― key『AIR』
◆クマリは鳥の羽毛にも似た、純白の繊維組織からなる生命体です。その生体には不可解な点が多く、通常の生命やその延長上にある存在ではないことは明らかです。一説によると、この存在は「アカシック・レコード」「知識を守るもの」などの言葉とかかわりを持つ、地球という惑星の記憶そのものに繋がっていると言われています。地球上に存在するすべての事象・現象の記憶を収集し、それを知られざる母体へと持ち帰ることを目的としているのです。
その行動パターンは不可解にして理不尽であり、遭遇した生命体の精神的・肉体的な隙をついて寄生するのです。クマリは羽根そのものであるその肉体から光を放ちますが、この光は獲物の脳に作用し、恍惚・憧憬・崇拝にも似た誘惑を引き起こします。白い羽の放つ偽りの霊光に惹かれた獲物は、次の瞬間にはこの寄生生物の巣となっているのです。 クマリに寄生された生物は最初のうちは変化がありませんが、徐々にクマリの記録している情報に引きずられはじめます。見たことのない記憶に悩まされたり、知らないはずの知識に行動を左右されたりするのです。そうしつつも記憶を十分にたくわえたクマリは「発芽」をはじめます。そうなった生物は、徐々に全身を白い羽に包まれてゆき、翼あるいはその変形のような器官を二本、もしくはそれ以上に伸ばした姿となります。「発芽」した宿主は完全にクマリと一体化した芯となり、一つの動物のように振舞います。
超常の魔物に支配されたその実態に反して、白く輝くその最終形態は美麗にして荘厳、神聖としか形容のしようがないものであり、多くの寄生された動物が「翼の生えた霊獣」の伝説の原型となってきました。しかし、彼らにとってもっとも理想的な宿主は、高度な知覚と複雑な視点を有し、クマリにとってもっとも多様な記憶を収集できる人間でしょう。そして、クマリのもたらす混乱によってもっとも深刻かつ奇怪な事態をひきおこすのも人間です。「発芽」した人間の姿は、西洋では羽を供えた神々・天使として、東洋では無数の腕を供えた阿修羅や御仏、あるいは羽化した神仙として、愚かな人類より憧憬と崇敬を集めてきました。
「発芽」した後は、さらなる情報を収集するべく地上を放浪する個体もいますが、多くの場合、情報を十分にたくわえたクマリはそれを知られざる母体へと届けるべく、空の高みへと飛んでゆきます。宇宙空間へ飛びたつのでもなく、はるか上空でそのまま空に吸い込まれるように消えてゆきます。どこへゆくのかは知るよしもなく、知ったときには破滅が待ち受けているかもしれません。
変わったケースとしては、生きているもののみならず亡霊や生霊に「寄生」する場合があります。地上に残っている思念や怨念の残滓に接触したクマリは、記録している情報をもとにして彼らを再構成し、肉体を持って生きているかのごとき存在にしたてあげます。また、現存する情報から類推をすすめて、変化した姿や本来より時間を経た姿に仕立てることもあります。肉体を再構成するのではなく、肉体があるような情報を周囲の環境に与えているだけかもしれませんが、接触した人間にとっては奇妙な事態を引き起こすでしょう。この場合も肉体をもった生物と基本的にはかわらない経過をたどり、さまよう霊はやがて仮初めの生をすてて、高みへと飛んでゆきます。
寄生:クマリは寄生するにふさわしい対象と接触すると、寄生しようとこころみます。クマリのPOWと標的のPOWを、抵抗表にしたがって競わせ、クマリが勝つとクマリは標的に寄生します。寄生したクマリは宿主の意識と肉体の双方に根を張り、情報と記憶を蓄積しながら内部で増殖してゆきます。それとともに宿主は見たこともない記憶や知識にひきずられ、徐々にそれが行動にまであらわれてゆきます。
一定以上の記憶を蓄積すると白い羽根が徐々に宿主の体外にはえてゆき、外見も変化してゆきます。記憶の蓄積と変化の速度と経過は、宿主と環境によってさまざまです。すべてのプロセスがごく短期間で済むものもあれば、十年以上のゆっくりした経過をたどる場合もあります。人の姿を保ったまま知られずに消えてゆく場合、羽根を生やした伝説の生物のように変貌する場合、光り輝く羽根に覆われた姿にまで変貌して地上をさまよう場合もあります。キーパーはシナリオに従って自由に決定してください。
発光:クマリは羽根から放たれる荘厳にして霊妙な光によって生物を招き寄せることができます。発光を目にした生物のPOWとクマリのPOWを抵抗表に従って判定し、クマリが勝てば生物はクマリが寄生をおこなえる距離にまで自分から接近します。判定に成功して誘惑を振り切った者がいれば誘惑された者を止めることができ、この場合は判定をその都度やり直します。
クマリ、魔性の羽
能力値 | ロール | 平均値 |
STR | 1D2 | 1〜2 |
CON | 1 | 1 |
SIZ | 1 | 1 |
INT | 3D6 | 10〜11(群れ全体) |
POW | 3D6+6 | 16〜17(群れ全体) |
DEX | 3D6 | 10〜11 |
移動 1 | 耐久力 1 |
武器:
自らを植え付ける 組みつき後に自動、ダメージ 1D2
繁殖する 自動、ダメージ 1+正気度喪失1D3
発光による誘惑 クマリのPOWと標的のPOWを抵抗表に従って判定
装甲:なし。
呪文:クマリは地球上の情報すべてを記録しているため、あらゆる呪文を使うことができます。ただし情報を収集するだけの存在なので、知性と能動的な意志をもって呪文を行使することが困難であることに注意してください。
正気度喪失:クマリを見て失う正気度ポイントは、0/1D4。
クマリの従者、星の禁忌を紡ぐもの、下級の奉仕種族
能力値 | ロール | |
STR | 生前のまま | |
CON | 生前のまま | |
SIZ | 生前のまま | |
INT | 宿主とクマリの値の高いほうを使う | |
POW | 宿主とクマリの値の高いほうを使う | |
DEX | 宿主とクマリの値の高いほうを使う | |
移動 生前のまま/飛行 12 | 耐久力 生前のまま |
武器:組みつき 25%、ダメージ 特殊
装甲:なし。受けたダメージの75%は、クマリに与えられる。
呪文:クマリは地球上の情報すべてを記録しているため、あらゆる呪文を使うことができます。
正気度喪失:人間の姿を保っている〈クマリの従者〉を見ても正気度を失うことはありませんが、翼をはやす、羽毛が目立つなど変貌した〈クマリの従者〉を見て失う正気度ポイントは、0/1です。白く輝く羽根に全身を覆われ何本もの付属器官を伸ばすまでに変貌した〈クマリの従者〉を見て失う正気度ポイントは、1/1D8です。
元ネタをこまかく神話風にアレンジしていった結果、似ても似つかないグロテスクなクリーチャーに成り果ててしまいました。ずいぶんひどい有様ですが、原作のファンの皆様、どうか一種の莫迦ネタとしてスルーしていただければ幸いです。
コメント:武江那瑠緒さま