琥瑠姫
むかしむかし、ある国に、琥珀と瑠璃とをあわせたかのような、美しいお姫様がおりました。
その名を琥瑠姫といいました。
琥瑠姫が美しいのは姿だけではなく、心の中も、澄んだ泉のように穏やかで清らかでした。
その国では琥瑠姫をたいせつにたいせつに、まるで神様のように、みんなで護っていました。
琥瑠姫も、みんなに平等に、やさしく接してくれました。
みんなは琥瑠姫の美しさに元気をもらい、毎日を明るく楽しくすごしていました。
でもそんなある日、とつぜん、隣の国の悪い兵隊たちが、いっせいに攻めこんできたのです。
目的は琥瑠姫でした。
琥瑠姫の美しさをひとりじめしたくて、おそいかかってきたのです。
多勢に無勢、そもそも相手は野蛮で凶暴な国です。平和を愛する人たちにかなうはずもありませんでした。
国民のほとんどが死んでしまいました。殺されてしまいました。焼かれてしまいました。
でも、たったふたりだけ、男と女が生き残りました。
ふたりは琥瑠姫を逃がすことにしました。
国を捨ててしまうことになりますが、だいじな琥瑠姫を失うことにくらべたら、どうということはありません。
そして新しい国に落ちつき、そこでいつまでも琥瑠姫を護り、平和に暮らしました。
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