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Act.2 模型交換会



そういうあなたこそもう古い。
この技術が完成した暁には、この世に生身の、現実の肉体を持つキャラクターは一切、必要ない。
そんな事実がなぜ、呑み込めないんですか。

― 渡辺浩弐 『アンドロメディア』



8月13日(日)――

「はい、日曜日。13日。スワップミートでございます。というわけで、お三人方、朝から鳴兎子市公会堂へGO!」

山田「なんでこんな時間に呼び出すんだよぉ〜」

「車で行く人ー?」

山田「あれ、車持ってたんだよな、確か。うん、<自動車の運転>43もあるよ。――キキ〜ッ! ド〜ン!」

山田「ボッ!」

山田「また燃えたよ〜(笑)」


(こんなことばっかりやってるなぁ)


山田「まあ、とりあえず到着はしたみたいだ(笑)」

北村「それ、一緒に乗せていってもらえないかな?」

中村「俺もそっちの車に……」

山田「中村のことは知ってるけど、彼が来るかどうかっていうのは――」

「その情報は――どうだろうなぁ」

山田「あ、スター☆中村が主催だっていうのは知って――」

「主催(笑)」

山田「主催じゃない(笑)。司会。絶対主催はさせない(笑)」

北村「(中村に)力あるんじゃん。凄い(笑)」

中村「金もあるなぁ」

山田「もう芸人やめたらいいよ(笑)」

「まあいいや」

山田「とりあえず、前の日にでも、久しぶりだぁ、って感じで。同じ大学通ってて、なんか一年目でいなくなった人だったかなと思ったら、今や映画に出て凄くなってる」

中村「売れてないから、タクシー代もないんだよね」

山田「順番的に、どう乗っけていけばいいのかな。じゃあ、北村、中村の順で」

「じゃあ、乗って行った。かなり朝早くに着きます」

北村「その車の中で、(中村に)挨拶をしておこう。初めまして」

「あ、初めましてなんだ」

山田「うん、ここの繋がりはないかもしんない」

「それじゃあ、そうですね、車が着いた頃にはもう、和気あいあい(笑)」

中村「肩組んで」

「ガッハッハッハ……と」

中村「酒呑みながら」

山田「なんで出来上がってるんだ、こいつら!(笑)」

「えーとですね、……何でしたっけ?(笑)」

山田「燃やすぞ、もう一回(笑)」

「ああそうそう、着いたときにはもう、早くも一般参加者が何人も、ふた桁くらい並んでますね」

山田「うわー、結構いるんだなぁ、もう」

「早くもね、自分が持ってきたモデルを広げて、何やら話し合っている(笑)」

山田「おい、そこ、フライング(笑)」

「あ、ラムちゃんだ〜(笑)」

山田「やっぱりこういうのが多いんだな〜。おっかしいな、今の世の中は」

北村「ラムちゃんなんてダッセー! ――響子さんだよ(一同笑)」

山田「今の『ラムちゃんダッセー』で先輩も変わったなと一瞬思ったら……次の言葉でガクッときた(笑)」

「萌え萌えっすよね〜とか、声が聞こえてきた」

北村「"萌え萌え"だなんてダサイにょ(一同笑)」

「うわ」

山田「運転が荒くなってきた。キキ〜ッ! キキ〜ッ!」

北村「もう古いにょ」

「うわ、駄目だこいつら」

山田「会場に突っ込みます(笑)」

「どーん! どっか〜ん!」

山田「ごお〜っ……」

「窓ガラスが全部内側からドカーン!(一同爆笑)」

山田「暴走車突っ込む。――今日の号外で出てくる」


(ふざけすぎ)


山田「(北村に)先輩、準備行きます?」

「三人は、関係者入口から堂々と入って行きます」

山田「誰が司会者っぽく見えてるかな? (中村に)――ああ、もう営業用の格好で?」

中村「だって、もうラメ入りの服で。タモリの格好してる(一同爆笑)。そりゃ、もちろん。明らかに司会」

山田「コージーだよ」

「なんでタモリの格好しなきゃいけないんだよ!(笑)」

中村「司会といったら、やっぱりねぇ。楽屋に入る前からタモリの格好」

「朝、家出たときから」

中村「タモリ」

「北村と初対面なのに『髪切った?』なんて(笑)」

北村「もの凄い仕事に熱が入ってるんだか、ただの馬鹿なんだか――(笑)」


(ふざけすぎ)


山田「関係者入口から」

「はい」

山田「関係者二名とタモリ入ります(笑)」

「タモリさん来たよ(笑)」

北村「タモリ来てんだ、凄ぇ!(笑)」

「タモリさんが入って来たんで、みんな驚いてる(一同笑)」

北村「驚くよ!(笑)」

山田「今日は結構いけるのかな。タモリで通せるか、もしかして(笑)」

北村「司会は中村だって聞いてたのにさ、タモリ入って来るんだもん(笑)」

山田「さて、騙せるかどうかチェックかもしんないよ。上手くいくかもしんない、今日は」


(ふざけすぎ。すみません)


「はい、それじゃあ、そういうことで。えーと、司会の最終的な打ち合わせとかやりまして――、スペシャルゲストのアヤセマサキさんは、午後1時からのご出席の予定です、とか教えられますね。あとは、このへんでちょっとモノマネ交えて、とか、このへんではこうして、とか。適当に言われます」

中村「なるほどね」

「基本的にはお任せいたしますので」

中村「そうですか」

「さて、そういうわけで、スワップミートは無事に開催されました。鳴兎子市公会堂の中のでっかいホールなどや、建物の奥のほうにある会議室なんかも幾つも借り切って、大々的におこなわれていますね。部屋ごとに色々テーマが分けられていて、フィギュアだらけのところとかあります(笑)。あと、宇宙戦士風の格好をして歩いてる女の人とか(一同笑)」

山田「あのきわどい格好は――(笑)」

北村「ダーティー・ペアだ!(一同笑)」

「ダーティー・ペアが独りで歩いています(一同笑)」

山田「ペアじゃないじゃん(笑)」

「――さて、何か特にする人はいるかな?」

山田「説明員なのかなぁ?」

「うーん、山田さんはそうですね」

山田「ちゃんとスーツ着て来てるけど」

「うん、腕章つけて。――北村さんなんかは、参加もしつつ、手伝いもしつつ、って感じかな」

山田「面倒なことには顔を出さないで」

「そうですね。さて、じゃあ、お昼休みを挟んで、さあ、1時――なんですが……係員の中でもちょっと偉い立場の人がですね、『すみません、中村さん……』と控え室のほうで」

中村「うん」

「『えーとですね、予定していましたアヤセマサキさんなんですけれども、まだいらしてないうえに、電話しても連絡がつかない状態なんですよ』」

中村「何ぃ、そらマズイなぁ」

「『ちょっとこれは拙いですよ。マスコミも大勢詰めかけていますからね』」

中村「しょうがないな〜(一同笑)」

山田「やばいぞ(笑)」

「やな予感」

中村「じゃあ、ちょっと用意するから(一同笑)、写真を見せてくれるかな。今からちょっと真似るから(一同笑)。なるべく喋り方とかも(笑)」

「『いや、アヤセさんはお写真を撮られるのを嫌っていらっしゃる方なので、手元に写真がないんですよ』」

中村「適当なモノマネでいいね(一同笑)」

「『マスコミの中には、以前雑誌の取材でアヤセさんとお話しされた方も何人か混ざっていらっしゃると思いますので(笑)、ちょっとそれは――』」

中村「そうかぁ」

山田「て言うか、スター☆中村の技量でどこまで行くかっていうのも(笑)」

「<声帯模写>42%じゃあ」

中村「いやぁ、色々<説得>とか(一同笑)」

「――『いいですか? こういう理由で私はアヤセなんです』(一同笑)」

山田「納得されちゃう(笑)」

北村「不自然だ。不自然極まりない(笑)」

山田「そして最終的に<言いくるめ>(笑)」

中村「<言いくるめ>はあるから大丈夫」


(大丈夫、じゃねえよ)


「んでね、『そういうわけで、どうか引き伸ばしておいてください』と言われます」

中村「それはまあ、何とかしましょう」

「『よろしくお願いします!』――期待の籠もった目で見つめられる(笑)」

山田「やばいぞ」

中村「まあ、そう言いながらも、結構焦ってる」

「タモリさんの格好で(笑)」

中村「タモリでどこまで保たせるかだなぁ」

山田「今日はタモリだけなんだ、もしかすると(笑)。いつもバッグにカツラいっぱい突っ込んで来てたのに」

中村「だけど、やっぱりタモリでどこまで粘れるか」

「えーと、その役員の人がですね、山田君のことを手招きしてる」

山田「(跪いて)……御用でしょうか?(笑)」

「『山田さん、確か、車持ってましたよね?』」

山田「えっ? うーん、あることはありますけど……」

「『えーっと、申し訳ないんですけど、(メモを渡しながら)今からこちらの住所を訪ねて頂いてですね、えーと、(声をひそめて)これ、オフレコなんですけど、アヤセマサキさんのご自宅なんですよ』」

山田「カシャカシャカシャ(写真を撮る仕草)(笑)」

「『こちらへ行ってですね、アヤセさんをお迎えに行って頂きたいんですよ』」

山田「えっ? えーと……」

「『あ、かくかくしかじかということで……』」

山田「ああ、うんうん、解りました、と」

「『お願いします』」

山田「でも説明員いなくなるな……あ、先輩ーっ!」

北村「俺? 何?」

山田「ちょっと用事があるんで、説明員よろしくお願いしまーす(笑)。と言って腕章渡して車のほうへダッシュ」

北村「説明員って言われても……」

「あ、そうだ、その係員がですね、『あ、アヤセさんの作品もたくさん同時に運んで頂くことになるかもしれないと思うんで、人手もひとりくらい連れていって頂いて構いませんが』」

北村「……後輩ーっ!(笑) 説明員よろしくーっ!」

山田「あれっ、なんで北村さんついて来るんですかぁっ!?(笑)」

北村「待てこらーっ!」

「じゃあ、飛び乗ってください、車に。♪ルパンザサ〜、あれっ?」

山田「もう、バンバン飛ばすよ」


(場面転換)


「そのとき、マスコミ陣ならびにアヤセファンの期待の眼差しを一心に浴びているスター☆中村ですが(一同笑)。
 そうですねぇ、『もう一時半ですけど、アヤセさんはいらっしゃらないんですか?』とか質問されたりしますね」

中村「いや、そういうのは無視して、タモリネタを(一同笑)。飽きてきたら、そうだなぁ、昔のタモリの真似を」

「昔のタモリ(笑)。密室芸とか。
 ――えーと、じゃあねぇ、<声帯模写>ロール振って(笑)」

山田「どこまで諦めずに(笑)」

中村「まあ、余裕。(コロコロ……)……」

山田「やっちゃったぁっ!(笑)」

中村「94」

「ああ、やっちゃった(笑)」

山田「ブーイング喰らうぞ(笑)」

中村「ああああ」

「『アヤセマサキを出せぇっ!』って言われる」

中村「じゃあ、とりあえず引っ込んで――」

山田「あ、昨日考えたネタを出せば!」

中村「どうしようかなぁ」

「いや、昨日思いついたのがタモリだから(笑)。思いついて即、固めもせずに(笑)」

中村「拙いなぁ。…………じゃあ、どんなタモリならいけるんだ!(一同爆笑)」

「タモリしかできねえのか(笑)」

北村「離れろよ!(笑)」

「じゃあ、グラサンして悩んでいてください」


(本当に大丈夫かいな……。いや、すみません。次の章からちゃんとします)

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