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Act.4 GRIP
「あなたが特別だってこと、わたしは知っている」
「僕は特別だって……自分でも強く思っていた。けど……」
Sunday・22・Jan・200x 11:55pm
蛾雁城跡公園 森林
K「さて、学生の3人ですが、やはり行きますか」
安原「行きましょう。行かいでか」
神保「それで、アケミさんにはもちろん連絡してから行きますから。
昼ちょい過ぎにメールが来たわけですよね。で、協議の結果、夕方近くになってから」安原「あ、テープレコーダを用意して、10分ぐらい前から録音を開始します」
K「では、もうすぐ23日に変わるぞ、というぐらいに、鳴兎子市公会堂裏手の公園を訪れました。皆さん以外に、人っ子ひとりいません。
ところどころに街灯が立ってはいるのですが、街灯の光が届かない公園のはずれの森林に、誰か立っているぞ? と人影が見えます。真っ黒なシルエットで、背後の樹に寄りかかっているように見えます。結構離れた位置から見つけました。――特に、向こうから近づいてくるそぶりは見せません。ピクリとも動きません」安原「向こうは立ってるだけ? じゃあ、こっちから近づいていくしかないですね」
神保「ですね」
安原「よし、行こう」
K「では、時刻は、ちょうど今、日付が変わったところです。1月23日、月曜日」
安原「はい」
K「では、近づいてゆくと、向こうから声がしました。若い声で、たぶん男かなという気はするのですが、性別の判然としない、中性的な声です」
安原「生声なんですか?」
K「そうです。特に機械を通したような声ではありません。――『それ以上近づかないで! まだ直接の接触は避けましょう。お互いのために』――妙に自信がありげな声音です」
安原「ふうん。なんだかよく判んないな」
K「『まずは、あすこの――』と言っても、指差すわけじゃないですが、『あすこの自動販売機の下にあるものを取ってきてください』」
安原「は?」
K「周りを見ると、確かに自動販売機が1台、ちょっと離れたところに見えます」
安原「ほう。じゃあ、僕が行ってきましょう」
K「はい。じゃあ、他のふたりはその場で待ってますか?」
神保「まあ、あたりの様子を窺いながら待ってますけど」
安原「てってけてー、と行って……自販機の下ですか。とりあえず、探ります」
K「安原さんが手を伸ばしますと、指先がガサリと何かに触れました」
安原「あ、なんだこりゃ?」
K「引っ張り出しますか?」
安原「はい」
K「(何かが入った紙袋を手渡す。→プレイ風景はこちら【■】)」
安原「紙袋? うわ、なんだこれ、重いぞ(笑)。ちょっとビビります」
K「中身はもちろん――(右図参照→)」
安原「(ガサゴソ)うわあ! と、すぐ置いちゃいます」
K「すると、その様子を見ていたであろう人影が言います。『そう、モデルガンです。ご存じですか? トカレフTT33。重たいでしょう? 本物みたいでしょう? もちろん本物です』」
安原「ええっ! モデルガンって言ったじゃないか!」
K「『でも、“Muzzle Puzzle”ですからね。それくらいは予想のうちでしょう?』」
安原「意味が判らん(笑)」
K「――とか言ってます」
安原「ああそうか、マズルって、これ(銃口)のことだっけ――と、ようやく気がつきます」
K「それを持って引き返しますか?」
安原「はい。おっかなびっくり。なるべく中身に触らないようにして」
K「では戻ってきますと、続いて、この人はとんでもないことを言います。――『それではテストです。そこから私を撃ってください』」
安原「は!?」
K「『当たれば合格。8発全弾はずれたら不合格。シンプルでいいでしょう?』」
安原「は? へ? ん? は?」
K「距離は、だいたい10メートルぐらいですね」
安原「撃たなきゃいけないのか!? そんなことできないよ!」
K「安原さんがそう言うと、――『それは残念です。彼女の行方を知りたくありませんか?』」
安原「んん? なんか知ってるんだな!?」
神保「彼ないし彼女の声は、はっきりとこっちまで届いてるんですか?」
K「ええ、もちろん」
安原「撃たなければいけない状況のようですが、はたして、キャラクター的に撃てるんだろうか。
じゃあ、助けを求めるように神保さんを見ます。――どうしよう、これ」K「じゃあ、もし、ふたりが迷っているようなら、ミツバ君が思いつめた表情で、『俺がやるよ』と言ってくれますが」
神保「いや、ミツバ、待て。こいつは自殺願望があるだけの気違いで、俺たちがたまたまランちゃんを捜しているのにつけこんで、悪趣味な悪戯を仕掛けてきただけかもしれないぜ。
――で、彼(安原)に、お前、直接触った? と訊きます」安原「たぶん触っちゃってると思います」
神保「まあ、仕方ないな、ちょっとぐらいだったらいいだろう」
安原「それを、指紋がつかないように袖を使って持って、こうやってスライドを引いてみます(→プレイ風景はこちら【■】)」
神保「そこまでやっちゃうのか」
安原「中身は? モデルガンですか? 本物ですか?」
K「本物です」
安原「うわあ(笑)。ビビりだします。これ本物だよ! 本当の銃だ!」
山形「当たったら死んじゃうじゃん」
安原「うわああ。どうしよう? 本物だよ、これ」
神保「そしたら、小声で――慌てんな。どうせ今のはバッチリ録音されてるんだから、このまますぐにケータイで110番したって構わないんだ」
K「するとミツバが、『いや、今のところ、手がかりはあいつしかいないんだ』」
安原「でも、当たったら死んじゃうぞ」
神保「あげく、自殺願望の気違いをお前が撃ち殺して、面倒なことになって、ランちゃんの行方が判らなくなったら、どうする気なんだ?」
K「『しかし、このまま警察に通報したら、絶対に判らないままになる』」
安原「うーん……」
神保「そしたら、そうだな……当たるか当たらないか微妙な位置だな……」
K「ミツバは、『貸してくれ。俺が撃つ! 君が撃たないんなら俺が撃つ。俺の問題だから』と」
安原「くそう、でも、なんか――うーん……」
K「『あいつがランのことを知っているのは間違いないはずだ』」
安原「そこまでする義理が俺にはあるのか、と思ったりしますが……」
山形「愛するふたりの前には――」
安原「そうか、じゃあ、こうしましょう――」
山形「脚を撃て、脚を!」
安原「やるぞ! やってやるぞ、この野郎!」
K「やった(笑)。撃ちたいんだな」
安原「プレイヤー的には撃ちたいです(笑)。――畜生、この野郎、やってやるぞ!」
神保「じゃあ、相手にこう言います。――いい加減なことを言って、こっちに引き金引かせたあげく、お前がくたばったあと、俺たちにどう責任を取らせるつもりだ? 保証のない口車に乗るほど、俺たちはお人好しじゃない。人の足元を見るような真似はするな。舐めるな」
K「『決断するのは貴方たちです。ご勝手に』」
神保「この場で110番してやる。――と言ってケータイ出します」
K「特に止めたりはしないけれど、『手がかりが永遠に失われますよ』とは言われます」
神保「貸せ! 俺が撃ち殺す! みたいな気持ちに一瞬なりますが(笑)、そこはじっと我慢の子ですね」
安原「大丈夫だよ。これで当たるとは限らないからな! ……一応、構えて、こう、狙いをつけてみますが。別に、相手は動いたりしない?」
K「ピクリともしません」
安原「ええっ!?」
山形「脚だ! 脚を狙うんだ!」
神保「ちょっと待て、と止めて――それは、紛れもなく、そこに立っている人物が喋ってます? ただの人形を置いておいて、本人が無線か何かで喋っているような感覚って、ありません?」
K「それは否定できません」
神保「ですよね」
安原「そしたら、相手の、できるだけ足もとを狙って――みます」
K「はい、どうぞ」
安原「足もとを狙って――うわははは、ほんとに撃つのか、みたいな。しばらくブルブルしています」
K「この銃の基本射程は15メートル。約10メートルの距離から撃つことになりますので、命中率に修正はありません」
山形「20%か」
K「DEXが30以上あるなら、命中率2倍(一同笑)」
神保「人間じゃない(笑)」
(“ゼロ射程”のルールです。ちなみに通常の人間のDEXは、最高で18)
安原「糞、どうしよう。糞、糞、いいか? 撃つぞ、撃つぞ! ――って、引っこみがつかなくなったころに撃ちます」
K「はい、撃った。どうぞ」
安原「パーン。(コロコロ……)95です」
K「1発目はずれ」
安原「うわあ! これ本物だよ! ――相手は?」
K「相手は動じない」
安原「は?」
山形「あ、人形だ!」
安原「人間じゃないんじゃないの、こいつ?」
K「2発目撃ちます? それとも、代わりばんこに撃ちます?(笑)」
神保「ミツバはどうなんでしょうね」
K「ミツバは、やる気満々ですよ」
山形「彼女のためなら、火の中水の中」
安原「そしたら今度は、脚を狙って、もう1回撃ってみます。(コロコロ……)20!」
K「おっ、当たりですね。さらに、ダメージを振りましょう。1D8です」
安原「(コロコロ……)1点です」
K「では、狙いどおり脚に」
安原「たぶん太股とか狙ったはず。一番でかいところを狙おうとすると思います」
K「では、太股に当たりました。――でも、ピクリとも動かない」
安原「当たったぞ! 当たったよな!? と言います」
K「そうするとですね、変わらぬトーンの声が聞こえてきます。『当たりました。なかなかよいですね。腕がよいのではありませんよ。あなたの意志がよいのです』」
安原「はあ? 何が言いたいんだ、こいつ(笑)」
K「『それでは、パスワードの鍵をお渡ししましょう。それと、重要な手がかりも。いいですか、よく聞いてください。――鬼は四つ辻に現れます。四つ辻の文字をすべて拾ってください。――それと、真実はいつも表に晒されているとは限りません。……さあ、それでは、こちらに近づいてきてください。誕生日プレゼントです』」
安原「誕生日プレゼント? はあ? 何言ってんだ、こいつ?
――なんか、結構、気が大きくなってるんで、銃構えたまま行きます」K「じわじわと近づいていきます。それ以降、向こうからはなんの声もしません。――神保さんはどうしますか?」
神保「うーん、やっぱり、ひとりで行かせるよりは、3人で行ったほうがいいんじゃないかい? とミツバを促して近づいていく」
K「じゃあ、3人で近づいていきました。すると、やがて、その人影の正体が見えてきました。
――人形ではありませんでした」神保「ひょっとしたら――」
K「人でした」
安原「は?」
K「ただ、すでに死んでいます」
安原「ぐおおおー!」
K「死体が樹にくくりつけられている」
安原「ひあああー!」
K「こいつは、皆さんよりは若干上の年代に見える、男性の死体ですね」
山形「さあ、明日忙しくなるぞー(笑)」
K「首筋の肉が抉れていて、大量の血が流れた跡があります。つい先ほど抉られたというわけではなく――」
安原「死んでから結構時間が経っていると」
K「最低でも何時間か経っているんじゃないかな、という感じ。口を大きくあーんと開けていて、中にガチャガチャのカプセルが詰めこんであります」
安原「その場で吐きます。ぶえーっ」
山形「あ、吐くの?」
安原「ゲロゲロ吐きます。そんな、生々しい死体見せられたら、たぶん吐きます」
山形「大切な証拠だね(笑)」
神保「SANチェックしなきゃいけない」
K「そうです。〈正気度〉ロールをどうぞ」
安原「(コロコロ……)成功です」
神保「(コロコロ……)しっぱーい(笑)」
K「成功した人は減らさなくていいです。失敗した人は1D3減らしてください」
神保「(コロコロ……)2です」
K「成功したら吐かなくてもいいですよ(笑)」
安原「あ、そうか」
K「失敗したからといって吐かなくちゃいけないわけでもないです」
(ちなみにミツバは成功)
安原「凄い、ブルブルブルブル震えます。なんだこいつー。
そのへんの草むらとかを探ってみます。銃構えながら」K「じゃあ、〈目星〉か〈追跡〉、お好きなほうを」
(ふたりとも〈目星〉を振りました)
安原「(コロコロ……)うわ、00。判んねえ!」
神保「(コロコロ……)あー、失敗しちゃったな。駄目でしたね」
K「では、ミツバもデフォルト(25%)で。(コロコロ……)ああ、判んないや」
安原「畜生、どこにいやがる!?」
神保「スピーカとかが置いてあったりは?」
K「そういうものは見つかりませんね。――まあ、割と太めの樹なので、後ろに誰か隠れることは可能そうだなと思えるけど、手がかりのようなものを見つけることはできませんでした。
――さて、どうしましょう。思わせぶりなカプセルが口の中にありますが(笑)」神保「取り出して見てみるしかねえだろう」
安原「それしかないでしょうね」
K「取り出して、開けますか?」
安原「はい、開けます」
K「カパッと開けますと、中には、フェルト地でできた、妙なものが1枚入っていました」
安原「妙なもの?」
K「(ハンドアウトを渡す)――ハンドアウトは紙でできていますが、実物はフェルトだと思ってください。紙なので壊れやすいので、あんまり乱暴に扱わないでください」
(※注 ハンドアウトの白色部分は、実際は切り抜かれています。ちなみに裏も黒色です)
(※クリックすると別画面で拡大表示)
山形「うわ、迷路だ!」
K「こういったものがくしゃくしゃに丸められていて、カプセルに入っていました」
神保「実際はフェルトでできてるんですよね?」
K「フェルトです。で、割と頑丈です」
安原「なんだ、これ?」
神保「パーク、セメタリー、ストアハウス、ムーンアンドグローブ――咄嗟に、Parkって、今いるこの公園のことかな? って頭に浮かぶかどうかは、〈アイデア〉ロールに成功しないと判らない?」
安原「それはもう、プレイヤー的に考えてもいいような気もするんですが」
K「ええ、これはもう、キャラクターの〈アイデア〉に関係なく、プレイヤーが謎を解いてください。
――さっきのヒントも参考に」安原「四つ辻、四つ辻」
神保「四つ辻に現れるわけだ」
安原「四つ辻の文字――」
山形「あ、言葉になってるのか?」
安原「ははーん、ありそうな話ですね」
K「ひとまず、それはそれとして。――この人どうします?」
安原「あ、もう、速攻でその場から立ち去ろうと思います」
K「トカレフはどうします?」
安原「持っていきます!」
K「よーし!(笑)」
安原「だって銃声聞かれちゃってるもん。指紋もついちゃってるし」
K「じゃあ、紙袋にトカレフ入れて――」
安原「コートのポケットか何かに入れて、うわあ、って帰ります」
K「では、トカレフのデータは32口径オートマチックと同じで、基本命中率20%、ダメージ1D8、基本射程15メートル、1ラウンドに3発撃てます。耐久力は8、故障ナンバーは99。トカレフにしては整備されてるほうです」
安原「総弾数は――」
K「総弾数は8+1ですね。今現在は6発残っています」
山形「暴発しないように注意してね」
K「あ、そうです、トカレフには安全装置ないので、気をつけてください」
安原「うわあーっ。――あ、そうか、1回スライドを引いて、バンバンって撃ってるから、今って、たぶん、ハンマーが上がっている状態なんですよね」
山形「暴発しますよ」
安原「どうやって戻したらいいのか判んない! どうしよう(笑)」
K「じゃあ、〈拳銃〉ロールを3人で振りましょう。20%ですね」
安原「(コロコロ……)28。判んない!」
神保「(コロコロ……)あーあ」
K「ミツバも。(コロコロ……)うん、判んない(笑)」
安原「どうしよう? 一応、こうやって戻すのかなぁ、とは思ってますけど(ハンマーを抑えつつ引き金を引く)」
山形「ええ、そうですね」
安原「細心の注意で試してみます」
K「じゃあ、〈幸運〉ロール」
安原「〈幸運〉はね、60あるんですよ。(コロコロ……)わ、70です」
K「パン! って1発撃っちゃった」
安原「うわあ!」
K「でも、なんやかんやあって、1発無駄にして、なんとか収まったということで(笑)」
神保「じゃあ、とりあえず、声を出さずに手真似で、テレコを止めるよう指示します(実際にやってみせる)。判んないかな?」
安原「〈アイデア〉ロール。(コロコロ……)判りません(笑)。は? は? は?」
神保「じゃあ、小声で(笑)。ストップしろ」
安原「止めます」
神保「銃声入っちまったよな、3発も(笑)」
安原「これ、使えないな。提出したら僕らも捕まるよ」
K「ミツバも、『これは警察には言わないほうがいいと思う』といういことで、トンズラ(笑)」
安原「トンズラしました。脚が渦巻になって(一同笑)」
K「ピューっとトンズラして、これからどうしようというところで、早くも場面は変わります」
(Act.1〜3が長すぎた、というのもある)
K「ちなみに、もう手がかりは揃っています。なんとかして解いてください、って感じですね」
神保「Parkって、公園のことでしょ……(鳴兎子の地図とフェルトの迷路を照らし合わせてみる)……あ、でも、迷路の上が北とは限らないか」
K「さっきの謎の人物の台詞、覚えていますか?」
神保「四つ辻ですよね」
安原「で、表に現れているとは限らない。まさか――裏から見るとか(迷路を裏返してみる)」
(※クリックすると別画面で拡大表示)
K「裏は真っ黒です」
神保「ああ、手がかりになりそうもないな……。でも、文字の通りに見ると、やっぱりこっちを上にしてくれってことかな」
山形「E、L、I……(通路の形がそう見えてきたらしい)」
神保「(Muzzle Puzzleからプリントアウトした文章の上に、迷路を重ねてみる)」
安原「なるほど! 四つ辻の字を拾うんだ!」
(プレイ風景はこちら→【■】)
K「では、山形さんのプレイの間に、ゆっくりと考えていてください」
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