※この生物は、ブルーツーオールダーさま製作の、オリジナル・クリーチャーです。
 D&Dで馴染み深い“多眼の球魔”、“邪眼の暴君”こと、脅威のモンスター「ビホルダー」が、見事に神話風にアレンジされています。


BEHOLDERS:ビホルダー、上級の独立種族

「手足やくびれといったものがなにもない、ずんぐりと丸く黒ずんだ体が、私の前に静かに浮かんでいた。球状のひびだらけの体の頂上部に植物の茎のように生えた、10本の突起の先端についた目が不規則にうごめき、球体の下には無骨な歯をズラリと覗かせた三日月型の口がいやらしく開いていたが、何より私を居竦ませ、くぎ付けにしたのは私をにらみつける球体の中央にある巨大な主眼とも言うべき一つ目だった。─私を見据えるその瞳は、死人のようでもあり、永く重病をわずらった病人のようでもあった。その瞳から洩れる光は後悔、狂気、殺意、虚無、その他言いようも知れぬ退廃的ななにかに満ち溢れ、時折、微笑むかのように歪むが、決して愛着をもてるようなものではなかった。何か、全ての物語の終結をその光は伝えていた。その怪物の瞳の中に映っている人間は、頭のはげかかったまばらなひげの、見たこともない痩せこけた老人だった。──ただ、その老人の着ている衣服は、私の大学のスポーツウェアと同じもので、大学名を示す胸のロゴが鏡に映ったように逆さにプリントされていた……。」

― ブルーツーオールダー 『こんな子いるかな?』


 ◆この生き物は巨大な球体に、大きなひとつ目と、頭髪のような形で生えた十本のうねうねと動く短い角をもっており、角の先端には一本につきひとつずつ、角の直径よりも大きな丸い目がついています。体の下部には短い牙の生えた大きな口がついていますが。遠くから見れば丸いボールにしか見えません。ビホルダーは空中にふわふわと浮いた形で移動しますが、あまり早く移動することはできません。

 この生き物は、ドリームランドにある朽ち果てた都市や廃墟の中を絶えず徘徊しつづけています。この生き物は、はるか昔に何者かによって造られた存在でしたが、今ではその創造主の名を知ることは難しいでしょう。ビホルダーが創造主によって与えられた使命は、彼が徘徊し続けているこの場所を侵入者の手から守れ、というものでした。今ではその場所は滅びた文明を示す廃墟となっていますが、ひょっとしたら、ビホルダー自身が創造主を滅ぼしてしまったのかもしれません。この生物は、廃墟を守るかのように迷いこんだ哀れな侵入者を執拗に追いかけまわし、視線で射殺します。対象が死亡した場合、ビホルダーが空腹であれば相手の死体をむさぼり食いますが、あくまで、殺すことが目的で、食事は肉体を維持するための二次的なものでしかありません。

 時折、ビホルダーの棲むエリアにワンプ達が巣食うことがありますが、お互いに干渉することはないようです。何か、人間たちには分からない特別な契約が彼らの間に結ばれているのかもしれません。時には、ワンプと共謀し、廃墟に入った犠牲者を追いかけまわすこともあります。また、腐肉をあさる食屍鬼などもビホルダーにとっては格好の攻撃対象となります。食屍鬼たちがワンプと腐肉を奪いあうことがないのは、彼らがビホルダーを恐れているからかもしれません。

 ビホルダーは人間の言葉を理解し、利用する知能をもっていますが、人間と交渉する気はまったくありません。ビホルダーにとって、最大の関心事は、生命の価値を喪失させることです。

 この生き物は、我々のように光を取り入れる構造の眼は持っていません。ビホルダーの目は生物が放つ「命の光」を捉え、その「光」を消すことに、この生き物は歪んだ喜びを覚えます。また、死から生をえるワンプたちが放つ「光」は、ビホルダーにとって特殊なものであるようです。加えて、ビホルダーは、頭に生えた十本の小眼から、この人間には見えない「光」を放ち、それを壁などに反射させて、壁などの立体を認識しています。ただし、頭の上から照らす光では、足もとを照らすことができません。ビホルダーが空中を浮遊して移動するのは、そのためであると考えられています。鉱物や土壁などの厚い遮蔽物の向こうにある「光」をビホルダーは感じ取ることができませんが、一度捉えた光は、まるで、光に匂いでもあるかのようにかぎつけることができるようです。

ビホルダーの凝視:ビホルダーの主眼の凝視を受けたものは、生命体であれば、即座に生命の尊厳を奪われ、急速に老いが訪れます。対象がこれに耐えるためには、毎ラウンド<POW×1>のロールをおこない、成功しつづける限り、凝視に屈せずにすみます。しかし一度でも凝視に屈した場合、視線の前に棒立ちになり、1ラウンドに2ポイントのSTR、CON、DEXを失い、老化していきます。凝視から逃れるためには、第三者が主眼の視界の外からビホルダーに打撃などの刺激を与え、注意をそらす以外にありません。ビホルダーの主眼が見たものが生物以外のものであれば、それはただちに色あせ、朽ち果てていきます。
 ビホルダーの小眼の凝視を受けたものは、小眼ひとつの凝視を短時間に受けたのであれば異常に活性化し、生物であれば肉体が肥大し、STR、CON、SIZ、DEXが2倍まで上昇し、代わりに1D6ポイントのAPPを失います。しかし、長時間の凝視、あるいは短時間でも複数の小眼の凝視を同時に受けた場合、その生物は「ぱぁん!」という音をたて、全身から血しぶきをあげてはじけ飛びます。対象が植物の場合も同様、幹や茎がいびつに盛り上がり、奇形の枝葉を形成したあと、急速に枯れていきます。小眼の凝視も主眼同様、<POW×1>のロールをおこなうことで抵抗することができますが、主眼と異なり、小眼はひとつの対象をじっと見つづけることはあまりしません。
 ビホルダーは1ラウンドに主眼の凝視1回と、主眼の視界の外にいる対象に小眼の凝視、最大10回×2を向けることができます。主眼の攻撃は視界内にあるすべての対象に向けられます。主眼の視界は前方60°です。動かなくなった対象にのみ、空腹時に噛みつきをおこないます。

 ビホルダーが体当たりをおこなうのは、対象に凝視の効果がないと判断したときだけです。目をつぶって突進するので、命中率はあまり高くないようです。

 鉱物や砂、粘土などはビホルダーの凝視の影響を受けにくいようです。



ビホルダー、光をむさぼるもの
能力値ロール平均値
STR3D6+616〜17
CON4D6+1226
SIZ4D6+3044
INT2D6+2431
POW4D6+3044
DEX4D614
移動 7    耐久力 35
平均ダメージボーナス:+3D6

武器:主眼の凝視 100%、ダメージ 老化・老朽化
小眼の凝視※ 60%、ダメージ 肥大
噛みつき 45%、ダメージ 1D6
体当たり 30%、ダメージ 3D6+4
※小眼ひとつにつき、40%の対象特定判定を行います。判定に成功した小眼は視界内の生物1体を凝視します。判定に失敗した小眼は他の対象を探します。対象ひとつにつき、向けられる小眼の数は4つまでです。1ラウンドのうち、対象特定判定を行うのは小眼ひとつにつき、2回までで、2回の判定にいずれも失敗した小眼は中空に視線をさまよわせます。

装甲:7ポイントの硬い皮膚。ただし、正面の主眼への攻撃に対しては装甲がありません。ビホルダーの正面への物理攻撃は通常の半分のダメージしか与えられません。ビホルダーへの攻撃物が視線によって萎縮、老朽化してしまうからです。また、正面に対する魔術による攻撃は、もっと劇的にその効果をかき消されてしまいます。

呪文:なし。

正気度喪失:ビホルダーを見て失う正気度ポイントは、1D3/1D20です。

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