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Act.10 翼ある闇



ボクは、もどかしさに泣きじゃくる子供のように、茫漠とした闇にすがりついていた。
闇は、絶望的に深かった。

― 竹本健治 『夜は訪れぬうちに闇』



「ヨシアは、50メートル以上の距離を置いて立ち止まった」

長沢「車のライトを彼に向けることはできますか?」

「車を運転しないと」

長沢「(高坂に)お願いできますか?」

高坂「じゃあ、動かして、そっちのほうに」

長沢「ライトを向ける――」

「その前に、向こうがライトを消した」

長沢「消しますか。じゃあ、手持ちのライトで、いた場所を照らしてみます」

「はい、じゃあ、ヨシアが消して、その次の瞬間に照らした。消えた懐中電灯を手にぶら〜んと持って突っ立っているけど、まるで糸の切れたマリオネットのように、その場にコトンと倒れた」

長沢「駆け寄って――」

「――駆け寄る前に――まあ、車はまだ旋回中ですが――途端に皆さん、強烈な不安を感じ、彼のいた場所の上あたりに、思わず目を遣ってしまった」

芳樹「うわ!」

長沢「見ちゃうんですね、はい」

「冬の夜空に――月明かりも星明かりもない雪降る真の暗闇の中に、これまで知る由(よし)もなかった大いなる宇宙的恐怖を感じた」

長沢「いますね? 何か」

芳樹「(コロコロ……)発狂」(だから気が早い)

「闇が――凝り固まっています。ヨシアの身体が真の闇に置かれたことで、体内にあった"もの"が外に出てきた――」

琴音「ああ、そういうことか」

「夜の闇よりも濃厚な、絶対の暗黒が空中に漂っています。朧気に見えるその闇の塊は曖昧で、ゆえに正確な規模は計れませんが、圧倒的な存在感を見せつけていることは確かです。
 ――途端に、その闇の塊がフワリと動き出しました。近づいてきます」

芳樹「うわあ!」

長沢「じゃあ、ライトで照らしてみます。いるらしいところに」

「パッと照らした途端、朧気な輪郭が見えると同時に――、眼を開きました。闇が」

芳樹「厭だ!」

長沢「うわ」

「闇の中央に、三つの部分に分かれた、真っ赤に燃え上がるような瞳が」

長沢「やばいよ、アレだよ! 燃える瞳が!」

「丸い眼の内側が三つの部分に分かれていて、それがひとつの眼を形成しているんですね。その瞳は、明らかに君たちの姿を捉えています」

長沢「うわあ、見られてるよ」 Haunter of the Dark

「次の瞬間、闇が、翼を広げました。左右に広く大きく揺らめく漆黒の翼を、まるで誇示するかのごとく見せつけて、君たちのほうに急降下してきます。
 翼をはためかすとゴウッと強風が起こり、雪のつぶてがフロントグラスにびしゃびしゃと当たる。
 ――というわけで、全員<正気度>ロール!」

(コロコロ……)

芳樹「既に発狂してます」

長沢「やっぱり、喰らいました」

高坂「あ、03!」

琴音「成功で〜す」

「成功しても1D6減ります」

芳樹「失敗した人は?」

「1D20!(笑)」

長沢「そりゃあ――」

芳樹「(コロコロ……)発狂。10!」

長沢「(コロコロ……)9! やっぱり駄目です。一気に」

「不定の狂気ですか? 他のおふたり、5ポイント以上は減ってないですよね? ――そうですねぇ、それじゃあ、発狂したふたり、<アイデア>ロールどうぞ」

長沢「<アイデア>ロールだけは高いんだよなぁ」

(コロコロ……)

芳樹「成功したぁ! 皆さん、さようなら〜」

長沢「(成功)」

「目の前にあるものの正体を、本能的に察知しました。――宇宙の摂理であるエントロピーの法則をねじ曲げ、実体を有するのみならず智慧を身につけるまでに凝り固まった闇――それは《神》と呼べる存在かもしれません」

長沢「いやぁ、出ましたね」

「というわけで《闇をさまようもの》が舞い降りてきました――。
 (長沢に)さっき照らしたので、1D6降ってください。ダメージを与えます」

長沢「はい。うりゃ!(コロコロ……)1ですぅ(泣)」

「はい、1ポイントのダメージを与えました。――というわけで、一気に寄ってきますよぉ」

芳樹「(不定の狂気一覧表を見ながら)これ振るの?」

「ああ、それは――いいです。おふたりのロールプレイに任せます(他力本願)」

長沢「解りました」

「発狂者らしく。つまり発狂していることをうまく利用して上手に立ち回ることも可能ですから」


(芳樹は1D10を振り、一覧表で決定することにしました。出た目は9……よりによって「犯罪性精神異常」)


芳樹「殺人鬼になった(笑)。てめぇ!!」

琴音「車の中ではやめてね(笑)」

芳樹「いや、外に出てる」

「車は相変わらず旋回しているんですね?」

高坂「とりあえず、向けるまでは」

「じゃあ、雪の中で急旋回したということで――(ある程度正気度も減少していることですし)――<自動車の運転−20%>でお願いします」

高坂「(コロコロ……)余裕で成功でございます」

「向こうが近づく直前に旋回して、ライトを浴びせることができました。ダメージ3D6」

高坂「もしかして、これ、結構命運握ってます?(笑)(コロコロ……)お、そこそこ。11点」

長沢「じゃあ、滅茶苦茶にライトを振っています。来るな、来るな、とか言いながら」

「とかやってる前に――こちらのほうが遙かに速いので――車のヘッドライトを浴びちゃったけど、そのままヒュンと上に躱して、真上から急降下してきます」

琴音「ああ、上からじゃ駄目じゃん」

長沢「どっちに来る?」

芳樹「ヨシアに走ってます。(《さまようもの》を)見た瞬間から、ああーっっ! と叫んで走っていく」

「あ、車から出てヨシアに? それでは――急降下してきて、車の屋根をするりと、闇の触手が擦り抜けて入ってくる」

琴音「ひええ」

「解釈をしますと、車を構成している分子を瞬時に拡散させて入ってきています。もちろん、触手を引っ込めると、また瞬時に屋根のエントロピーは減少するけどね」


(と、車内の者を襲おうとしましたが、キーパーの勘違いで、ターゲットはふたりとも車外に出ていたのですね。というわけで、今の無し。よくあることです。――ちなみにこれが、イチノが療養所の壁を擦り抜けて飛んでいった(正確には、連れ去られた)理屈です)


「結晶体を覗き込んで目を合わせた者を優先的に襲わせてもらうことになっているんで(笑)」

芳樹「車のほうでじゃなく、ふたりが狙われるわけ?」

「そうですね」

芳樹「俺はもう発狂して殺人鬼になっているから、ヨシアのに向かっていく」

長沢「あたりを見回しながら、あっちこっちにライトを振っています」

「ライトはまるで違う方向を照らしていますね。――では(コロコロ……)ああ、芳樹さんのほうへ(笑)」

芳樹「何ぃ!? 走ってる途中に上から来るのか」

琴音「保ち堪えろぉ」

「とんでもない速さで、シュン! と飛んできた。そして闇の触手をシュルシュルと伸ばして巻き込みます。(コロコロ……)っていうか絶対当たるんだよね、コレ(命中率100%)」

芳樹「避けられない?」

「<回避>いいですよ。えーと、(発狂しているので半分の値で、とか言おうとしている最中)」

芳樹「(コロコロ……)失敗」

「はい。じゃあ、当たり」

芳樹「死ぬ。さようなら、みなさん」

「(コロコロ……)ダメージ4点。包み込んでですね、身体を構成している原子のレベルから、エントロピーを増大させてきます。身体が崩壊していきます」

芳樹「さようならぁーっ」

長沢「バラバラバラって」

「まあ、火傷に似ている傷跡になります。纏わりついたままです」

琴音「そっちのほうは暗いんでしょうか? 見えるんでしょうか、私から」

「朧気に見えますよ」

長沢「何かに包まれてるなぁってのは解る? じゃあ、そこにライトを当てます」

「ちょっと待って。DEX順にいきましょう」


(高坂:14、琴音:13、芳樹:12、長沢:12)


「高坂さん、どうぞ」

高坂「車はもう、反転し終わってる?」

「し終わってますけど、ライトを向けている上にいますから」

高坂「もう無理ですね。入口に向かってるんですか? 車の向きは」

「車の向きは療養所の入口に向かっています」

高坂「じゃあ、また反転する必要はないんですね。――ちなみに、車の中からも様子は判るんですか?」

「ええ、判ります。闇の中ですけど、それ以上に濃い闇なので、だいたいは判ります」

高坂「これって、DEX1の番まで遅らすってことは、アリなんですか?」

「ああ――アリですね」

高坂「じゃあ、とりあえず遅らせます」


(実際のところ『クトゥルフの呼び声』にこのようなルールは記載されていませんが、特に不自然な状況ではないのでいいでしょう)


「次どうぞ」

琴音「(《さまようもの》は)方向的には、車から見てどのへんなんですか?」

「車の真正面。弟さんは真正面のライトの中にいますね。ナイフ振りかざして巻き込まれている」

芳樹「ああああぅ」

琴音「助けに行かなきゃしょうがないのかな、これは。懐中電灯を持って車から降ります」

「はい、降りた。降りて向かって行くところでこのラウンドの行動は終わりです」


(DEX12のふたりは、毎ラウンド、ダイスを振り合って、どちらが先に行動するか決定します。ルール上は、D100で低い目のほうが先に行動できる、とありますが)


芳樹「絡まれてるから、絡んでいるやつに光を当てる」

「ライトの命中率は――こいつ、ひょいひょい躱しますんで、<DEX×3>ってところですね。発狂しているから、その半分にしてください」

芳樹「18%。(コロコロ……)」

長沢「これで当たるほどクトゥルフは甘くないんですよね」

芳樹「はい、さようならあ(笑)」

「さて、長沢さんは?」

長沢「おかしくなってても正常に考えることは――できませんよね? じゃあ、ライトを当てながら向かいます。化け物のほうに」

「それじゃあ、こっちもまた命中率18%か」

長沢「18ですか。(コロコロ……)当たんないですねえ」

「ライトは当たんないけど向かっていく。――(高坂に)さて、どうしましょう?」

高坂「ああ――」

長沢「いいなぁ、いいなぁ、発狂するっていいなぁ。取りたい行動が取れねぇ!」

高坂「電話するとかっていうと、何ラウンドかかかっちゃうんですよね? じゃあ、懐中電灯持って、ひとまず車から降りる。エンジン切らないしサイドも引かないで」

「はい、降りました。次のラウンド行きます。(芳樹に)巻き込み続けま〜す」

芳樹「死にま〜す。さようなら〜」

「エントロピーを増大させ――(コロコロ……)ダメージ9点!」

芳樹「死にました!」

長沢「崩壊しましたか」

「彼の身体は分解されました」

琴音「分解っていうのは外側だけじゃなくて?」

「まあ、外側からどんどんほぐれていって、最後には芯も残らず」

芳樹「この世から消え去りました」

「原子が世界中に散らばりました」

琴音「芳樹〜ぃ」

「あ、親しい人の非業の死を目撃しましたね(嬉)」(悪魔)

長沢「やべぇ〜」

「狂ってる人はもういいですけど、正常な方は<正気度>ロールどうぞ」

(コロコロ……)

高坂「失敗しました」

琴音「あ、成功です」

「失敗したら1D6でいいでしょう」

高坂「4を出したらおしまい。(コロコロ……)まだ大丈夫」

琴音「影も形も残らない。芳樹が(笑)。これどうやって葬式挙げたらいいのかな」

長沢「包丁だけコロン、と転がるんだ。うわー、恐ー」

「さて、お次の番だよ〜」

高坂「消えたのは、見ちゃったんですね、私?」

「見ちゃいました」

高坂「乗ります、車に(一同笑)」

芳樹「逃げるんか!」

「正気度減ってますから、相当恐がりはしたでしょう。――それじゃあ、琴音さん」

琴音「とりあえず、芳樹のさっきいたあたりに行きますよ(笑)」

芳樹「包丁と服は残ってますよ。あ、そうか、ピアスも落っこっている(笑)」

琴音「芳樹ぃ〜」

長沢「僕はおかしくなってるから、相変わらず相手を捜してます」

「はい、お次――こっちか。それでは、(長沢に)優先的に狙わせていただきます」

長沢「はい。目が合っちゃいましたからね」

「(コロコロ……)当たりです。巻き込みます。分解します」

芳樹「避けろ!」

「あ、<回避>ができるか。<回避>してもいいけど、狂ってるから半分でどうぞ」

長沢「12%ですか――(コロコロ……)駄目ですね」

芳樹「さようならぁ」

長沢「巻き込まれました」

「(コロコロ……)ダメージ5点」

長沢「痛ぁーっ!」

芳樹「ヨシア殺せば何とかなるかもしれない」

高坂「ヨシア、抜け殻になってるんじゃあ?(笑)」

「さて、高坂さん」

高坂「あれ、もう廻ってきました?」

芳樹「ひとり死亡してるから、順番早いの」

高坂「あ、そうゆうことですか。――車の外に向かって、車に乗れ! って怒鳴る」

「はい。怒鳴りながら何かしてもいいですよ」

高坂「ギアを入れるぐらいですか?(笑)」

「というわけで琴音さんどうぞ」

琴音「もう、死体ないんだけどさ、これ(笑)。――何がどうなったのかっていうのは、解ってはいるんでしょうかね?」

「じゃあ<アイデア>ロールお願いします」

琴音「70%。(コロコロ……)あ、解んなかった(笑)」

「じゃあ、なぜか突然消えた!」

琴音「とりあえずキョロキョロするっきゃないのかなぁ。芳樹ぃ! と叫びながら」

芳樹「いやぁ、短い人生だった」

「それでは長沢さん」

長沢「捕まったまんまなんですよね。逃げられませんねぇ。で、狂ったまんまなんですよねぇ――。ブツブツ呟きながら、自分の顔にライト当ててます。光だ光だ……と言いながら」

「はい。それでは、原子拡散〜(コロコロ……)ダメージ8点」

芳樹「さようならぁ!」

長沢「ちょうど0でございます。これは死亡ですか?」

「ちょうど0ですか。んーとね、次のラウンドが終わる前に誰かが<応急手当>に成功すれば生き残る(笑)」

長沢「これはもう、絶望的ですね」

「――高坂さん」

高坂「DEX1まで遅らせます」

「――琴音さん」

琴音「近いんですか? (長沢が)立ってた位置は?」

「近いですよ」

琴音「じゃあ、キョロキョロしてたらきっと見えますね」

長沢「今にもボロボロ崩れそう。光が、光が。……見てるのは見られるけど見てるんだ――とかブツブツ言ってます」

琴音「とりあえず芳樹がいないんで、彼(長沢)のところに走って寄っていくことにしましょう」

「寄ってって何かしますか?」

琴音「何かする暇ありますか? じゃあ、史彦くん、って様子を窺う」

「と言うか、闇に包まれちゃってます」

長沢「包まれちゃってるんです。どんどんボロボロボロボロ崩れていく予定なんですけど」

「予定(笑)」

長沢「もう危ないんですが、かなり」

琴音「闇っていうのは、黒っぽいものに包まれている?」

「ええ、そうです」

長沢「周りよりも更に黒い何かに包まれている」

琴音「――じゃあ、そこにライトを当てようとするわ」

「はい、それじゃあ、ライト当てロール。<DEX×3>でお願いします」

琴音「39%。(コロコロ……)当たりました」

「ダメージ1D6」

琴音「(コロコロ……)4」

「ライト当てたところの闇の塊が拡散しますね」

芳樹「よかったねぇ」

長沢「よかったですけど……(笑)」

「じゃあ、耐久力0の状態で解放された」

長沢「はい。ドタッ! で、ブツブツ――あ、もう言えないですね」

芳樹「放っとけば死ぬ」

「消滅はしないけど、"大火傷"で。――というわけで、1まで遅らせていた高坂さん」

高坂「逃げます」

「逃げますか」

高坂「とりあえず車発進させますけど……」

「真正面に《闇》がいる」

高坂「なんですよね。――避けられるんですか、コース的に?」

「無理ですね」

芳樹「突っ込めぇ!(笑)」

高坂「います? もしかして車の目の前に」

長沢「たぶんいます。ぶっ倒れて」

「このまま行くと轢いちゃいます。ヨシアも轢いちゃいます」

芳樹「ヨシアを轢け! ヨシアを轢くんだ!」

長沢「たぶん、鷹見琴音もいます」

「うん。琴音さんも轢いちゃいます」

高坂「療養所の入口は、ここだけですか?」

「ですね、車が出入りできるのは」

高坂「他に道がないってことは、出れないってことですね?(笑)」

「(そのとおり!)――まあ、誰も傷つけずには」

長沢「これで発狂してると行くしかないですけど、ここが正気の悲しいところ」

高坂「ああ、そうですか――」

「ちなみに、先ほど琴音さんが当てたライトで、だいぶ《闇》の規模が小さくなってきてるのが判る」

芳樹「ライト当てに廻るか」

高坂「じゃ、懐中電灯持って、もう一回車から降ります。行けるところまで寄ります」

「はい、近づきました。で、次のラウンド。それじゃあ――(《さまようもの》の標的決め。コロコロ……)おおっと! 近くじゃなくて、ちょっと離れた高坂さんのほうに」

高坂「あ、私ですか」

「はい、確率的にはこちらのほうが低めだったんですが。(コロコロ……)まあ、当たります。もの凄い疾さで突進してくる」

高坂「<回避>はしていいんですよね? (コロコロ……)失敗しました」

「捉えた!」

琴音「駄目じゃん。車運転できる人いない(笑)」

「ダメージ(コロコロ……)4点。まだ生きてますよね」

高坂「はい、生きています」

「というわけで次は――はい、高坂さん」


(実際のところ、<回避>を試みたラウンドでは、一切の攻撃がおこなえません(<受け>はできますが)。失念しておりましたね、はい。まあ、《さまようもの》に捉えられたことで行動が"リセット"されたとでも解釈しておいてくださいな(苦しい))


高坂「ライトって、当てられたりできるんですか?」

「していいですよ」

高坂「自分の周りに当てるってことしかできませんよね」

「《闇》は固まってると言うよりは流動しているので、当てたと思っても全然外してたりするんで、それでパーセンテージロールが必要なんです」

高坂「なるほど。DEXの3倍ですか――42%、これまた微妙な数値。(コロコロ……)あ、成功しました」

「ダメージ1D6振ってください」

高坂「(コロコロ……)4です」

「はい。《闇》がだいぶ小さくなってきたね。どんどん拡散していく、まあ、それでなくとも、車のヘッドライトが雪に反射して、というのも少しはあるんだけど。どんどんエントロピーが増大しつつはある。非常に不安定な状態ですから。
 ――はい次、琴音さん」

琴音「とりあえず、彼(長沢)はもう危ないですか」

長沢「死ぬ寸前です」

琴音「じゃあ、何にもないけど<応急手当>30%ですね。ごめんねぇ(笑)」

芳樹「これ失敗したら死亡」

長沢「ここで生き残ると、『クトゥルフ』じゃなくなるぞ、ちょっと(笑)」

琴音「(コロコロ……)93です(笑)」

芳樹「死亡」

琴音「私が手を貸していたのかな、これ(笑)」

「今、楽にしてやるっ(笑)」

長沢「やっぱ『クトゥルフ』だぜ(笑)。いかにおいしい死に方をするか」

「――というわけで、次のラウンド!
 (コロコロ……)ダメージ8点!」

高坂「はい。現在2点――意識不明です」

「意識不明になりました」

芳樹「さようならぁ!」

琴音「あぁあ」

長沢「ふたり死亡、ひとり意識不明」

「――で、琴音さん」

琴音「そのままですね、視線を上げて、さっき倒れていたヨシアのほうに向かって――駆け寄っていきます」

芳樹「本体を倒せ(笑)。本体を潰せば何とかなる」

「それじゃあね、駆け寄ろうとして彼のほうを見ると、意識を取り戻したらしくて、むくりと――ゆっくりとではあるけど――起きあがるのが見えた」

琴音「はい、見えた」

「ヨシアはぼうっと何も考えていないかの様子で、左手に持っていた懐中電灯をパチッと点けた。
 ――ライトが《闇》に当たった。(コロコロ……)ダメージ5点。
 ――すると、《闇》が完全に霧散しました」

長沢「おお」

芳樹「生き残ったね」

高坂「あ、とどめを受けずに?」

「その前にヨシアがやってくれました。――というわけで、闇の化身、マックスウェルの悪魔、いやさ《闇をさまようもの》は完全にエントロピーの法則に従ってこの世から消滅しました」

琴音「彼は――ヨシアくんは――?」

「ヨシアはしばらく、積もった雪の中にペタンと座ってるけど、やがて周りをキョロキョロ見回して、最初に会ったときのようなおどおどした表情で――『あれ? ヨタカは? イチノは?』と不安そうに」

芳樹「そういうことかい」

琴音「何にも覚えてないの、ヨシアくん?」

「『あれ? 一緒に世界を変えるって約束したのに――』そして琴音さんの姿を見ると、火がついたように泣き出した」

琴音「とりあえず、(高坂も一緒に)車に入れます。でも、ここ療養所なんだよね」

「でも<応急手当>しといても、ばちは当たらない」

琴音「上手くいかなかったらごめんね。<応急手当>(コロコロ……)ああ、駄目です」

「というわけで、ようやく騒ぎを聞きつけて、療養所から職員が出てきた。で、とりあえず、一見重体に見えるふたりを回収して、ひとりは後に意識を取り戻しますが、もうひとりは残念ながら――」

長沢「死亡ですね」

「死亡が確認されました」

芳樹「ひとりは行方不明。永遠の謎(笑)」

琴音「服とピアスを拾わなきゃ。でもこれ、どう説明したら――(笑)」

「それで、生き残ったヨシアですが。彼をどうしますか?」

琴音「彼、どうしようか? ――とりあえず、でも、お家に連れていくか……」

「泣いてますよ。えーん、えーん、と」

琴音「とりあえず宥(なだ)めて、何があったの? と訊いてみます」

「しゃくりあげながら、『ヨタカとイチノと一緒に、僕らをこんな除け者にしている世界を変えようと約束したんだ。それで、闇を集めて作った宝石を覗いたら――それから、何も、覚えてないんだ――』」

琴音「私たちが取る前に見ていたのか」

「そうですね」

琴音「とりあえず――お家に帰ろっか?」

「『……うん』」

琴音「しょうがないよな。しょうがないしな」

芳樹「本人も自覚ないしね」

長沢「ところで、車の中に置いておいた宝石と本はどうしたんでしょうねぇ」

琴音「鷹見家に代々伝わるかも(笑)」

「――まあ、何とか連れ帰りました。さてさて、例の結晶体ですが、やがて数日が経過すると、次第にエントロピーの増大が始まり、周りに溶けだしていっちゃいましたねえ、闇粒子が。
 ――というわけで、少年八人を犠牲者に出した冬の夜の事件、『闇に用いる力学』事件はこれにて終了となります。が――」

長沢「はい」

「――実はこれには、数十年後の後日談があります。生き残りの唯一の少年、森川芳也ですが、彼はこの事件をきっかけに自分を取り囲む世界の殆ど全てを失ってしまいました。自分を可愛がってくれる人も、苛めてくれる人も、相手をしてくれる人全員ですね。しかもこの強烈な神話的体験により、後の世に、これがトラウマとなり心がねじ曲がってしまったのでしょう、およそ三十年後、彼が再び神話事件を――今度は自らの意志で――引き起こすこととなります。そのとき人類は大混乱に陥るわけですが――さて、それがナイアルラトホテップの意志であるかどうかは永遠の謎です。
 ――と、いうわけで、今回のシナリオはおしまいです――」

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