Opening Act. 1 Act. 2 Act. 3 Act. 4 Act. 5 Act. 6 Act. 7 Act. 8 Act. 9 Act. 10 Ending
Act.10 BULLET
その甘ったれた考えが妄想を生み出すんだよ。
人は狂気に触れれば感染する。
特効薬なんぞない。
根性で叩き潰すんだ。
でなきゃ侵されりゃいい。
第1ラウンド
K「この“Y”こと《神》のDEXは14です」
安原「早っ」
K「それと、便利なお助けNPCになりたくないので、イチジョウ警部補は周りの子供たちの相手をすることにします(笑)。なので、イチジョウと子供たちの戦闘は省略します」
安原「近づいてきたのを、パン! パン! パン! って感じなんだ」
K「それと、《神》が暴れた衝撃で左右の什器が両方とも崩れまして、無数のトカレフがザザザーッと床に(一同笑)」
神保「撃ち放題なわけだ」
安原「これまた、ジョン・ウーとは違った様式美がここに(笑)」
神保「でも、安全装置がないから、全部床で撥ねてババババババーン! なんてことになったら、どうしよう(笑)」
安原「漫画漫画(笑)」
山形「撃っては投げ、撃っては投げ、撃っては投げ(笑)」
K「どれもこれもが鈍色に光ってます」
(ここでプレイヤー全員、右手にモデルガン、左手にダイスで戦闘を開始しました)
安原「ライブ・クトゥルフ(笑)」
神保「この異様な光景は、他の人に見せられない(笑)」
山形「さあ、山形の最期になりましたね」
安原「ですね。もうおしまいだ(笑)」
(気が早い)
K「では、安原(DEX11)、神保(DEX10)、山形(DEX3)の順番ですね。ではまず、《神》と神の子供たちですが――まず子供たちは、《神》の降臨にひれ伏して拝んでる。イウォークみたいに(笑)。あるいは、感極まったのか無関心なのか、物心ついてまもない子供のように、フラフラと勝手気ままに歩いたりしている。知能がほとんどないんですね、こいつらは」
神保「はあー、なるほど」
K「一方、《神》は近くにいる適当な子供に片手をかざす。すると、子供の頭が、めりんっ、と、なくなったりします」
安原「うげぉ」
山形「喰ってる、喰ってるよ」
K「手当たり次第って感じです。1ラウンド目は、これで終わりです」
安原「頭を手で貪り喰ってるわけですね。うげえ」
神保「自分のコピーをいっぱい作って、みんなでどんどんでっかくなるのかなって思ったんだけど、違うか」
K「1ラウンド目は、正気度減ったこともあって、飛び道具だけ優先的に撃てる、というのはなくします。皆さん、DEXの順番になってから撃てます」
山形「撃ち放題♪」
安原「どうしよう」
神保「でも、あれだね、俺ら、入ってきた退路をやつに塞がれちゃった形になるけど、マサヤヒカルをとりあえず、吹っ飛ばしたい気持ちがあって――。やつが向こうから来たってことは、向こうに出口があるんじゃなかろうかっていう――」
安原「その推理は成り立ちます」
神保「神保としては、たぶん、〈アイデア〉に成功しないと駄目なのかもしれないけど、思ったと思うんだよな」
K「それはもう、プレイヤーの判断で」
神保「よーし、じゃあ、そういうことを、安原に。――おい安原、どう見てもあっちだと思うぜ、っていう話をします」
安原「いや、でも、俺はあいつを放っとけねえよ! って言います。あんなんになっちゃったけどさ、なんとかしてやんなきゃいけないんじゃないかなー?」
神保「――そんなこと言って、どうするつもりなんだ?」
安原「あーうー、よく判んねえけど――どうしよう」
山形「山形は発狂してますから撃ちますけど。撃つ撃つ撃つ撃つ!」
安原「マサヤは何してるんですか?」
K「《神》の降臨だー、みたいな感じで感動しています」
神保「じゃあ、《神》を見て度肝を抜かれつつも、神保としてはマサヤを狙いに行きます」
K「はい。じゃあ、15メートル弱の距離まで行って、トカレフを構えました」
安原「どうしようかなあ、うーん。――ミツバぁ、なんとかなんねえのかよぉ、おい! とか言ってます」
神保「無駄だ。耳ねえんだから」
安原「あ、そうか」
K「貪り喰うための口だけしかないです」
安原「なんとかなんねえのかよー! と言ってます。それでおしまいです、こいつは」
K「イチモツがギンギンになってます」
安原「エレクションしてる(笑)」
神保「じゃあ、まず、あのイチモツの下の袋から吹っ飛ばそうか(笑)」
K「じゃあ、安原さんは何もしないということで、神保さんはこのラウンドに1発撃てます」
神保「じゃあ、1発撃ちます」
K「命中判定をどうぞ」
神保「38口径と同じですよね? で、故障ナンバーは96?」
K「そうですね。安原さんのトカレフだけ、故障ナンバー99。じかにマサヤからもらっただけのことはある」
安原「これはいい銃だ」
山形「キシリア様にも――」
K「安原さん、弾切れになった場合どうしましょう。捨てて拾えばすぐ撃てますけど、他の銃から弾倉抜いて詰め替えるとしたら、丸々1ラウンドかかる(笑)。まあ、別にダメージが変わるわけではないですが」
安原「故障しづらい、というだけで」
K「確率的に、一度空になって捨てたやつをまた拾ってしまうということは、ないものと思ってください」
安原「それだけいっぱいあるわけですね」
(判定面倒だし)
神保「あと、慌てて逃げるときに発煙筒を投げたりすると思うんですけど、これは〈投擲〉で?」
K「〈投擲〉ですね」
神保「武器じゃないから、ダメージ与えられるわけじゃないんだよな。――じゃあ、トカレフ1発撃とう。20%以下。(コロコロ……)28出ちゃった。はずれたなー」
K「マサヤの顔の近くをかすめていきましたけど、彼はまったく動じず、挑戦的な表情をしています」
神保「撃つだろうな、次のラウンドも」
K「では、山形さん。このラウンドではグロックを2発撃てます」
山形「(コロコロ……)はい、当たり。(コロコロ……)ダメージ9点。
もう1回行きまーす。(コロコロ……)貫通。(コロコロ……)14点」K「えーと、計算機――」
(ここでキーパー、《神》の耐久力を減らすだけではなく、密かに各PCが拳銃で相手に与えたダメージも集計していきます。理由は後述)
山形「貫通も確率上がってるからねー」
安原「でも山形さん、クトゥルフ・ハンターにもなれませんねえ。これ、ただの殺人鬼になっちゃいますよ(笑)」
神保「ここを生き延びて正気に返れば――」
K「《神》は赤い血を流します」
安原「もとは人間ですからね」
第2ラウンド
K「次のラウンド。拳銃持ってる3人が、まず1発ずつ撃てます」
安原「えーと、でも別に、撃たないで、――おい、なんとかなんねえのかよーっ! と言い続けてます」
神保「じゃあ、もう1回、マサヤに向かって」
K「ちなみに、命中率を高めたいのであれば、自分のDEXの3分の1メートル以内に行けば――」
神保「3以下ってことですか」
K「3メートル以内に近づけば、命中率2倍になります」
神保「近づくと、1ラウンド消費したりしません?」
K「します。トカレフ散らばってて歩きにくいし、何より、子供たちを避けながらなので」
神保「でも、逃げるとしたら結局あの方向か。――消費します。あ、でも、うかうか近づくと撃たれるか? いや、でも近づくな。これは、考えずに近づきますね」
K「はい。近づきます」
山形「3メートルって、近いよぉ」
神保「いや、神業的な早撃ちの持ち主でもない限り――あ、でも、向こうのDEXが早いと、俺が先に撃たれるのか(笑)」
K「では、神保さん、このラウンドは撃てません。〈回避〉はできますが」
神保「はい」
K「では、山形さん」
山形「(コロコロ……)あ、はずれた」
K「次に《神》ですが、こいつの移動力は――10。早っ(笑)。大股で歩いて、山形さんに近づいてきます」
山形「あ、ゼロ距離射撃? 命中率さらに倍?」
K「いや、ゼロ距離ってほどじゃないかな。お互い常に密着し合っているというわけではないですから」
山形「はいはい」
K「マサヤヒカルに関しては、ずっと立ち止まっているので、ゼロ距離射撃で好き放題撃っていいですが。《神》は大股でどんどん移動するので」
神保「あー、なるほど」
山形「“大きな対象”のルールは?」
K「そこまで大きくはないです」
(SIZ30以上の対象に対しては、SIZ+10ごとに飛び道具の命中率+5%されます。この《神》のSIZは25なので、該当しません)
K「で、近づいただけではもちろん終わらず、山形さんにかぶりつきます」
〈一同〉「うわーっ」
K「(ダイスを振ることもなく)もちろん命中です(笑)。00が出ても命中だもんなあ」
山形「嘘っ」
K「だって《神》ですから(笑)」
安原「むさぼり食う100%だから」
K「(コロコロ……)ダメージ3点」
山形「痛ーっ。痛たたた」
安原「治癒不能のダメージ(笑)」
(この傷は化膿し、絶対に閉じることはありません)
K「山形とかいう刑事が危ないぞ、ということは学生ふたりにも判ります。――で、イチジョウはマイペース」
神保「(笑)」
安原「このおっさんも狂ってるのかもしれないなあ」
神保「頼みの綱にはならないですね」
K「子供たちも、物好きなやつらが何体か『美味しそう〜♪』なんて感じで3つの口を開いて寄ってくるのですが、そいつらを着実に撃ち殺してくれています。
――では《神》の行動が終わったので、安原さんはトカレフを撃とうとするなら1発撃てます」安原「じゃあ、そこで、撃ちます。――やめろこの野郎ーっ!」
K「どうぞ」
安原「20%以下ですね。(コロコロ……)当たりません。バキューン」
神保「マサヤの胸の真ん中を撃ちたい」
K「では、このラウンドで3メートル以内まで近づいて終わりですね」
山形「よーく狙って撃つと、さらに命中率上がらない?」
K「“慎重な照準”のルールですね? あれは基本射程が上がるだけで、命中率は変わりません。ゼロ射程の距離も倍になるというメリットはありますが」
山形「変わんないんだ」
神保「射程が伸びるんですか」
K「では、山形さんどうぞ」
山形「(コロコロ……)当たり。(コロコロ……)ダメージ7。2発目。(コロコロ……)当たり。(コロコロ……)ダメージ5」
第3ラウンド
K「次のラウンド。拳銃1発目撃てまーす」
安原「行きまーす。やめれー。(コロコロ……)10、当たりです。貫通にはならないですね。(コロコロ……)ダメージ6です。
あと3発しか残っていねーや」K「次に、神保さん。40%以下で」
神保「(コロコロ……)えーっ! 62なんか出ちゃったよー! なーんだ」
山形「(コロコロ……)はずれ」
K「では次に《神》の行動ですね。このラウンドは特に攻撃してきませんでした。山形さんよりも手近にいる子供たちを捕らえて貪ったり、意図したのかしてないのか、足を踏み出したさいに子供を下敷きにして踏み潰したりしてます」
山形「ぐちゃーって」
K「近くにいる山形さんと安原さんは、潰された子供から吹き出る脳漿を被ったりします」
安原「うげえー」
山形「もう狂ってるので(笑)」
K「それでは次に、拳銃2発目」
安原「くそー、やめれー。(コロコロ……)89。パーンと撃っておしまい」
神保「マサヤをぶち抜きたいな。(コロコロ……)38、成功。あー、よかった」
K「ダメージ1D8どうぞ」
神保「(コロコロ……)8! 最大ダメージを」
K「腹にくらって、バタン! と後ろに倒れた。生きているかどうかは、近づいてみないと判らない。ひょっとしたら即死したかもしれない。起き上がってくる気配はないです」
安原「意識不明に突入している可能性もあるわけですね」
K「そうですね」
神保「残り全弾撃ちたい気もするけど(笑)」
山形「(コロコロ……)当たり。(コロコロ……)8点。2発目。(コロコロ……)当たり。(コロコロ……)7点」
第4ラウンド
K「次のラウンド。また1発ずつ撃てます」
安原「はい。撃ちます。(コロコロ……)33、はずれです」
K「神保さんどうします? 続けて撃ちますか?」
神保「もう1発、マサヤの額にやりたい。キャラ的な気持ちとして」
山形「やっちゃえ、やっちゃえ。脳髄をぶちまけろ!」
K「今3メートルの距離なので、2、3歩近づいて、自分のDEXの順番に真上から撃ってもいいですよ。故障ナンバー振らなければ命中ってことで」
神保「はい、そうします。――返り血浴びたら死んだりして(笑)」
K「では山形さん、最初の1発を」
山形「(コロコロ……)02、貫通だ。(コロコロ……)ダメージ8」
K「次は《神》か。――では、元気のいい山形さんに手を伸ばします。当たるかな? (コロコロ……)当たったー(笑)」
山形「100%だから、当たるよ、そりゃあ(笑)」
安原「邪神にファンブルは存在しない」
K「(コロコロ……)3点ダメージ」
安原「じわじわ持ってかれてますね」
K「めりんっ、と喰われた」
山形「発狂してるから、痛みは感じない」
K「そうですね。血は流れて、体力は失われていきますが。――あるいは、痛みがより憎悪を増して――」
神保「元気になっていくんだ」
K「この《神》の前では、あらゆる刺激が憎悪と悪意になります。それは力となり、みなぎってきます。
――それでは次に、安原さん」安原「あと2発しかないですが、そんなことは判らないので、撃ちます。(コロコロ……)69です。はずれバキューン」
K「それでは、神保さんはマサヤに近づいていって、撃てます。故障しないかどうかだけ振ってください。96以上で故障です」
神保「(コロコロ……)90。危ねえ(笑)」
K「自動命中で、しかも額にくっつけて撃つので、ダメージ2倍で判定してください。2D8で」
(即死でもいいかなという気もしますが、皆さんの総ダメージ算出の都合上)
神保「(コロコロ……)14」
K「どうやら死んだようです。目を閉じたまま、ピクリとも動かない。
――次は山形さん」山形「(コロコロ……)命中。(コロコロ……)ダメージ10」
K「で、最後の1発」
山形「(コロコロ……)あ、貫通。(コロコロ……)18点」
K「はい。では、山形さんの今の1発が胸を貫いた途端、ミツバマモル、いや《神》は、断末魔の痙攣を始めました。両手の口が絶叫しているように開きますが、なんの音も発しません」
安原「もがもがもが」
K「両方の口から、赤黒い血がごぼごぼごぼと大量に溢れ出ます。たくさんの弾痕からも、水芸のように血が噴出しています。そして《神》は、盲目滅法にもがき、暴れます。凄まじいパワーで壁にぶつかると、そこからレンガに罅が入り、崩れてしまいます。亀裂は瞬く間に天井や床へと走り、頭上からレンガがボロボロと落ちてきました。――さあ、皆さんどうしましょう?」
山形「発狂してますから、撃ち続けます。危ないとは思わない」
神保「神保は、叫ぶだけ叫びます。――安原ぁっ! こっちだー! ていう感じで」
安原「うわあああーっ、て振り返って横を見ると、カチカチ引き金を引いてる人(山形)がいるんですよね?」
K「山形さんは《神》に銃口を向けている? 子供たちではなく?」
山形「そうですね。《神》を撃ちます」
K「やがて、《神》の姿が萎んでいきます。しゅるしゅるー。――やがて、その場に取り残されたのは、蜂の巣にされたミツバマモルの死体です」
山形「ああああ」
安原「うげーっ」
K「友人の無惨な死体を見たので、学生ふたりとも〈正気度〉ロールを(笑)」
神保「あー」
安原「(コロコロ……)30。成功です。なんだこいつ、結構頑丈だなあ」
神保「(コロコロ……)うわ、やべぇ、00だ!」
K「成功は0でいいです。失敗は1D6減らしてください」
(“友人の非業の死を目撃”ってやつです)
安原「危ないですねえ」
神保「よいしょ。(コロコロ……)2」
K「(笑)まあ、割と平気(笑)」
神保「いやいやいや(笑)」
K「2も減ったので、平気ではないですが(笑)」
安原「正気なら、何をすればいいのか判るような気がするんで――逃げる方向でいきます」
K「どちらへ逃げます?」
安原「神保のほうへ行きます」
K「はい。では山形さんですが、弾倉を空にしたあとも一心不乱に撃ち続けていると、突然、ゴツンと後頭部を殴られます」
山形「(笑)」
K「自動気絶してください(笑)」
山形「はい、します(笑)」
K「安原さんが逃げ際に刑事たちのほうを振り返ると、意識朦朧としている山形さんに肩を貸すような形で、イチジョウが運びだそうとしている様子が窺えます。――彼は、もと来た入口のほうへ行きます」
神保「あ、やばいかもしれない(笑)」
K「では学生ふたりが奥の通路へ行きます。そうこうしている間にも、壁は崩れ天井はボロボロと落ちてきて、混乱し狂乱している子供たちが犠牲になっています。
――薄暗い通路が真っ直ぐ続き、やがて行き止まり。そこに、とても頑丈そうな鉄の扉があります(笑)」安原「糞ったれ!」
神保「開きませんかね」
K「ドンドンドン! 開きません。鍵がかかっています」
神保「鍵か」
安原「生き埋めかよ!」
神保「しまった。俺はなんてところに来ちまったんだ(笑)。っていうふうに、安原に謝って――」
K「そのとき不意に背後から――なぜか、マサヤヒカルの声が」
神保「何っ」
K「『その扉には合言葉が必要ですよ。おふたりさん』」
安原「銃向けます」
K「仰向けに倒れたまま、大きく顎を上げてのけぞり、カッと目を見開いている」
安原「げーっ! 生きてんの、こいつ!?」
K「『私は死にません。私はただの依代であり人形でありますから』――その言葉が正しいかどうかはともかく、とりあえず人間ではなさそうですね。うそぶいてるだけかもしれませんが」
山形「こいつも、イゴーロナクの子供?」
神保「ああ、できそこないではないけれども、っていうことかな」
山形「キリトのなり損ね?」
神保「ここでツカモリのように自決しちゃえば、環が断ち切れるような気がするんだけど、キャラ的にはそんな真似はできねえなあ(笑)」
K「『その先に何があるか――知らないほうが身のためですよ。ふふふ』」
安原「今から引き返して、入口に行けそうですかね?」
K「走ればなんとかなるかも」
神保「どうせ死ぬかもしれないんだったら、そっちのほうがいいかな」
安原「うん。そんなところ(このドアの向こう)には行きたくないですね」
K「じゃあ、走りますね? ――それでは、〈DEX×3〉ロール」
安原「33%。うわ、少ねえ!」
山形「成功すると、瓦礫が後ろに落ちてくる中を駆け抜けられるんだ(笑)」
安原「ハリウッド映画っぽくなれる(笑)」
神保「なれるかどうか……」
安原「(コロコロ……)80! 死んだかな?」
神保「(コロコロ……)23。成功!」
K「失敗した安原さんは、瓦礫が相当降ってきて、頭上からだから見えないので、〈回避〉の半分を振ってください」
安原「〈回避〉はちょっと上げてたんですよ。21%か。こりゃあ、どうかな。(コロコロ……)34!」
K「ボコッと当たった。(コロコロ……)ダメージ4点」
安原「うげーっ! 実は初ダメージです」
K「今のロールで、ドームの中央あたりまで行けました。ということで、もう1回、〈DEX×3〉ロールを」
安原「(コロコロ……)03〜!」
神保「(コロコロ……)10!」
K「おおっ。じゃあ、無事に、崩れ落ちるドームから抜け出すことができました」
安原「危ねえー」
K「すると背後から、またマサヤの声が。哄笑しながら、こんなことを言います。『第2の〈マズルパズル計画〉の終焉です。これでシラミネキリトは甦る――』」
安原「ん? なんだってんだ?」
K「瓦礫が崩れ落ち、あとはもう聞こえません」
安原「なんだか、どうでもいいや」
神保「うん。それどころじゃねーや」
山形「……もしかして、俺?(笑)」
K「というわけで、なんとかかんとか、全員脱出できました。特に学生ふたりは下水道の地図を頼りに、Parkのところから抜け出せます。ちなみにイチジョウも山形さんを連れて、Parkから抜け出してます。出た場所は、公会堂近くの公園にあるマンホール。4人とも生き残り、ひとり気絶状態です」
安原「出血して気絶している」
神保「あ、救急車呼ばなきゃ」
山形「肩を喰われてるから、腕がプラーン」
神保「生きてますかね?(笑)」
K「『恐らく生きているでしょう』とイチジョウ(笑)」
神保「とりあえず自分の携帯で119番を」
K「――それでは、なんやかんやで後処理が終わります」
神保「終わるのかな、ほんとに(笑)」
K「イチジョウ警部補がよきに計らってくれるので、学生ふたりが銃刀法違反などに問われることはありません(笑)。もちろん事情聴取はされますけどね」
安原「あうあうあうあう」
神保「ツカモリの母ちゃんに合わせる顔がないな」
安原「ないですねえ。ミツバ君のご両親も」
K「――では後日、山形さんですが、《神》に貪られた怪我以外は回復しました。精神も落ちつきます。《神》による傷は治りません。医者もさじを投げます。どうやったらこうなるんだ? って」
山形「ああー」
K「やがて山形さんはなんとか退院できまして、学生たちはもう、この哀しみを背負って生きていくしかないだろう、みたいな状態です(笑)」
安原「はい」
K「山形さんもなんとか日常の生活を取り戻そうとしているときに、アケミさんから連絡が入ります」
山形「はい」
K「アケミさんが言うには、『主人の遺品らしきものが、ひとつ見つかったんですけど――私はまだ、聴いていないのですが』」
山形「聴く?」
K「『山形さんに預けたほうがよろしいかと思いまして――。先日、ランの誕生日に主人が送ったプレゼントのぬいぐるみの中に、これが入っていたんです』――というわけで、MDを1枚渡されます」
安原「ほう」
K「聴きますか?」
山形「聴きます」
K「これは、アケミさんがたまたま見つけたもので、ランちゃんは見つけていないだろうと思われます。再生すると、ツカモリダイノスケの肉声が入っていました――」
これは墓場まで持っていくつもりだったが、やはり俺だけの胸にしまっておくには、あまりにも大きすぎる事実だ。だから、こうして残しておくことにする。この情報のソースは探らないでくれ。相手に迷惑がかかる。
シラミネキリトは魔の森で生まれた。〈マズルパズル計画〉の申し子として。
キリトは何人もいた。すべて、誕生時から英才教育を受けた子供たちだった。特殊な教科書を使ったカリキュラムだった。
教科書の名前は、『グラーキの黙示録 第12巻』。その存在すら疑われる幻の奇書らしい。
彼らはそのコピーを配布され、内容を忠実に実践し、すべてを暗記した。この本を読んだという事実が、何よりもキリト育成には必要らしい。
そして卒業試験。妻守山の魔の森。あそこの地形は理想的だった。あの閉鎖空間に、少年たちは解き放たれた。それぞれ1丁ずつトカレフを持たされて。
生き残った者ひとりが合格という、シンプルなルールだった。
その生き残りこそが、現在世に知られる殺人鬼、〈ミスト事件〉の犯人、シラミネキリト。
ここまででも充分に信じがたい話だが、キリト誕生の瞬間は最も信じられない。
やつは最後のひとりを射殺すると、巨人と邂逅したらしい。
巨人だ。身体は白熱し、しかも首がない。
巨人と戦ったわけじゃない。巨人は無抵抗だったそうだ。
キリトは一方的に巨人を撃ち、そして殺した。
その瞬間だ。巨人が倒れた瞬間、悪意は受け継がれた。
こうして真のシラミネキリトが生まれたってわけだ。
いったいこの光景を誰が見て、誰に伝えたのかは判らない。だから余計信じがたい。
巨人とはな。
だが、信じざるをえないだろう。
シラミネキリトの、あの、最期の姿を見たからにはな。
……そもそも、こんな狂った計画を立て、実行したのは、どこのどいつか?
それは俺も知らない。知った瞬間、命はないだろう。
しかし言うまでもないことだが、それなりの資金力と組織力がなければ、到底不可能な計画だ。
そんな真似ができるやつなんて、限られてくるよな。
そいつは巨人の正体も知っているし、シラミネキリトを具体的にどう活用するか、先の計画まで立てていたんだろう。
残念ながら俺に殺されちまったが。
いや――あるいは、すべて計画どおりなのかもしれん。
……この録音を誰かが聴いているということは、俺がすでにこの世にいないってことだろう。それは構わない。あの冬の夜、シラミネキリトの心臓に何発も銃弾を撃ちこんだときから、まともな死に方はできないだろうと覚悟はできていた。
だが、ひとつだけ、気がかりなことがある。
……ランは……元気か?
K「――そこで、録音は終わってます」
安原「はあん、なるほどなるほど」
K「さて、さらに後日。――山形さん」
山形「はい」
K「自宅でひとり過ごしていると――おや? 今、窓の外を何かが横切ったような気がする」
山形「うわあ」
K「大きな人影のような気がする。しかも首がなかったような気がする」
山形「(笑)」
K「朝起きて、顔を洗って鏡を見たら、鏡に映った自分が、一瞬、あの白熱した巨人に見えた」
山形「ああ、そういうことか――」
K「無意識のうちに右手を真っ直ぐ前に伸ばし、人差し指を動かしています。引き金を引く動作。――無性に誰かを銃で撃ち殺したくなりました。早く誰かを殺さないと!
……そのとき鏡には、完全に、白熱する首のない巨人の姿が映っていました……」
G A M E O V E R
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