「聴きますか?」

山形「聴きます」

「これは、アケミさんがたまたま見つけたもので、ランちゃんは見つけていないだろうと思われます。再生すると、ツカモリダイノスケの肉声が入っていました――」


 これは墓場まで持っていくつもりだったが、やはり俺だけの胸にしまっておくには、あまりにも大きすぎる事実だ。だから、こうして残しておくことにする。この情報のソースは探らないでくれ。相手に迷惑がかかる。
 シラミネキリトは魔の森で生まれた。〈マズルパズル計画〉の申し子として。
 キリトは何人もいた。すべて、誕生時から英才教育を受けた子供たちだった。特殊な教科書を使ったカリキュラムだった。
 教科書の名前は、『グラーキの黙示録 第12巻』。その存在すら疑われる幻の奇書らしい。
 彼らはそのコピーを配布され、内容を忠実に実践し、すべてを暗記した。この本を読んだという事実が、何よりもキリト育成には必要らしい。
 そして卒業試験。妻守山の魔の森。あそこの地形は理想的だった。あの閉鎖空間に、少年たちは解き放たれた。それぞれ1丁ずつトカレフを持たされて。
 生き残った者ひとりが合格という、シンプルなルールだった。
 その生き残りこそが、現在世に知られる殺人鬼、〈ミスト事件〉の犯人、シラミネキリト。
 ここまででも充分に信じがたい話だが、キリト誕生の瞬間は最も信じられない。
 やつは最後のひとりを射殺すると、巨人と邂逅したらしい。
 巨人だ。身体は白熱し、しかも首がない。
 巨人と戦ったわけじゃない。巨人は無抵抗だったそうだ。
 キリトは一方的に巨人を撃ち、そして殺した。
 その瞬間だ。巨人が倒れた瞬間、悪意は受け継がれた。
 こうして真のシラミネキリトが生まれたってわけだ。
 いったいこの光景を誰が見て、誰に伝えたのかは判らない。だから余計信じがたい。
 巨人とはな。
 だが、信じざるをえないだろう。
 シラミネキリトの、あの、最期の姿を見たからにはな。

 ……そもそも、こんな狂った計画を立て、実行したのは、どこのどいつか?
 それは俺も知らない。知った瞬間、命はないだろう。
 しかし言うまでもないことだが、それなりの資金力と組織力がなければ、到底不可能な計画だ。
 そんな真似ができるやつなんて、限られてくるよな。
 そいつは巨人の正体も知っているし、シラミネキリトを具体的にどう活用するか、先の計画まで立てていたんだろう。
 残念ながら俺に殺されちまったが。
 いや――あるいは、すべて計画どおりなのかもしれん。

 ……この録音を誰かが聴いているということは、俺がすでにこの世にいないってことだろう。それは構わない。あの冬の夜、シラミネキリトの心臓に何発も銃弾を撃ちこんだときから、まともな死に方はできないだろうと覚悟はできていた。
 だが、ひとつだけ、気がかりなことがある。
 ……ランは……元気か?



「――そこで、録音は終わってます」

安原「はあん、なるほどなるほど」

「さて、さらに後日。――山形さん」

山形「はい」

「自宅でひとり過ごしていると――おや? 今、窓の外を何かが横切ったような気がする」

山形「うわあ」

「大きな人影のような気がする。しかも首がなかったような気がする」

山形「(笑)」

「朝起きて、顔を洗って鏡を見たら、鏡に映った自分が、一瞬、あの白熱した巨人に見えた」

山形「ああ、そういうことか――」

「無意識のうちに右手を真っ直ぐ前に伸ばし、人差し指を動かしています。引き金を引く動作。――無性に誰かを銃で撃ち殺したくなりました。早く誰かを殺さないと!
 ……そのとき鏡には、完全に、白熱する首のない巨人の姿が映っていました……」


G A M E O V E R

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