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Act.2 HAMMER


それでもいいもんだ。
煙たがられたってな、娘がいちばん可愛い……。





鳴兎門大学
Friday・20・Jan・200x 06:00pm
鳴兎門大学 部室棟

「学生のふたり、お待たせしました。同年、1月20日、金曜日」

神保「1週間後ですか」

「時刻は18:00くらい。大学の講義がひと通り終わって、部室棟で、のんべんだらりんとしている時間帯です」

神保「いつものように」

(神保も安原も、「交通研究会」なる名称の、実体はよくある旅行サークルに所属しています)

「では、同じサークルに所属しているNPCを、ふたり紹介しておきます」

安原「はーい」

「ひとり目は、ひょっとしたら覚えている人もいるかもしれません。身鍔護ミツバマモル

安原「あれ? なんか聞いたことがあるぞ」

(でも誰も思い出せない……)

「前々回の『妻守山の人喰いの森』に登場していたんですけれども」

山形「あ、していたんだ」

神保「学生パーティにいた人なんじゃあ?」

「眼鏡をかけた真面目な青年で、かろうじて生き残ったひとりです」

安原「ああー! あいつだ!」

「あの事件以降、歴史研究会は辞めちゃって、気楽に残りの学生生活を過ごせるサークルにしよう、ということになったそうです。
 そして、この人が交通研究会に入ったもうひとつの理由が、もうひとりのNPCでございまして――名前は柄森蘭ツカモリランという女子学生です」

神保「あら、ここでツカモリが」

「ランがもともとこのサークルに所属しておりまして、彼女とミツバは以前から公認のカップルです。大変仲がよろしい。ふたりとも真面目な学生で、人柄もよく、端から見ていても微笑ましいですね。見守ってあげたくなる、応援してやりたくなります」

安原「ミツバ君は、あの事件のあと、厭な気分になったりはしなかったんですね?(笑)」

「そうですね(笑)。ミツバ君は引っこみ思案なところがありますが。もともと。
 ――で、ツカモリランですが、この人のお父さんは刑事をやっていたらしいのですが、聞いたところによると、1週間前に殉職しちゃったそうです」

安原「あらまあ。なんてことだ」

「で、葬式やら何やらでしばらく休みだったのですが、今日ようやく大学に出てはきました。出ては来たのですが、案の定、非常にふさぎ込んでいまして、ファザコンだったかどうかは知りませんが、お父さんとはかなり仲がよかったみたいですね。お父さんも、ひとり娘ということで、かなり大事にしていたらしいです」

安原「そんなにふさぎ込んでるなら、足りない頭で(INT8)考えて、何か賑やかしみたいなことをしようとしたり」

「そういうことをしてもらっても、無反応と言うか、もう、気の抜けた空っぽのような状態に見えますね。もちろんミツバ君も非常に心配していまして、なんとか彼女に元気を出してもらいたいということを、おふたりにも相談してきたりするわけです。恋人であるミツバ君にも、どうしようもない状態のようです」

安原「頭悪いんで、オロオロします」

神保「うーん、そうだな。キャラ的にはオロオロしなきゃいけないな」

安原「こういうときは、だいたい、飲みに行ったりカラオケに行ったりして、パーッと気分を晴らすのがいいと思うんだけど、でも俺、婆ちゃんしか死んだことないし、しかも凄え昔だし、判んねえー。どうすればいいんだろう? ――と、超オロオロしている。せわしなく煙草吸ってみたりとか」

「ミツバ君もかなり思いつめているらしくて、『このままだと彼女がどこか手の届かないところに行ってしまいそうで恐いんだ。まるで糸の切れた凧みたいに。――こんな言い方をしたら大袈裟かもしれないけど、俺は彼女のことを守りたいんだ』と、真剣に言います」

神保「うーん」

「と、まあ、こんなことがありまして、今日は皆さんの誘いなども彼女は断って、独りで帰って行きましたとさ」


鳴兎門大学
Saturday・21・Jan・200x 06:00pm
鳴兎門大学 部室棟

「時間は進みまして、翌日、同時刻です。今日はランはサークルに顔を出しませんでした」

神保「はあはあ」

「ミツバ君は昨日以上に深刻な表情です。ちなみにミツバ君と神保さんと安原さんは、普段から特に仲のよい3人組ということにしておいてください」

神保「はい」

「『あのさ――』とミツバ君が相談してきます。『彼女、今日、サークルだけじゃなく、大学にも来ていなくて。彼女のお母さんに電話で聞いたんだけど、今朝はいつもどおり家を出た、って言ってたんだ』」

安原「ふうん」

「『それと、俺、さっき、ランの携帯にメールしてみたんだけど、そしてら、ひと言だけこんなメールが返ってきて……』と、見せてくれました」

安原「ほう」

「そこにはカタカナで『サヨナラ』とだけ書いてあります」

神保「なーにー!」

安原「はあ!? やばい、やばいよ! やばくない? とか言ってます」

神保「そういう、脆いところのある娘だったんですかね、ツカモリランちゃんは?」

「いや、そういう感じではなかったですね。どちらかというと引っこみ思案なミツバ君を引っ張っているようなところがありましたから」

安原「それだけに、落ちこみ方が半端じゃないように見える、と」

「そうですね。普段は明るく元気な人ですから」

安原「じゃあ、僕の持てる知識(EDU17)を総動員して、自殺の名所を考えてみます」

「(笑)」

安原「鳴兎子じゅうの自殺の名所をしらみ潰しに捜せばいるんじゃねえかなーって、足りない頭ですぐ口にしちゃう(一同笑)」

神保「で、ミツバに殴られる」

安原「しばらくして、――あ、まずい! ということに気がつきます」

神保「バーカバーカ」

安原「じょ、冗談だって」

神保「そしたら、どうしようかな……。凹んでいるのは、お父さんが亡くなったことなんでしょうけれど、亡くなったあらましなんかは、ミツバにも話してたんですかね?」

「そうですね。職務中に拳銃で亡くなったということは判っていますけれども」

神保「それは、殺害されたっていうニュアンスで、遺族なりミツバなりは受け取っているんですかね?」

「どうやら警察からは正確な情報が来ていないらしい」

安原「ええっ? ただたんに、拳銃で死んだ、と?」

「そうです」

安原「職務中に拳銃で死んだ……明らかに撃ち殺されているとしか思えませんね」

神保「ニュースになったりはしないんですか?」

「ニュースにはもちろんなっています」

安原「乱射事件があって、死亡者が何人かいて、その中には現場に駆けつけている警官も含まれている、みたいな」

神保「それは、ことさら言わなくても、射殺されたことは判るだろう的なアナウンスがあるだけで、本当に射殺されたと断言しているわけでは実はなかった、と」

「そうですね」

安原「でも、射殺されたんだろうと思ってるよなあ」

「そう思っていますね」

神保「みんなそう思っちゃってるんだろうな。マスコミの報道しか知らないから」

安原「ああ、じゃあ、もちろんこれは、行くべきところは決まりでしょう」

神保「そしたら、その現場に行くのか――いや、現場かな?」

安原「現場じゃないかなあ」

神保「やっぱ、亡くなった場所に行ったか」

「ここで〈アイデア〉ロールを振ってください。ある出来事を思い出すかどうか」

安原「うわ、こいつ思い出さなそう。(コロコロ……)おっ! 凄い。奇跡的に思い出しましたよ、こいつ」

神保「(コロコロ……)思い出してます!」

「そういえば最近、鳴兎子で行方不明者が増えていると聞いたことがあるけど、ひょっとして、それと関係あるのかな?」

神保「ああ――」

「さらに、最近のランちゃんの様子も。部室棟には中古のパソコン1台が置いてあるんですけれど、最近、やたらパソコンに向かっていたなあ、ということを思い出します。というのも、ランちゃんは大変なメカ音痴で、携帯電話で会話とメールがやっと、といった感じで、パソコンにはあまり興味がない人でした」

安原「最近って、どれくらい前?」

「お父さんが亡くなる前からですね」

神保「やけにパソコンいじっていたなあ、と」

安原「パソコン見て、Internet Explorerの履歴とか見れば、どんなページを見ていたのか判るかもしれん。――とりあえず開いてみる」

「ではIEの履歴を――彼女が閲覧していたであろう日付や時間帯のものを漁ってみると、どうやら彼女が見ていたサイトですが、こんな名前のサイトらしい――」

神保「まさか、マズルパズルじゃないか?」

「そう」

神保安原「えっ!?」

『Muzzle Puzzle』という名前のサイトを見ていたらしい」

安原「マズルパズルって、なんだぁ?」

「そのURLを開いてみたりするのですが、――『ページを表示できません』となってしまいます」

神保「アドレス自体は表示されてるけど、ちゃんとしたコンテンツは、404エラーとかなって表示されない?」

「そうです」

安原「じゃあ、Googleで検索してみます。他に、それに関して言及しているページがないかどうか」

山形「キャッシュを見る」

安原「その手があったな」

(結局見なかったけど)

「ではまず検索するには、〈コンピューター〉あるいは〈図書館〉を振ってください」

安原「えーと、〈図書館〉のほうが高いんですが、ここは〈コンピューター〉で(一同笑)。あえてね。(コロコロ……)75。成功です」

「では、『Muzzle Puzzle』に関する様々なことが判りますが、ここが『Muzzle Puzzle』のサイトだ! というあらゆるリンクをクリックしても、『ページを表示できません』となってしまいました」

安原「はあ……」

「そのことについて言及している某掲示板なんかを見てみると、どうやらそのサイトは、頻繁に引っ越すらしい。まるで何かから逃げるように、何かを隠すように。そのため、なかなかたどり着くことは難しいそうです」

安原「みんな、そんなに、それが好きなんですか? そんな人気のサイトなの?」

「裏で人気みたいですよ(笑)」

神保「内容は、何を扱っているんですかね?」

「それは、まことしやかに囁かれているんですが、共通して触れられているのは、20年前に鳴兎子市で起こった殺人事件について扱っているらしいということです」

安原「20年前……」

「なんか、かなりやばい情報も載っているとかいないとか」

安原「実録系サイトみたいなものかしらん」

「色々と変な噂はあります。当時の犯人が管理人らしいよ、とか」

安原「ええーっ」

「犯人は複数いて、そいつらが共同で運営しているらしいよ、とか。警察から漏洩した情報を載せてるらしいよ、とか。だからやばいからURL変えてるんだよ、とか。ね、ね、実際に変わっているでしょ? とか」

安原「なるほどなるほど」

「では、さらに〈コンピューター〉か〈図書館〉を振ってください」

安原「はーい。もう1回行きまーす。今度は〈図書館〉で行きましょう。(コロコロ……)71。成功です」

山形「凄いな、連続で技能チェックだ」

(ロールに成功した技能は、チェックをしておき、シナリオ終了後に成長させることができます)

「では、パソコンに夢中になっているうち、気づいたら部室に残っているのは3人組だけになってしまいました」

安原「うーん、と唸っているうちに」

「警備員さんが廻ってきて、『そろそろ帰れよー』なんて言ってきます」

神保「はーい」

「そのくらいの時間帯に、ようやく、現在の『Muzzle Puzzle』のURLを見つけました!」

安原「おー! 見つけた!」

「開いてみると、真っ黒な画面で、中央に小さなテキストで『Muzzle Puzzle』と地味に表示されています。その下に、パスワード入力フォームがあります」

安原「ええー」

「で、さらに下のほうに、『パスワードを忘れた方は、ここをクリック!』というのが(笑)」

安原「じゃあ、それまで検索していた中に、パスワードがどうたらこうたらってことは、書いてありましたか? パスワードはメル欄だよ、みたいなことは」

「特になかったですね」

神保「ちなみにこれって、何桁とか何文字とかにはなっていませんか? 白い帯だけですか?」

「そうです」

安原「パスワードお忘れの方は、ってあるから、ここだろ。忘れちゃった♪」

神保「いや、そこを押しちゃうと――」

山形「ブラクラ?(笑)」

安原「ええっ? どうしようどうしよう? 判んない」

山形「クリック詐欺?(笑)」

安原「エロサイトに飛んで――」

「登録完了しました、みたいな」

神保「とりあえず、ここのURL控えようぜ、みたいなことは言います」

安原「じゃあ、お気に入りに登録しておきます」

「はい。じゃあ、クリックしますか? それとも、適当にパスワード打ちますか?(笑)」

安原「適当にったって、何も思いつかないですからね――」

山形「パスワードの入力欄だけがあって、新しく入会する、っていうのはないの?」

「ないですね」

神保「20年前の殺人事件っていえば、あれだよね、というのは、ピンと来るんですか?」

「うーん、ふたりが生まれたころですよねえ――」

神保「じゃあ、もしくは、今まで調べてきた中に、特定の固有名詞が出てきて、これかなあ? っていうのはないかな」

山形「今の子が宮崎勤事件を知っているかどうか、っていう感じかな」

安原「鳴兎子連続殺人事件で検索してみます」

「じゃあ、ミスト事件について色々と出てくるのですが、Act.1で述べたような概要は知ることができます」

安原「パスワードは『MISTYCASE』だ。これでいいかな? と、押してみます」

「じゃあ、Enter……入力フォームが空欄になっただけです」

安原「違うみたいですね」

神保「じゃあ、犯人の名前って出てるんですかね?」

「それはもちろん、シラミネキリトと」

安原「それだ! 入れます。『SHIRAMINEKIRITO』これだ!」

「違いました」

安原「ええーっ。じゃあ、『MUZZLEPUZZLE』って入れてやる」

「それも違う」

山形「『TOKAREV』だーっ!(笑)」

神保「なぜその言葉が出てくるか判らないから……」

安原「わかんなーい」

神保「もしかして、日本語で入力しないといけないとか、そういうことはないんですかね?」

「それは判らない」

安原「今までの全部日本語で入れてみます」

「それでも駄目です」

神保「あと、なんだろう?」

(奇妙なポーズを取りながら)『クリック!』『クリック!』(一同笑)」

神保「『TRAPEZOHEDRON』って入れてみるとか(一同笑)」

安原「メタネタですね」

「それで入れたら総スカンを食らう(笑)」

安原「もう、判んないから、ここクリックでいいよねー?」

山形「事件のことを調べて、それについて打ちこんでいくしかないよ」

神保「拳銃による連続殺人事件だってことは、今までの検索で判っているわけですよね? やっぱり、銃関係じゃないかな、パスワードって。たとえば、弾丸の『BULLET』とかさ。拳銃のパーツの名前とかを思いつく限り入れてみる」

「調べた限り入れてみたけど、それも駄目ですね」

安原「銃の名前を。『COLT』とか『GLOCK』とか」

「駄目です」

(早くクリックしてくれー)

「現状、何を入れても駄目ですね」

神保「駄目フラグが立ってるような気がします(笑)」

安原「じゃあ、『TSUKAMORIRAN』って入れてみます」

「駄目でした」

神保「『KIRITO』は?」

「駄目でした」

安原「パスワードって、数字と英文字の組み合わせなんだよ、きっと」

神保「『MIST』って入れてみねえ? 入れたっけ、もう?」

「何を入れたか忘れちゃった(笑)。やはり駄目ですね」

山形「じゃあ、その事件が起きた日付を」

安原「入れてみます。でやーっ!」

「20年前の1月23日ですね。駄目でした」

(早くクリックしてくれー)

安原「なんか、凄い、飽きてきました。もう、クリックするしかねーんだよー。考えてる暇ねえってー。ランちゃん捜さなきゃ駄目だってばー」

「警備員さんが『早く帰れよー』と再び顔を出します」

神保「はーい。……ランちゃん、何か残していってないですか? 荷物とか、思わせぶりなメモとか」

安原「ランちゃんの、今のところのラストメールの内容を打ちこみます『サヨナラ』とカタカナで」

「違います」

(早くクリックしてくれー)

安原「早くここ押しちゃおうよー。別に何もないってー」

「ミツバ君も押そうよと言ってます。どうせ壊れるのは学校のパソコンなんだし(笑)」

安原「フリーソフトのブラクラチェッカーでURLをチェックしてみます」

「うん、ブラクラではないですね」

安原「ブラクラじゃないし、やばくなったりしないから、大丈夫だよー。ウイルスとか入ったら、僕が持ってきた無料ウイルスチェッカーがあるから(笑)」

神保「あー、嘘臭え(笑)」

「あるいは、ISPのnaunet(ナウネット)の無料ウイルスチェックサービスもあります(笑)」

安原「naunetはウイルスばらまいてるほうなんじゃないか?(笑)」

「で、どうしましょう」

安原「押しちゃえ。えーい!」

「押した。すると、やはり背景は真っ黒い素っ気ない画面になるのですが、真ん中に白い背景の四角い部分があり、そこに文字がずらずら〜っと並んでいます。どうやらこれは画像ファイルのようです。そしてその下に、通常のテキストで、『プリントアウトしてご利用ください』と書いてあります」

安原「は?」

「で、その文章ですが――こういうものです。(ハンドアウトを渡す)


(※クリックすると別画面で拡大表示)

神保(ひと通り音読してみる)

安原「なんだこりゃ」

「プリントアウトしますか?」

安原「そりゃあ、言われるままに」

神保「しますわね」

安原「ガーガガガガ、ガーガガガ……」

神保「古いプリンタだなー(笑)」

「えーと、これは重要な手がかりなので、大事に持っていてください(笑)」

神保「2枚ぐらい出力ってできるのかな?」

「もちろん。好きなだけ刷れます」

神保「じゃあ、1枚ずつ」

「3枚刷りました。では、刷り終わったぐらいに、警備員さんが『いい加減に帰れー!』と」

安原「はーい。じゃあ、Muzzle PuzzleのURLだけ保存しておきます。
 で、自分でもランちゃんに電話してみます」

「ランの携帯に電話すると、『おかけになった電話は、電波の届かないところにあるか、電源が入っていないため、かかりません云々』と」

神保「じゃあ、とりあえず、親父さんが亡くなった場所が気になるんだけど」

安原「行ってみよう」

「今日のうちに行きます?」

神保「行っちゃいます」

「じゃあ、場所は判っているので、なんらかの交通手段で行くことができました」


裏路地
Sameday 09:00pm
裏路地

安原「現場封鎖とかされてんじゃね?」

「さすがに1週間経っているんで、それはないです。被害者の若い女性と、殉職した警官のためでしょう、献花台があったりします。もちろん、裏路地にマンホールがありますが、それが開いていたかどうかなんてことは、皆さん知りません」

神保「その路地っていうのは、両脇は民家が並んでいるんですか?」

「そうですね。高い塀に挟まれてます」

神保「当然、聞きこみなんかもおこなわれてはいるんだろうな。
 献花されてるものの中に、ランちゃんの手がかりになるような、ここに来て何か置いていったのかな、的なものは見つけられるでしょうか?」

「〈目星〉を」

神保「目星せ! (コロコロ……)失敗しやがったです。93です」

安原「(コロコロ……)判んねー! 97でした」

「(コロコロ……)ミツバ君95です(笑)。まあ、特に見つかりません」

安原「ないか」

神保「駄目だ。パッと見じゃあ、判んねえな。ちょっと、他のとこ探そう。
 ひと通りウロウロしたいんですが、献花されてる部分がクローズアップされてるだけで、あとは何もないような感じですか?」

安原「弾の痕とかあるかな」

「うーん、まあ、血の跡はありますね。アスファルトにこびりついています」

安原「ここで撃たれたのかなー」

「薬莢が落ちてるとか、そういうのはないです」

山形「あったら大変だ(笑)」

「警察は何をやってるんだー!(笑)」

安原「ミツバ君に、ランちゃんちに電話してみなよ、と。帰ってるかもしんないでしょ」

「『うん、かけてみたんだけどね、やっぱり帰ってないんだ。お母さんも心配してるんだけど』」

安原「警察に行くしかないよ。交番行こうよ、交番。だって見つかんないし、判んないしさー」

「交番行きますか?」

(結局行きませんでしたが)

安原「じゃあ、3人で、ネットカフェとか誰かの家に行って、さっきのページにもう1度アクセスしてみれば、何か手がかりが見つかるかもしれん」

「では、さっきのページにアクセスしてみましたが――パスワード求めてくるページでいいですね? ――特に何も変わってはいないですよ」

安原「ああ、そっか、しまった。これ(例の文章)をなんとかして解析しないと、パスワードは判んねえんだ」

神保「これ、そのまま打ちこむしかねーんじゃねえ?」

安原「じゃあ、頑張って打ちこんでみますが」

「メモ帳に打ちこんでコピペって感じですね。……駄目です(笑)」

安原「ムキー! 超指疲れた」

「ということで、今日のところは、その変な文章を見ながら皆さんで悩んで終わりかということで、さらにこのAct.2はもう1日あります」

(山形さん、もうちょっとお待ちください。ここに来るまで予想以上に時間がかかっちゃいました)


鳴兎門大学
Sunday・22・Jan・200x 01:00pm
鳴兎門大学 部室棟

「翌日、22日、日曜日ですね。やはり、翌朝になってもランちゃんの行方は知れず、とりあえずできることもないので、仲よし3人組は部室に集まって、これからどうしようか話し合うことにしました」

神保「うん」

「集まって、パソコンで色々と調べていると、ここの部室のアドレス宛に、いつものようにメールが何通か入ってきまして、勝手に見ちゃったりなんかするわけです(笑)。
 すると1通、これは手がかり以外の何ものでもない、というメールがありました」

神保「差出人:ツカモリラン、とか(笑)」

「送信は今日の日付になっておりまして、時間は――まあ、あまり気にしなくて結構です(笑)。(ハンドアウトを渡す)


(※クリックすると別画面で拡大表示)

(神保と安原、しばし黙読)

安原「……はあ? なんだこりゃ?」

山形「何? 何が起こったの?」

(山形のプレイヤーも回し読み)

安原「アクセスから解析されて、こっちのメアドまで吸い上げられた?」

「なーんかーそーんなーかーんじー」

安原「うわあ、これ絶対ヤバイよ」

神保「送信者のアドレスは?」

「アドレスは出てきますけれども、なんか嘘臭いな、という滅茶苦茶な文字列のアカウントです」

神保「でも、とりあえずは、このアドレスに返信するしかないんじゃね?」

安原「超嘘臭えけど、でも、これしかないかな」

神保「カフェから送る、とかすりゃいいんじゃ?」

安原「ああ、そうだね。そうしよう。メアドを控えておいて、どこか別のところから……あ、でも、返信しちゃったら、どうせ俺らだってことはバレちゃうよね? どんな小細工しても、こっちのメアドは知られちゃってるんだし」

神保「そうか。今さらネットカフェから送ったって意味ないか」

安原「――ということは、こいつの頭では思いつかなそうだ。こいつINT8だった。莫迦だ莫迦」

神保「そんなことねーだろ! そしたら神保が気づくでしょ。
 えーと、そしたらば……これって、添付ファイルも何もないんですよね?」

「はい」

神保「この場所に、とにかく行ってみるしかねえのかもしれない。で、こういう手がかりを見つけたので行ってきます、と、ランちゃんのお袋さんに連絡しとこうぜ、とミツバには相談しておきます」

「『そうだね』とミツバも同意します」

神保「で、最後の追伸がえらく気になるんだけど。“得物”って、要するに、こういうことだろ?(武器を構える仕草)

安原「“利便性の高い”? なんだろ? 凄い考えこむけど、判らない」

神保「得物っていうと、棒きれとか木刀とかで殴り合うんだろうけど、それよりは武器としては飛び道具のほうがいいよねっていうことで……うかうか行くと、全員射殺されるのかなーって、漠然とした不安を覚えるんですけど(笑)」

安原「そこに行くしかないですな」

神保「この場所っていうのは、鳴兎子市公会堂裏手の公園か。どんな感じの場所なのか、学生はだいだい判ってますか?」

「はい。自然公園みたいな感じですね」

安原(地図を指しながら)ここですね」

神保「うわ、森ん中じゃねーか」

山形「お城ですよ」

神保「そっか、城跡が公園になってるんだ」

「ささやかなものではありますが、森林もあります」

安原「やばいやつが相手だったらどうしよう。――じゃあ、証拠になるかもしれないから、テープレコーダを持っていこう。会話を録音するんだ」

神保「ああー」

安原「やばいやつだったらアレだから、武器になるもの持ってこうよ。ナイフとか」

神保「でも、飛び道具相手に現実的じゃねーよ」

安原「そうかな。腹に少年ジャンプ巻くぐらいはしたほうがいいんじゃないかなー」

「では、相談しておいてください。夜まで時間はまだありますから……」

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