Opening Act. 1 Act. 2 Act. 3 Act. 4 Act. 5 Act. 6 Act. 7 Act. 8 Act. 9 Act. 10 Ending
Act.1 不審な墜落
そうして千尋がこの世から消えたまま、俺は日常に戻っていった。
― 竹本健治 『闇に用いる力学』
キーパー(以下、K)「じゃあ、始めましょう。時は1999年12月19日、この日に事件は起こります。もう、世間はクリスマスムード一色ですねぇ。この鳴兎子(なうね)市も例外ではなく」
(キーパーは鳴兎子市の地図を見せます。舞台となるのは市の南西の端、郊外の森に近い、静かな住宅地です)
K「突然ですが、長沢さん」
長沢「はい」
K「長沢さんだけが独立していて可哀想なので(笑)(他のキャラクターは皆、血縁関係)、絡めましょう」
長沢「絡めましょう」
K「あなたにはお姉さんがいます」
長沢「お姉さん! お姉さんいるんですか」
K「いていいですね?」
長沢「はい、構いません」
K「23歳の、千尋(ちひろ)さんというお姉さんがいます。……"いました"と言ったほうがいいかな」
長沢「あらららら(笑)」
K「看護婦をやっていたんです、鳴兎子療養所で。――鳴兎子療養所は郊外の森に面している、大変感じのいい、四階建ての建物です。清潔感溢れる(笑)」
長沢「郊外というと、このへんですか?」
(鳴兎子療養所の位置は、当シナリオでは市の北東の端に定めました)
K「一般病棟と精神病棟に分かれていまして、彼女は一般病棟の担当看護婦でした。新人ですけどね。
――その人が、19日の夜、突然の事故で死亡してしまいました」<一同>「あら。ガーン」
長沢「お姉ちゃんが死んじゃったぁ」
K「ちなみに、そうだね、千尋さんとは、他の人たちも、知り合いであったということにしておきましょう。長沢さんを通じて。――どのくらい仲がよかったかは各自自由に決めていいです。
なぜ死んだかなんですが、19日夜、彼女がどうやら、療養所の屋上から落ちたらしい」長沢「屋上から落ちたんですか」
K「らしいです。えーと、目撃者というか、落ちる瞬間を見た人はいないのですが、他の看護婦さんが、どさりと大きな音がしたので外に出てみたら、彼女がまさに死ぬ直前を目撃したと。死ぬ前に何か二言三言呟いたらしいけど、詳しくは知りません。
それで警察のほうは、自殺と事故両方で捜査を進めてはいるらしいけど、どうやら自殺で片がつきそうです。しかし、おかしな点が幾つか見られます。療養所の屋上は金網で囲ってあるのですが、結構フェンスは高いんですよ。それを乗り越えて行くには自分の意志で行くしかないので自殺なのだろうなということにはなっていますが、靴は脱いでいないですし、遺書もないですし、あなたもお姉さんのことはよく知っていますが、自殺の兆候は――」長沢「――なかった、と」
K「しかし、このままだと自殺で片がついてしまいそうです」
芳樹「あぁ、そうなるとやっぱり、それはおかしいと思うでしょうね」
長沢「これはもう、きっと姉ちゃんは誰かに殺されたんだ! ――と、まあ、頭のいいキャラなんで(INT18)、そこまではいかないと思いますけど、でも何かおかしいなと思いますね。どうしましょう、じゃあ」
K「それとですね、更に重要な情報なんですが、お姉さん、全身に、軽い火傷のような痕が残っていたとか」
芳樹「火傷!? 火傷っすか?」
K「詳しくは知らないけれど、火傷していたという情報を得た」
琴音「――そういう話は私たちも知っているんですよね」
K「はい。知ってていいです」
芳樹「(長沢とは)親友だから、もちろん話してくれるよね」
長沢「暗い声で電話が――」
芳樹「何ぃ!? って、受け取ってますよね。もしもし、どうしたんだぁ!?」
長沢「今これから、療養所のほうに行ってみるから」
芳樹「励ます。励まそうと思うから、俺も行くぜぇ! バイク、ブンブンブーン(笑)」
長沢「じゃあ、現場に行くんですよねぇ」
K「えーとですね、これが夜に起きた事件で、そのことは翌朝に知りますね」
長沢「え? 翌朝にならないと知らな――あ、そうか」
K「ですね。深夜の出来事なので。
翌日、親戚一同などが集まって色々と話し合ったりしますけど、そうですね、あなたは高校生ということもありますし、自由に行動できていいです。学校も休んでいいです」長沢「学校休んで――じゃあ、たぶん、一日中悶々と考えた結果、やっぱりおかしい、と思うようになりますねぇ」
K「長沢さんはちょくちょく療養所に顔も出していたということにして、他の看護婦さんとも仲が良かったということにしましょう。
ちなみに、千尋さんの最期を目撃したのは、君野(きみの)さんという看護婦さん。千尋さんより二年ほど先輩の。千尋さんとは仲よかったです」長沢「じゃあ、そうですね、考えが纏まったと言うか、何だかひとつ方向がついたところで、その君野さんに会いに行きます」
芳樹「ついて行く!」
長沢「一緒に来てくれ! みたいな感じで」
K「というわけで芳樹さんがついて行きます」
芳樹「バイクで。後ろのっかって。ふたりで、原チャリ(笑)」
長沢「原チャリふたり乗り? 遅ぇ〜(笑)」
芳樹「いや、改造してあるよ。……違うか、<機械修理>20%だもんな」
K「普通どおり」
長沢「メーターでは50だけど……(笑)」
(場面転換)
K「そのころ、高坂さんですが」
高坂「はい」
K「えーと、知人のお姉さんが不審な死を遂げたということを知ります」
高坂「ちなみに、車持ってていいんですか?」
K「いいです。あ、そうだ、車持っている方はどのくらい? ――(一同無反応)――あ、そうか、みんな高校生か(笑)」
高坂「現在、私どこにいるんでしょう? ここ(鳴兎子)に来てるんですか?」
K「来てます。やることないなぁ、と(笑)」
高坂「実家?」
K「実家ですね」
長沢「"鷹見"のほうがきっと、いわゆる本家なんでしょう」
高坂「今(いとこは)いるんですか、家に?」
K「そうですね、琴音さんは」
琴音「いていいですかね。学校休みだもんね」
芳樹「今日は日曜日?」
K「いえ」
琴音「この時期って、でも何か休みだったような気が――」
(懸命に自分の高校時代を思い出そうとする一同。歳は取りたくないもので……)
K「面倒なので休みにしちゃいましょう(笑)」
琴音「休みにしちゃっていいですね。うん、じゃあ、」
高坂「いらっしゃる?」
琴音「はい、いらっしゃる。まあ、午後あたりから図書館に行こうかと思いつつ、部屋でうだうだしてましょう」
高坂「とりあえず、琴音さんを――自分の部屋かな? コンコン(ノックの音)」
琴音「はあい。あ、かずにいちゃん、どうしたの」
高坂「ちょっと訊きたいことがあるんだけど、いいかなぁ」
琴音「なに、なあに?」
高坂「長沢君のお姉さんの、千尋さんっていたじゃない」
琴音「ああ、さっき芳樹が走っていったアレね」
高坂「詳しいこと訊きたいんだけど、何か聞いてるかな」
琴音「私もあれ、凄い気になってたんだけど、でも何か、自殺みたいとか言うし」
高坂「新聞とかって出てるんですか?」
K「新聞では、ちっちゃい記事として。まあ、まだ若い、前途ある看護婦さんが――と」
琴音「でも、そんなに悩むことあったのかしらね、千尋さん」
K「数日前に一回合ったけど、そんな様子は微塵も感じられなかった」
琴音「そんな様子なかったのよ、何日か前に合ったときには。――やっぱ変かな。……小説だとね、大抵こうゆうときは誰かが突き落としたとか。
……別に療養所は、変な噂とかはない、評判がいい療養所なんだもんね」K「はい」
琴音「でも気になると言えば、軽い火傷の痕っていうのも、一応みんなが知っている情報なんだよね?」
K「ただこれは、新聞には載っていなくて、看護婦の君野さん経由で」
長沢「話していない可能性がありますね。姉ちゃんがどうも……みたいな話をして、それがこっち(琴音たち)に伝わっただけだと」
琴音「そうですね。今とりあえず芳樹が見に行ってて――。
かずにいちゃんのコネでさ、何か、警察の人から内部情報を聞き出すとかっていうのは駄目なのかな?」高坂「ちなみに私って普段、どこで活動してるんですかね。ここ(鳴兎子)なんですかねぇ?」
K「ここでいいですよ」
高坂「どうなんでしょう? 警察署とかって、よく行ったりしてるんですか?」
K「ですね。行ってますね。やはりジャーナリストは、小説などではよく誰かひとりくらいは仲のいい警察が」
琴音「私のよく読んでいるような話だと(笑)」
高坂「じゃあ、今から君は私の助手だ」
琴音「助手」
高坂「警察署に、行きます?」
琴音「あ、かずにいちゃんが乗っけてってくれるんだったら」
高坂「時間って、今何時くらいなんですかね」
K「まだ午前中でいいですよ」
高坂「ふたりで行く」
琴音「うん。助手に任命されちゃった(笑)」
高坂「て言うか、何か言われたらそう通して(笑)」
K「じゃあ、おふたりは警察へ」
(場面転換)
K「では、こちらのふたり。療養所組です」
長沢「はい」
K「えーとですね、街の外れ、森に面した、静かで環境のいいところに、四階建ての白い建物が建っています。ちょっと錆びた非常階段があってみたり。と、いうわけで鳴兎子療養所〜」
長沢「じゃあ、バイクを降りたらすぐにですねぇ――」
芳樹「駐輪所置いて、鍵かけて――」
長沢「それやっている間に、もう行って、君野さんを捜します」
K「すぐに見つかるね」
長沢「君野さん、姉ちゃんどうしたんですかぁ!?」
K「『史彦くん、大変なことになっちゃったのよ〜(泣)』話してくれるのは電話で伝えてあった内容そのままなんですが、まあ、現場を見せてくれるよ」
長沢「じゃあ、現場に行ってみます」
K「『こっちなのよ。いらっしゃい』と言って、療養所の外を廻って、森に面した陰のほうに連れて行かれます。そうすると、療養所の壁のそばに、花が添えられてあります」
芳樹「じゃあ、もう遺体は――」
K「遺体は警察が」
芳樹「そりゃあそうですね(笑)」
長沢「じゃあ、じーっ、とそのへんを見てますねぇ」
芳樹「背中を叩いて(元気づける)」
長沢「何にも言わないでじっと見てる」
芳樹「――上、見せてもらってもいいですか?」
K「『あ、いいですよ』」
芳樹「<目星>(笑)」(気が早い)
長沢「じゃあ、僕もついていきます」
K「じゃあ、屋上まで連れていってもらった。『普段、屋上は開放しているんですけど、こんなことがあったから、今は封鎖してるんです』と前置きをしてから、鍵をカチャリと開けて通してくれた。
――屋上です。結構広いですねぇ」長沢「広いですかぁ」
芳樹「落ちたと思われる周辺を<目星>します」
K「ええと、つまり、金網があるから見えないけど、金網を越えて見おろしたら花が見えるであろうなという位置ですね?」
芳樹「はい」
K「<目星>どうぞ」
(コロコロ……)
芳樹「ああ、駄目だ!」
長沢「10。成功です」
K「成功してもですね、この周囲では何も特に見つからないです」
長沢「じゃあ、またちょっと落ち込んで――はぁぁ(嘆息)」
K「何らかの形跡、怪しげなものは一切ないということが判りました」
長沢「はぁぁ、と落ち込んでですね」
芳樹「絶対犯人見つけてやる! ――殺人だと思っているから、こいつ(芳樹)は(笑)。
多分、(千尋に)憧れてたかもしれない」長沢「あ、いいですねぇ」
K「お互いの姉に憧れてる(笑)」
芳樹「君野さんに、最近(千尋が)患者さんとトラブルがあったとか、何かあるかとか――」
長沢「姉ちゃんにおかしなことはなかったですか?」
K「『千尋ちゃんは患者さんとトラブルなんてない、本当に気のいい子で……器量もよく、患者さんの人気者でした。もちろん、私たち看護婦や先生たちからも慕われていましたよ』」
長沢「じゃあ、君野さんにだけ何か、言えなかったけど話した、みたいなことってのはないですか」
K「それとはちょっと違うんですけど、電話で連絡したときは言わなかったんですが、『私が見た、千尋ちゃんの最期のことなんですけど……』
あ、そのときの状況をもっと詳しく言わないと駄目でしたね。
『19日の夜、私も千尋ちゃんも宿直だったんですよ。それで――深夜1時くらいでしたでしょうか、突然、療養所内が停電になったんです』」芳樹「停電ですか」
K「『ええ。唐突に明かりが消えて。療養所全体です。それで慌てて、色々と見回ったんですが――電力室も確かめてみたんですけど――電力室は私は見なかったんですけど、聞いた話では、照明関係のブレーカーが全部下ろされていて、しかもコードが何本か切れていたんだそうです。
それで千尋さんが上の階のほうを見回っている間に私は一階を見回っていたんですけど、そうしたら突然、療養所の外でドサッと、何かが落ちるような大きな音がして、急いで勝手口から出て、そちらに廻ってみたら、千尋ちゃんが倒れていたんです。……まだちょっと息がある状態で……』」長沢「姉ちゃんは最期、何か言ってましたか?」
K「『ええ……、ふた言だけ――』」
長沢「何と?」
K「『よく意味は判らないんですけど、私の目をじっと見て……"闇が、私を包んで"』」
長沢「?」
K「『それと、"どうしてあの子たちが"――と』」
長沢「ええぇ? ――混乱しますねぇ」
K「『ええ、私にも何のことやら』」
芳樹「"あの子たちが"ということは、患者さんたちかもしれないし、看護婦の仲間かもしれないということですね」
長沢「"あの子たち"か――」
<一同>「う〜ん(考え込む。妙な空気)(笑)」
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